11月20日 映画「赦し その遥かなる道」を見て
先ごろ(11月20日)アムネスティ湘南グループは映画「赦し その遥かなる道」の上映会を行いました。
上映後に考えたことを少し書いてみます。
映画は韓国のテレビ局SBSが最初テレビドキュメンタリー作品として制作した後、
映画に作られた作品です。韓国で2003年に実際に起こった無差別連続殺人事
件と他の殺人事件の被害者家族が事件後どのような毎日を送っているかを描いて
います。何の関係もない犯人に金持ちそうだからと言うだけで、母、妻、一人息
子を殺され毎日を悶え苦しみながら生きる父親の「コ・ジョンウオン」さんを主
人公にし、同じ犯人から兄を殺され、それがきっかけになり兄、弟を自殺で失い、
兄弟3人をいっぺんに失った「アン・ジュサム」さん。
元恋人により殺された一人娘の両親。それぞれが壮絶な毎日を送っている。
コ・ジョンウオンさんは犯人を「赦す」道を選んだため娘たちに拒絶され、世間か
らも変わり者扱いを受けながらも自分自身の生を全うしようと世間と自分自身と闘
っている。
アン・ジュサムさんは犯人への憎しみと復讐の気持ちをささえにして毎日を生きている。
娘を殺されて、父と母は「赦し」と「絶対に許さない」との気持ちの間で日々ゆれ
動きながら苦しく悲しい毎日を生きている。
それぞれの気持ちが痛いほど伝わってきます。
そして映画を見ている私たちにどう生きるかを問いかけてきます。
その選択は今まで生きてきた道のりと、作り上げてきた人格と知性に左右されると思います。
「赦し」の道を選択したコさんにはいつの日か平安が訪れ生きる希望が湧いてくるのではと
思わされます。「憎しみ」を糧にしているアンさんは見ていてとてもつらいし、いつまでたっても
幸せになれないような気がします。アンさんは今も薬にたよってつらい毎日を過ごしているそうです。
上映会後、数日経った日の新聞に松本サリン事件の被害者である河野義行さんの記事が掲載され
ました。オウム事件公判終結にあたっての心境を聞いたものでした。
このなかで河野さんは「恨んでも幸せになれない」と言っていました。私は「あっ、やっぱりそうなんだ」
と思いました。そのことを考えていた殆ど直後にこの言葉を読んだので導かれたような気がしました。
映画のなかのコさんと一人娘を殺された父と母を救っているのは信仰ですが国も社会も犯人を死刑に
して、それで一件落着のように済ましている。しかし犯人が死刑にされても被害者の日々の
苦しみと悲しみは少しも変わらないのではないでしょうか。
被害者が加害者と同じように差別される社会を変えて、被害者への精神的、経済的な支援こそが重要。
犯人を死刑にしろと声高に叫ぶ人で被害者救援をしている人はいないと韓国の現実を聞いたことがありますが
このことは多くのことを物語っているように思われる。
映画のなかで非常に印象に残ったのは死刑囚2名にインタビューする場面です。この2名の死刑囚が
とても清々しい顔をしていて、かって暴力団で人を殺した人には到底見えない良い顔をしているのです。
獄中で真人間になって人間として成長したことがうかがえます。このような人を殺してしまって
良いのだろうか。
真にいろいろなことを考えさせられる映画です。
ハナ