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国際司法裁判所(ICJ)はイスラエルに暫定措置を命じる
 
ICJはイスラエルに対し、6つの暫定措置を命じた。ジェノサイド条約(ジェノサイドの罪の防止及び処罰に関する条約)で 定義されたジェノサイド行為の自制、ジェノサイドを直接的かつ公然と扇動する行為の防止と処罰、 ガザの民間人への人道支援を確保するための即時かつ効果的な措置などだ。
重要な点として、ジェノサイドの証拠を保全し、今回の命令に従ってとったすべての措置に 関する報告書を1カ月以内にICJに提出するようにも命じている。

今回の判断は、ジェノサイドを防止し、残虐犯罪のすべての犠牲者を保護する上で、 国際法が極めて重要な役割を担っていることを、あらためて示している。
ガザ地区の住民を大勢殺害し、かつてない規模でパレスチナ人に死と恐怖と苦しみを与える 無慈悲な軍事作戦をイスラエルが進める中、世界が傍観することはないという明確なメッセージでもある。

しかし、ICJの命令だけでは、ガザの人びとが目の当たりにしている残虐行為と破壊に終止符を打つことはできない。 ガザでのジェノサイドの危険な兆候と、イスラエルが国際法を露骨に無視していることを考えると、 パレスチナ人に対するイスラエルの猛攻を止めるためには、足並みを揃えた実効性ある圧力が欠かせない。 ICJは即時停戦は命じなかったが、すべての当事者による即時停戦は不可欠であり、 暫定措置を実施する上で、そして市民の苦しみを終わらせるために、最も効果的な施策である。

今回の措置命令は、ガザのパレスチナ人の生存が危機にあるとICJが判断したことに他ならない。 イスラエル政府は、判決に直ちに従わなければならない。また、南アフリカによるジェノサイドをめぐる提訴に批判的、 あるいは反対であったとしても、すべての国家は、これらの措置が確実な実施されるよう保障する明確な義務を負っている。

米国、英国、ドイツ、その他のEU(欧州連合)諸国の指導者たちは、法的拘束力のあるこの判断を尊重し、 ジェノサイドを阻止する義務を果たすために全力を尽くす意思を示さなければならない。 そうでなければ、国際法秩序の信頼性と信用が大きく損なわれることになる。
各国はまた、イスラエルとパレスチナの武装集団に対する包括的な武器禁輸措置など、 現在進行中の国際犯罪を防止するための緊急措置を講じなければならない。

アムネスティは、ガザでジェノサイドが行われる恐れについて警告を発してきた。 その背景には、パレスチナ人の死者数の衝撃的な多さ、執拗な攻撃による広範囲の破壊、 違法な封鎖の一環としての人道支援の阻止など、イスラエルがガザの民間人に言語道断の苦しみを与えていることがある。
また、ベンヤミン・ネタニヤフ首相をはじめとするイスラエル政府高官による、 パレスチナ人を人間扱いしていない人種差別的な発言の増加や、アパルトヘイト制度のもとで パレスチナ人を抑圧し差別してきたイスラエルの歴史もジェノサイドの恐れを示唆している。
深刻なジェノサイドが起きる可能性に直面した場合、すべての国家はジェノサイドの実行を 阻止するために行動する国際法上の義務を負う。

イスラエルによるガザへの容赦ない砲撃で、26,000人以上のパレスチナ人が死亡し、 1万人がいまだ瓦礫に埋もれているとされる。ほとんどが民間人だ。 少なくとも180万人のパレスチナ人が国内避難民となり、 適切な食料、水、避難所、衛生設備、医療支援を手にすることができずにいる。

アムネスティは、イスラエル、ハマス、その他のパレスチナ武装勢力に対し、 ガザにおけるすべての軍事行動を直ちに停止するよう求める。 イスラエルは、違法かつ非人道的な包囲を解除し、意図的に仕組まれた飢饉に苦しむパレスチナ人に対し、 人道的援助を無条件かつ速やかに提供できるようにしなければならない。 また、ハマスと他のパレスチナ武装勢力に対しては、残っているすべての民間人の人質を解放するよう求める。

背景情報
2023年12月29日、南アフリカは、ガザ地区でのパレスチナ人に対するイスラエスの行為は ジェノサイドにあたるとして、ジェノサイド条約に基づきICJに対応を求めた。 南アフリカの暫定措置要請に関する審理は、2024年1月11日と12日にオランダのハーグで開かれた。

国連の主要な司法機関であるICJは、個人の刑事責任を追及するのではなく、 国家が国際司法裁判所に提起した法的紛争を国際法に従って解決する役割を担っている。 ジェノサイド条約の解釈、適用、履行およびジェノサイドに対する国家の責任に関しても扱う。

国連憲章第94条は、ICJの判決は紛争当事国を拘束するものであり、もしその判決が履行されない場合には、 安全保障理事会に訴えることができると定めている。 安保理は勧告を出すか、判決履行に向けた措置を決定することができる。

2024年1月26日 アムネスティ国際ニュース

国連加盟国すべてに行動を求める
  〜ガザの人道的大惨事と民間人の犠牲をくい止める〜 

アムネスティを含む人道・人権16団体はすべての国に対し、イスラエルとパレスチナ武装組織への 武器、部品、弾薬の供与の即時停止を求める。 国際人道法および国際人権法の重大な違反行為、あるいはその助長に使用されるおそれがあるからである。

現在、ガザ地区の民間人はかつてない深刻で大規模な人道危機に直面している。 イスラエルによる砲撃と包囲は、生存に欠かせない基本的な物資などを奪い、ガザを居住不可能にしている。
さらに、パレスチナの武装組織の攻撃を受けたイスラエルでは、約1,200人の死者を出し、 子どもを含むイスラエル人や外国人数百人が人質として拘束され、現在も130人以上が拘束されている。 ガザの武装組織はイスラエルの人口密集地を無差別にロケット弾で攻撃し続け、 子どもたちの学校を破壊し、民間人の生命と幸せを脅かしている。 人質を取る行為や無差別攻撃は国際人道法違反であり、直ちに停止しなければならない。

人道支援機関、人権団体、国連当局者、153を超える国連加盟国が即時停戦を求めているが、 イスラエルは人口密集地での武器や弾薬の使用をやめず、深刻な人道的問題を引き起こしている。
国連事務総長は、「世界の指導者はイスラエル政府に対し民間人の犠牲を減らすよう求めているが、 イスラエルによるガザ地区での軍事作戦でかつてない数の犠牲者が出している」と述べている。 加盟国には、民間人の保護を徹底し、国際人道法を遵守するためのあらゆる手段を尽くす法的責任がある。

敵対行為の激化で、ガザに残された生命線である国際的な人道支援は困難になっている。 支援物資を積んだ車列への攻撃、通信網の遮断、道路の破壊、生活必需品の制限、 商業物資のほぼ全面禁止、援助物資移送での官僚的手続きなど、多くの障壁がある。

イスラエルの軍事行動で、ガザの家屋や学校、病院、水インフラ、避難所、難民キャンプの多くが破壊された。 爆撃の無差別性と、明らかに民間人を対象とした攻撃は容認できるものではない。
国連人権高等弁務官は、ガザで「残虐行為犯罪が行なわれる危険性が高まっている」と警告し、 すべての国に対し犯罪の拡大阻止を求めた。だがこの呼びかけ以降も、ガザの人道危機は悪化の一途をたどっている。

ガザ保健省によると、4カ月足らずで25,000人を超えるパレスチナ人が犠牲になった。うち10,000人以上は子どもである。 さらに数千人が瓦礫に埋もれており、死亡したとされる。 62,000人以上が負傷し、その多くが、後遺症が残るほどの重傷を負った。 その中には、腕または脚を失った10,000人以上の子どもが含まれる。 国連によれば、子どもを含むパレスチナ民間人多数が不法に拘束されている。 彼らは直ちに釈放されなければならない。

パレスチナ人は、イスラエルから指示された退避地域で、毎日のように殺されている。 2024年1月初旬にはイスラエル軍の空爆で、イスラエルが「人道地帯」と定めていた地域付近で 14人(大半が子ども)が殺された。

ガザの人口の85%以上にあたる約190万人が強制的に避難をさせられた。 多くの民間人はイスラエルの南部への移動命令に従った結果、 人としての暮らしができないほどわずかな土地に押し込められ、 病気まん延する事態も起きている。

ガザの50万人以上のパレスチナ人が飢餓に直面し、人口の90% 以上が深刻な食料不安に陥っている。 90%は、食料不安を評価する専門機関の記録で過去最悪の値である。 ガザの70%以上の家屋、大部分の学校、水と衛生設備などが損壊し、安全な水が入手困難な状況にある。 包囲下の医療施設はどの施設も満足に機能せず、ある程度機能しているとしても、 医薬品や医師が不足しているうえに、トラウマを抱えた人びとであふれかえっている。 医療従事者の死者は300人を超える。

ガザでは少なくとも167人の支援従事者が殺害された。今世紀のどの紛争よりも多い数だ。 現在のガザは、子ども、ジャーナリスト、支援従事者にとって最も危険な場所になっている。 病院や学校が戦場になるようなことがあってはならない。このような事態がガザに絶望的状況を生み出し、 支援従事者からは「ガザで有意義な人道対応ができる状況ではない」との発言も聞かれる。

包囲、砲撃、戦闘が終わらない限り、この状況は変わらない。 最近、国連は1月中の人道的アクセスは「著しく悪化している」と懸念を示した。 イスラエル軍は、特に飢餓が深刻なワディ・ガザ北部地域への支援物資の搬入を繰り返し拒否している。
この数週間、数人のイスラエル高官は、パレスチナ民間人のガザからの退去を求め始めた。 ガザ内での強制移動や、帰還の保証のない国境を越えた住民の追放は、 国際法の重大な違反であり、残虐行為犯罪にあたる。

私たちは即時停戦を強く求める。同時に、すべての国に国際人道法と国際人権法の違反行為に 使用されるおそれがある武器供与の停止を求める。 国連安全保障理事会は、イスラエル政府とパレスチナ武装組織への武器移転の停止と 国際犯罪に使用される危険のある武器の移転阻止に向けた措置を採択することで、 世界の平和と安全を維持する責任を果たさなければならない。
すべての国は残虐行為犯罪を防止し、民間人を保護する規範の遵守を促進する義務を負っている。 今こそ国際社会は、この義務を果たすべきだ。

共同声明の賛同団体 Federation Handicap International - Humanity & Inclusion
War Child Alliance
Christian Aid
Norwegian People's Aid
Medecins du Monde International Network
Mennonite Central Committee
medico international
Oxfam
Center for Civilians in Conflict (CIVIC)
Danish Refugee Council
Save the Children
Plan International
Norwegian Refugee Council
Diakonia
Amnesty International
American Friends Service Committee (AFSC)

2024年1月24日 アムネスティ国際ニュース

ガザのパレスチナ人大量強制失踪
 
12月16日、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、ガザ地区北部から、子どもを含む 「数千人のパレスチナ人の大量拘禁、虐待、強制失踪」に関する「多数の憂慮すべき報告」を受けたと発表した。
アムネスティ・インターナショナルの危機証拠研究所が検証した写真とビデオ映像は、 ガザ北部の都市ベイト・ラヒアでイスラエル軍が被拘禁者を非人道的かつ品位を 傷つける扱いをしている様子を映し出している。これらの被拘禁者の多くは、いまだに消息不明のままである。
ガザ地区の他のパレスチナ人(労働者やイスラエルへの入国許可を得た人びとを含む)もまた、強制失踪されたままである。 イスラエル当局は、10月と11月にガザ地区の労働者2人を含む少なくとも6人のパレスチナ人が 拘禁中に死亡したことを確認した。

「私たちは現在、イスラエル軍によるパレスチナ人被拘禁者の大量強制失踪の報告を調査しています。 イスラエル軍は、2カ月以上も強制失踪させられたガザ出身のジャーナリスト、ニダル・アル・ワヘイディ氏と ハイサム・アブデルワヘド氏を含め、10月7日以降に拘禁した全員の消息と所在を早急に明らかにしなければならない。
イスラエル軍は、被拘禁者の逮捕理由を明らかにし、特にガザの人びとを互いに、 そして世界から切り離した通信障害に照らして、 拘禁されている人びとの家族に情報を提供するようあらゆる努力をしなければならない」と、 中東・北アフリカ地域局長のヘバ・モラエフは述べた。
すべての被拘禁者は人道的に扱われ、公正な裁判と適正手続きを受ける権利を保障されなければならない。 恣意的に拘禁されている人びとは全員釈放されなければならない。 イスラエルは、自軍による人権侵害を免責するという恐ろしい実績があり、 拘禁中のすべての死亡、強制失踪、拷問、その他のガザ地区のパレスチナ人に対する虐待の報告について、 独立した効果的な調査が緊急に必要であることを強調している。

10月7日、被占領ガザ地区出身のジャーナリスト、ニダル・アル・ワヘイディとハイサム・アブデルワヘドの2人は、 ガザ地区の周辺でハマスが率いるイスラエルへの攻撃を取材していたところ、イスラエル軍に拘束された。 彼らが最後に目撃されたのは、ガザ地区とイスラエルの間のエレズ交差点だった。 それ以来、イスラエル当局、すなわちイスラエル軍、警察、刑務所は、 彼らの所在や逮捕の法的根拠を明らかにすることを拒否している。

ガザの被拘禁者の運命に対するアムネスティの懸念は、アムネスティ・インターナショナルの 危機証拠研究所がここ数週間で確認した、 パレスチナ人男性が衣服を剥ぎ取られ、両手を縛られて下着姿で床にひざまずくことを余儀なくされ、 その上にイスラエル兵が立っている様子を映した吐き気を催すような画像やビデオによって高まっている。
アムネスティ・インターナショナルの危機証拠研究所は、12月7日にソーシャルメディアに投稿された、 ガザ北部の都市ベイト・ラヒアの路上で数十人の男性がイスラエル軍に拘束されている様子を 映した3枚の写真と1本のビデオをジオロケーションした。
写真には、被拘禁者が下着姿で写っており、中には身分証明書と思われるものが目の前に置かれている。 そのうちの1枚の写真には、被拘禁者が両手を縛られ、衣服を与えられずに別の場所に移送されている様子が写っている。 「これらの男性は尊厳を剥奪され、国際法に違反して非人間的に扱われた。 被拘禁者を嘲笑したり、故意に侮辱したりすることは正当化できない。被拘禁者が拷問を受けず、 または非人道的または品位を傷つける方法で扱われない権利は絶対的なものであり、 敵対行為に参加したかどうかにかかわらず、すべての人に適用されます。 武力紛争や占領下で行われた拷問、非人道的な扱い、強制失踪、個人の尊厳に対する非道な行為は戦争犯罪であり、 民間人に対する組織的または広範な攻撃の一環として行われた場合、人道に対する罪に相当する」とヘバ・モライエフは述べた。
「ガザの悲惨な光景は、国際社会の非難を浴びるべきであり、さらなる拷問、強制失踪、 その他の国際法上の犯罪を防止するための緊急調査と措置を正当化すべきである。 世界は、このような行為が常態化せず、人類に対する侮辱として認識されるようにしなければならない」と述べた。

アムネスティは、ハマスとガザのその他の武装勢力に対し、すべての民間人人質を即時かつ無条件に解放し、 すべての捕虜を人道的に扱い、赤十字国際委員会が人質と捕虜と面会できるようにするよう改めて求める。 人質と民間人の拉致は戦争犯罪である。 12月18日にハマスの武装部門が公開した3人の人質(いずれも高齢の民間人男性)のビデオのように、 人質の証言を録音し、公開することは、非人道的で品位を傷つける扱いにあたる。

2023年12月20日アムネスティ国際ニュース

ガザ即時停戦の要請

                             2023年12月27日
外務大臣 上川 陽子 殿
                 公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
                           理事長 阿部 理恵子
        ガザ地区での即時停戦に向けた積極的な行動を求める要請書

イスラエルとハマスその他の武装勢力との戦闘で多くの市民が犠牲になっています。 パレスチナ被占領地ガザ地区では、イスラエル軍の砲撃で街が大規模に破壊され、 人道支援物資の搬入が厳しい制限を受け、未曽有の人道危機で ガザ地区200万人の人びとの命が危機に瀕しています 。
人道的戦闘休止期間に救援物資が搬入されたものの、戦闘休止はわずか7日間で終わり、 激しい戦闘が再開されました。終わりの見えない戦闘の中、 すべての紛争当事者による戦争犯罪を含む深刻な国際人道法違反は、とどまるところを知りません。
これ以上の民間人の犠牲に歯止めをかけるには即時停戦が必要なのは、火を見るより明らかです。 また、停戦になれば、すべての紛争当事者による人権侵害と戦争犯罪に関する 独立した調査の実施が可能になります。

今回の人道危機は、パレスチナ被占領地域で行われてきたこれまでの戦争犯罪、 アパルトヘイトを含む人権侵害 に対する長年の不処罰が招いたものです。 この不処罰に終止符を打ち、犠牲者への正義と補償を実現するために調査は極めて重要です。

日本政府はこれまでに、人道的な即時停戦を求める国連総会の決議案に賛成票を投じ、 安全保障理事会の 即時停戦決議にも賛成しています。 また、大臣 ご自身も、外務大臣談話で「すべての紛争当事者に最大限の自制を求める」と述べ、 11月29日付のG7外相の共同声明として、人道支援の拡大と人質の解放促進のため、 11月24日から始まった戦闘休止の延長と必要に応じた将来の休止を支持なさいました。 即時停戦は今まさに、 「必要」なのです。
戦闘再開後のガザ市民のための人道支援会合フォローアップ会合には ビデオメッセージで参加し、 ガザの人道状況に対する強い懸念を表明し、危機的状況の改善、 早期の事態の鎮静化のため戦闘休止合意への復帰の重要性を訴えていらっ しゃいます。 日本政府は、国連安全保障理事会の理事国として、そうしたお考えを一刻も早く行動で示すべきです。

アムネスティ・インターナショナル日本は、日本政府に対し、即時停戦実現のために、 あらゆる外交手段を用いて、当事国および安全保障理事国、いわゆる中東カルテット(米国、EU、ロシア、国連 )、 アラブ諸国に積極的にはたらきかけるなど、最大限の外交努力を発揮するよう求めます。

                               以上
                                           

ガザで停戦がなければ、歴史は私たち全員を裁くでしょう
  〜国連パレスチナ難民救済事業機関事務局長〜
2023年10月26日、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の フィリップ・ラザリーニ事務局長は語った。

もう35週間以上もの間、人間の悲劇の耐え難い映像がガザから出てきています。 女性、子供、老人が殺され、病院や学校が爆撃され、誰も助からない。 本稿執筆時点で、パレスチナ難民のための国連機関であるUNRWAは、すでに35人の職員を悲劇的に失っており、 その多くが家族と自宅で過ごしている間に殺害された。

地球上で最も過密な場所の1つで、地域全体が破壊されています。
イスラエル軍は、ガザ地区のパレスチナ人に対し、北部を爆撃するガザ地区の南部に移動するよう警告している。 しかし、南部でも爆撃が続いている。ガザには安全な場所はありません。
約600万人が40の学校やUNRWAの建物に収容され、清潔な水、食料、医薬品が ほとんどない不衛生な環境で生活しています。 母親は子供をきれいにする方法を知りません。妊娠中の女性は、病院に合併症を受け入れる能力がないため、 出産時に合併症に遭遇しないことを祈ります。 今は家族全員が、他に行くところがないので、私たちの建物に住んでいます。
しかし、UNRWAの施設は安全ではなく、学校や倉庫を含む150の建物が攻撃によって被害を受けました。 そこに避難していた多くの民間人が悲惨な死を遂げました。

ガザは過去15年間、空、海、陸の封鎖により、365kuにわたって220万人が窒息死する 大規模な野外刑務所と表現されてきた。若者の大半はガザを離れたことがない。 今日、この刑務所は、戦争、包囲、剥奪の間に挟まれた人々の墓場となっています。

ここ数日、最高レベルでの激しい交渉の結果、ついにガザ地区には非常に限られた 人道支援物資が到着する結果となりました。これは喜ばしいことですが、 これらのトラックは、この規模の人道的状況で必要とされる支援の流れではなく、ほんの少しの援助にすぎません。 トラック20台分の食料や医療品は、200万人以上の民間人のニーズを満たすための大海の一滴にすぎません。 しかし、ガザ地区では燃料供給は断固として拒否されている。 それがなければ、人道的対応も、困窮している人々への援助も、病院への電気も、水も、パンもありません。

10月7日まで、ガザ地区には、自動車、海水淡水化プラント、パン屋に電力を供給するための燃料45台を含む、 毎日約500台のトラックが食料やその他の物資を受け取っていた。 今日、ガザは首を絞められており、入る少数の車列は、世界から見捨てられ、 犠牲にされたと感じている一般市民の感情を和らげることはないでしょう。

10月7日、ハマスは、戦争犯罪にあたるかもしれないイスラエルの民間人に対する言語に絶する虐殺を犯した。 国連は、この恐ろしい行為を最も強い言葉で非難しました。 しかし、このことは、100万人の子どもを含むガザの民間人に対する現在進行中の犯罪を正当化するものではない。
国連憲章と私たちのコミットメントは、私たちの共通の人間性へのコミットメントです。 民間人は、どこにいても平等に保護されなければならない。ガザの市民は、この戦争を選ばなかった。 残虐行為の後には、他の残虐行為が続くべきではありません。また、戦争犯罪への対応も戦争犯罪ではない。 この点については、国際法の枠組みが非常に明確で確立されています。

この致命的な膠着状態の根源に立ち返り、平和、安定、安全の環境につながる実行可能な政治的選択肢を 提案するには、誠実で勇気ある努力が必要です。その間、国際人道法のルールが尊重され、 民間人が救われ、保護されることを確保しなければなりません。 ガザ地区における燃料、医薬品、水、食料への安全、継続的、かつ無制限のアクセスを可能にするために、 即時の人道的停戦が宣言されなければならない。

国連第2代事務総長のダグ・ハマーショルドはかつて、 「国連は私たちを天国に連れて行くために作られたのではなく、私たちを地獄から救うために作られた」と言いました。 今日のガザの現実は、人類はあまり残っておらず、地獄が始まっているということです。

これからの世代は、この人類の悲劇がソーシャルメディアやニュースチャンネル で展開されるのを見たことを知るでしょう。
知らなかったとは言えません。歴史は、なぜ世界が断固として行動し、 この地上の地獄に終止符を打つ勇気を持てなかったのか不思議に思うでしょう。

出典:https://www.theguardian.com/commentisfree/2023/oct/26/
翻訳:Agence Media PalestineのAJC

イスラエル/パレスチナの戦争犯罪 
  〜平和構築への道は〜
※ この記事は10月12日発表であるため、犠牲者の数は現在と違います。

10月7日にガザ地区のハマスによる無差別ロケット弾攻撃が始まって以来、 イスラエルでは子どもを含む民間人1,200人以上が死亡し、2,400人が負傷した。 ガザ地区では、イスラエル軍の報復攻撃で少なくとも1,200人が犠牲になった。
イスラエルが、水、電気、食料、燃料などの供給を止める封鎖措置を取ったことで、 ガザ市民が直面する人道危機は深刻化する一途だ。 イスラエルの封鎖はガザ住民に対する懲罰であり、戦争犯罪にあたる。
民間人の虐殺は戦争犯罪であり、このような攻撃を正当化することはできない。 アムネスティは武装した男たちが民間人を銃撃し、人質として引きずっていく様子を映した動画を検証した。 こうした犯罪は、国際刑事裁判所が進めている現紛争におけるすべての当事者による犯罪の捜査に含めなければならない。
C

イスラエルがこれまでに戦争犯罪を行ってきたからといって、パレスチナ武装勢力の恐ろしい行為は許されるものではない。 また、人道と民間人保護の基本原則を尊重するという国際法上の義務も免除されはしない。
イスラエル政府当局によれば、イスラエル南部の数カ所で民間人が殺害されたのに加え、 少なくとも150人の人質がガザに連れ去られた。子どもや外国籍の人たちもいた。 民間人の拉致は国際法が禁じていて、戦争犯罪にあたる。ハマス側は人質にした市民を直ちに解放しなければならない。
アムネスティが検証した動画には、10月7日、ガザ地区に近いイスラエルの住宅地やその周辺で、 ハマスの戦闘員が民間人を拉致し、殺害する様子が写っていた。 軍服を着た6人の男たちに後ろ手を縛られて連行される4人の民間人、 同じ場所で彼らが遺体となって映っている映像など、衝撃的な映像ばかりだった。
イスラエルのキブツ(農業共同体)ベエリの様子を撮った動画には、軍服を着た2人の男が至近距離から車に発砲し、 運転手と同乗者2人を殺害し、3人の遺体を車に積み込む様子が残っていた。 別のキブツ、クファル・アザでもレイムでも、武装した男たちが至近距離から 車や防空房に隠れている市民に向かって発砲していた。

野外音楽祭会場を襲撃
10月7日の攻撃で特に死者が多かったのが、ガザ地区との境界近くで夜通し行われていた音楽祭の会場だった。 早朝7時ごろに始まったハマスの奇襲攻撃で少なくとも260人が犠牲になった。
アムネスティのクライシス・エビデンス・ラボは、18本の動画を検証した。 多くは生存者が撮ったものだったが、1本は武装組織のメンバーが撮影したものだ。 7本の動画には、武装した男たちが民間人を撃っている様子が映っていた。 背後には銃声が飛び交っていた。5本の動画には、近くの野原を通り抜けたり茂みに隠れるなどして 逃げようとする人びとが映っていた。人質に取られる場面の動画も4本あった。
アムネスティは、生存者の1人(22歳)に話を聞いた。
「襲撃直後すぐに森に逃げ込み、穴を掘って入り、木や葉っぱで体を覆った。 6時間ほども隠れていた間、銃声が絶え間なかった。戦闘員が逃げ惑う人たちを撃つ様子が見えた。 戦闘員があちこちに燃料を撒いていた。逃げて撃たれるか、燃やされるか、二つに一つだった。 目をつぶると恐ろしい光景が浮かんで眠れなかった。 あちこちにある死体、燃えている車の中に閉じ込められた人たち、血の匂い・・・」

繰り返される残虐行為を終わらせるために行動を
アムネスティは国際社会に対し、パレスチナ人とイスラエル人それぞれの人権が守られ、 犠牲者の正義と補償が約束されるよう、あらゆる措置を講じることを求める。
パレスチナ武装勢力とイスラエル当局の双方は、国際人道法を厳格に遵守するべきだ。 とりわけ、敵対行為の際、人道性を確保し、民間人の被害を最小限に抑えるために必要な予防措置を講じ、 違法な攻撃や民間人への集団懲罰を控えなければならない。
アムネスティはガザのすべての武装勢力に対し、民間人の人質全員を即時、無条件で解放するよう求める。
イスラエルに対しては、16年間続くガザ封鎖の解除をあらたあらためて要請する。 イスラエルは民間人を殺傷し民家やインフラを破壊する攻撃に終止符を打たなければならない。

2021年、国際刑事裁判所はパレスチナ情勢の調査を開始した。 その対象には、パレスチナ人に対するアパルトヘイトという人道に対する罪だけでなく、 現行の戦闘で全当事者が犯した国際法上の罪も含まれる。 アムネスティは国際刑事裁判所の検察官に、捜査を迅速に進め、最新の犯罪も対象とするよう求める。

今回の攻撃は、イスラエルとパレスチナ被占領地をめぐるより広い文脈の中で考えなければならない。 しかし、アムネスティは、戦争犯罪は何をもってしても正当化できないということを、 可能な限り強い言葉で繰り返す。
この暴力の根本にある不公正と違反行為は、喫緊の課題として対処しなければならない。 イスラエルによるガザ封鎖などパレスチナ人へのアパルトヘイト体制が解体されるまで、 双方の市民は大きな代償を払い続けることになる。
法的枠組み
武力紛争の状況下で適用される国際人道法は、すべての紛争当事者に対し民間人の保護や 戦争における人びとの苦痛の軽減に取り組む義務を課している。 イスラエル軍とパレスチナ武装組織との戦闘には、国際人道法の慣習法規則含め、 敵対行為に関する規則が適用される。この文書で特に関連するのは、 民間人への直接攻撃、殺害、人質、無差別攻撃の禁止だ。
国際人道法の大原則として、いかなる場合も紛争当事者は民間人や民間インフラを攻撃してはならず、 攻撃の回避のためにあらゆる手段を講じなければならない。

背景情報
2007年以来、イスラエルはパレスチナのガザ地区に空・陸・海の封鎖を敷き、ガザ市民に対する懲罰体制をとってきた。 10月7日から始まった戦闘は、イスラエルとガザ地区の武装組織間の6度目の大規模な紛争になる。
アムネスティは2022年2月に、イスラエル軍がパレスチナ人に対する抑圧と支配の体制を維持する目的で、 民間人に対する広範かつ組織的な攻撃の一環として、 国際刑事裁判所規程とアパルトヘイト条約で禁止されている行為を、 ガザ、ヨルダン川西岸地区、イスラエル国内で行っていることを明らかにした。 こうした行為はアパルトヘイトという人道に対する罪を構成している。
イスラエルによるパレスチナ人へのアパルトヘイト/残虐な支配体制と人道に対する罪 不偏不党の人権団体であるアムネスティは、武力紛争のすべての当事者が 国際人道法と国際人権法を遵守するよう求める。
したがって、今後はイスラエルのガザ地区における軍事行動を調査し、 民間人や民間施設への被害を最小限に抑えるために必要な予防措置を講じているか、 国際法で義務付けられている違法な攻撃や民間人に対する集団罰を控えているかなど、 国際人道法を遵守しているかどうかを判断する。 また、ハマスとパレスチナ武装集団の活動についても引き続き監視していく。

2023年10月12日 アムネスティ国際ニュース

イスラエル/パレスチナ戦闘激化 
  〜民間人への攻撃は戦争犯罪〜
10月7日に勃発した戦闘で民間人の死者が増える中、イスラエル軍とパレスチナ武装勢力は、 市民の生命を守るためにあらゆる努力を尽くさなければならない。
パレスチナ被占領地ガザ地区の武装組織ハマスがイスラエルに向けてロケット弾を発射し、 戦闘員がイスラエル南部に侵攻するというかつてない作戦に出た。

ガザ、イスラエル、ヨルダン川西岸地区での民間人の死者の増加が憂慮される。 紛争当事者は国際法を遵守し、これ以上の民間人の流血を避けるために あらゆる努力を払うことが強く求められる。
国際人道法では、紛争当事者には紛争に巻き込まれた市民の命を守る義務がある。 民間人の意図的あるいは無差別攻撃は戦争犯罪にあたる。

イスラエルは過去にガザ紛争で戦争犯罪を行ってきたし、 ハマスも過去に民間人を標的に無差別に攻撃したことがあった。 両者とも戦争犯罪に相当する行為を控えなければならない。

パレスチナ保健省によると、イスラエルによるガザ地区への報復攻撃で232人以上が死亡、 1,700人近くが負傷した。一方、イスラエルのメディアによると、ハマスの攻撃で250人以上が死亡、 イスラエル保健省によると1,500人以上が負傷したという。
イスラエル軍はメディアに、パレスチナ武装勢力にイスラエル市民や兵士が拉致され、 人質に取られていることを認めた。民間人の拉致と人質は国際法で禁じられており、 戦争犯罪を構成する可能性がある。人質となっているすべての民間人は、無傷で即時解放されなければならない。

また、こうした暴力の連鎖が繰り返される根本原因にも早急な対応が求められる。 国際法を守り、イスラエルによる16年にわたる違法なガザ封鎖やパレスチナ人に対する アパルトヘイト体制を解除する必要がある。
イスラエル政府は、東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区、 特に宗教施設周辺での暴力や緊張を煽る行為を控えなければならない。 また、国際社会は、民間人を保護し、人びとがこれ以上の苦しみを 味わわなくても済むように介入する必要がある。

背景情報
2007年以来、イスラエルはガザ地区を空・陸・海から封鎖し、 全住民に懲罰を加えるような対応をとってきた。
イスラエルはこの5月、ガザ地区を攻撃しパレスチナ人家屋を破壊した。 アムネスティの現地調査で、イスラエルの攻撃は多くの場合、軍事的必要性がなく、 民間人に対する集団的懲罰に相当することが明らかになった。
アムネスティは昨年2月、イスラエル軍がガザ地区とヨルダン川西岸で、 ローマ規程とアパルトヘイト条約が禁じる行動を取ってきたことを報告した。 これらの行動は、パレスチナ人に対する抑圧と支配の体制維持を目的とした 民間人に対する攻撃であり、アパルトヘイトという人道に対する罪を構成する。
2023年10月7日アムネスティ国際ニュース

不当な容疑で半年間勾留されているパレスチナ人少年
  〜実家取り壊しの懲罰的措置〜
ムハンマド・ザラバニさん(13歳)は今年2月、被占領東エルサレムのシュアファト難民キャンプの検問所で、 バスに乗りこんできたイスラエル国境警察官を刺そうとしたところを取り押さえられた。 しかしその直後、警備員が発砲した銃弾が誤って警察官に命中し警察官は亡くなった。
検視の結果、国境警察官の死因は銃弾だったことが確認されたにもかかわらず、 ザラバニさんは殺人容疑で起訴され、現在、少年施設で裁判を待っている。
この事件後、イスラエル軍はザラバニさんへの懲罰として両親と兄弟3人が暮らす シュアファトの自宅の取り壊しを命じた。イスラエルの人権団体ハモクドはこの命令に抗議する請願書を 提出したが、最高裁に却下された。

懲罰としての取り壊しは、違法な集団的懲罰の一形態である。 集団的懲罰は戦争犯罪であり、ジュネーヴ第4条約の重大な違反行為だ。
最高裁の判決は、国際法をないがしろにするイスラエルの姿勢が、あらゆる機関に浸透していることを示した。 また、最高裁がパレスチナ人に対するアパルトヘイトに加担しているということでもある。
少年の家族は襲撃のことを事前に知らされず、襲撃は少年の単独行動であることは、検察も認めている。 にもかかわらず、正義と法の支配とは無縁のイスラエルの報復で パレスチナ人家族は自宅を失いかねない事態に直面している。

一方、ムハンマドさんは未成年にもかかわらず勾留され、犯してもいない罪で長期間収監されるおそれがある。 被占領パレスチナ地域で懲罰的取り壊しがあれば、その後イスラエル軍が取り崩された家屋の近隣を襲撃し、 深刻な被害を引き起こす事態が繰り返されてきた。 家屋の取り崩しは社会全体に恐怖心を植え付けるため、 イスラエルによるパレスチナ人への抑圧と支配の一手段になっている。

背景情報
パレスチナ人がイスラエルの軍や民間人を襲撃し、あるいは襲撃した疑いがある場合、 そのパレスチナ人家族はイスラエル当局から懲罰として自宅を取り壊される。
イスラエルの最高裁はパレスチナ人の犯罪を抑止するとして、ほとんどの取り壊し命令を認めてきた。
2005年、襲撃を抑止する効果がないと判断したイスラエル軍事委員会の勧告に基づき、 懲罰的取り壊しは停止された。しかし、取り壊しは2014年に再開され、 それ以来何百人ものパレスチナ人が家を失ってきた。

2023年8月25日 アムネスティ国際ニュース

パレスチナ旗の公共の場での掲揚制限を強化するイスラエル政府
  〜国籍、表現の自由、平和的集会の権利侵害〜
イタマル・ベン・グヴィル国家安全保障相は1月8日、警察に発令した指令で パレスチナ旗をテロの象徴だとして公共の場から排除するよう命じた。
当局は、この指令には「政府に対する扇動を阻止する狙いがある」と言うが、 イスラエルはこれまで、反政府的意見を封じ込め、抗議活動を制限するなどの措置を 相次いで取ってきた。また、パレスチナ市民への弾圧を強め、 パレスチナ人活動家の逮捕や行政拘禁命令を頻繁に発令してきた。
イスラエル当局はパレスチナ人に対する人種差別と差別を正当化するために さまざまな措置を導入してきた。今回の指令もその一環であり、 「扇動を阻止する狙い」といくら言ったところで、アパルトヘイト体制に反対する人たちに対する 容赦ない攻撃であることは、隠せない。

市民的、政治的権利に関する国際規約の締約国であるイスラエルには、 国内の全市民の表現と集会の自由の権利を保障する義務がある。 イスラエルはまた、国家的、人種的、宗教的憎悪の唱道による 差別、敵意、暴力の扇動を禁止する義務を負っている。
パレスチナ旗を公共の場で掲げる行為を制限することは、 国際規約の締約国としての義務を無視している。
何十年もの間、パレスチナの旗はパレスチナ人にとってイスラエルの違法な占領に対する 団結と抵抗の象徴であり、世界中でパレスチナ人の連帯の象徴として使用されてきた。
今回の命令自体が人種的憎悪の炎に油を注ぎ、分断を生んでいるにもかかわらず、 イスラエル当局が扇動を理由に指令を正当化するのは滑稽でしかない。
イスラエルは、アパルトヘイト体制の中で数多くの政策を打ち出してきた。 いずれの政策も、パレスチナ人の存在を小さくしてできるだけ見えないものととなるようにし、 パレスチナ人の声を封じる狙いがあった。

制限の歴史
イスラエルは長い間、パレスチナ旗を掲げる行為を規制してきた。旗の掲揚は違法ではないが、 当局が社会の秩序を脅かすと判断すれば旗を排除することができる。
1967年にパレスチナ地域を占領したイスラエルは、その後パレスチナ人が政治的テーマで行う10人以上の 行進、集会、追悼行事などに許可を求め、許可なく実施すれば、処罰する軍令を発令した。
ここでの「政治的」とは何か、その説明がないこの軍令後、 抗議行動は平和的なものも含め事実上禁止されてきた。 また、軍の許可なく旗や紋章の掲示、政治的意図があるとみなされる書物の出版が禁止された。

昨年5月、イスラエル軍に殺害されたパレスチナ系米国人記者シリーン・アブ・アクレさんを 悼む行列に多数のパレスチナ人が参加する中、警察は参列者からパレスチナの旗を没収した。 昨年6月には、国営施設でのパレスチナ旗の掲揚を禁止する法案が予備審査を通過している。

2023年1月11日 アムネスティ国際ニュース

終わりなき収容 入管法改悪の動きに声を上げる移住者
入管法改定案に反対し、衆議院可決に抗議します

入管法改定案が、通常国会に提出され、5月9日、衆議院で可決されました。 衆議院採決に抗議し、まもなく開始される参議院において廃案とすることを求めます。

人道に反し、一昨年廃案になった入管法改定案

本法案は、政府が2021年の通常国会で廃案になった入管法改定案と、 ほぼ同じ内容であり、衆議院で行われた一部修正を経ても、 多くの人の命や人権を脅かす、以下の重大な問題を含んでいます。

・低い難民認定率に改善策をとらない一方、難民申請者の送還を可能にし、 迫害を受ける恐れがあ るのに難民を本国に送り返す。
・送還忌避罪を創設し、帰国できない事情があるため在留を希望する人に刑罰を加える。
・監理措置制度により、在留資格のない外国人の監視を支援者らが 引き受けない限り解放せず、無 期限の長期収容制度を存続させる。
・在留特別許可制度の縮小と、問題のある判断要素の法定で、同制度による救済を狭める。

これらの問題点を、国連人権理事会の、移民の人権に関する特別報告者、 恣意的拘禁作業部会、宗教または信条の自由に関する特別報告者らによる 日本政府宛共同書簡(4月18日付)も指摘し、法案の見直しを求めました。
国際法・政治思想・社会学等の研究者425 人も、4月17日付で反対声明を発表しました。 衆院法務委員会における可決に対し、多数の新聞社説が批判をし、また私たちが呼びかけ、 実施中の反対署名には、5月8日時点で198,557 筆という多数が寄せられ、 2年前にもまして市民の批判の声が広がっています。

審議でも問題点が明らか

衆議院法務委員会の審議でも、2021年3月に名古屋入管に収容されていた女性ウィシュマさんが 亡くなった重大な事態について、あたかも再発防止に資する法案であるかのような 説明をしていた政府委員も、「監理措置」制度の下でもウィシュマさんが 解放されていたかどうか判らないとしか答えられませんでした。

難民の保護についても、3回目の難民認定申請の審査請求で難民認定された例が あることが明らかになり、3回目以降の申請者の送還を可能とする法案の危険性があらためて指摘されています。
さらに、入管庁の法案資料「現行入管法の課題」で、2021年4月21日に行われた衆議院法務委員会における 参考人となった難民審査参与員の1人が、約2000件について対面で聞き取りをしたと述べた上 「難民の認定率が低いというのは、分母である申請者の中に難民がほとんどいないということを、 皆様、是非御理解ください。」と発言したことを引用して、難民認定率の低さを正当化していました。
しかしながら、2023年4月21日に衆議院法務委員会に参考人として出席した2名の現役難民審査参与員は、 いずれも年間処理件数50 件程度と述べていました。参与員制度は2005 年に施行されました。 2021年までの16年間時点で2000件を担当したということは、平均すると年間125件、他の参与員の2.5 倍です。 あまりに不自然であり、少なくともこのような件数の対面聞取りによる慎重審査は不可能です。
2回目までの難民認定申請がずさんな処理をされているのであれば、 送還停止効の制限が難民にとって危険であることが、さらに明らかです。

犠牲を繰り返さないために、さらに多くの反対の声を

与野党間でなされる修正協議のように、政治に譲歩は必要なこともありますが、 人権が蹂躙されるのを前にして、譲歩の余地があるのでしょうか。 人権が侵害されている人たちにとって、さらに侵害しようとする入管庁への 譲歩とは何を意味するのでしょうか。人権条約に違反している政府との間で譲歩することは、 日本にとって何を意味するのでしょうか。
移民、難民の人たちに対する非人道的な政策はやめさせるべきであり、 まして悪化を許すべきではありません。
私たちは、引き続き、入管法改定案の成立に反対します。 非人道的な収容による犠牲を繰り返させず、苦境にある難民等の人たちの排除をさせないために、 さらに多くの市民の皆さんに、私たちと共に法案に反対してくれるよう呼びかけます。
2023年5月9日

公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
特定非営利活動法人移住者と連帯する全国ネットワーク
全国難民弁護団連絡会議
日本カトリック難民移住移動者委員会
入管問題調査会
全件収容主義と闘う弁護士の会 ハマースミスの誓い
特定非営利活動法人 ヒューマンライツ・ナウ

終わりなき収容 入管法改悪の動きに声を上げる移住者
日本政府が、国会に提出した「出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案」には、 当局が移民らを無期限に収容する権限を強化する抑圧的な内容が含まれ、 庇護希望者などから日本の出入国管理制度が抱える非人道性を批判する声が上がっている。

今回、アムネスティ・インターナショナルは数年間も収容されている人を含む、 30人あまりの移民や庇護希望者に聞き取りを実施した。その証言から、 入管収容の過酷な状況や当局の対応の中で、被収容者の中にはハンガーストライキや 自死に追い込まれている人たちがいる実態が明らかになった。

国会では移民の権利を侵害する入管法改正法案の手続きが始まっている。 「移民や庇護希望者の証言は、日本の難民申請に関わる過酷な現実を浮き彫りにしている。 彼らが語るのは、必要な時に誰からも支援を得られず、 監獄のような入管施設での恣意的で終わりの見えない収容の実態だ」と

アムネスティ日本の中川英明事務局長は言う。
「日本の入管収容制度に改革が必要なのは明らかであるにも関わらず、 当局は庇護希望者や非正規移民の収容を可能にする改正法案の成立に向けて動いている」

2度目の改正法案提出
日本政府は、庇護を求めて入国した人や入国後に庇護を求めようとする人を含む 非正規移民を無期限に収容することを可能にする入管法改正法案を国会に再提出する予定だ。 同法案では、恣意的で国際法違反となる収容を前提とする現行の入管法の根幹が維持されている。
政府は2021年2月に改正法案を国会に提出したが、 その翌月、スリランカ国籍の庇護希望者ウィシュマ・サンダマリさん(当時33)が 入管施設内で亡くなったことに対する世間の激しい非難を受け、法案を取り下げた。
ウィシュマさんは繰り返し痛みを訴えていたにも関わらず、治療を受けられなかった。 医者の診察を求めて何度も申請書を提出し、仮放免を求めた。 最後に提出した申請書の文字は判読が困難なほどだった。
2022年8月に入管が実施した内部調査で、職員は仮放免を求めるウィシュマさんの嘆願を 黙殺していたことが発覚した。また、職員はウィシュマさんが外に出たいがために 仮病を使っていると考えていたことも明らかになっている。 さらに、職員はウィシュマさんに「自分の置かれている状況を理解させるため」として、 仮放免の申請を意図的に却下したことも判明している。
同法案は6月までの今国会の会期中、いつ通過してもおかしくない状況にある。

アムネスティ・インターナショナルは、現在収容中、あるいは過去に入管施設に収容された経験を 持つ人たちを対象とする聞き取り調査を2022年10月から11月にかけて実施した。 また、法務省管轄の出入国在留管理庁(入管庁)の職員や入管収容の問題に取り組むNGOの関係者にも話を聞いた
これらの聞き取りを通じて、恣意的かつ無期限の収容や、暴行、独居拘禁、 不適切な医療など入管職員による不当な扱いなど、被収容者に対する人権侵害事例が確認された。
日本の難民認定率はG20加盟国でも際立って低い水準にあり、2021年に認められた事例はわずか74件に留まっている。 この年には1万件以上の申請が却下されており、認定率は1%未満とみられる。

庇護の拒否 自由のはく奪
聞き取りでは、被収容者の口から「懲罰」という言葉が何度も聞かれた。 入管施設では、職員が「問題を起こした」被収容者に「懲罰」を与えることが常態化しており、 中には独房に監禁されることもあるという。
ネパール人の元被収容者は、職員から身体的な虐待を受け「懲罰室」に放り込まれたと証言する。 運動中だった当人が運動を中断して職員の話を聞かなかった、というのがその理由だという。 「何十人もの職員がやって来て、私を殴ったり平手でぶったりし、隔離室に連れ行かれた。 その後の記憶はないが、気が付いた時には6時間が過ぎていた。 また、医療や食事の対応がひどいと言っただけで何度も隔離された」

入管はウィシュマさんが亡くなってからは医療体制の改善に努めていると言うが、 アムネスティが行った一連の聞き取りでは、ウィシュマさんの件に関する調査後も 医療面での対応に改善があったと感じている人は1人もいなかった。
ソマリア出身の男性は次のように語る。「朝起きた瞬間から私たちは動物のような扱いを受ける。 勉強したり学んだりする機会はないし、何もすることがない。あそこにいれば洗脳されてしまう」

ハンガーストライキと自殺未遂
収容施設から解放される方法は限られているが、その一つに期限付きの「仮放免」と呼ばれる措置がある。 だが、仮放免が認められるのは稀であり、そもそもその要件に関する明確な基準がないため、 認定プロセスは職員の裁量次第となっている。
たとえ仮放免されたとしても、財政的な支援を受けたり仕事に就いたりすることができず、 医療保険など公的支援を得ることもできない。その結果、基本的な権利を享受することすらできない。 にもかかわらず、被収容者は仮放免を求めて極端な行動に出ることもある。
「入管収容施設を出る唯一の方法は、病気になるか餓死寸前までハンガーストライキを続けるかしかない。 ただ、仮放免を認められても外にいることができるのは2週間だけで、 その間に病気を治さないといけない」と被収容者は語る。 入管庁は「この5年で餓死したのは1人だけだ」と話す。

今回聞き取りをした被収容者や元被収容者の中には、自殺未遂を目にしたという人が複数いた。 被収容者の1人は、「自分の喉を切って死のうとしていた人がいたし、 洗剤を飲んで死のうとした人もいた」と語った。 他にも首を吊る、自分の首を絞める、大量の薬を摂取して自殺を図るなどの目撃談があった。 聞き取りに応じた1人は、自らも自殺を図ったことがあると話した。
2022年11月18日には、東京出入国在留管理局に収容中の50代のイタリア人男性が テレビのコードで首を吊って亡くなった。仮放免許可が取り消され、再収容された直後のことだった。
アムネスティの調査によれば、2007年以降、入管施設で亡くなった被収容者は17人で、 そのうち自死と見られるのは本件で6例目になる。 「こうした証言からも、日本政府が入管施設への一律収容、長期収容を廃止すべきなのは自明だ。 収容する場合でも、その期間は可能な限り短期間で、 残虐で非人道的または品位を傷つけるような取り扱いをしてはならない」 (アムネスティ・インターナショナル日本・中川英明事務局長)
「収容の要件やその法的根拠、収容期間に異議を唱える権利を被収容者に与えるべきであり、 収容中は適切で迅速な医療を提供しなければならない。 今回、政府が提出した改正法案は、こうした点をすべて素通りしている。 即刻廃案とし、庇護希望者や非正規移民の尊厳が保たれるような内容の法案に差し替えるべきだ」
背景情報
国際人権法に基づき、移民、難民、庇護希望者は自由であるという法的推定を受けなければならない。 仮に被収容者の自由を奪うのであれば、その行為は法律で明確に規定され、 正当な目的により厳格に正当化され、必要かつ妥当で、非差別的なものでなければならない。
国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会は、出入国管理上の無期限の収容は 市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)に違反するとしている。 また、現在の日本の収容方針は恣意的拘禁にあたり、 司法審査の機会が与えられていないことは自由権規約に違反するともしている。

2023年3月14日 アムネスティ国際ニュース

グアンタナモ収容所閉鎖を
現在(2023年1月)、アムネスティアメリカ支部は、グアンタナモ収容所の問題を下記のように訴えて、 閉鎖をバイデン大統領に求める署名アクションを行っています。

「グアンタナモ湾の軍事拘禁施設は、米国の人権記録に対する明白で長年の汚点です。 今日、35人のイスラム教徒の男性を拘束し続けており、ほとんどが起訴や裁判に直面することはありません。
トフィク・アル・ビハニのように、多くは米国政府によって拷問を受けました。 そして、トフィクは、他の19人の被拘禁者とともに、他の国への移送を許可されたが、 起訴も裁判もないまま投獄されていました。
バイデン大統領は、任期満了前に拘置所を閉鎖することにより、 これらの進行中の虐待を終わらせる重要な機会を持っています。
グアンタナモを閉鎖し、すべての被拘禁者を人権が尊重される国に移送することにご協力ください。 今すぐ行動して、バイデン大統領にグアンタナモ湾の拘留施設を閉鎖するように伝えてください!」



イラン軍幹部 抗議デモに「容赦ない対応」
「ヒジャブ」(頭を覆う布)の着用が不適切だとして逮捕された女性の拘束中の死に抗議の声が上がる中、 軍上層部が全州の軍司令官に、デモ隊には「容赦ない対応を取れ」と指示していることがわかった。 アムネスティが入手した内部文書には、抗議する市民の排除に手段を選ぶなという方針が記されていた。
内部文書を詳細に分析したところ、イラン当局は革命防衛隊、民兵組織バシジ、法執行司令部、 機動隊、私服警官などを投入して抗議デモの徹底鎮圧を図っていることが明らかになった。 また、治安部隊がデモ参加者を殺傷する意図を持って殺傷力の高い武器や実弾を各地で使っていたこともわかっている。 こうした弾圧により、9月25日時点で少なくとも52人が死亡し、数百人が負傷している。
当局による違法な殺害が罪に問われない事態が続く中、暴力的鎮圧で子どもを含む男女多数が当局の犠牲になった。 いずれの犠牲者も治安部隊の脅威になるような行動を取っていなかったことは、 アムネティが入手した証言や画像から明らかだった。
国際社会は、イラン当局を非難する声明を出すだけでなく、断固とした協調行動を取る必要がある。 さもなければ、声を上げる市民への暴行や拷問、投獄、殺害が、さらに増えることになる。 軍がデモ鎮圧に手段を選ばない方針を出している中、国際機関が独立した立場でイラン当局による暴力を調査し、 責任を追及する体制が必要であることが浮き彫りになった。

国による隠蔽工作
入手した文書によると、軍総司令部が全州の司令官に、「問題を起こす連中や反革命市民には、 容赦ない対応を取れ」と命じたのは9月21日だった。同日夜、各地で抗議する市民に殺傷力の高い武器が使用され、 子どもを含む男女多数が犠牲になった。
アムネスティは、9月19日から9月25日までの1週間に殺害された少なくとも子ども5人、 女性5人を含む52人の名前を確認した。実際にはこれらの人数よりはるかに多いとみられ、 アムネスティは犠牲者の特定を続けていくつもりだ。
アムネスティが確認した写真や動画から、ほとんどの犠牲者は治安部隊の銃弾に倒れたことがわかる。 イラン当局は、責任を逃れるために犠牲者は「暴力的な人物」だと説明したり、「 暴徒に殺された」と主張したりするなど虚偽の説明を繰り返した。
また、犠牲者の家族を脅したり、金銭的補償を約束したりして、最愛の身内の死の責任はイランの「敵」のために働く 「暴徒」にあるなどと説明する動画を録画するよう、強要している。

デモ参加者への拷問
デモ参加者やデモの見物人らが、治安部隊から暴行や不当な扱いを受けていることも アムネスティの調べでわかっている。また、抗議の意思を示すためにヒジャブを脱いだ女性たちが、 治安隊員に胸を掴まれたり、髪の毛を引っ張られたりするなど、 ジェンダーに基づく暴力を受けている事態も確認されている。

9月28日、デモ参加者の一人はアムネスティにこう話した。
「デモに参加して殴られている人たちがいた。 友人の話では、女性が髪を掴まれて地面を引きずられた。服ははだけていた。 2日前には、数人の友人が警官に罵られながら警棒で殴られ、また脚にあざが残るほどの 暴力を受けた女友だちが、脚を撃たれそうになったときに別の警官の制止で難を逃れるということがあった」
映像や記事から一部のデモに暴力行為があったことは事実だが、 かといって当局による殺傷武器の使用が正当化されるわけではない。
国際人権法・基準は、一部の抗議者が暴力に及んだとしても法執行機関は、 抗議する人たちが、治安部隊による不当な妨害や脅迫を受けないようにしなければならないと定めている。
限定的暴力に対する武器の使用は、国際法が定める合法性、必要性、相応性の原則に 例外なく従わなければならない。治安当局に銃器の使用が許されるのは、 差し迫った身の危険から自身や他人を守る場合で、 殺傷力に欠ける武器では身の安全を確保できない場合のみに限定される。

2022年9月30日 アムネスティ国際ニュース


難民・移民を拘束し帰国を強要
ラトビア当局は、ベラルーシとの国境で難民・移民を森の中の非公開の場所で拘束し、 暴力的に押し戻している。殴打や電気ショックを加えられた人、「自主的」に帰国させられた人もいる。 アムネスティはラトビア当局による難民・移民の残酷な扱いを調査し明らかにした。
難民・移民は「自主的」な帰国を受け入れるか、拘束・拷問のおそれのある国境で 立ち往生するかという究極の選択を突き付けられている。
男性、女性、子どもが国境沿いの凍えるような寒さの森に放置され、テント生活を強いられたりしている。 暴力的にベラルーシに戻されるが、そこでの庇護は望めない。国際法、EU法を無視した行為だ。
昨年8月10日、 ラトビア政府はベラルーシにより国境に行くよう促された 難民・移民の急増を受け、非常事態宣言を出した。
非常事態で、EU法、国際法、迫害の危険がある国への送還を禁止するノン・ルフールマンの原則に反して、 国境沿いの4カ所での庇護を求める権利が停止され、 ラトビア当局は人びとを強制的にベラルーシに戻すことが可能になった。
時間の経過とともに移動が減少し、件数には何度も入国を試みる人が含まれていると 当局自ら認めているにもかかわらず、非常事態宣言は何度も延長されている。 最新の延長で、非常事態は現在2022年11月まで続く。
何十人もの難民・移民が不衛生な環境の中、国境のテントで拘束されている。 ごく一部の人は入国を認められたが、大多数は収容施設に入れられ、 庇護申請手続き、法的支援、独立した機関などとの接触はほとんど認められていない。

強引な押し戻し、拘束、強制失踪
非常事態宣言下で国境警備隊は、特殊部隊、軍、警察の協力を得て難民・移民に対し、 違法で手荒い強制送還を繰り返してきた。そして隣国のベラルーシ政府は、 彼らをラトビアに押し戻している。
約3カ月間国境で足止めをされたイラク人男性のザキさんは、 「これまでに150回以上、時には1日に8回も押し戻されたことがあった」とアムネスティに話した。
5カ月間を国境付近で過ごしたイラク人のハッサンさんは、 「裸にさせられて殴られた。ベラルーシに戻される途中、 冷水の川を渡らされた。『渡らないと撃ち殺す』と脅された」と話す。
両国による押し付け合いの被害にあった人たちは国境で野宿するか、 森の中に当局が設置したテントで長期間の生活を強いられた。 ラトビア当局はこれまで、「人道支援」目的以外でのテントの使用を否定してきたが、 厳重な警備下のテントは、拘束した難民・移民を収容し帰国させるための前哨基地として 使用されてきたことが、アムネスティの調べでわかっている。
テントに収容されずに国境で足止めさせた人たちは、冬はマイナス20度にもなる野外での生活を強いられた。 森で数カ月間過ごしたイラク人男性アディルさんは、 「雪の上で寝た。火をつけて暖をとった。オオカミやクマも出た」と話した。
国境沿やテントでは、外部と連絡がとれないよう携帯電話を没収された。 ラトビアのNGOは、2021年8月から11月にかけて、移民や難民30人以上の親族から、 彼らと連絡がとれなくなったという報告を受けた。
通信手段などを奪って非公開の場所のテントに拘束したり、 国境で足止めしてラトビアとベラルーシの間を行き来させるのは、 「秘密拘束」に当たり、強制失踪に相当する可能性がある。
強制送還、虐待、拷問
非常事態下で庇護手続きが取れない中、国境で拘束されている一部の人たちは、 ラトビア当局の者たちから、森を出る唯一の方法として出身国に 「自主的」に戻ることに同意するよう強要されている。 また、収容施設や警察署で強制的にあるいは騙されて自主帰還を受け入れさせられた人もいる。
イラク人のハッサンさんは国境警備隊員に、「国に戻れば命を狙われるおそれがある」と説明したが、 「ここにいても死ぬかもしれないぞ」と言われたという。 イラク人のオマールさんは、「殴られて手を握られて無理やり書類にサインさせられた」と話した。
欧州連合(EU)は、ベラルーシがEU側に難民・移民を送り込み、 ロシアを後ろ盾とした軍事と非軍事両面での圧力をかける「ハイブリッド攻撃」を仕掛けていると主張する。 ラトビアだけでなく、リトアニアとポーランドも、この「ハイブリッド攻撃」を口実に、 難民・移民に対し人権侵害を続けている。
国境に到着した人びとに対しするラトビアの恥ずべき行いへの対応は、欧州機関にとって大きな試金石となる。 欧州機関はラトビアが非常事態を終わらせ、安全を求めるすべての人びとが、 出身地や国境を越えた方法を問わず、庇護を求める権利を復活させるよう緊急措置を取らなければならない。
背景情報
ベラルーシとラトビア、リトアニア、ポーランドとの国境での押し付け合いが再び激化する中、 EU理事会は、ラトビアが主張しているように難民・移民が「道具として使われている事態」に 関する規則の採択を優先する意向だ。この規則が採択されれば、こうした状況に直面する加盟国は、 EUの庇護法、移民法の下での義務が免除される一方で、難民・移民の権利が影響を受け、 EUの庇護法が統一的に適用されなくなる危険性がある。
リトアニアでは、非常事態下での難民申請の制限や非正規入国者の機械的拘束を認める新法が導入された。
これに対して欧州司法裁判所はこの6月、リトアニアの新法はEU法と相容れないという判決を下した。 この判断は、昨年8月の非常事態宣言以来、ベラルーシから非正規に入国した人びとの庇護手続きを 事実上阻止しているラトビアにも適用されるべきだ。

2022年10月12日 アムネスティ国際ニュース


イスラエル軍によるパレスチナNGO弾圧
イスラエル治安部隊は8月18日、被占領パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区の ラマッラーにある7つのNGOの事務所を封鎖した。 当局は、パレスチナ市民団体への弾圧をやめ、団体が嫌がらせを受けることなく 活動できるようにしなければならない。

7団体は、アッダミール囚人支援・人権協会、アル・ハック(人権団体) 、国際児童防衛協会パレスチナ、農業労働委員会連合、 ビサン研究開発センター、保健活動委員会、パレスチナ女性委員会連合で、 18日の夜明け前、軍の急襲を受け書類や機材を没収され、 軍令に基づいて事務所の出入り口が封鎖された。
これらの団体は、被占領パレスチナ地域にとどまらず世界の人権に多大な貢献をしてきたが、 今回の急襲でその活動が踏みにじられる形となった。

アムネスティは、仲間であるこれらのNGOと連帯するとともに、 世界各国に今回のイスラエルの対応を厳しく非難するよう求める。 団体の事務所再開、国際刑事裁判所によるパレスチナ状況の調査への支持、 パレスチナ人に対するイスラエルのアパルトヘイト政策への非難などで、 国際社会は協調行動を取る必要がある。

アムネスティは7団体のうちの3団体に話を聞いたが、 いずれの団体も急襲と閉鎖に動揺を隠せない様子だった。
国際児童防衛パレスチナの事務局長は、 「占領軍は人権を守る私たちの声を封じようとしてきたがうまくいっていない。 軍が適用するのは人権法ではなく軍の法律だ。 今回の急襲で、イスラエルがEUや国際社会の見解を拒否し、 占領と人権侵害の維持に躍起になっていることがわかる」と語った。
アムネスティは3団体の事務所に貼られた軍令を検証した。
事務所閉鎖命令は、国防(緊急)規則に基づくものだった。 統治に対する抵抗の封殺を狙った英国が1964年に定めたこの規則は、 これまで廃止されることがなかった。1967年以降、イスラエル軍はこの規則を広く適用し、 数百軒ものパレスチナ人の家屋を取り壊し、住人を追い出し、 数万人を起訴や裁判なしの行政拘禁に処してきた。

一連の対応は、第4ジュネーブ条約と人権条約に違反し、 パレスチナ人を抑圧するアパルトヘイトの手段の一つになっている。
アムネスティは各国に、イスラエルが国内や被占領地域のパレスチナ人に対し アパルトヘイトなどの犯罪を行っている事実を確認するよう呼びかけている。 各国は、イスラエルとの協定に人権への配慮が盛り込まれているかを確認し、 アパルトヘイトに加担しないよう適切な評価と判断をする必要がある。

背景情報
イスラエル国防省は昨年10月19日、保健活動委員会を除く6団体を「テロリスト団体」に指定する軍令を発した。 その結果、6団体は事実上活動ができなくなり、事務所閉鎖や資産押収、職員の逮捕・投獄などに直面した。 また、公の場での支持の訴えや団体への資金提供も禁止された。
この対応でイスラエルは、国際NGO、欧州などの国の機関や代表、国連の専門家など多数から非難を受けている。
昨年10月、人権NGO「フロントライン・ディフェンダーズ」の調査と、 シチズン・ラボとアムネスティによる検証で、 今回摘発された団体に所属する人権活動家らが所持していた6つの機器が、 イスラエル製のスパイウェア「ペガサス」でハッキングされていたことがわかっている。

昨年10月18日、パレスチナの囚人の権利擁護団体アッダミールの弁護士は、 「イスラエルへの忠誠を破った」とみなされたとされ、エルサレムでの居住権をはく奪された。 国外追放を受けるおそれもある。
同弁護士は、今年3月7日から起訴も裁判もないまま行政拘禁されており、 アムネスティは、同氏の釈放を求めている。

2022年8月18日 アムネスティ国際ニュース


ウクライナ軍の戦闘戦術のプレスリリースに関する声明
アムネスティ・インターナショナルは、ウクライナ軍の戦闘戦術に関するプレスリリースが 苦痛や怒りを引き起こしたことについて、深い遺憾の意を表明します。

2022年2月のロシア軍の軍事侵攻以来、アムネスティは、ウクライナで行われた戦争犯罪や 人権侵害について徹底的に調査し報告してきました。 数百人の被害者から聞いた話は、ロシアの侵略戦争が引き起こしている 残忍な現実を浮き彫りにするものでした。
私たちは、具体的な行動を通じてウクライナの人びととの連帯を示すよう世界に呼びかけており、 今後もそうする所存です。

アムネスティにとって、今回の紛争もそしていかなる紛争も、民間人の保護が優先事項であり、 今回の調査結果の公表の唯一の目的も、この点にあります。
調査で確認した事実が揺らぐことはありませんが、苦痛を引き起こしたことに 遺憾の意を表すとともに、この機会にいくつかの重要な点を明確にさせていただきます。

プレスリリースでは、アムネスティが訪れた19の町や村のすべてで、 民間人が暮らす場所のすぐそばにウクライナ軍が位置し、 その結果、民間人がロシア軍の攻撃を受ける危険にさらされていることを指摘しました。
この評価は、国際人道法の規定に基づきます。 国際人道法は、すべての紛争当事者に対し人口密集地やその近隣に軍事目標を置くことを 極力避けるよう求めています。戦争に関する国際法の目的の一つは、民間人の保護です。 だからアムネスティは各国政府にその遵守を求めているのです。

これは、ロシア軍の違法行為の責任がウクライナ軍にあるということではありません。 ウクライナ軍が国内の他地域で十分な予防策を取っていないということでもありません。
アムネスティの立場は明確です。アムネスティが把握したウクライナ軍のいかなる行為も ロシア軍の違法行為を正当化するものではありません。 ロシア軍によるウクライナ市民に対する人権侵害行為の責任は、 すべてロシア側にあります。過去6カ月間のアムネスティの活動、 ロシアの違法行為や戦争犯罪に関する多数の発表文書は、 違法行為の規模やその市民への影響の重大さを物語っています。

アムネスティは7月29日、ウクライナ政府に、今回の調査結果を 詳細に記した書簡を送付しました。
書簡には、ウクライナ軍が民間人の居住地域に軍事拠点を置く 学校や病院などの場所についての、GPSの座標やその他の機密情報も含まれています。
この情報をプレスリリースの中で公表しなかったのは、 ウクライナ軍と聞き取りをした市民の双方の安全を脅かすからです。

アムネスティは、ウクライナ軍が取るべき作戦について詳細な指示を出するつもりはありません。 しかし関係当局には国際人道法を全面的に遵守するよう求めます。

アムネスティは、紛争時の民間人の生命と人権の保護が保障されることを、常に優先します。

2022年8月7日 アムネスティ国際ニュース

ウクラナイ調査報告
〜学校や病院を含む住宅地に軍事拠点を設置〜
ウクライナ軍は、ロシア軍の侵攻撃退にあたって、人口の多い住宅地に拠点を設置し攻撃を行うことで、 民間人を危険にさらしている。学校内や病院内に拠点を置いた事例もある。
こうした戦術は国際人道法違反であり、民用物を軍事目標にしてしまうため、 民間人を危険にさらすことになる。現実にロシア軍による人口密集地への攻撃では民間人が犠牲となり、 民間のインフラが破壊されている。
防衛的立場にあるからといって、ウクライナ軍が国際人道法の尊重を免れるわけではない。
ただし、アムネスティが確認したロシアの攻撃がすべてこのパターンに当てはまるわけではない。 アムネスティがロシアによる戦争犯罪だと結論づけた他の地域(ハルキウ市の一部地域含む) での攻撃では、ロシア軍が違法に標的とした市街地にウクライナ軍がいたことを示す根拠はなかった。

アムネスティの調査員は4月から7月までの数週間にわたり、 ハリキウ、ドンバス、ミコライウでのロシアの空爆を調べた。 空爆を受けた地域を視察し、生存者、目撃者、犠牲者の親族に聞き取りをし、 リモートセンシングによる分析や武器の分析を行った。
これらの一連の調査の中で、ウクライナ軍が19の町や村で、人口が密集する住宅街に拠点を置き、 攻撃を行った証拠を得た。これらの証拠のいくつかについては、衛星画像の分析で裏付けを取った。
ウクライナ兵が拠点を置いた住宅街の多くは、前線から何キロも離れていた。 民間人を危険にさらさずに拠点として利用できる場所は、他にもあった。 例えば、近くの軍事基地や密集した森林地帯、あるいは住宅地からさらに 離れた場所にある他の建造物などだ。
アムネスティの調査では、住宅地の建物に拠点を置いたウクライナ軍が、 市民に近くの建物から退避するよう求め、 あるいは退避を支援した事実を確認することはできなかった。

民間人居住地域からの攻撃
ドンバス、ハルキウ、ミコライウへのロシア軍の空爆を受けた人たちの話では、 空爆の前後に自宅近くでウクライナ軍が活動し、 一帯をロシア軍からの報復攻撃にさらすことになったという。 アムネスティは、多くの地域でも同様の証言を得ている。
国際人道法は、すべての紛争当事者に対し人口密集地やその近隣に軍事目標を設置することを 可能な限り避けるよう求めている。また、民間人を保護する義務として、 軍事目標付近から民間人を排除すること、民間人に影響を与える可能性のある攻撃について 効果的に警告することなどを定めている。

ミコライウ南部の村で6月10日にロケット弾攻撃を受けて犠牲になった男性(50歳)の母親は アムネスティにこう語った。
「わが家の隣には軍が駐留していて、息子はよく兵士に食べ物を持って行っていった。 息子のことが気がかりだったので、兵士に他の場所に移動するよう何度も頼んだ。 その日の午後、空爆があり、庭にいた息子が犠牲になった。息子の体はずたずたに引き裂かれていた」 この家の隣家には軍の装備や制服が残っていたことを、アムネスティの調査員は、確認した。

リシチャンスク(ドンバス)は、ロシア軍から何度も攻撃を受け、少なくとも1人が犠牲になった。 リシチャンスクにあるマンションに住むミコラさんは、 「なぜウクライナ軍は戦場ではなく街から砲撃するのかがわからない」とアムネスティに話した。
別の男性(50歳)は「近隣で軍事活動が行われているのは間違いない。 発砲音の後には、着弾の音が聞こえる」と話した。
アムネスティの調査員は、犠牲になった年配の男性が利用していた地下シェルターの 入り口から20メートルほど離れた住宅地にある建物を兵士が使っているのを目撃した。
ドンバスのある町で5月6日、ウクライナ兵が砲撃に使っていた民家の近所に ロシア軍のクラスター弾が落とされた。 クラスター弾は本質的に無差別攻撃を引き起こす武器であり、広く使用が禁止されている。 母親のアンナさん(70歳)と息子、祖母(90歳)3人の自宅は、 クラスター弾の子弾を受け複数の壁に損傷が入った。
アンナさんはアムネスティに語った。「破片がドアを突き破って飛んできた。 私は家の中にいた。ウクライナ軍の大砲は家の畑近くにあった。 紛争が始まったときから兵士たちは畑の裏や家の裏にいた。 出入りするのを見た。母の体は麻痺しているので逃げることができなかった」
7月上旬、ミコライウにある農業用倉庫がロシア軍の攻撃を受け、農業従事者1人が負傷した。 攻撃があった数時間後、アムネスティの調査員は、 穀物倉庫にウクライナ軍の兵士がおり軍車両があるのを見た。 また、目撃証言から、民間人が生活し働いている農場から道を隔てた所にある 倉庫を軍が使用していたこともわかった。
アムネスティの調査員は、ハルキウやドンバス、ミコライウの東にある住宅や 近隣の公共施設の被害を調べている最中に、近くのウクライナ軍拠点から発射音を聞いた。
バフムートでは複数の住民が、ウクライナ軍は高層住宅から通りを隔てて わずか20メートルほどの所にある建物を使っていたと、話した。 5月18日、ロシア軍のミサイルがこの高層住宅の正面部分を直撃し、 アパート5室がそれぞれ一部損壊し、近隣の建物も被害を受けた。
アパートの住民カトリーナさんがアムネスティに語った。 「何が起こったのかわからなかった。窓ガラスが割れ、家の中は埃でいっぱいになった。 母がここを離れたがらないのでここに残っていた。母は健康問題を抱えているから」
他の住民3人によると、攻撃を受ける前、ウクライナ軍は爆撃を受けた建物の 向かいの建物を使っており、ミサイル攻撃の被害を受けた別の家の前には 軍のトラック2台が止まっていたという。アムネスティの調査員は、 土嚢、窓を覆う黒ビニールシート、米国製の外傷用救急薬など、 建物の内外に軍がいたことを示す痕跡を発見した。
この攻撃で自宅が被害を受けた別の住民はアムネスティに 「軍が何をしようと私たちは何も言えない。だが代償を払っているのは私たちだ」と話した。

病院内の軍事拠点
アムネスティの調査員は、ウクライナ軍が5つの町で病院を 事実上の軍事拠点として使っていることも確認した。 そのうち2つの町では、兵士数十人が病院で休み、動き回り、食事をしていた。 別の町では、兵士が病院近くから攻撃していた。
ウクライナ軍はハリキウ郊外にある医学研究機関の敷地にも拠点を設けていたが、 4月28日、ロシアの空爆を受け研究機関の職員2人が負傷した。 病院を軍事利用することは、明らかに国際人道法に違反する。

学校内にも軍事基地
ウクライナ軍は、ドンバスやミコライウの町や村で学校にも拠点を置いている。
紛争開始以来、学校は閉鎖されていたが、ほとんどの学校は市民が住む住宅街に近いところにある。 アムネスティ調査員が訪れた29校のうち22校で、兵士が校内の敷地を使用している様子、 あるいは現在または過去の軍事活動の証拠(軍服、廃棄された弾薬、軍の配給品、軍用車両など)を目にした。
ロシア軍は、ウクライナ軍が使用していた学校の多くを攻撃した。 少なくとも3つの町では、ロシア軍による学校への砲撃を受けたウクライナ兵が 別の学校へ移動したため、移動した先の学校周辺の地域を同様の攻撃を受ける危険にさらした。

オデーサの東にある町では、市民が宿泊や移動の中継地として利用する所をウクライナ兵が使っていた。 住宅街にある樹木の下に装甲車を置き、人口が密集する地域の学校を利用するなどだ。 4月から6月下旬にかけロシア軍が学校付近を攻撃したことで、民間人数人が死傷した。 その中には、6月28日にロケット弾攻撃を受けた住宅に住む子ども1人と年配女性1人が含まれている。
バフムートでは、大学の建物を拠点としていたウクライナ軍が5月21日、 ロシア軍の攻撃を受け、兵士7人が死亡したと伝えられた。 アムネスティは、爆撃を受けた大学の建物の中庭で、軍用車両の残骸を確認した。 大学に近かった高層住宅も、50メートルほど離れたところにある住宅街とともに空爆の被害を受けた。

国際人道法は、授業が行われていない学校に戦闘拠点を置くことを特に禁じていない。 しかし、軍には、やむを得ない軍事的必要性がない限り、 民間人が多く住む住宅街やアパート近辺の学校を使用し住民の命を危険にさらすことを避ける義務がある。
どうしても使用する場合は、民間人に警告を発し、必要であれば退避を支援する必要がある。 アムネスティが調査した限りでは、警告や避難支援は確認できなかった。
武力紛争は子どもたちの教育を受ける権利を著しく損なう。 学校の軍事利用は建物の破壊につながり、紛争が終わっても子どもたちの学ぶ権利を奪うことになりかねない。 ウクライナは、武力紛争下で教育を保護する協定である「安全な学校宣言」に 署名・賛同した114カ国うちの一つである。 同宣言は、実現可能な代替手段がない場合においてのみ、放棄された、 あるいは生徒が避難した後の学校の利用を認めている。

ロシア軍による無差別攻撃
アムネスティの調査では、ロシア軍はここ数カ月間、多くの攻撃で、 国際的に禁止されているクラスター弾など無差別に殺傷し、 広範囲に影響を及ぼす爆弾を使用してきた。 また、さまざまなレベルの精度の誘導兵器を使い、 中には特定の対象を狙うことができるほど精度の高いもあった。

ウクライナ軍が人口密集地内に軍事拠点を置いていることは、 ロシアの無差別攻撃を決して正当化するものではない。 紛争当事者は、常に軍事目標と民用物を区別し、武器の選択を含め、 民間人への被害を最小限に抑える上でのあらゆる実行可能な予防措置を取る必要がある。 民間人を殺傷し、民用物を破壊する無差別攻撃は戦争犯罪にあたる。

ウクライナ政府は、軍を人口密集地から距離を置いた場所に移動させるか、 軍事活動地域からの民間人の退避を直ちに実行すべきだ。 軍は決して病院から攻撃をしてはならないし、同様に学校や民家の使用は、 代替手段がない場合の最後の手段でしかない。

アムネスティは、7月29日、ウクライナ国防省に今回の調査結果を送ったが、 記事公開時の8月4日時点で、同省から回答は得ていない。

2022年8月4日 アムネスティ国際ニュース

死刑執行に抗議声明
アムネスティ・インターナショナル日本は、日本政府が本日行った加藤智大さんの死刑執行に強く抗議します。
昨年の年の瀬、12月21日に古川禎久法務大臣の命令により死刑執行が行われたのは、 岸田内閣の政権発足後わずか1か月あまりのことでしたが、 積極的に死刑執行を続けるという日本政府の方針を例証するかのように、 本日、岸田政権で2回目となる死刑執行が行われました。
それとほぼ同時に林芳正外務大臣は、昨日行われたミャンマーでの4人の死刑執行に対して、 EU上級代表およびオーストラリア、カナダ、ニュージーランド、ノルウェー、韓国、英国、 米国の外務大臣と共に「人権と法の支配を軽視した暴力行為」だと非難する共同声明を発出しました。
ミャンマー軍政による死刑執行を外務大臣が非難するのと同時に、 同じ政府の法務大臣が死刑を執行するという矛盾は、外交では国際協調を理念として掲げ、 人権を守り抜くと言いながら、内政では人権を蔑ろにする岸田政権の姿勢の表れではないかとの 懸念を持たざるを得ません。

古川法務大臣は、歴代の法務大臣と同様に、死刑制度の存廃は我が国の刑事司法制度の 根幹に関わる重要な問題であり、国民世論に十分に配慮しつつ, 社会における正義の実現等の観点から慎重に検討すべき問題であると執行後の記者会見で述べました。
しかし、法務大臣が繰り返し強調する「慎重な態度」は制度によって裏付けされたものではありません。 国内法の内容が国際人権基準に反するものである場合に、 その法制度を改正すべく努力することは、政府、法務大臣および法務省に課せられた義務です。
成立の時点で国際人権基準に合致していた国内法であっても、 国際人権基準の進化に合わせた改正を行っていく必要があります。 日本政府は、国連の総会決議や人権理事会の普遍的定期審査によって、 また複数の国連人権機関から、死刑の執行停止と死刑廃止に向けた取り組みを行うよう、 繰り返し強く勧告されていることを忘れてはなりません。
国連の自由権規約委員会は「世論の動向にかかわりなく、締約国は死刑の廃止を考慮すべき」とし、 世論を口実として死刑廃止に向けた措置を一切とろうとしてこなかった日本政府の態度を強く批判しています。

死刑執行はすべての政府が遵守すべき国際人権基準を無視したものであり、 「人権という普遍的価値を守り抜く覚悟」を発足時に掲げた岸田内閣の基本方針とも矛盾するものです。 世界の7割以上の国が法律上あるいは事実上死刑を廃止しているという潮流に背を向け、 日本をますます孤立させることになるものといわざるをえません。

加藤智大さんは第二次再審請求中でした。再審請求中の死刑執行は自由権規約第6条に違反するものです。 国連自由権規約委員会の勧告に基づき、日本政府は再審あるいは恩赦の申請に執行停止効果を持たせたうえで、 死刑事件における義務的かつ効果的な再審査の制度を確立すべきです。

人為的に生命を奪う権利は、何人にも与えられておらず、どのような理由によっても正当化することはできません。 アムネスティは、あらゆる死刑に例外なく反対します。
死刑は生きる権利の侵害であり、残虐で非人道的かつ品位を傷つける刑罰です。 日本政府は、国際人権諸条約の締約国として、死刑にたよらない刑事司法制度を 構築する国際的な義務を負っています。アムネスティは、日本政府に対し、 死刑廃止に向けた第一歩を踏み出すために、死刑の執行停止措置の導入を 早急に法制化するようあらためて要請します。

2022年7月26日 アムネスティ・インターナショナル日本



難民を国境で追い返す
アムネスティはリトアニアのキバルタイとメディニカイにある収容所2カ所を訪ね、31人に話を聞いた。 カメルーン、コンゴ民主共和国、イラク、ナイジェリア、シリアなどから逃れてリトアニアに 入国し不当に拘束されている人たちだ。
その多くが、「不潔で医療も不十分な収容所で暴行や嫌がらせ、人種差別に基づく脅迫を受けている」と訴えた。 ヤジディ教徒の女性は、「イラクにいたときは、ヨーロッパの人権や女性の権利が尊重されると聞いていたのに、 ここではなんの権利もない」と嘆く。
庇護を求める人たちは誰しも公正な扱いを受けるべきだが、今回話を聞いた人たちは、 劣悪な施設に何カ月も収容され、虐待的な扱いを受けていると語る。 同国の移民制度に構造的な人種差別があるのではないかという懸念もある。 リトアニア当局は、収容者の拘束を解き、庇護を希望する人たちに公正な手続きの機会を与えるべきだ。

機械的に拘束し、庇護を拒否
昨年7月、ベラルーシ国境を超えてリトアニアに入国する人たちが増えたことを受け、 国会は違法入国者を機械的に拘束する新法を制定した。 恣意的な拘束を禁じるEUの法的保障を拘束者から奪いたいリトアニア当局は、 この機械的な拘束を「一時的な宿泊施設」と説明した。
非人道的な収容所
昨年9月まで刑務所だったキバルタイ収容所には、数百人の男性が収容されている。 周りは高い壁で囲まれ、窓には鉄格子がはまり、ドアには防犯装置が付いている。 収容者は施設内の移動も制限され、温かいシャワーは週2回しか利用できない。 施設内は収容者であふれ、何カ月も清掃されないため、 洗面所やトイレ、シャワーのいずれも不潔だ。
シリア人男性は、「リトアニアが受け入れてくれたことに感謝するが、 この扱いはひどい。周りは鉄条網だし、これでは刑務所同然で、難民施設とは言えない。 私は犯罪者ではない。避難民だ」と話した。
収容者への暴力
メディニカイ収容所には数百人が収容されているが、寝場所はサッカー場のコンテナ内だ。 トイレは外にあるため、冬なら雪の中を歩いてトイレへ行くことになる。 聞き取りをした人は、粗暴な係員に恐怖心を覚えると話した。
また、不当な拘束と劣悪な収容環境に抗議した収容者たちが「係員に警棒で殴られ、 唐辛子スプレーやスタンガンを向けられた」「手錠をかけられ、コンテナから引きずり出された」 「女性の中には、手を縛られ半裸の状態で極寒の戸外で性的屈辱を受けた」などと話した。
収容所に勤務する心理学者が、収容者に対し性暴力を加えた疑いで捜査を受けているという事例もあった。 また、主に黒人の男女らが、人種差別的な中傷を受けているという事例もある。 サハラ以南のアフリカから来た女性は、「お前を狩猟者の餌食として森に送ってやると脅されたし、 気分が悪い時に救急車を頼んでも、倒れて意識を失うまで呼んでくれなかった」などと話した。
難民申請手続きと法的支援制度の構造的欠陥
昨年8月、リトアニアは非正規入国者の難民申請受付を停止した。 それ以前に受けていた申請も反故にしかねなかった。 本来取るべき手続きを無視し、庇護申請に必要な情報収集を妨害し、しばしば通訳の提供もしなかった 同国がいう庇護希望者への法的支援制度は見せかけでしかない。 難民申請で代理人を務める弁護士の雇い主は、異議を申し立てる相手の移民局であり、 利益相反になるおそれがある。庇護申請をめぐるこのような不適切な体制は、庇護への障害を高くするだけだ。
今こそ、受け入れ体制の見直しを
リトアニア当局は最近、拘束期間について現在の12カ月の期限を超えることはないとの見解を示したが、 当局がこれまでに侵してきた違法行為にどう対応するのかはつまびらかにしていない。
緊急事態法や関連政策の導入から1年、同国は難民・移民の取り扱いを抜本的に見直す必要がある。 まずは、「一時的宿泊所」に拘束する人たちを直ちに解放し、庇護手続きを受けられるようにすべきだ。
さらに、心理的・身体的苦痛を味わった人たちが必要とする対応を取り、 虐待や暴力を加えた関係者を処罰しなければならない。 同時に2021年から2022年にかけて施行された有害な法律の廃止に向けた手続きを取るべきだ。
欧州の対応
欧州連合(EU)は、この数カ月の間に国外からの難民・移民の受け入れで、 2つの異なる対応を取ってきた。ウクライナ人は保護され庇護を受けられるのに、 他の国からの難民・移民は拘束され、劣悪な環境に置かれ、 人種的差別を受けるという結果になっている。
リトアニアが国境での押し戻し、機械的拘束、庇護の否定を合法化しようとしたとき、 欧州委員会内の反応は、賞賛から暗黙の承認までさまざまだった。 欧州委員会の幹部は欧州議会の議員に、「国境での押し戻しは明らかに違法だが、 押し戻しの確たる証拠はない」と語った。だが、実際にはその証拠は数多くあった。 アムネスティが今回公表した報告書でも、また、他の国際団体や地元団体が昨年来報告してきた文書でも 押し戻しを示す十二分な証拠を示している。
欧州司法裁判所はEU法違反と判断
6月30日、欧州司法裁判所は、非正規入国者の機械的拘束を命じ、 庇護を求める権利を事実上否定するリトアニアの国内法はEU法と相容れないという判決を下した。 庇護を求める権利を否定する慣行は、EU基本権憲章を含むEU法に違反しているとし、 「異常事態」や「外国人の大量流入」の際にはEU法を逸脱する権利があるというリトアニアの主張を覆したのだ。
この判決を受け、リトアニア当局は抑圧的な法律を直ちに撤廃すべきである。 リトアニアは、国際的な保護を受ける必要があると表明するすべての人に、 公正な庇護手続きが受けられるようにしなければならない。

2022年6月27日・6月30日 アムネスティ国際ニュース


女子学校再開認めず 生徒の将来を打ち砕く
3月23日、アフガニスタンの中等学校の女子生徒たちが、7カ月ぶりに教室に戻って来ていた。 待ちに待った授業の再開だ。だが、授業が始まるのを待っていた9時ごろ、 タリバンが、「アフガニスタンの慣例、文化、シャリア(イスラム法)に合った制服ができるまで、 女子学校を閉鎖する」と宣言し、女子生徒に帰宅するよう命じた。

女子生徒たちは、学校教育を再び禁じられたことで、「悲嘆に暮れ」「心に傷を負った」などとアムネスティに語った。
タリバンがシャリアと国の文化を引き合いに出すのは、女性や少女から権利を奪う昔からの手口で、 少女たちを学校から締め出すための言語道断の口実だ。 タリバンの主張は、明らかに教育を受ける権利の侵害であり、何百万人もの少女たちの将来に 暗い影を落とすことになる。
アムネスティは国際社会に対し、事実上の政権であるタリバンと交渉する際、 女性や少女の教育を受ける権利を絶対条件とするよう求める。 タリバンは、年齢を問わず少女の通学を認め、差別的な政策の推進に下手な口実を持ち出すのをやめるべきだ。

「私たちはみんな、打ちひしがれた」
昨年8月に実権を握って以来、タリバンは女子が教育を受ける権利を尊重すると公約してきた。 3月20日、タリバンの「教育省」は、冬休みが終わる3月23日に全学校を再開すると通達したが、 休みが明けても女子中等学校は、閉鎖されたままだった。

北西部へラト州では、中等学校は休み後の2日間だけ開校され、3日目から「女子校は閉鎖する」と告げられた。
バダクシャン州に住む12年生のナディアさん(17歳)は3月24日、アムネスティにこう話した。 「とてもワクワクし、希望を胸一杯に学校に行き、同級生や先生に会った。 みんな授業が再開されて、大喜びだった。 でも数分後、校長が来て『みんな、帰宅しないといけなくなった』と言われた。 女子学校に閉鎖命令が出たのだと。みんな、もう大変なショックだった。 泣き始める子もいれば、黙って立ち尽くす子もいたが、仕方なく出口へ行った。 いつ戻れるかわからないまま学校を離れるのは、胸が押しつぶされる思いだった」
3月23日以来、カーブル、ナンガルハール州、バダクシャン州の住民、学生、女性の権利活動家らは、 タリバンに女子中等学校の再開を求めるデモを何度か実施してきた。

カーブルの学校でも、戻ってきた女子生徒たちは、すぐに帰宅するよう命じられたという。
その一人、11年生のナキサさん(16歳)は、アムネスティにこう語った。 「恐怖と不安の中、学校に行った。授業が始まると思っていた9時ごろ、 タリバンがやってきて校長先生に女生徒全員の帰宅と学校閉鎖を命じた。校長先生は泣いていた」
ナキサさんら生徒たちは勇敢にも帰宅命令に抵抗し、タリバンから暴力をふるわれた。 抵抗の意思としてペンを持った手をタリバンに突き出し、「教育を受けるのは、私たちの権利だ」と訴えた。 また、「勉強したい」とシュプレヒコールを続けたという。

女性の権利活動家ナウィダ・コラサニさんは、国際社会に対しタリバンが女性の権利で約束したことを 責任もって実行するよう要求してほしいとして、こう求めた。 「昨今のタリバンの対応は、女性の権利を守るという約束を反故していることは明らかで、 国際社会はタリバンの責任を追及してほしい」

タリバンは90年代、女子の通学を禁止し、女性が公共の場に出ることを許さなかった。 今、当時の抑圧的政策がひたひたと押し寄せているようにみえる。
教育を受ける権利は、基本的人権であり、タリバンにはこれを保障する義務がある。 しかし、現行の政策は差別的で不公正で、国際法に違反している。
教育の権利とより良い未来を求めて抗議を続ける少女や女性たちの勇気には、身が引き締まる思いだ。 国際社会は、未来への希望のために闘う女子学生を決して見捨ててはならない。

2022年3月28日 アムネスティ国際ニュース

ロシアのウクライナ侵攻は戦争犯罪
ロシアのウクライナ侵略は国連憲章の明白な違反であり、国際法の犯罪である侵略にあたる。
アムネスティは、この犯罪に関与したすべての者に対して、違反行為の責任を負うよう求める。 侵略の罪においても、ウクライナ侵攻を際立たせる数多の犯罪においても、 関与した者はその個人的、組織的責任を問われるべきである。

アムネスティは、ウクライナ危機の深刻さを強調し、国連加盟国に対し、 いかなる国の領土保全および政治的独立に対する武力行使を禁止する国連憲章を支持し、擁護するよう求めた。 武力行使禁止の唯一の例外は、自衛と国連安全保障理事会が認めた場合だが、 今回の危機にはどちらもあてはまらない。
国際法の下では、すべての国が、平和的かつ、世界の平和、安全保障、正義が脅かされない手段で、 国際紛争を解決する義務があることも強調しておきたい。

ロシアのウクライナ侵攻は深刻かつ重大で、武力侵略以外の何物でもない。 ロシアは、ウクライナ中心部に侵攻しており、合法的に選出された政権を追放しようとしている。 民間人の生命、安全、福祉に対し、現実に、そして潜在的にも、大規模な影響を与えている。 その行為はロシアが提示したいかなる根拠に立っても、到底正当化できるものではない。
さらに問題は、ロシアが国連安保理の常任理事国だということである。 ロシアは明らかに国際的な義務に違反しており、その行動は、国連設立時の規則と原則にあからさまに反している。 国連の全加盟国は、この行為を明確に糾弾すべきだ。 ロシアの目にあまる対応が、他の国々に追随を促すようなことがあってはならず、 また、そのような行動を抑制する国連の能力が損なわれてはならない。

ウクライナへの侵攻を開始した2月24日以来、市街地やインフラを無差別に攻撃して民間人の死者を出すなど、 ロシアによる人道法と人権法の違反行為が増えている。アムネスティは、この事態を調査で明らかにしてきた。
病院や学校などの保護対象施設への攻撃、弾道ミサイルなどの無差別殺傷武器や クラスター爆弾などの禁止兵器の使用は、すべて戦争犯罪に該当する可能性がある。

国連加盟国は、ロシアが犯した侵略という犯罪を糾弾するために、 また、避難民を含むウクライナの人びとの救済と支援のために、共に立ち上がらなければならない。 さらに、国連加盟国は、ロシアの武力侵略により、世界が、暴力、人権侵害、 不安に満ちた状況に追い込まれないようにしなければならない。

1週間足らずの間に、ロシアのウクライナ侵略は、大規模な人権と人道と難民の危機を引き起こした。 この危機は、近年の欧州で最悪の大惨事である。 ロシアは隣国とそこに住む人びとの主権を侵害しただけでなく、世界の安全保障構造に挑み、 機能不全に陥る国連安保理を含む、その脆弱性を不当に利用している。
この結果は、私たち全員に長期的な影響をもたらす。 私たちは、武力侵略と国際法違反がそのような事態を引き起こすようなことを決して許してはならない。

2月28日に、国際刑事裁判所(ICC)の検察官がウクライナで捜査を開始するつもりだと発表したことを、歓迎したい。 この捜査により、ウクライナで行われた戦争犯罪と人道に対する罪の加害者全員が、 上級職、最高責任者含め、個別に責任を問われることになる。

アムネスティは、ICCのすべての締約国と国際社会全体に対し、同裁判所の捜査への協力を求める。 捜査は、単独ではできない。ウクライナにおける今回の問題の包括的な責任を問うには、 国連とその機関の協調的かつ革新的な取り組みと、 普遍的管轄権の原則に基づく国レベルでの取り組みが欠かせない。

初期段階においての証拠の収集と保全は、今後捜査を進める上で極めて重要である。 とりわけ、戦争犯罪の犠牲者が増える中、被害や損害を必ず補償するという国際社会の決意を示さなければならない。

2022年3月11日 国際事務局ニュース


パレスチナ人に対するアパルトヘイトの罪でイスラエルの責任を問う
  
イスラエルがパレスチナ人を支配下に置くすべての地域で、 どのようにしてパレスチナ人の抑圧と支配を遂行してきたか、 アムネスティは、その実態を詳細に調査した。
ここで言うパレスチナ人には、イスラエルや被占領パレスチナ地域のパレスチナ人、 他国に逃れたパレスチナ難民が含まれる。

イスラエルによるパレスチナ人の土地や財産の大規模な没収、強制移送、徹底的な移動制限、 国籍と市民権の否定、国際法違反の殺害のすべてが、 国際法のアパルトヘイトに相当する体制を構成する要素になっている。
この体制は、国際刑事裁判所に関するローマ規程とアパルトヘイト犯罪の抑圧・処罰に関する国際条約 (アパルトヘイト条約)に定義されるように、人道に対する罪としての アパルトヘイトを構成する人権侵害行為により維持されている。
アムネスティは国際刑事裁判所に対し、被占領パレスチナ地域の捜査に入る時には、 アパルトヘイトの罪を検討すること、また世界各国に、アパルトヘイト罪の加害者を裁くために 普遍的管轄権を行使することを求める。

イスラエルによるアパルトヘイト体制は徹底している。 ガザ地区、東エルサレム含むヨルダン川西岸地区、あるいはイスラエル国内など地域を問わず、 パレスチナ人は劣等的人種集団とみなされ、日常的に権利を奪われている。
アムネスティは、イスラエルが支配下に置く全地域で実施してきた隔離、没収、排除など、 残虐な施策は、明らかにアパルトヘイトにあたることを確認した。 この状況に対して、国際社会には行動を起こす義務がある。

長年にわたる数百万のパレスチナ人に対する差別と抑圧の体制を正当化することはできない。 アパルトヘイトは、私たちの世界に入り込む余地はないし、 イスラエルの行為を見てみぬふりをする国の政府は、 いずれ自国の歴史に汚点を残したことに気づくだろう。

イスラエルに武器を供与し、国連での説明責任からイスラエルを守り続けている国は、 アパルトヘイト体制を支援し、国際的法秩序を乱し、パレスチナ人の苦しみを悪化させている。 国際社会は、イスラエルで起きているアパルトヘイトの現実を直視し、 これまで放置してきた正義への道を追求しなければならない。

2022年2月1日 アムネスティ国際ニュース


copy right Agence Media Palestine


ミャンマーの国軍・抗議する市民への重大な人権侵害を続けている
 〜国際社会の関与を求める〜 
 
国際社会が、ミャンマーの事態に消極的姿勢を取り続けるなら国軍の暴力による犠牲者はさらに増え続け、 同国の人権状況は一層悪化することになる。

 2月1日、国軍がクーデターで政権を奪ってから1年が経った。 国軍は、南東部地域での無差別空爆による市民の殺害、人道支援の妨害、 活動家や記者の拘束・殺害などの行為を繰り返してきた。 これらの残虐行為に対し、あまりにも多くの国が見て見ぬふりをしてきた。 ロヒンギャの人びとが国軍による人権侵害で土地を追われたときもそうだった。
ミャンマー市民5,500万人には、傍観する多くの国の行動をもう一年、待ち続ける余力は残っていない。

 抗議する市民の一掃を狙う国軍は、罪に問われることもない暴力を平然と振るい続けている。 市民に暴力と投獄で恐怖心をあおる国軍の作戦に、歯止めをかける必要がある。 そのためには国際社会の的確な対応が求められる。

 国連安保理は、消極的な姿勢を改め、世界各国による武器禁輸と国軍幹部への制裁を実施し、 さらに、ミャンマーの事案を国際刑事裁判所に速やかに付託しなければならない。
また、武器を調達する国軍の資金源を断つため、国軍系企業と提携する国内外の企業は、 提携関係を解消する必要がある。
東南アジア諸国連合(ASEAN)は対ミャンマーで結束し、 国軍に市民への暴力を即刻停止するよう要求しなければならない。
また、人道支援活動を認めるよう国軍に圧力をかけ、昨年、採択した5項目の合意事項について、 期限を設定した上で各項目の実施に踏み切るべきだ。
 今年こそ、ミャンマーの人たちの人権のための行動と責任追及を中心に置き、 人権侵害は決して許容しないという姿勢で事態に臨まなければならない。

背景情報
 昨年2月1日、国軍がクーデターを起こし、全権を掌握した。それ以降、国軍は1,400人を超える市民を殺害し、 11,000人以上を拘束した。今も8,000人以上の拘束が続いている。 政治囚支援協会によると、国軍には、カチン、シャン、ロヒンギャなどの少数民族に、 国際法違反の迫害をしてきた歴史がある。

 国連ミャンマー事実調査団は以前、戦争犯罪、人道に対する罪、大量虐殺が疑われるミンアウンライン上級大将と 複数の高官の捜査と起訴を求めた。
文民指導者だったアウンサンスーチーさんは、虚偽の罪で実刑6年を言い渡された。 他の容疑でも起訴されており、すべての容疑で有罪になれば、合わせた刑期が100年を超えるおそれがある。 ウィンミン大統領ら側近の多くも、でっち上げの罪で有罪判決を受けた。

デモに参加する市民が激しく弾圧される中、国軍に抵抗する人たちが結成した武装組織「国民防衛隊(PDF)」は、 数百人の国軍兵士を殺したと主張している。
クーデター後、国内の混乱は全土に及び、経済の低迷や食糧不足、新型コロナ禍の中、 数百万人が飢餓に瀕している。数十万の市民が国内避難民になり、数千人が国境を越えてタイへ逃れている。

2022年1月27日 アムネスティ国際ニュース


COP26:人類への裏切り
〜企業の利益に屈し保護すべき人びとを切り捨てる首脳たち〜 
  
英国グラスゴーでの国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が11月13日、閉幕した。
参加国は、気候変動の影響を最も受けている人びとの保護に与することができなかった上、 化石燃料企業を含む強大な業界に屈したことで、世界中の人びとを壊滅的なまでに裏切った。 会議では、地球や人びとを保護する対策で成果を打ち出すことはできなかった。 また、国連設立時の大原則、国家ではなく人びとを優先するという誓約に反いた。
会議開催中、参加国は、私たちの人としての権利を蔑ろにし、侵害し、 あるいは安売りするかのような選択をし、社会の隅に追いやられた世界中の人びとを、 犠牲にしてもいい巻き添え被害者かのように切り捨てた。

気温上昇を1.5度に抑える目標達成向けた具体策に乏しく、 主にグローバル・サウスの5億人以上を水不足に追いやり、 数億人を極度の熱波にさらすことになるだろう。
これほどに最悪のシナリオにもかかわらず、富める国々は、気候変動で被害を受ける国への 補償に向けた資金提供も約束しなかった。 また、途上国に対する補助金として気候関連資金援助を拠出する決議もなかった。 これでは、気候変動に最も脆弱な貧しい国々に、持続不可能なレベルの負債を背負わすことになりかねない。

人としての権利に寄り添うのではなく、化石燃料企業におもねった末の、 抜け穴ばかりが目に付く今回の合意には、激しい落胆を覚える。 今回の合意は、化石燃料とその補助金の段階的全廃を求めておらず、 危機的な現状に必要な情熱と大胆な行動の欠如を露わにした。

さらに、環境や人権に対する十分な保護措置もなく、 豊める国によるカーボンオフセット(植林や森林保護などで二酸化炭素を吸収したり クリーンエネルギー事業に出資したりすることで、 温室効果ガス排出削減が困難な分を埋め合わせること)の取り組みは、 そのしわ寄せで先住民族が土地を追われるおそれがあることをまったく無視している。 このようなうわべだけの対策は真の排出ゼロの代わりにはならず、受け入れがたいことだ。

グラスゴーでの締約国合意は、地球上のすべての人びとに深刻な結果をもたらすだろう。 参加国は、最も配慮すべき人びとの存在を蔑ろにしたことが明らかであるだけに、 人びとは協力して、何が成し遂げられるかを各国政府に示さなければならない。

1年後のCOP27に向け、私たちは共に立ち上がり、自国政府に対し人と人権を 核に据えた野心的気候変動対策を取るよう呼びかける必要がある。 人類にとって脅威となっているこの問題の解決に向け、私たちは今こそ、 全力で取り組まなければならない。さもなければ、すべてを失うことになる。

2021年11月13日 アムネスティ国際ニュース


スパイウエアで人権侵害
   
米国商務省は、イスラエルの監視ソフト開発企業NSOグループを、悪質なサイバー活動に加担しているとして、 米国の安全保障・外交政策上の懸念がある取引制限対象リストに加えることを決定した。
アムネスティなどの活動団体が長年、NSOグループのスパイウェア(*)は抑圧の道具であると訴えてきたが、 今回米国政府がその指摘を認める形となった。 NSOグループのスパイウェア「ペガサス」は世界中で、ジャーナリストや活動家などを標的とした 違法な監視に利用されている。
商務省の決定は、「人権侵害に加担して利益を得ることはもはや許されない」という NSOグループへの強いメッセージでもある。 また、人権侵害に利用される技術を販売する企業への投資を今後も継続するのか、 NSOに投資してきた人たちの行動も問われる。

監視技術が与える脅威は、一企業に留まらない。 監視技術の開発は、これまで野放しにされており、 今回、米国政府がブラックリストにNSOを加えたことが、 スパイウェア企業の免責に終止符を打つことにつながらなければならない。 また、人権に配慮した規制の枠組みが定着するまで、 各国は、監視技術の輸出・販売・移転・使用の停止措置を取る必要がある。

背景情報
NSOグループのスパイウェア「ペガサス」が、大規模な人権侵害を引き起こしていることが、 報道機関による調査「ペガサスプロジェクト」で明らかになった。
パリの非営利団体「フォービドゥン・ストーリーズ」がコーディネートした同プロジェクトには、 10カ国17の報道機関から80人以上の記者が参加した。 アムネスティは最先端の技術を使って、スパイウェアの携帯電話への侵入状況を解析し、 技術面でプロジェクトを支援した。
NSOグループは、今回の決定を納得できないとして、決定の取り消しを求めるとしている。
*スパイウェア:ユーザーに気づかれないよう秘密裏にスマートフォンやパソコンなどの端末に不正侵入し、 ユーザーの行動履歴や個人情報を盗み出すソフトウェア。

2021年11月3日 アムネスティ国際ニュース


世界死刑廃止デー 女性死刑囚が受けてきた差別
   
死刑判決を言い渡された女性は多くの場合、夫から虐待や性的暴力を受け続け やむにやまれず夫を殺めて罪に問われ、情状酌量の余地なく死刑を宣告されてきた。
10月10日、世界が死刑廃止デーを迎えるにあたり、アムネスティは、死刑をめぐり多くの女性が 受けてきた不正義をあらためて確認しておきたい。
女性に死刑判決を下した裁判は、多くの場合、正式な手続きがとられなかったり、 長年にわたり受けてきた虐待や性的暴力が減刑要素として考慮されなかったりと、 ずさんで不公正なものだった。
こうした不当な裁判で女性に死刑を宣告することで、世界中の司法制度は、 死刑という残虐で忌まわしい刑罰を永続させ、また、当局が女性差別に対処できなかった代償を 女性に負わせているのだ。加えて、死刑の適用に関する透明性に欠けるため、 私たちが知る不正義は、氷山の一角にすぎないと思われる。 多くの場合、当局は、虐待や暴力を受けたという申し立てを受けてもまともに対応せず、 差別的な慣行を放置してきた。この当局の怠慢は、女性死刑囚が取調べや裁判でさらに 「権力による虐待」にさらされるという風潮を招いた。

スーダンのヌーラ・フセイン・ハマド・ダウドさんは、16歳のとき父親に結婚相手を決められ、 3年後に無理やり嫁がされて相手の自宅に連れて行かれた後、夫とその兄弟らから暴行を受けた。 抵抗する中で夫を殺めてしまい、2017年に死刑判決を受けた。 アムネスティは他団体と協力してヌーラさんの減刑を求める活動をし、ヌーラさんは死刑を免れた。

2018年、イランのクルド人女性ゼナブ・セコンバンドさんに死刑が執行された。 ゼナブさんは子どもの時に結婚させられ、夫とその兄(弟)から性的暴力を受け続け、 17歳の時に夫を殺害して著しく不公正な裁判で死刑判決を言い渡されていた。

ガーナを含む複数の国では、殺人などには絶対法定刑(裁量の余地がない刑罰)として死刑が適用され、 ジェンダーに基づく暴力や差別を受けていたことが減刑の要素なることはない。 そのため、虐待を受けたという訴えをあきらめる被告女性もいる。

マレーシアでは、女性の死刑囚、特に外国籍者の圧倒的多数は、麻薬取引で有罪となっている。 麻薬取引には、絶対法定刑として死刑が適用されるからだ。

昨年末時点で、108カ国が死刑を完全に廃止している。 賢明にも世界は、国家が市民の生存権を奪う権利があるという思考から抜け出しつつあるということだ。 しかし、まだすべての国ではない。アムネスティは、この残虐な刑罰が世界から完全になくなるまで運動を続ける。

2021年10月8日 アムネスティ国際ニュース


アフガニスタン人の人権保護を求める
   
アフガニスタンにおいてタリバンが実権を掌握する事態になり、アフガニスタンにおける人権と 日本にいるアフガニスタン人の人権保護を求めてアムネスティ・日本は法務大臣に以下の要請書を提出しました。


                          2021年9月7日
法務大臣 上川 陽子 殿

          公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
                 事務局長 中川 英明

日本において国際的保護を必要とするすべてのアフガニスタン人の
人権保護を求める要請書

アフガニスタンではたった数週間で旧政府が崩壊し、タリバンが政権を掌握しました。
強制的な連行、集団強かん、大量殺戮など、過去に組織的な人権侵害を行ったタリバンが復権したことで、 すでにアフガニスタン国内では人権が危機にさらされています。 報復と迫害の恐怖から何千人ものアフガニスタン人が、カーブル国際空港に押し寄せ、国外への避難を望んでいます。

タリバンが制圧したガズニ州において、ハザラ人男性9人が7月上旬に虐殺されたことについては、 6人が銃殺、3人は腕を削がれるなどの拷問によって殺害されたことが調査で明らかになっています。 これらの殺害の残虐性は、これまでタリバンが組織的に行ってきた数々の人権侵害を想起させるとともに、 ハザラ人のような宗教的・民族的少数派が依然として特別な危険にさらされていることを物語っています。
さらに、各国政府による避難計画が難航していることも相まって、市民に対する報復の危険が高まっています。 特に、人権活動家、市民活動家、ジャーナリスト、メディア関係者、学者、女性の指導者、 国際機関やアフガニスタン国外での就労経験のある個人が、迫害や攻撃の標的にされています。
上述の危機とその影響からアフガニスタン人の人権を保護するため、必要なあらゆる措置を講じることが 国際社会に求められています。現在日本に滞在している約3,500人に加え、 今後、日本に逃れてきたすべてのアフガニスタン人の人権を保護するよう、 日本政府に対して次の4点を要請します。

アフガニスタンへの送還に関するあらゆる手続きを直ちに停止し、 帰国に伴う人権侵害の危険からすべてのアフガニスタン人を保護すること。
日本への避難を希望し、滞在や庇護を求めるアフガニスタン人に対して、 人道配慮による在留特別許可や難民認定を、迅速かつ安全に行うこと。
アフガニスタンの治安状況が改善し(少なくとも在アフガニスタン日本大使館と領事館を再開することができ)、 査証発給の手続きが迅速、効果的かつ透明な方法で機能するようになるまで、 希望するすべてのアフガニスタン人が日本に入国、滞在できるよう特別な措置を講じること。
在留資格を有さないが現在日本に滞在しているすべてのアフガニスタン人(2020年末時点で少なくとも15人) についても在留を許可し、単に出入国管理上の法的地位によって差別することなく、 基本的人権と生活に必要な社会的サービスを彼らが平等に享受できるようにすること。

日本では 2001年10月3日に、難民認定申請中だったアフガニスタン人9人が一斉に収容されました。 全員がタリバンからの迫害のおそれを主張していたにもかかわらず、 ハザラ人を含む彼らの退去強制手続きが進められたことは、身体の自由を奪う人権侵害であり、 ノン・ルフールマンの原則に反する措置でもありました。
国連諸機関からのこれまでの再三の勧告にもかかわらず、出入国管理及び難民認定法が 国際人権基準を満たさないものであるままに放置されている日本では、 出入国管理行政の現場においてさらなる人権侵害がいつ起こってもおかしくない状況にあると危惧しています。

2001年10月に日本政府が犯した致命的な過ちを繰り返さないため、 そして、アフガニスタン人を含むすべての外国人の基本的人権を守るため、 恣意的拘禁の禁止(自由権規約第9条)や国際慣習法であるノン・ルフールマンの原則の順守をはじめとする、 日本に対しても法的拘束力のある国際法上の義務を日本政府が遵守することを強く求めます。

ご要望があれば、より詳しい情報を提供させていただきます。

                       以上
                                      


平和的抗議行動に過剰な弾圧
   
パレスチナ自治区において、パレスチナ自治政府に対する抗議行動に対して、 政府による過剰な弾圧が起きている。
自治政府批判で知られる政治活動家のニザール・バナットさんが6月24日、勾留中に亡くなった。 その後、バナットさんの死に端を発した抗議活動が激しくなり、緊張が高まっている。 7月5日、治安当局は過剰な力を行使して、ラマッラーのバロウ警察署前であった集会を力で強制排除し、 抗議参加者、ジャーナリスト、弁護士ら少なくとも15人を拘束した。
この2週間、治安当局は、抗議を過剰な力で抑えつけ、参加者を拘束するなどして、 当局への恐怖心を植え付ける作戦をとっている。
マムード・アッバス大統領は直ちに、卑劣な弾圧を停止し、警察や治安部隊が行った抗議市民への 人権侵害の責任を問わなければならない。それにはまず、警察署で拷問を受けたことを示す 多数の傷やあざがあったとされるバナットさんの死因や、治安当局によるデモ参加者らへの暴力に対して、 公正な捜査を徹底しなければならない。
座り込みへの攻撃
当局の暴力が際立った事例の一つは、7月5日夜の座り込みに対するものだ。 その夜にあるラマッラーのデモに参加予定だった市民団体の幹部や弁護士ら6人が拘束され、 拘束に抗議する家族や支援者らの座り込みが、バロウ警察署前であった。 警察は当初、座り込みをやめるよう説得を試みたが、説明が納得できないとして家族らは退去を拒否した。 その後、盾や警棒、催涙スプレー、暴徒鎮圧用の装備などで武装した警官が到着し、 抗議する人たちの髪の毛を引っ張り、引きずり出し、催眠スプレーを浴びせるなどして、彼らを排除した。
エスカレートする弾圧
治安部隊はこれまでに少なくとも6回、過剰な力を行使して平和的な抗議を解散させた。 抗議者の中には、実力行使をする治安部隊に石などを投げて応戦する人もいた。 6月24日の座り込みの現場にいたアムネスティの調査員も、座り込む家族らが警官に暴行を受ける様子を目撃した。 6月26日と27日にも、当局による抗議市民への暴行が続いた。
6月26日、不審な集団が突然、デモ参加者や見物人を襲撃した。 集団の中に、治安部隊員や政党ファタハのメンバーがいたと思われる。 6月27日には、抗議に参加する人たちが全員集まる前に、私服の一団による襲撃があった。 どちらの場合も、多数の女性ジャーナリストが襲われ、性的暴行を受けた人もいた。 しかし、警察が出動して市民を保護することはなかった。
7月3日には、アッバス大統領への抗議デモがあり、数百人が集まった。 集会後、政府を声高に非難していたガッサン・アル・サーディさんが拘束された。 拘束時、アル・サーディさんは、殴る蹴るの暴行を受けた。この拘束に抗議した活動家3人も拘束された。 全員が、「内部抗争を引き起こした」「当局を侮辱した」という容疑に問われている。
パレスチナの治安部隊と警察が、抗議する市民の人権を侵害しても責任を問われることなく、 野放しにされている。許し難い事態であり、当局がその責任を果たし、人権の尊重を確約するまで、 米国、英国、EU加盟国は、パレスチナに対する安全保障や軍事面での支援を停止しなければならない。

2021年7月7日 アムネスティ国際ニュース


入管収容で横行する虐待と差別
   
カナダでは毎年、障がいを持つ人を含めた何千人もの人たちが、入国管理上の理由で施設に収容され、 しばしば虐待的な状況下に置かれていることが、アムネスティ・インターナショナルと ヒューマン・ライツ・ウォッチの合同調査でわかった。

庇護希望者を含む収容されている人たちは、手錠や足枷をされることが多く、 外部との接触もほとんど、あるいはまったく認められない。 収容期間の定めのないまま、数カ月から数年も収容され、刑務所に囚人と共に収容されるケースも多い。 独房に入れられる人もいる。心理社会的障がいを持つ人は、差別的な扱いを受ける。

入管収容での虐待的な状況は、多様性と平等で知られるカナダのイメージとは、あまりにも対照的だ。 アムネスティとヒューマン・ライツ・ウォッチは、カナダ当局に対し、収容を段階的に廃止するとともに、 入管制度・難民保護制度における非人道的な扱いに終止符を打つことを求める。

2019年にアフリカから来た女性は、辛い体験を次のように語った。 「何でこんな扱いを受けるのか何の説明もなかった。入国するとき、祖国で起きていること、 どのようにして逃げてきたが、全部説明した。けれど係員の女性は、聞く耳を持たなかった。 祖国にいて死んだ方がましだと思った」

刑務所に収容
調査では、元収容者、その家族、精神衛生の専門家、学者、弁護士、 市民団体の関係者、国の担当官など90人に聞き取りをした。 また、関連する国連の報告書や非公開の公的資料などにも当たった。

2019年4月から2020年3月にかけてカナダへの入国時に拘束された人は、 8,825人で年齢は15歳から83歳まで、この中には、州の刑務所に収容された1,932人も含まれる。 同じ時期、これとは別に子ども136人(うち6歳未満が73人)が、親と共に収容された。 2016年以降で、1年以上拘束された人は、300人を超える。

刑事罰に問われているわけでも有罪判決を受けたわけでもないにもかかわらず、 多くの人が、特に警備が厳重な刑務所や独居拘禁など厳しい制約下に置かれ、 体の一部を拘束され、窮屈な監房に閉じ込められ、事細かい日課を課され、常に監視にさらされているのだ。
カナダは、難民や新規来訪者を歓迎する一方で、庇護を求めてきた人たちを無期限に拘束する、 先進国としては稀な国だ。一旦施設に収容されると、多くが、いつ自由の身になれるのか知らされない、 あるいは解放される希望も持てない日々を送り、精神衛生上の影響は計り知れない。

障がい者差別 人種差別
調査で、心理社会的な障がいを持つ人たちは、入管施設ではなく州刑務所に収容される 傾向にあることが明らかになった。オンタリオ州の刑務所に収容されると、しばしば独房に入れられる。 法的な問題について自分で判断を下すことが認められず、 法定代理人が代わりに決めることもある。また多くの場合、釈放の壁は厚く、 釈放されても厳しい釈放条件を守らなければならず、違反すれば再び収容される。
他の収容者よりも収容や釈放の条件を厳しくするのは、あからさまな障がい者差別だ。 政府は心理社会的な障がいを持つ人たちを懲罰的な状況に置くのではなく、 地域社会での自主性と尊厳を尊重し、心理社会的、法的支援をすべきだ。
また収容されている人の多くが、自由になれないのではないかという思いから、自殺を考えるようになる。 トラウマとなる出来事や迫害から逃れてきた人たちは、特に影響を受ける。 釈放されてからも、収容中に生じた心の傷を、数カ月から数年、抱えて生きる人も多い。
有色人種、特に黒人は、収容期間が長期化し、しばしば、刑務所に収容されることが多いようだ。 2019年では、90日間以上の被収容者の多くが、アフリカの国々から来た人たちだった。

入管・難民制度の見直しを
出入国管理などを行うカナダ国境サービス庁は、主要な法執行機関の中で独立した民間の監視を受けない唯一の機関だ。 権限と法執行力が野放しになり、入国者の収容をめぐる重大な人権侵害が後を絶たない。 身の安全とより良い生活を求めてカナダに来た人たちが、人種差別、暴力、人権侵害を受けるようなことがあってはならない。 アムネスティとヒューマン・ライツ・ウォッチは、カナダに対し、これ以上の人権侵害を防ぐために、 拷問等禁止条約選択議定書の署名・批准するとともに、収容施設の国際的な査察を受け入れるよう求める。
恣意的拘禁に関する国連作業部会は、「移住者収容は警察署や拘置所、刑務所などで行ってはならない」 「収容は懲罰的な性質なものであってはならない」との見解を示している。 カナダ政府は、身体的・心理社会的な障がいがある人の収容を停止すべきだ。 誰一人として、入国管理上の理由で刑事施設に収容され、 懲罰的扱いを受けるようなことがあってはならない。

新型コロナウイルス感染症が拡大した昨年3月以降、 カナダの入管当局は入管施設の被収容者をかつてない規模で釈放してきた。 感染が収束しつつあるからといって、収容を再開するのではなく、この機会に入管制度や難民保護策を見直し、 精神の健康と人権を尊重する移民・難民の制度に改革すべきだ。
2021年6月17日 アムネスティ国際ニュース


国連のミャンマー決議支持と行動を
   
6月9日、アムネスティ・インターナショナル日本は日本政府にむけてミャンマーに関する要請を行い、 外務省政務官と意見交を換しました。


要請書


                           2021年6月9日

外務大臣 茂木 敏充 殿

          公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
                 事務局長中川英明


ミャンマーに関する国連総会決議を支持し、 国連安全保障理事会の行動を促すよう求める要請書


ミャンマー国軍は、2021年2月1日のクーデターで政権を実質的に掌握して以来、抗議する市民への弾圧を続けています。 国際社会はミャンマーの事態について協議を重ねていますが、弾圧をやめさせるため制裁を求める国と 制裁に否定的な国との間の溝が埋まらず、確固たる措置を打ち出せずにいます。
ミャンマーへの武器禁輸、平和的なデモ隊に対する暴力行為の停止、アウンサウンスーチーさんらの即時解放などを 呼びかける国連総会決議案が48カ国から共同で提出されており、 採択に向けて広範な支持を得るべく交渉が続けられています。 この決議案の共同提出国として名を連ねていない日本にも市民への弾圧を食い止めるために 積極的な役割を果たしていただきたく、日本政府に以下の2点を要請します。


1 国連総会でのミャンマーに関する決議を支持すること

「平和的なデモ参加者ならびに女性、子どもなどを含む市民社会のメンバーに対する暴力の行使を直ちに停止し、 恣意的に拘束されているすべての人びとを直ちに解放する」ことを求める決議案が国連総会において提案されています。 この国連総会決議の採択により、ミャンマーへの武器、軍需品、その他すべての軍事関連機器の直接的および 間接的な供給、販売、移転を直ちに停止することを求めて国際社会が行動を起こせば、 ミャンマー国軍による深刻な人権侵害に歯止めをかけるための布石を打つことができます。
この決議案の採択にあたり国連総会で賛成票を投じること、ミャンマーで行われている人権侵害に 反対する立場を明確に表明すること、そして、他の国々にもこの決議案を支持するよう促すことを、 私たちは日本政府に要請します。
2 国連安全保障理事会によるさらなる行動に向け、あらゆる外交努力を行うこと

ミャンマー国軍は、「最大限の自制」を求める国連安全保障理事会からの呼びかけを完全に無視しており、 ミャンマーにおける人権侵害と人道危機は悪化の一途を辿っています。 国連安全保障理事会決議によって法的拘束力がある要求をミャンマー国軍に提示し、 遵守させることが国際社会にとっての急務です。
ミャンマーに対する包括的な武器禁輸措置、国際法上の犯罪や重大な人権侵害を行った 疑いのある当局の関係者を標的とした金融制裁、およびミャンマー情勢の国際刑事裁判所への付託、 これら3点を含む国連憲章第7章に基づく決議が採択されるよう、日本政府からも安全保障理事国に働きかけてください。
さらに、ミャンマー国軍の大規模残虐行為に対処するための安全保障理事会のいかなる決議についても 拒否権を行使しないよう、常任理事国に対して日本政府が強くはたらきかけるよう求めます。
この問題に対処するにあたり、貴省が引き続き建設的な役割を果たしてくださることを期待いたします。

                              以上


ワクチンの大手企業独占から共有へ
   
 ワクチンの普及を目指す団体「民衆のワクチン連盟」の調べでは、G7各国の市民の圧倒的多数が、 製薬企業がワクチンの製法と技術を広く共有するよう政府が動くべきだと考えていることがわかった。 また、製薬企業はワクチン開発に伴うコストの正当な対価を受けるべきだが、製法の独占は問題だとみている。

5月5日、ロンドンでG7外務・開発大臣会議が2年ぶりに対面形式で開催され、 世界貿易機関総会がオンラインで開かれる一方で、インドでは新型コロナウイルス感染による死者が 急増している。
「民衆のワクチン連盟」によると、G7諸国では、市民の70%が、ワクチンの製法と技術の共有を国に 求めている。ワクチン共有に向けた政府の対応について、国は企業に介入すべきだとの意見は、 イタリアでは回答者の82%と最も多く、2番目に多いカナダでは76%だった。
英国ではジョンソン首相が、国内でのワクチン開発が首尾よく進んだ要因として「貪欲と資本主義」を あげた一方で、市民の74%は、国は大手製薬企業による製法や技術の独占をやめさせるべきだと 考えている。国の介入への支持は、支持政党の枠を越え、保守党支持層73%、労働党83%、 自由民主党79%だ。また、EU残留派83%、離脱派72%が国の介入に賛成する。

米国ではバイデン大統領がワクチンの製法の共有に対して、「希望と期待」を表明し、 国民の69%も同じ意見を持つ。昨年の大統領選での投票別では、バイデン氏に投票した人の89%、 トランプ支持者の65%が賛成する。日本では58%だ。EU加盟国でも賛成派が多数を占め、 ドイツでは70%、フランスでは63%だ。

 グローバル・ジャスティス・ナウのハイジ・チョウ・キャンペーン・政策部長は次のように語る。 「市民は、大手製薬企業の独占をいいとは思っていない。開発にはかなりの公的資金が 注ぎ込まれおり、開発されたワクチンは世界の公共財であり、 誰でもどこでも利用できるようにすべきだ。この考え方は、G7国の人びとにはかなり浸透する一方で、 各国首脳は、周辺地域で大勢が亡くなっているのを見て見ぬふりをしている」
ワクチン製法のノウハウ共有を支持する市民が多いにもかかわらず、 G7国は、依然として企業によるワクチン独占を擁護している。 世界貿易機関では、インドと南アフリカほか100カ国以上が、 ワクチンの知的財産権の一時放棄に賛成するが、米国、英国、日本、カナダ、EUなどが反対した。 その後バイデン政権は、特許放棄に反対する立場を考え直す方針を打ち出した。
これまでのところ製薬企業も、ワクチン製造に関わるノウハウの共有を拒否している。 開発に成功した製薬企業は、ワクチンと治療に関する技術の共有促進を目指して設立された 「新型コロナウイルス感染症に関わるテクノロジー・アクセス・プール(C-TAP)」 には参加していない。
ストップエイズのサーシャ・フィッツパトリック推進部長はこう話す。
「(感染拡大が)ひどい状況にあるインドを見れば、G7首脳は震え上がるはずだ。 今は、特許保護がどうとかと言っている場合ではない。製薬企業間の調整はうまくいっていない。 国が介入し、企業がワクチンの特許とノウハウを世界で共有するよう強く働きかける必要がある」
直近のG7大臣会合で、議長国英国の提案でパンデミック(感染大流行)対策が議論されたが、 ワクチンの独占と知的財産の問題には触れられなかった。ファイザーなどの製薬企業は 知財問題の提案準備作業に参加したが、新興国や他のワクチンメーカーには 参加の声はかからなかった。
アムネスティのスティーヴ・コックバーン経済・社会正義部長はこう語る。
「G7各国は、資金を提供した製薬企業の利益より、世界の数百万人の命を優先する義務がある。 命を救う技術を共有しないのは、国の指導者として大失敗。 パンデミックで多数の市民が苦しんでいる状況を長引かせるだけだ」
4月、ゴードン・ブラウン元英国首相、エレン・ジョンソン・サーリーフ元リベリア大統領、 フランソワ・オランド元フランス大統領など各国の元リーダーやノーベル賞受賞者ら175人が、 バイデン大統領に書簡を送り、ワクチンの特許権の一時放棄を支持するよう訴えた。 また、ローワン・ウィリアムズ前カンタベリー大司教、 ケープタウンのタボ・マクゴバ英国国教会大司教、ローマカトリック教会の ピーター・タークソン枢機卿など宗教指導者150人はG7各国に対し、 ワクチンを「世界の共通財」と捉えるよう求めた。
オックスファムのアンナ・マリオット健康政策部長は次のように語る。
「富裕国が、ワクチン接種を待つ国々を尻目に接種を進める一方で、 低中所得国では何千もの人びとが亡くなっている。 G7の首脳は、現実を直視する必要がある。全員に行き渡るほどのワクチンがない。 ワクチンの供給を拡大する上で最大の障壁は、利益に飢えた製薬数社が、 ワクチン製造の特許保護に頑ななことだ。企業は自社の利益より人命を優先し、 特許を放棄し生産増を進めるべきだ。今こそ、『民衆のワクチン』が求められているのだ」
聞き取りをした世界的疫学者の3人に2人が、新型コロナウイルスのまん延がこのまま続くと、 1年以内に現在のワクチンが効かなくなるおそれがあると指摘した。 公衆衛生で国に助言する英国の緊急時科学助言グループ(SAGE)は、 ワクチン問題に対応するために特許放棄を求めた。
モデルナ、ファイザー/ビオンテック、ジョンソン・エンド・ジョンソン、 ノババックス、オックスフォード大/アストラゼネカは、 複数の国から数10億ドル、米国からは120億ドルの資金援助を受け、 それぞれの国にワクチンの供給を約束している。 オックスフォード大/アストラゼネカのワクチン開発費のおよそ97%は、公的資金だ。
各企業は今年、総額260億ドルの配当や自社株買いを行ったが、 この額は、アフリカ大陸の人口と同じ13億人分以上のワクチン費用にあたる。

2021年5月5日 アムネスティ国際ニュース

                                   以上


拷問器具取引撲滅に向け断固たる措置
   
 欧州評議会は、拷問・処刑具の取引を阻止する上で大きな一歩を踏み出した。 閣僚委員会が、死刑、拷問、その他の残酷で非人道的または屈辱的な扱いに 使用される可能性がある器具の取引を加盟国が適切に規制する枠組みを 盛り込んだ勧告を正式に採択したのだ。 閣僚委員会は、欧州評議会の意思決定機関であり、47の加盟国の代表からなる。
アムネスティとオメガリサーチ財団は欧州評議会加盟国に対し、 今回合意された勧告に従って行動するよう求める。
アムネスティ欧州地域ディレクターのニルス・ムイズニックスは次のように述べた。
「アムネスティは、欧州評議会の断固とした行動を歓迎する。 拷問器具の取引を止めることなくして拷問をなくすことはできない。 47カ国の欧州評議会加盟国は、苦痛を引き起こす器具の取引に関与しないことを確約するためにも、 勧告内容を迅速に実行すべきだ」
欧州評議会の拷問器具の取引規制は、世界中の警察機関の暴力的な取り締まりを抑制する上でも欠かせない。 勧告は、「特定の警察装備品の取引は、人権の尊重が前提だ」という明確なメッセージを各国に送っている。
画期的勧告
 勧告には、スパイク警棒、重り付き足かせ、装着型電気ショック兵器など、 虐待目的の器具の取引禁止規定が盛り込まれている。 また、拷問や虐待に悪用されるおそれがある唐辛子スプレー、催涙ガス、 電気ショック銃など、標準的な法執行用装備品の取引を厳格に管理する狙いもある。 また、勧告は、薬殺刑の執行に悪用されるおそれがある特定の医薬品の取引を 規制する上での指針も示している。
アムネスティとオメガリサーチ財団は長年にわたり、法執行機関向け装備品の取引を規制し、 拷問器具取引の全面的禁止を各国政府に働きかけてきた。 そして国や地域機関と協力して、国や地域内での取引の基準・仕組みの導入と その後の強化を推進してきた。それらの取り組みには、画期的なEU拷問禁止規則の2020年度の見直し、 拷問取引の阻止に向けた世界初の法的拘束力を伴う地域的施策の後押し、 人および人民の権利に関するアフリカ人権委員会によるアフリカ全土を 対象とする施策の継続的支援などもある。
一方、世界の60を超える国が集結した「拷問に関与しない貿易のための国際的提携」 の協力を受けた国連は現在、拷問器具取引を世界的に規制する国際基準を 模索する手続きに入っている。
オメガリサーチ財団の研究員マイケル・クロウリー博士は、次のように述べている。
「欧州評議会の画期的な勧告採択は、ヨーロッパ圏以外の国々にも重要な基準を提供し、 それぞれの地域での同様の規制に向けた各国の奮起につながることを願う。 国連で進行中の手続きに、今、最も必要な弾みがつくことにもなる。 拷問器具や処刑器具の取引に対処する法的拘束力のある国際的制度の設置に向け、 協議の道が開かれることを期待したい」

2021年3月31日 アムネスティ国際ニュース


出入国管理に関する特例法改正案に強い懸念
   2021年2月19日 [日本支部声明]
在留資格がないものの、本国で人権侵害を受けるおそれがある等の理由で帰国できない外国人が 入管施設に長期間収容されている問題に対応するため、「出入国管理及び難民認定法及び日本国との 平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案」 (以下、改正法案)が2021年2月19日に閣議決定されました。 アムネスティ・インターナショナル日本は、この改正法案が 国際人権基準を十分に満たしていないことに、強い懸念を表明します。

日本の入管収容および難民認定制度は、国連の人権条約機関から再三にわたる勧告を受けてきました。 最近では2020年8月に、日本においては難民認定申請者に対して差別的な対応をとることが常態化している、 また、入管収容は恣意的拘禁にあたり国際法違反である、という厳しい指摘を国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会が行い、 「出入国管理及び難民認定法」(入管法)を国際人権基準に則って見直すよう日本政府に求めました。
アムネスティ・インターナショナル日本は、今回の法改正が、 国際人権基準に則ったものとなるよう、次の4点を提言します。

1. 収容の目的を限定し、法律に明記すること
収容する場合には、その必要性と合理性はきちんと法律で規定されていなければなりません。 日本の入管収容の実態はこの原則に反しており、国際法違反の状態にあります。 収容の目的は以下の2つのいずれかに限るべきです。 恣意的拘禁作業部会も、個別の事情を評価せずに収容していることを問題視しています。

・身元を確認するための収容
入国時パスポート不所持などの場合に、身元を確認したり、 入国を記録したりするために必要な、可能な限り短い時間に限られた収容
・逃亡を防ぐための収容
すでに送還手続きが開始され、すぐに送還が実行されるという妥当な見込みがある 送還対象者の逃亡を防ぐための収容
改正法案では「送還時まで収容すること」を原則とする現在の制度を維持しつつも、 収容に代わる「監理措置」の新設提案がなされています(44条の2、52条の2)。 逃亡や証拠隠滅のおそれが低いことや、「その他の事情」といった要件を満たせば、 300万円以下の保証金を納付することで、収容所を出て監理人の監督の下に生活することが認められます。 しかし、要件を満たさなければ個人の身体の自由を行政が制限できる仕組みとなっており、 収容を原則とすることは変わらないまま、監理措置を例外として適用できることになったというだけです。
身体の自由を保障することが国際人権基準の基本姿勢であることを確認し、 収容は目的を達成するための例外的かつ最後の手段であると位置付けるべきです
・出入国管理における収容は、適法性、必要性、比例性、無差別の原則 に則って行われた場合に限り正当化されます。
収容の正当性をこれらの原則に照らして評価するためには、 収容する目的が法律で明確に規定されていることが前提となります。 収容を原則としている現行の制度を改善するためには、収容する目的を明確に定めた上で、 これらの原則に照らして個別に評価しなくてはなりません。

2.収容の期間に上限を設けること
上限期間を定めない出入国管理上の収容は、恣意的拘禁であり、国際法違反であるため、 退去強制令書に基づく収容期間の上限を法律で明確に規定することが求められます。 送還を目的とした収容は、送還手続きをすぐに実行するために必要な数時間 (例えば、移送のための飛行機や船を待つ時間)といった可能な限り短い時間に限るべきです。 また、収容期間が法で定める上限に達した場合は、すぐに釈放しなれければなりません。
出入国管理上の収容期間の上限を入管法に明記する
期間は収容の目的を達成するために必要な、可能な限り短い時間に設定する 収容期間の上限に達した場合はすぐに釈放することを入管法に明記する
現行制度の下では、退去強制事由に該当する場合、送還されるまで入管施設に収容されることになります。 国外への「送還が可能なときまで」収容ができると入管法に定められているため、 実質的には無期限に収容されてしまう仕組みになっているのです。 例えば、帰国すると本国で人権侵害や迫害を受けるおそれがあるために帰国できない人は、無期限に収容されてしまいます。 改正法案でも、この「送還可能なときまで」収容できるという規定が維持されており(52条8項)、 無期限収容が可能だとする法律の欠点は是正されていません。
収容期間に上限が定められていないことが国際法違反であると、日本政府は国連諸機関から再三の勧告を受けており、 2020年8月には恣意的拘禁作業部会からも指摘を受けました。 無期限に収容できる現行法の規定は国際法違反であり、今回の改正を期に改めるべきです。
3.収容の開始・継続について司法審査を導入すること
自由権規約9条4項は、収容される者の司法へのアクセスを保障しています。 ですから、収容の是非を判断する機関と収容を執行する機関は同一であってはなりません。
身体の自由を制限する決定は裁判所が行うべきものです。効果的で独立公正な審査の機会を担保するためにも、 収容の決定に司法審査を導入し、次の点を法律に明記するべきです。
収容を開始する際の適法性、収容を継続する必要性および比例性に関して、裁判所が遅延なく決定を行う 裁判所が違法と判断した場合は収容からの釈放を裁判所が命じる このような司法審査は定期的もしくは被収容者の要求に応じて実施する
収容という手段を用いて「身体の自由」を制限する措置については、出入国在留管理庁(入管庁)という 一行政機関に無制限の裁量が与えられています。また、収容を一時的に解く措置として、 「仮放免」という制度がありますが、仮放免を許可する権限も入管庁にあり、 収容からの釈放も一行政機関の判断で行われています。しかも、仮放免で一時的に釈放されたとしても、 理由の説明なしに入管庁の判断で繰り返し再収容されることがあります。 このように、収容したり釈放したりする決定を行う権限が司法機関ではなく行政機関にあるため、 司法審査が保障されておらず国際法違反にあたるとの指摘を、恣意的拘禁作業部会もおこなっています。
しかし、改正法案では依然として収容・釈放の決定権限が入管庁に委ねられています。 収容所外で監理人の監督の下で生活できる監理措置制度を収容に代わる措置として適用するとしていますが、 収容からの釈放の決定や取り消しは入管庁が行うこととされています(44条の2、44条の4、52条の2、52条の4)。 その判断の際は、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことや、「その他の事情」を考慮するとしていますが、 要件を網羅的に明記しないまま「その他の事情」という曖昧な要件が付されており、 仮放免制度と同様に、収容を決定する裁量が入管庁に残ってしまうことが懸念されます。
4.ノン・ルフールマン原則を遵守するこ
迫害を受けるおそれがある国への追放や送還は、国際的に禁止されています(ノン・ルフールマン原則)。 しかし、改正法案では難民認定申請者の送還を禁ずる条項に例外が設けられました。 例外の対象となるのは、原則として3回目以上の申請者(61条の2の9第4項1号)、 無期若しくは3年以上の実刑判決に処せられた者又は暴力的破壊主義者等(61条の2の9第4項2号)です。 アムネスティ・インターナショナル日本は、改正法案が「ノン・ルフールマン原則」に反するものであると危惧しています
。 ノン・ルフールマン原則は、難民条約だけでなく、拷問禁止条約や強制失踪条約などの国際人権法に規定されています。
日本はこうした条約の締約国ですが、ノン・ルフールマン原則はたとえ条約に加入していない場合でも 遵守しなくてはならない国際慣習法です。帰国すると人権侵害を受けるおそれがある人は、 いかなる場合であっても強制送還してはならないのです。
深刻な人権侵害に直面する可能性のある国または管轄区域へ移送されることがないよう、 送還停止の例外(61条の2の9第4項)は設けるべきではありません。 特に、帰国すると深刻な人権侵害に直面するという相当な根拠が認められる場合には、 個人を送還するという決定において効果的かつ独立公正な審査の機会を保障すべきです。
外国人排除ではなく基本的人権の尊重を
身体の自由は、人が尊厳をもって生きていくために最も重要な基本的人権の一つです。 また、ノン・ルフールマン原則は難民保護の礎となる国際慣習法であり、いかなる場合でも遵守することが求められます。
収容・送還に関する専門部会が設置された当初から、入管庁は「長期収容の問題は送還の促進で解決していくべき」 との立場をとっています。
改正法案の立案プロセスが、移民・難民を日本社会から排除する方針を強化することを 念頭に進められているのではないかと、この問題に携わっている弁護士、支援団体、国際人権NGOなどは危惧してきました。
国籍や在留資格に関係なく、すべての人の基本的人権を平等に尊重し、国際人権基準に則った 出入国管理及び難民認定法の改正が行われるよう、日本政府および全ての国会議員に向けて、 アムネスティ・インターナショナル日本は上述の4点を提言します。

                                   以上


ミャンマー軍クーデター
 アウンサンスーチーさんが自宅に無線機を所持していたとして輸出入法違反で訴追された。 この訴追が確かであるとすれば、軍が魔女狩りに乗り出す口実探しに躍起になっており、 楯突く者に恐怖を植え付けようとしていることを示している。
2月3日に与党・国民民主連合(NLD)の報道官が記者団に語ったところによれば、 党首アウンサンスーチーさんは違法に輸入された無線機の所持で起訴された。 有罪となれば最高で禁錮3年が科される可能性がある。勾留は2月15日まで続く。
またウィンミン大統領も、自然災害管理法第25条に定められた新型コロナウイルス危機下の 選挙運動ガイドライン違反の容疑で訴追されたと報じられている。 こちらも有罪の場合は最高で3年の禁錮刑が科される。
当局は、アウンサンスーチーさんはじめクーデター以来、恣意的に拘束されている数十人の他の人びとに対する でっち上げの容疑を取り下げ、彼らを直ちに釈放すべきである。
2月1日以来、軍は総司令官ミンアウンフライン将軍の権限で非常事態を課し、 選挙で選ばれた数多くの文官、政治家、政治活動家、人権活動家を拘束してきた。 アムネスティは2018年の報告書でミンアウンフライン総司令官を、 国軍によるロヒンギャの人びとへの人道に対する罪の主導者の1人として名指し、責任追及を求めた。 ラカイン州北部のロヒンギャの村々では、殺人、強かん、拷問、焼き討ちなどの暴力や 襲撃が繰り広げられたが、これらは、国軍の一部の部隊や兵士による単独の仕業ではなく、 上層部の指示に基づく、周到に計画された極めて組織的なものだった。
2018年のミャンマーに関する国連の事実調査団も、大量虐殺、人道に対する罪、戦争犯罪の罪で ミンアウンフライン司令官を調査し、起訴するよう求めた。

2021年2月4日 アムネスティ国際ニュース


感染症法の刑事罰への懸念
2021年1月21日 日本支部声明

アムネスティ・インターナショナル日本は、今国会で示されている 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する 法律(以下、感染症法)」の 改正案概要の一部に、新型コロナウイルス感染症の患者・感染者が入院措置や調査を 拒否した場合などに刑事罰を科す内容が含まれていることに、強い懸念を表明します。

 特に、懲役刑が含まれており、身体の自由という基本的人権を 脅かすものになっていることに危機感を禁じえません。 新型コロナウイルスの感染急拡大という緊急事態に素早く組織的に対応するために、 一時的に一定の人権を制限せざるを得ないのであれば、その場合に設けられる罰則は、 あくまで目的を達成するために必要最小限のものであることに加え、 人権を保障する相当な手段がなければならず、透明性の確保や第三者による監視などが、 事前に設定されなければなりません。
今回提案されている法改正では、刑事罰の導入が感染拡大予防に資するかどうかという点について 十分な検証もないまま議論が進められており、人権を制限する必要相当性が見出せません。 日本医学連合、公衆衛生学会、日本疫学会は、刑事罰の導入により、検査結果を隠す、 検査に行かないなど、感染コントロールをかえって難しくするような状況を 誘発するおそれがあると警鐘を鳴らしています。

 入院措置や調査を拒否する理由としては、生計手段を失うことに対する不安や 周囲からの偏見・差別などがあると報じられています。 これらの事態に対処せずに患者・感染者に責任を押し付けるような拙速な法改正の提案は、 国民を守る国家の義務をはき違えた政府による、人権を軽んじた政策であるように思えてなりません。
また、人権侵害を受けた個人を救済する独立した人権機関が設けられていない日本で、 人権を制限するような刑事罰を導入するのであれば、 恣意的な運用や警察権行使の乱用を防ぐための第三者機関による監視機能を同時に導入する必要があります。
かつて結核・ハンセン病で患者・感染者の強制収容が法律のもとで行われ、 科学的根拠が乏しい中、蔓延防止の名目で著しい人権侵害が行われてきたという 歴史の反省に立って成立したのが感染症法です。 今回の改正案は、新型コロナウイルス感染症だけではなく、その他の一部指定感染症、 将来発生しうる新しい感染症の患者・感染者も刑事罰の対象としており、 過去の悲劇が繰り返されるのではという懸念が拭えません。

感染症法の改正においては
・法の主旨に立ち返って感染者の人権が守られることを第一に考えること
・患者・感染者の入院強制や調査の強要において、刑事罰に頼らないものにすること
・法が恣意的に運用されないよう、第三者機関による監視などの保護措置を講じること
  を求めます。
                               以上


パレスチナ人へのワクチン拒否
 イスラエルでは、昨年12月23日に新型コロナワクチンの接種が始まり、 これまでに全人口の1割以上の住民が1回目の接種を終えている。 どの国よりも高い人口比の接種率が評価されている。 しかし、接種対象は、イスラエル人とエルサレムのパレスチナ人だけだ。 西岸地区とガザ地区に住む約500万のパレスチナ人は、対象になっていない。

 新型コロナ感染対策においても、イスラエルは、パレスチナに対する露骨な差別的政策を変えようとしていない。 イスラエル人には、記録的な速さでワクチン接種が進められ、500万人のパレスチナ人は除外されている。 イスラエル人の命がパレスチナ人の命よりも重いという姿勢が、これほど鮮明になるのもまれだ。
イスラエル当局は、国際法に従い、支配下に置くパレスチナ人にもワクチンを等しく配布すべきだ。 また、ワクチンをはじめとする医療品が、被占領パレスチナ地域に滞りなく届けられるようにすべきだ。
イスラエルの保健省は、被占領地域のパレスチナ人向けを含むワクチンの具体的な配布計画を明らかにしていないし、 パレスチナの保健当局が負担するワクチン費用の支払についても何も決めていない。

 新型コロナウイルス感染拡大が続く中、イスラエルはパレスチナ人への差別をやめ、 パレスチナ人がワクチン接種を含む医療的措置を受けられるようにすべきだ。 イスラエルは、ジュネーブ第4条約に基づき占領地域に医療機関や病院を設置し、医療サービスの提供、 公衆衛生の実施などの義務を負っており、感染症や伝染病の拡大対策も例外ではない。
西岸地区のパレスチナ当局とガザ地区を事実上統治するハマス政権は、 パレスチナ住民へのワクチンを独自に購入する資金がない。 そのため、国連などが主導する「COVAX (コバックス)」に期待を寄せる。 COVAXは、新型コロナウイルスのワクチンを世界各国で共同購入して分配する国際的枠組みで、 参加国には公平にワクチンが配布される。しかし、この枠組みでのワクチン配布は、まだ始まっていない。 そのため、パレスチナ人が迅速にワクチン接種を受けられるよう、 イスラエルが十分な財政的支援をする必要がある。

 同時にイスラエルは、ガザ地区の人や物の出入りを著しく制限する軍事封鎖も解除するべきだ。 新型コロナウイルス感染が拡大する中、封鎖による医療体制への影響は計り知れない。 半世紀にわたる占領と10年超の封鎖により、ガザの住民は、必要な医療を受けられなくなっている。 感染拡大と差別的ワクチン政策により、パレスチナ住民に対する差別と不平等は、深刻になるばかりだ。
イスラエルは、国際人道法と国際人権法の下、占領国としての義務を果たさなければならない。 義務とは、被占領パレスチナ地域における住民の心身の健康を極力維持することだ。 ワクチン配布政策には、排除や差別があってはならず、いかなる意思決定も虐げられている人びとへの配慮を 最優先しなければならない。人権や健康を擁護する10の団体が昨年12月22日、 イスラエルに対してワクチンが占領下のパレスチナ人にも行き渡るよう求める声明を出している。

2021年1月6日 アムネスティ国際ニュース2021年1月6日


袴田事件、高裁へ差し戻し
 特別抗告中の袴田事件について、最高裁は22日、東京高裁に審理を差し戻す決定をしました。 再審請求ではみそタンクの中から見つかったみそづけの衣類に付着した血液の色合いが、 不自然かどうかが争点の一つになっていました。袴田さんは引き続き釈放されている状態が続きますが 無罪になったわけではありません。


袴田巖さんの再収監を許さない
 12月11日(金)に「袴田巖さんの再収監を許さない」として1日行動が行われました。 2014年に静岡地裁において、再審と拘置の停止が決定され袴田さんは48年ぶりに自由の身となりましたが、 東京高裁による取り消し決定で再収監の恐れがあります。
袴田巖さんの再審無罪を求める実行委員会が、 街頭行動、最高裁・法務省への要請、国会内集会を行いました。この実行委員会には アムネスティ・インターナショナル日本も加わっています。

     銀座マリオン前で日本プロボクシング協会新田渉世さんのアピール
 


イスラエル入植地での民泊仲介
 数10億ドル(1,000億円)規模の調達を目指して10日に新規株式公開を果たした民泊仲介会社エアビーアンドビーは、 イスラエルによるパレスチナ被占領地の違法な入植地に建てられた宿泊施設の紹介をやめるべきだ。

イスラエルの入植活動は、パレスチナ人に対する人権侵害の象徴だ。 パレスチナ人の土地を奪って作られた入植地にある家屋や施設の宿泊を仲介することは、 イスラエルの人権侵害を拡大し、パレスチナの人びとの苦悩を増幅させることにつながる。

同社は2年前、イスラエルの入植地にある施設をウェブサイトの紹介欄から削除すると約束したが、その後判断を翻した。 しかし、イスラエルによるパレスチナ人の土地への入植は、国際法では戦争犯罪だ。 エアビーアンドビーは、上場を機に襟を正し、パレスチナ人から奪った土地に 違法に建てられた家屋や施設の掲載をやめるべきだ。

株式公開における不透明性
 国連は今年初め、イスラエルの入植地に関りのある事業を行う企業100社以上を 載せたデータベースを公表したが、その中の1社がエアビーアンドビーだった。
しかし、エアビーアンドビーが株式公開に先立ち米国証券取引委員会に提出した有価証券届出書には、 入植地を対象とする事業や国連のデータベースに掲載されている事実が、触れられていなかった。 また、法律上や世評上のリスクを株主に告知する「リスク要因」欄にも記載されていなかった。
エアビーアンドビーの株式は、投資信託や年金基金の運用先として世界で購入されることが予想されるが、 多くの人は、そうとは知らないまま間接的にエアビーアンドビーの株を長期間保有することになる。 また、エアビーアンドビーの株式を引き受ける証券会社は、 株主向け企業情報に虚偽がないことを確認する責任がある。

エアビーアンドビーの恥ずべき心変わり
 エアビーアンドビー、トリップアドバイザー、エクスペディア、ブッキングドットコムの4社は、 パレスチナ被占領地の宿泊施設や観光名所を旅行者に紹介し、パレスチナ人への人権侵害を増長している。 アムネスティは2019年1月、このことを調査で明らかにした。
その前年、エアビーアンドビーは、東エルサレムを除くヨルダン川西岸地区のイスラエルの入植地を パレスチナとの紛争の舞台とみなし、入植地の物件の紹介をやめると発表していた。 「決定基準の一つは、掲載が人的苦痛をもたらしているかどうかだ」と説明した。 しかし、2019年4月、度重なる訴訟を受けて、この決定を覆し、 「掲載を継続する。ただし、手数料は受け取らない」と釈明した。 同社はその後、この地域での仲介で得た利益を寄付すると言い出した。 しかし、仲介行為自体が、被占領地域の観光事業を促進し、 パレスチナ人の権利と生活を踏みにじることになることを、同社は認識すべきだ。

入植地拡大の懸念
 現在、イスラエルの入植地は拡大しつつあり、今年中には、数千戸の住宅が新たに建設される予定だ。 イスラエルが住宅数を拡大する背景には、米国という強力な後ろ盾があるというのがもっぱらの見方だ。
先月、ポンペオ国務長官が、イスラエル入植地のワイナリーを訪問した。 同氏は1年前、「米国はイスラエル入植地を国際法違反と考えていない」と語っており、 訪問は、その主張を自らの行動で示したものと思われる。

イスラエル軍は、半世紀以上にも渡り、現在の被占領パレスチナ地区を占領している。 この間、5万戸以上の家屋が破壊され、何万人ものパレスチナ人が自宅を追われた。 一方で、60万人以上のイスラエル人が、パレスチナから奪った土地に 開拓された約250の入植地に移住した。多くの入植地には、入植者専用道路が走り、軍が警備についている。

イスラエルが収奪した土地は、過去50年間で約1,000平方キロメートルにもなる。 土地を追われたパレスチナ人は、住居、生活、仕事、教育などの権利を著しく損なわれ、 パレスチナの経済も活力を失う一方だ。

いかなる企業も、人権侵害の片棒を担いではならない。 エアビーアンドビーは、イスラエル入植地とのビジネス関係を断ち切らない限り、 評判をひどく落とすことになる。

2020年12月10日 アムネスティ国際ニュース


外国人の長期収容に終止符を
 12月9日アムネスティ・インターナショナル日本は法務大臣と出入国在留管理庁長官に 外国人の長期収容に対する要請書を提出し、佐々木出入国在留管理庁長官と意見交換をしました。

                         2020年12月9日

法務大臣 上川 陽子 殿
出入国在留管理庁長官 佐々木 聖子 殿
              公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
                        事務局長 中川 英明
「外国人の長期収容に終止符を!」要請書

法務省および出入国在留管理庁の下で行われている長期収容・送還の問題においては、 国際人権基準と人権に関する国際法体系が軽視されているのではないかとの懸念を アムネスティ・インターナショナル日本はもっています。 国際人権基準と人権に関する国際法体系は、日本に対しても法的拘束力のあるものです。

国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会に対して申し立てを行った外国人2人を 長期にわたり繰り返し収容した入管庁の対応について、同部会は2020年9月23日付の意見書の中で 「恣意的拘禁を禁止する国際法に違反する」との見解を示しました。 さらに、この意見書は、出入国管理及び難民認定法を国際人権基準に則って改正することを求めています。

私たちは、難民認定申請者を含む在留資格のない外国人を入国管理上の収容および 送還に起因する人権侵害から守るために、次の3点を日本政府に要請します。

1 ノン・ルフールマンの原則をいかなる場合でも遵守すること
2 出入国管理上の収容は必要な短期間に限るよう、収容期間に上限を設けること
3 抗議活動を行う収容者を仮放免で釈放し、短期間の後に再収容することはやめること

アムネスティ・インターナショナル日本は、2016年に「IWELCOME」キャンペーン、 2020年に「外国人の長期収容に終止符を!」キャンペーンを開始しました。
このキャンペーンを通じて、難民の受け入れを求める署名に5,001筆、 上記3点を求める署名に12,570筆の署名が寄せられました。
移民・難民の人権保護を求める計17,571筆の賛同署名をお届けいたします。 市民社会の声を聞き入れ、国際人権基準に則った法改正をしてくださいますようお願いします。
                                    以上


あいまいな法律で不当に処罰されるデモ参加者
 フランスで、犯罪要件があいまいな法律が乱用され、平和的なデモ参加者多数が逮捕・起訴されている。 アムネスティは新たな調査報告書で、新型コロナウイルス対策で抗議活動が全面的に禁止され、 違反した人たち数百人が罰金を科せられてきたことを明らかにした。 報告書ではまた、2018年から広がっている抗議運動の中、あいまいな法律の下で、救急隊員やジャーナリスト、 人権活動をする人たちが標的にされてきたことも指摘している。

何千人もの人たちが犯罪とみなされるべきではない行為によって、不当に逮捕、勾留、起訴されてきたのだ。 風船を放とうとしたり、横断幕を持ったりしただけで拘束された人もいる。 フランスでは、ここ数年、「黄色いベスト運動」、地球温暖化をめぐるデモ、 米国でのジョージ・フロイドさん殺害に触発された警官の不処罰と 人種差別への反対運動など、全国的な抗議活動が急増している。

≪あいまいな法律≫
 2018年11月からの9カ月間で、黄色いベスト運動の参加者11,203人が、刑事施設に拘禁された。 2018年・19年の2年間でデモ参加者を含む4万人以上が、あいまいな法律の下で有罪となった。 こうした法律では「公務員の侮辱」「暴力を標榜するグループへの参加」 「許可要件を満たないデモの実施」などを犯罪と定めている。

ある労働組合の幹部はこの2年間で、通常の組合活動の中で5回も罰金刑を言い渡された。 ジャーナリストの男性は昨年4月、黄色いベスト運動を撮影中に拘束された。暴行、顔を隠した、 暴力行為を準備していたという容疑で起訴されたが、その後、無罪となっている。
昨年、公務員侮辱罪で有罪判決を受けた人は、デモ参加者を含めて20,280人だった。 彼らは、何が「侮辱」にあたるのかがあいまいな法律に違反したために、 1年以下の刑と15,000ユーロ以下の罰金刑を受けた。
昨年5月、南西部の都市ナルボンヌで警察の暴力に抗議するデモがあった時、 「(幸運の印である)スズランにイエス、ゴム弾にノー」と書かれた横断幕を掲げた4人が、 「侮辱罪になるぞ」と警告された。南東部の都市マルセイユでは、女性を警棒で殴ろうとした警官を 怒鳴りつけた男性が、侮辱罪で罰金刑を言い渡された。
≪マスクなどの着用をめぐる混乱≫
 警察による催涙ガス、ゴム弾、催涙弾の使用が急増するにつれ、デモ参加者は、 マスク、ヘルメット、防護眼鏡を着用するようになった。
これに対して、当局は昨年4月、デモなど抗議活動時のマスクや覆面など顔を覆う行為を 全面的に禁止する措置を取った。禁止後の7カ月間で、210人の逮捕者を出し、 昨年一年で有罪を言い渡された人は41人にのぼった。 催涙ガスやゴム弾から身を守るゴーグルやマスクを所持していただけで起訴された人もいた。
マスクは、今や新型コロナウイルスの感染対策に不可欠であり、 デモで顔を覆う行為の禁止は、極めて大きな混乱と困惑を招いている。

「暴力を標榜するグループへの参加」の規定でも、数百人が有罪判決を受けた。 あらゆる状況に対応するために規定された犯罪要件が極めてあいまいなため、 治安当局は、将来、犯罪を引き起こす可能性があるとみなしただけでも、市民を逮捕・起訴できるようになった。 黄色いベスト運動に参加した女性の1人は、フランス革命記念日にシャンゼリゼで風船を膨らませただけで、 「暴力を標榜するグループへの参加」容疑で拘束された。

≪集会の自由への攻撃≫
 逮捕・起訴は、集会の自由の権利を危機にさらし、抗議活動を委縮させている。 これまでデモに参加していた人の多くが、デモへの参加をためらい、 参加回数を減らし、大規模な集会を避けるようになったという。
社会を変えるために市民が団結する伝統を持つ国が、市民の抗議活動を処罰するのは、 皮肉としかいいようがない。 マクロン大統領が、選挙で平和的な集会の権利を守ると公約してから3年、 抗議活動はかつてない攻撃にさらされている。
法律にもとづくデモ参加者の取り締まりは、デモ隊を暴力的に鎮圧するよりは目立たないだろうが、 市民の権利を損なうことには変わりない。当局は、平和的に行動する市民の犯罪者扱いをやめ、 集会の権利の障害となるすべての法律を改正すべきだ。

2020年9月28日 アムネスティ国際ニュース


大規模監視による犯罪予測実験 即時停止を
 オランダで、法執行機関により犯罪予測アルゴリズムに基づく治安活動の実証実験が 全国的に広がりつつある。これは、特定の人物が犯罪を行う危険性や特定の地域で 犯罪が起きる危険性を数理モデルを使って算定し、危険性が高いとみなされた地域や 個人を重点的に警戒していくというものだが、大規模監視と民族差別をもたらしている。 警察はこの実験をただちにやめるべきだ。

 アムネスティは、オランダ南西部の都市ルールモントで行われている実証実験の一つ 「検知プロジェクト」を精査した。その結果、予測に基づく取り締まりは、 人権への脅威になることが確認された。
実験では、ルールモントの市民が同意なく「モルモット」にされて大規模監視の対象となっている。 さらに、その設計・開発には東欧の人たちに対する民族差別が内包されている。
最近までサイエンスフィクションの世界の話だったことが、オランダ全土で現実のものとなりつつある。 この予測的取り締まりによる市民の無差別で大規模な監視は、明らかな人権侵害であり、 治安上とはいえ決して正当化できるものではない。
検知プロジェクトのような実証実験は全国で急速に広まっているが、 人権に及ぼす影響を踏まえた保護措置の整備は、まったく行われていない。 オランダ国会は、根本的に欠陥がある犯罪予測システムの利用を直ちに中止する措置を取るべきだ。

 犯罪予測システムでは設計・開発において客観性と中立性がしばしば強調されている。 しかし実際は、数理モデルやアルゴリズムに偏見や固定観念が入りこんでおり、特定の集団に高い危険度を示す結果となる。
こうした技術を導入する前に、まず人権への影響を検証すべきだ。 今までのところ、オランダの警察で使用されているシステムは、いずれも包括的な人権評価を受けていない。

≪検知プロジェクト≫
 警察当局は、ルールモントにおける「検知プロジェクト」の狙いを、スリや万引などの犯行を 各地で重ねる強盗団(移動強盗団)による犯罪を予測し、防止することにあると説明している。 また、「プロジェクトは、過去の犯罪データに基づく客観的で中立的なものだ」と主張する。
だがアムネスティの分析では、設計自体が差別的であり、偏見が反映されている。 このプロジェクトでは、主に移動強盗団に狙いを定め、「スリや万引は、特に東欧出身者の犯行であることが多い」と 定義されている事実が、とりもなおさず民族差別的だ。

警察は、カメラなど各種センサーを使って、ルールモント市内や周辺を車で移動する人びとを監視し、 車種や車の移動特性の情報を集める。収集した情報をもとにそれぞれの車の「危険度」をアルゴリズムで計算し 得られた数値をもとに、車の運転者や同乗者が窃盗などの犯罪を行う可能性を予測する。 予測する上での指標の一つが、車両や車内の人物が東欧諸国から来たかどうかということだ。
危険度が高いと出た車は、警察に止められ、身分証明書の提示を求められ、職務質問を受ける。 オランダの法律には、正当な理由がない停車や持ち物検査から市民を保護する規定がない。

検知プロジェクトのもと、ルールモントの全市民と訪問者は、同意なく実験のモルモットにされている。 さらに、疑うべき集団として東欧の人びとが標的にされており、実験は本質的に差別的性格を持っている。
検知プロジェクトおよび類似の実証実験は、プライバシーと個人情報保護の権利の明らかな侵害であり、 合法性と非差別の原則から外れており、中止すべきだ。アムネスティはまた、 オランダ当局に対しこうした実証実験で、何人がどのような影響を受けたかを検証して公開すること、 再発防止と影響を受けた人への補償の取り組みを求めている。

2020年9月29日 アムネスティ国際ニュース


インターネット上の暴力や虐待から女性を守る手立てを
 アムネスティは2018年、ツイッターで女性たちが誹謗中傷を受け、深刻な被害を被っている問題を 調査報告『有害なツイッター』をまとめて公表した。 この報告の中で、ツイッター社に対し、ツイッターを女性が安心して意見が言える場に するために同社が取り組むべき諸策を提言した。

ツイッター社は、この提言にどれだけ対応してきたのか。 アムネスティは今回、ツイッター社の対応状況を10項目に分けて評価した。 女性に対するオンライン上の嫌がらせに対処する上でとりわけカギとなるはずの項目だ。
10項目のうち完全に実施されたのは、たった1項目だけだった(被害申し立てのプロセス改善)。 他の項目についても進展はみられるものの、まったく手をつけていないものもあり、対策を一層強化する必要がある。

10項目とその評価についてはアムネスティ・日本のサイトへ(英文)

 2018年の報告後も、アムネスティは、アルゼンチン、インド、英国、米国などで女性が ツイッター上で受ける悪質な嫌がらせや誹謗被害にさらされている実態を明らかにしてきた。 女性たちもツイッターで受けた嫌がらせに声をあげ、ツイッター社の対応不足を批判してきた。

執拗な嫌がらせや暴言は、平等に、自由に、恐れずに自分自身を表現する権利を損なう。
オンライン上の虐待の影響を大きく受けているのが、民族的少数派の女性、宗教的少数派の女性、 社会的に弱い立場にある女性、レズビアン、バイセクシュアル、トランスジェンダーの女性、 ノンバイナリー(自身の性自認・性表現に「男性」「女性」といった枠組みをあてはめない人)、 障がいのある女性などだ。こうした複数の差別要因が重なり、被害が大きくなる。
インドの著述家で活動家のニーナ・カンダサミさんは語る。
「複数のカーストの血を持つタミル人で、差別的カースト制度に反対の声を上げる女性は、 ツイッター上では爆発を生む混合物のようなものです。私は、人種差別主義や女性嫌悪にもとづく 強かんの脅しも含めて嵐のような誹謗中傷を受けています。 ツイッター社は、なかなか事態の成り行きに追いつかないようで、 女性に対するさまざまな嫌がらせに対応しきれていません。 ツイッターは強力な表現の場ですが、女性たちにとってクリーンで安全な場にする努力がもっと必要です」

 意味のあるデータが十分提供されていないために、問題の全容を把握することすら困難な状況だ。 たとえば、利用者からの被害報告の詳細な国レベルの内訳は提供されておらず、性別や人種に基づく虐待など、 特定の種類の被害を訴えた利用者数もわからない。
国や言語ごとに不適切なコンテンツを監視するコンテンツ・モデレーター(監視業務に携わる人)の 数などの情報開示にも消極的だ。 また、女性への虐待を特定する作業を自動化しているが、プログラムの内容や実施状況についての 透明性を高める必要がある。
利用者からの被害申立てへの対応では、対応手順や解決方法などについて利用者への説明機会を増やした。 利用者が、プライバシーやセキュリティーに対する意識を高め、 虐待が引き起こす危害の実情を学ぶという課題に関しては、現在取り組み中だ。

 ツイッター社は、差別や暴力を受けずに暮らす権利や表現と意見表明の自由の権利を はじめとする人権を尊重する責任がある。同社には、何百万という女性利用者に、 「ツイッターは本当に変わった」と思わせるような変化を起こす力がある。
ジャック・ドーシーCEOは、言行を一致させ、女性がツィッターを安心して利用できる プラットフォームにするよう取り組んでいることを行動で示すべきだ。 ツイッターは女性に対する虐待を拒否する、という姿勢が、誰の目から見ても明らかなほどに変わるまで、 アネスティは同社への申し入れを続ける。
ツイッター社の回答
アムネスティの指摘に対して、ツイッター社は、今後も対応が必要であることを認めた。 一方で、「人手によるモデレーションとテクノロジーを組み合わせることで、 オンライン上の虐待に先手を打てる」とも説明している。 国や地域ごとのデータの公表については、「むしろ曲解を招き、問題について誤解を与えるおそれがある」と反論している。
アムネスティは、この懸念が無視できないことは認める。しかし、だからといってデータと情報に対する対応を 明らかにしないでいいということにはならない。 同社の人権に対する責務とは、誹謗中傷や嫌がらせなどの訴えをどう扱っているかについて、 透明性を確保する義務があるということだ。

2020年9月22日 アムネスティ国際ニュース


ミャンマー国軍の資金調達にグローバル企業が
 少数民族に対して国際法上の罪や人権侵害を犯しているミャンマー国軍の資金調達に、 グローバル企業が関係していることが、アムネスティの調査で明らかになった。

 アムネスティが入手した文書によると、国軍は、ミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)の株を保有し、 巨額の資金を得てきた。MEHLは、鉱業、ビール、タバコ、衣料品などの製造、銀行業など営む複合企業だ。 日本のキリンビールホールディングスや韓国の鉄鋼大手POSCOなど国内外の多数の企業と提携関係にある。
同社の株主資料によると、国軍の複数の部隊が、株式のおよそ3分の1を保有し、 1990年の創業以来毎年、配当を受け取ってきた。 また、同社の取締役会は、国軍の幹部で構成されている。
これらの資料は、国軍がどのようにして巨大企業から利益を受けてきたかを示す新たな証拠だ。 MEHLは、あずかり知らないところで国軍の人権侵害を資金面で支えているのではない。 両者は、切っても切れない関係にあるということだ。
MEHLの事業活動から利益を得ている軍人の中には、ミャンマーの近年の歴史の中で最悪の人権侵害の加害者もいる。 例えば、ロヒンギャの人びとに対する民族浄化作戦を指揮した国軍トップのミンアウンフライン総司令官は、 2011年にMEHL株を5,000株保有していた。
議論の余地のないこの証拠を前に、MEHLと提携する企業は、同社との関係を断たざるを得ないだろう。

《グローバル企業とMEHLとの結びつき》
 MEHLは提携先と合弁事業を起こしたり、収益分配契約を結んだりする。 その事業収益が、株主であるMEHLに還元され、さらにMEHLの株主に分配される。
アムネスティは、MEHLと提携する次の8社に質問状を送った。
  エバーフローリバー・グループ(EFR)(ミャンマーの物流企業)、カンボーザ・グループ(ミャンマーの複合企業)、 キリンホールディングス(日本の飲料メーカー)、イノ・グループ(韓国の不動産ディベロッパー)、 パン・パシフィック(韓国の衣料製造輸出会社)、ポスコ(韓国の鉄鋼メーカー)、 RMHシンガポール(シンガポールの投資会社・ミャンマーでたばこ事業に出資)、万宝鉱業(中国の鉱業会社)だ。
前向きな回答を返したのは3社だけだった。 パン・パシフィックは、「アムネスティの調査と昨年の国連事実調査団の報告を受け、 MEHLとの事業提携を解消する手続きを進めている」と回答し、 カンボーザ・グループとキリンホールディングスの2社は、「提携関係を見直している」と答えた。
残る5社は、具体的な対応に触れなかったか、回答そのものを送ってこなかった。 回答の全文(英文)は、調査報告書で見ることができる。
8社はすべてMEHLと提携してミャンマー国内で事業展開しているが、国際的に知られる企業もいくつかある。 キリンホールディングスは、世界のビールメーカーの一角を占め、 その商品は、キリン、サンミゲル、ライオン、ファットタイヤなどのブランドで世界の街角で販売されている。 ポスコは世界最大級の鉄鋼メーカーで、自動車、建設、造船業界向け鋼材を生産する。

《軍とMHELの隠された関係》
 MEHLは、1990年にミャンマーの軍事政権により設立され、今も、軍人・退役軍人により所有・経営されているが、 国軍や軍人が実際の経営にどう関わっているかは、ベールに包まれている。
アムネスティは、MEHLから国軍への資金の流れに関する新たな事実を示す文書2点を入手した。 1点目は、MEHLが今年1月、ミャンマー投資企業管理局に提出した書類だ。 この文書によると、同社の個人株主は38万1,638人で、全員が軍人・退役軍人だ。 「機関株主」は1,803で、小隊、大隊、師団、戦争退役軍人協会などだ。
2点目は、2010年度(2010年4月〜2011年3月)の株主に関する機密文書だ。 ここには、株主の個人情報と彼らが設立年から2011年までの20年間に受け取った配当金が記載されている。
この文書は、アムネスティとジャスティス・フォー・ミャンマー(JFM・正義と説明責任を求める同国の活動グループ)が、 共同で入手した。同文書の内容はJFMのウェブサイトに掲載されていたが、9月1日、当局により閲覧できなくなった。 運輸・通信省は、「このウェブサイトが、フェイクニュースを拡散させている」と主張するが、 JFMは、「批判意見の封じ込めだ」と批判した。
 2011年までの20年間で支払われた配当金の総額は、1,070億ミャンマーチャット(約18億米ドル※・当時の公定レート)を超える。 このうち、950億ミャンマーチャット(約16億米ドル)が、国軍の部隊に送金されている。
2点の資料は、国軍の部隊と幹部がMEHLの株主として名を連ね、多額の資金を受け取っていたことを示す動かぬ証拠だ。
例えば、2010年度の報告書で、ラカイン州での軍事行動を指揮する西部司令部下の95の部隊が、 それぞれ株主として登録され、430万株以上を保有し、12億5,000万ミャンマーチャット(約2億800万ドル)以上の 配当を受け取っている。
また、株主として登録されている部隊の中には、アムネスティの調査で、ラカイン州でのロヒンギャ虐殺、 カチン州、シャン州北部での戦争犯罪への関与が判明した2師団も、入っている。
ミャンマー投資企業管理局への報告書にも、戦争犯罪に関わった幹部を含む司令官らの名前が株主として記載されている。 ロヒンギャの人びとへの集団虐殺などを指揮したとして国連が調査・訴追を要請している、 ミンアウンフライン総司令官もその一人だ。2010年度に5,000株を保有し、 150万ミャンマーチャット(約25万米ドル)の配当金を受け取っている。
軍部隊が受け取った配当の使途は知る由もないが、金額の規模と継続性からすると、軍の維持費に使われた可能性が高い。

MEHLは、株主への配当という形で国軍に資金を提供し、 人道に対する罪や戦争犯罪の軍事行動を資金面で支えていると言える。
同社と関わるすべての企業は、国軍の人権侵害に加担するリスクを背負っているのであり、 早急に同社との関係を断つ手続きを進めなければならない。
MEHL内で取締役会を監督する「後援者グループ」に人権侵害に関わった当の将校らが入っていることからしても、 MEHLが自ら組織改革に乗り出すことは期待できない。提携企業に対して改革に向けた姿勢も見せず、 透明性のある関係構築を進める気もない。

 提携各社には人権を尊重し、MEHLとの事業展開の先にある人権への悪影響を防止・軽減する責任がある。 MEHLが改革に消極的であることを考えれば、MEHLとの関係を見直し、関係を解消すべきだ。 ミャンマーの社会、経済、人権に対する潜在的な悪影響を正しく評価した上で、 関係を断つ際には、これらの悪影響を軽減するための措置を講じることが求められる。

 アムネスティはミャンマー政府に対し、軍と経済との結びつきを断ち切るための介入を要請している。 その一環として、MEHLの所有と経営を徹底的に改革しなければならない。 政府はまた、MEHLの収益を基に基金を設立し、国軍による人権侵害の被害者を補償する制度を作るべきだ。

2020年9月10日 アムネスティ国際ニュース
※ミャンマーでは2012年まで公定レートは固定相場制がとられており、対米ドル換算は現在と大きく異なる。


SNSでの女性インフルエンサーへの差別・投獄
 エジプトの検察当局は、オンライン空間の統制の一環として、女性の言動を取り締まり、 女性の経済的な自立を奪おうとしている。その矛先が女性インフルエンサーたちに向かっている。

4月以降で、10人のTikTokインフルエンサーが逮捕され、「わいせつ」や「不道徳」だとして、 悪名高いサイバー犯罪法などの過度にあいまいな法規定に違反した容疑で裁判にかけられている。 すでに有罪判決を受けた女性もいる。彼女たちは、SNSのインフルエンサーとして、 少なくとも数十万人、多い人で数百万人のフォロワーを持っている。
アムネスティは、弁護人や家族らへの聞き取り、捜査資料、裁判の記録などから、 女性インフルエンサーたちの人権を踏みにじる事実の詳細を明らかにした。
当局は、インターネットで活動する女性を取り締まるのではなく、エジプトで頻発している女性や少女に対する 性暴力やジェンダーに基づく暴力を取り締まり、法と社会的慣習における ジェンダー差別の撲滅に向けて、本腰を入れて取り組むべきだ。

4月末、TikTokの女性インフルエンサーが初めて逮捕されたとき、 検察は、「社会の原則と価値を損なう恥ずべき違法行為に対しては、徹底的に取り締まる」との声明を出した。 検察当局は4月末から5月初旬にかけて、「社会規範に背く破廉恥な犯罪の取り締まりを断固続ける」 「邪悪な勢力により侵害されつつある新たなサイバー空間の境界を死守する」などとの声明を出した。

《女性としての魅力を表現して裁判に》
6月に入ると、ファッションや言動、社会への影響力、投稿での収入などを 問題視された女性インフルエンサーたちが訴追されている。 4人が「伝統的家族観への背信」「わいせつや放蕩の挑発」などのあいまいな罪で2年 あるいは3年の実刑判決を受けた。いずれの被告も控訴している。別の6人は、同様の容疑で裁判待ちだ。
女性たちは、その言動に怒り狂ったとみられる男たちに訴えられ、 内務省道徳局の捜査を受けて、裁判にかけられている。

ベリーダンサーの女性は裁判で、「女としての魅力を示す」ビデオと写真集を出し、 「性的に挑発する表現と動き」などの罪に問われて有罪判決を下された。 法廷では、女性の水着姿の写真が、証拠品として示された。
エジプト当局は、TikTokのインフルエンサーの女性たち全員を即時無条件に釈放し、 彼女たちに対する起訴を取り下げなければならない。 また、「道徳」あるいは「良識」という名目で身体の自己決定権、プライバシーの権利、 表現の自由の権利を制限するすべての法律を撤廃または改正すべきだ。 これらの権利の行使に対して罪を問うのは、国際法に違反するだけでなく、 社会における女性への差別と暴力に拍車をかけるものだ。

《犯罪者扱いされる強かん被害者》
5月22日、18歳のインフルエンサーは、インスタグラムで助けを求めた。 あざだらけの顔で、「殴られ、強かんされ、勝手にビデオを撮られた」と訴えた。
4日後、暴行犯6人とともに彼女も逮捕された。「伝統的家族観への背信」と「放蕩の挑発」に 違反したと主張する暴行犯の言い分を鵜呑みにした検察官の取り調べは、8時間にも及んだ。
検察は、性暴力の被害者たちが警察に通報せずにSNSに投稿したことを非難している。 だがこの18歳のインフルエンサーが警察に被害届を出そうとしたところ管轄違いだと取り合ってもらえなかった。
性暴力の被害を訴えた女性の罪を問うのは、明らかに正義に反している上に、 性暴力に声をあげ、警察に届け出る意欲を削ぐだけだ。 被害女性に適切な保護や心の治療の機会を迅速に与えると同時に、早急な捜査と一刻も早い犯罪者の 拘束を心掛けるべきだ。

同様のケースは他にもある。女優・モデルの女性が、元夫が結婚中に撮ったプライベート写真を、 離婚後、脅迫目的でSNSに投稿したとして、元夫を告訴したが、逆に、流出した写真を証拠として 「伝統的家族観への背信」の罪に問われ、今年7月、実刑3年と罰金30万EGP(約190万円)を言い渡された。

《問題視されるSNSによる自活》
アムネスティの調査は、検察が女性インフルエンサーを訴追する背景には、 ソーシャルメディアでの女性の知名度と、TikTokなどのSNSで女性が自活できるほど 収入を得ている状況があることを示唆している。
訴訟の中には、SNSでの人気を利用して少女に影響を与えたとして罪に問われている例もある。 この被告人女性は、人身売買の容疑にも問われている。インスタグラムに投稿した動画の中で、 視聴者数に応じて報酬が得られる動画アプリLikeeへの動画投稿を他の女性に勧めたためだ。 アムネスティはこの動画を検証したが、国際法上の犯罪に結びつけるだけの証拠ではなかった。
担当した検察官は、「厳しい社会環境の中、経験も能力も精神力も不足しているために、 手段を選ばずに名声を得ようとした」と述べていた。

2020年8月13日 アムネスティ国際ニュース


ミャンマー(ビルマ)国軍無差別空爆
 アムネスティは5月と6月、2州の住民20人以上にオンラインで聞き取りを実施、 また衛星画像を分析し、国軍による人権侵害行為を収めた動画も検証した。
空爆があった地域の住民は、当局による回線切断で1年以上もインターネットを使えず、 新型コロナウイルス感染の脅威を知ることができず、人道支援情報も得ることができない状況にある。 ラカイン州は、5月までは感染をほぼ免れていたが、6月に入ると感染拡大が始まった。
当局が、全土に外出自粛を呼びかけていた時、国軍は、ラカイン州とチン州で 戦争犯罪にあたる住宅の焼き討ちや無差別殺害を行ってきた。 国軍による空爆は、住民に甚大な被害をもたらした。 ミャンマー国軍を非難する国際的圧力が高まっているにもかかわらず、 国軍が無差別殺害などの残虐行為を今も繰り返している事実は、 国軍の幹部内でいかに不処罰の根が深いかを示している。

ラカイン州で昨年1月、ラカイン民族武装グループのアラカン軍が、 警察詰所を襲撃したことを受けて、政府はアラカン軍「せん滅」命令を出し、 国軍が軍事作戦を開始した。その後、武力紛争が激化し、数十万人もの住民が家を追われた。 国連高等人権弁務官は、ここ最近の戦闘激化や国軍の攻撃予告で、 あらたにおよそ1万人が避難していると推定する。
3月から5月にかけて、政府が新型コロナ対策に取り組んでいる最中、紛争は激しくなり、 国連によると、紛争による住民の死傷者は、5月だけで30人を超えた。 ラカイン州とチン州での戦闘の犠牲者は、ほとんどが仏教徒で、一部にキリスト教徒もいる。 イスラム系ロヒンギャの人びとも人権侵害を受けていると報道するメディアもある。

拘禁や暴行の人権侵害
 ラカイン州の住民の証言によると、国軍兵士らは、アラカン軍と関わりがあると みなした住民を恣意的に拘束している。恣意的拘束は、複数の地域で確認されている。
拘束された男性の一人は、数日間、激しい暴行を受けた上、ナイフを喉元に突き付けられて アラカン軍との関係を認める自白をさせられた。その後、反テロ法違反の容疑で起訴されている。
ここ数カ月、国軍が、紛争に批判的な記者やアラカン軍に関係するとみなした人物に対して、 反テロ法違反容疑をかけることが増えている。拘束した住民への暴行は、日常茶飯事だ。 5月には、目隠しされた住民らが暴行を受ける様子を撮った動画が拡散し、 国軍が暴行を認めざるを得なくなることもあった。
別の郡区の女性の証言によると、ラカイン州で3月、兵士たちが彼女の夫を含む10人を拘束し、 抵抗する住民に暴行を加えた。兵士が所属する部隊は、アムネスティの以前の調査で、 重大な人権侵害を犯していたことが明らかな軽歩兵師団だった。
兵士たちはまた、日常的に住民の住居を襲い、私有物の奪取や破壊を繰り返している。 修道院を接収して暫定の駐屯地にすることもある。昨年も同様の行為が行われていたことは、 アムネスティの調査で確認されている。
住民の証言によると、米、まき、毛布、衣類、携帯電話、貴金属品などを強奪され、 入り口の戸や窓、仏壇は破壊され、家畜は、惨殺されるか持っていかれた。 国軍は、村々で住宅や学校を焼き打ちし、破壊し、死傷者を出した。
一方、アラカン軍もこれまでと同様、人権侵害を繰り返しているものと考えられる。 アムネスティは、新型コロナウイルスの流行や紛争による移動規制で住民との接触が難しかったため、 アラカン軍の戦闘と人権侵害に関する現地調査を実施できなかった。 しかし、複数の報告によれば、アラカン軍は今も、国軍との戦闘で住民を危険にさらし、 脅迫や拘束などを行っている。

 国軍による人権侵害が再び深刻化する中、アムネスティは、国連安全保障理事会に対し ミャンマーの人権状況を国際刑事裁判所に付託するよう、あらためて要請する。 空爆とインターネット遮断は、つい最近のことだが、国軍の常軌を逸した人命軽視は、今に始まったことではない。 ミャンマー国軍による残虐行為は、今も続いている上に、その残忍な手口は、ますます巧妙になっている。 国軍の人権侵害は、明らかに国際刑事裁判所が対応すべき問題だ。
国連安保理は、行動を起こさなければならない。

2020年7月8日 アムネスティ国際ニュース


入植地の併合は国際法違反
 米国のトランプ大統領の和平提案を受けて、イスラエルは入植地のイスラエルへの併合計画の 審議を7月1日から始めた。
併合はあからさまな国際法違反であり、何十年にもわたって行われてきたパレスチナ人に対する 人権侵害を固定化するだけだ。併合に向けた動きは、イスラエルが国際法を度外視する姿勢の表れだ。 ヨルダン川西岸地区の併合計画を直ちに取り下げなければならない。

国際社会は、この併合計画、そしてイスラエル政府が推し進めてきた 違法な入植に対して、毅然とした態度を取るべきだ。 併合は明確な国際法違反である。併合で、被占領地やその住民の国際法上の 法的地位が変わるわけでもなく、占領国としてのイスラエルの責任がなくなるわけでもない。 併合は、パレスチナを弱肉強食の世界に変えるだけであり、時代錯誤も甚だしい。

国際社会は、国際法に基づき占領下にある西岸のいかなる部分の併合も無効であることを、 あらためて表明しなければならない。また、西岸地区での入植拡大やインフラ整備の 即時停止も求めるべきだ。

併合は無効
 複数の報道によると、イスラエルは西岸地区全体の33パーセントの併合を計画しているという。 併合は武力による領土獲得であり、明白な国際法違反だ。 国連憲章の基本原則で禁じられており、国際法の強行規範や 国際人道法に規定された義務にも反する。
イスラエルによる併合が始まれば、パレスチナ自治区への入植が加速化し、 パレスチナ人の土地がさらに奪われることになる。 また、パレスチナ人に対する差別と人権侵害の固定化につながる。 国連の専門家多数が、併合案を「21世紀のアパルトヘイト」と呼び、懸念を表明している。

違法な入植
 被占領パレスチナ地域にイスラエル人を入植させ、パレスチナ人を追放する行為は、 国際人道法の基本原則に違反する。ジュネーブ第4条約の第49条は、 占領国が占領する地域へ自国の文民を移送・追放することを禁じ、 また、被占領地域の住民の強制移動・追放も認めない。

イスラエルによる入植は、戦争犯罪にあたる。さらに、恒久的な入植とインフラ整備は パレスチナ人のためにはならず、ジュネーブ第4条約で例外的に認められている 安全保障上の必要性を満たすものでもない。ジュネーブ第4条約では軍事目的以外の 私的財産・公共財産の収奪・破壊を禁じているが、入植はそれを大規模に行うものである。

国際社会は、パレスチナ人の不可侵の権利を否定する いかなる提案も許してはならない。また、国際刑事裁判所がパレスチナにおける問題で 管轄権を行使する際には、国際刑事裁判所を全面的に支持すべきだ。

2020年7月1日 アムネスティ国際ニュース


香港の危機
中国全国人民代表大会(全人代)常務委員会は6月30日、香港の国家安全法案を可決した。 「国家安全維持法」の成立は、香港市民にとって大打撃であり、香港の近年の歴史の中で最大の人権への脅威だ。 今後、中国は思うがまま犯罪容疑者に独自の法律を課す権限を持つことになる。
詳細を明らかにしないまま法案の審理を急ぎ、政府批判を弾圧する手段を中国政府が手にしたことは、 香港市民に大きな恐怖心を与えた。恐怖心で香港を統治するという狙いが、そこにはある。
成立を急いだもう一つの理由は、9月の立法会選挙で民主派候補を排除するためだ。 民主派候補は国家安全法の標的にされかなねい。

法律の施行に当たって、香港当局は自らの人権義務をしっかり遵守しなければならない。 そして、それを守らせるのは国際社会にかかっている。 香港にとって重大なこの局面において、国家安全法が人権侵害や自由の剥奪に 利用されるようなことがあってはならない。

背景情報
国家安全法は6月30日に可決され、習近平国家主席が署名して成立した。 その後、香港の憲法にあたる香港基本法の付属文書に加えられる。
個人や団体に「国家の安全を危うくする活動への参加」を禁じる同法には、 さまざまな人権上の懸念がある。国家分裂、国家転覆、テロ、 「国家の安全を危うくする外国・海外勢力との結託」などが、犯罪行為とみなされる。 多岐にわたる違反行為があいまいに定義されているのは、反体制派の取り締まりに 適用されてきた中国本土の国家安全法と同様だ。
また新法成立で、中国政府の出先機関「国家安全公署」が設立される。 中国では、この種の機関が、人権擁護活動家や反体制派の監視、嫌がらせ、脅迫、秘密裏の拘禁などを行っている。
香港と中国当局は、香港での「テロ行為や暴力への脅威」に対抗するために 国家安全法の導入が急務だと主張してきた。しかし、この1年、香港の街頭で行われてきた抗議デモは 極めて平和的なものだった。
林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官はジュネーブ時間の6月30日朝、国連人権理事会で演説する。 数日前、同理事会が任命した特別報告者50人以上が、国家安全法の導入などについて懸念を示したが、 連名文書での懸念の表明は異例のことだった。

2020年6月30日 アムネスティ国際ニュース


パレスチナ人の土地没収は違憲、無効
 2017年にイスラエル国会で制定されたパレスチナ人の土地没収に関する法律は 6月9日にイスラエル高等裁判所において違憲であり、無効であるとの判決が くだされました。
この法律に対して、イスラエル国内の公民権協会、 人権NGO団体ピースナウ、イェッシュ・ディンなどが国際法違反、人間の尊厳と自由に 関する基本法に対する重大な違反であり、違憲であることを2017年に高等裁判所に 申し立てをしていたものです。

国際条約は占領地域の居住者の権利を保護することをイスラエルに義務付けており、 当面の治安目的のために土地を没収することを禁止している。また主権のない占領地域で その土地に関する法律を制定する権限はないと訴えていました。

この土地収用法に対する申し立てが起こされた後に土地収用手続きの大要に対して 司法長官が提案した暫定的差し止め命令を 有効として2017年8月17日に裁判所はこの法律の実施を凍結していました。


ジョージ・フロイドの犠牲
ミネアポリスで5月25日、ジョージ・フロイドさんが警官に取り押さえられ、 呼吸ができなくなり亡くなるという痛ましい事件があった。 首をひざで押さえ続けられている様子が、市民が撮った動画に写っていた。
警官に自分の命を断たれるかもしれない。朝目覚めたとき、 そんな不安に襲われるようなことがあってはならない。 しかし、米国では、肌の色が違う人、特に黒人の人びとは、 痛ましい事件の記憶を抱えて生きてきた。

ミネアポリスの警官の行為は、すでに多くを失った人びとを さらなる恐怖に陥れることになった。 エリック・ガーナーさんは6年前、ニューヨーク市警本部で 「息ができない」と訴えながら亡くなった。 この時、警官たちは、被疑者の悲痛な叫びに耳を 傾けなければならないという教訓を学んだはずだった。 しかし、そうではなかったようだ。
フロイドさんは、かけがえのない命を失った。 エリック・ガーナーさん、マイケル・ブラウンさん、アカイ・ガーリーさん、 タミール・ライスさん、ブレオンナ・テイラーさん......。名前を上げれば切りがない。

市民の生命を守るのが、警察である。この大原則が、 黒人の人間性を否定する警官たちに踏みにじられている。 死に至らしめるような過剰な力の行使は、必ず裁かれなければならない。
連邦捜査局(FBI)が事件の捜査に乗り出したことは、適切だ。 アムネスティは、迅速で徹底した真相解明と適切な捜査情報の遺族への開示を求める。 また、死に至るような力の行使を制限する法整備も不可欠だ。

2020年5月26日 アムネスティ国際ニュース


Take Action!香港・国家安全法阻止署名
アムネスティ・日本は中国政府よる香港への国家安全法の凍結を求めるオンライン署名を 実施しています。
https://www.amnesty.or.jp/get-involved/action/hk_202005.html

※署名(名前のみ)はアムネスティで取りまとめて要請先に提出します。
※後日、メール、お電話にてアムネスティ日本から活動紹介のご連絡を差し上げる場合がございます。

アクションメッセージ
原文(English)
<下記のメッセージを要請先に提出します>

栗戦書全国人民代表大会常務委員長殿

香港へ国家安全法が導入されることに懸念を表明します。 同法は香港の人びとの権利を著しく侵害するおそれがあります。 昨年、警察は、平和的に抗議活動を行う人びとに対して、 不必要に行き過ぎた実力行使を行っています。 これは人びとの平和的な集会の権利を侵害する行為です。
香港の人びとはまたしても表現や集会、結社の自由を始めとする人権を 守るために危険を冒して抵抗しなくてはならなくなりました。
この法律がすべての点で国際人権法や基準に沿ったものであることが保証されるまで、 国家安全法を香港に導入することを凍結するよう要請します。


外国人長期収容者の人権を守る!
                     2020年5月8日
収容・送還に関する専門部会 委員各位

      (公社)アムネスティ・インターナショナル日本
                事務局長 中川 英明

              要請書

アムネスティ・インターナショナル日本は、長期収容の問題について 法務省及び出入国在留管理庁の下で行われているさまざまな議論が、 移民・難民の人権を軽視し、排除を強化する方向で進められているのではないかとの 懸念をもっています。
移住に関わる拘禁を正当化するためには、国際人権法に定められている合法性・ 必要性・相当性という3つの原則を満たすことが必要です。
さらに、国連の恣意的拘禁ワーキンググループは、本人の身元を確認するため、 逃亡を防ぐため、あるいは退去強制命令の順守を確保するためという3つの目的の いずれかを達成するために必要な場合にのみ、国家が拘禁という手段を用い得るとしています。

難民認定申請者を含む在留資格のない外国人を、入国管理上の収容および送還に 起因する人権侵害から守るために、次の3点を私たちは日本政府に要請します。

・抗議活動を行う収容者を仮放免で釈放し、短期間の後に再収容することはやめること
・ノン・ルフールマンの原則をいかなる場合でも遵守すること
・出入国管理上の収容は送還の準備に必要な短期間に限るよう、収容期間に上限を設けること

アムネスティ・インターナショナル日本は、「外国人の長期収容に終止符を!」 キャンペーンを今年1月に開始しました。5月8日までに、以上の3点の要請に賛同する方々から 10,423筆にのぼる署名が寄せられています。
収容・送還に関する専門部会委員のみなさまが最終報告をとりまとめるにあたっては、 外国人の人権保護を求める市民社会からの声に応え、私たちが要請する以上の3点と合致するものとしてください。 よろしくお願い申し上げます。

                           以上


レバノンの移住労働者の人権
 世界でウイルスが猛威を振るう中、レバノンの移住家事労働者はロックダウン(都市封鎖)により、 雇用主から人権侵害を受ける危険性がさらに高まっている。 政府には、移住家事労働者を保護するための緊急対策が求められている。

レバノンはじめ中東諸国特有の労働契約制度であるカファラ制度は、 移住労働者の保証人として雇用主に絶対的権限が与えられるため、 過酷な強制労働など労働者搾取と虐待の温床となっている。
カファラ制度に縛られ逃げ出せずにいる同国の移住家事労働者およそ25万人が、 新型コロナウイルス流行拡大の中で人権侵害はもちろん命の危険にさらされている。 外出自粛は感染拡大予防につながる一方、カファラ制度下の労働者にとっては、 雇い主による虐待やいじめを受ける危険性が高まる。
社会から疎外されている移住家事労働者に対して、政府は直ちに保護対策を取らなければならない。 また、雇い主には、家事労働者への人権侵害は、摘発の対象となることをはっきり警告すべきである。 移住家事労働者に対する虐待・搾取は、極端な長時間労働、無休、給料の減額・不払い、 通話やインターネットの制限、食事を与えないなど、枚挙にいとまがない。 労働省は、外国人家事労働者が、苦情申し立てができる窓口を設置し、 その開設を彼らに周知することが必要である。

非正規移民家事労働者
 労働ビザを持たない家事労働者は数千人いるが、無認可のまま働き続けるか、 収容センターに入れられて、強制送還を待つか、どちらかの選択肢しかない。 ビザがなければ、医療などのサービスを受けることは難しい。 保健省は、非正規移民を含む移住家事労働者が置かれている状況を理解し、 彼らの感染予防、検査、感染後の対応などで支援すべきである。

背景情報
 アムネスティは昨年、現地での聞き取り調査などで、強制労働から人身売買まで カファラ制度が抱える問題を確認し報告書にまとめた。
今年3月、アムネスティは、レバノンの「家事労働者のための標準統一雇用契約規定」 改正の協議に参加し、提言する機会があった。 労働省に対して、カファラ制度下で雇用主と労働者間に明らかな不平等性が存在し、 雇用主が労働者を支配している問題に対応した要件を改正案に盛り込む必要性を強調した。

2020年4月14日 アムネスティ国際ニュース



圧力に屈したフェイスブック
 4月21日、ロイターは、ベトナム当局から圧力をかけられていたフェイスブックが、 政府に批判的な投稿の検閲レベルを強化する方針を決めたと報じた。 同社の現地サーバーに対し国営通信企業が使用制限などを科していたようで、 しばらくフェイスブックが使えない状態が続いていた。
当局による表現の自由の抑圧はこれまでもあったことだが、今回のフェイスブックの決断で、 同国の表現の自由が、さらに強力に制限されるきっかけになるおそれがある。
フェイスブックは、コンテンツの規制にあたっては、国際人権基準に基づかなければならず、 法律を乱用し、恣意的に権利を制限する政府に従ってはならない。 同社は、検閲強化の決定をただちに取り消し、不当な投稿削除の要求を拒否しなければならない。

圧力に屈したフェイスブック
 ベトナム当局は長年、オンライン上の表現の自由を奪うさまざまな規制措置を取ってきた。 テクノロジー企業に対して個人情報の提供やユーザー投稿の検閲を義務付けるサイバーセキュリティ法も導入している。
フェイスブックの今回の決定は、政府批判の摘発を強化したい国の意向に足並みをそろえるものであり、 フェイスブックは検閲に協力する企業だと考える国も出てくるだろう。 またこの決定は、極めて危険な先例でもある。他のハイテク企業が、 抑圧的な政府の圧力に抵抗しづらくなる事態に追い込まれるだろう。

ソーシャルメディアは、ベトナムでの表現の自由に関して良い変化をもたらしてきた。 この変化は、インターネットの利用者が積極的にソーシャルメディアを使って批判的な意見を書き込み、 人権侵害の実態を暴いてきたからこそ、もたらされたものである。 ソーシャルメディアの投稿は、表現の自由に対する基本的権利であり、 利益や市場参入のためではない。いかなる場合でも保護されなければならない。
アムネスティの調べでは、昨年、人権を平和的に行使しただけで投獄された人のうち、 約1割が、フェイスブックの利用がらみだった。

取り締まりの強化
 ベトナム当局は1月、死者まで出した土地騒動を封じ込めるために、 ソーシャルメディアの書き込みにかつてないほど厳しい取り締まりを始めた。 新型コロナウイルス危機の感染拡大以来、取り締まりは強化されている。
1月から3月半ばの間に、フェイスブックの投稿がもとで市民654人が警察から出頭を求められ「研修」を受けさせられた。 その上、罰金を科されたり、投稿の削除を命じられたりした。
4月には、メディアコンテンツを恣意的に制限し、テクノロジー企業に検閲や 監視措置を強制する新法が施行された。
また、フェイスブック上での国家批判、ウイルス対策での当局の悪口、パンデミック情報の拡散など、 さまざまな書き込みによって、各地で市民の逮捕・勾留が続いている。

2020年4月22日 アムネスティ国際ニュース2020年4月22日



2019年の死刑執行状況
 アムネスティは、2019年の世界の死刑状況について調査結果をまとめた。 調査は、アムネスティが各国で得られた信頼できる情報にもとづく。

世界の死刑執行総数は減少傾向にあり、少なくとも657件、過去4年連続で減少し、 この10年では最低だった。死刑は、極めて残虐で非人道的な刑罰であり、 禁錮刑以上の犯罪抑止効果が死刑にあることを裏付ける根拠はない。 大半の国がこの点を認識し、執行を減らし続けているのである。 しかし一方で、一握りの国は卑劣で非人道的な死刑への依存度を強めた。 サウジアラビアは、死刑執行数で過去最多の184件を記録し、イラクは執行数を倍増させ、 イランは、中国に続く執行数を維持した。
死刑執行数の上位5カ国は、中国(数千件)、イラン(少なくとも251件)、サウジアラビア(184件)、 イラク(少なくとも100件)、エジプト(少なくとも32件)だった。
中国の執行数を「数千」とするのは、数千件の処刑があったことは確かだが、 死刑に関わる数値が国家機密扱いされているため、信頼できる数字を示すことができないからである。 執行大国と思われるイラン、北朝鮮、ベトナムも、死刑情報を開示しなかったため、数字を示すことができなかった。

一部の国で処刑が急増
 2019年に死刑執行が確認された国は、わずか20カ国である。この中で、サウジアラビア、 南スーダン、イエメンの3カ国は、執行件数を大幅に増やした。 サウジアラビアでは、前年149人から184人に増えた。対象となった犯罪の大半は、薬物か殺人だった。 件数急増の背景には、反体制派のシーア派イスラム教徒に対する政治的見せしめとして利用されたこともあった。 昨年4月23日、1日で37人の処刑が確認された。37人中32人はシーア派イスラム教徒で、 拷問で強要された自白に基づきテロ罪に問われ、死刑を宣告された。 その一人が、フセイン・アル・モサレムさんで、取り調べで鼻や脚などを骨折するほどの 暴行や電気棒による拷問を受けていた。
イラクでも、執行件数が、前年の少なくとも52件から100件に倍増した。 100件には、自称「イスラム国」のメンバーの処刑も含まれた。
南スーダンでは、少なくとも11人の死刑執行があり、2011年の独立以降で最も多かった。 イエメンでは、少なくとも7件(前年は少なくとも4件)の処刑があった。 前年、死刑執行を停止していたバーレーンでも、3人が処刑された。

死刑をめぐる閉鎖性
 多くの国が、死刑に関わる数字を公表も提供もせず、死刑をめぐる閉鎖性が際立った。 中国に続く死刑執行大国イランの処刑件数は、前年と変わらず、少なくとも251件が確認された。 実際は、251件を遥かに上回ると思われるが、信頼できる情報を得られないため 具体的な数字で示すことはできなかった。 イランでは、昨年4月、2人の少年、メフディソ・ラビファさんとアミン・セダハトさんが秘密裏に処刑された。 15才の時に逮捕され、複数件の強かん容疑で起訴され、不公正な裁判で有罪判決を受けた。 有罪判決が死刑であることを知らされたのは、処刑の直前だった。 2人の背中の痛々しい傷跡は、処刑直前に鞭打ちを受けたことを示している。
死刑の執行は、世界のあちこちで秘密裏に行われた。家族や弁護人だけでなく、 時に当人にも事前に知らされることがないまま死刑が執行された。
頑なな死刑支持国は、いずれの国も処刑の正当化に躍起になっている。正当化だけではない。 機密保持にも必死である。多くの国は、死刑をめぐる状況が国際的な監視に耐えられないと考え、 事実隠しに四苦八苦しているのである。

世界中の死刑廃止は近い
 アジア・太平洋地域での執行国数は7件で、2011年以降で初めて減少に転じた。 日本で前年15人から3人に、シンガポールでは前年13人から4人に減った。 アフガニスタンでは、2010年以降で初めて0件を記録、前年執行があった台湾とタイでは、執行が停止され、 カザフスタン、ロシア、タジキスタン、マレーシア、ガンビアでは、死刑停止措置が維持された。
世界全体では、法律で死刑を廃止する国は106カ国、事実上の廃止も含めると、死刑廃止国は142カ国である。 さらに、数カ国が、死刑廃止に向けた動きを見せた。
赤道ギニアでは、大統領が、死刑廃止法案の議会への提出を発表した。 死刑の廃止につながる前向きな動きは、中央アフリカ、ケニア、ガンビア、ジンバブエでもあった。 バルバドスも、憲法が定める絶対的法定刑としての死刑を廃止した。 米国では、全米で最多の死刑囚を抱えるカリフォルニア州知事が、死刑執行の一時停止を宣言し、 ニューハンプシャー州が、死刑を廃止し21番目の死刑廃止州になった。
一方、世界の死刑廃止の流れに水を差す国もあった。 フィリピンでは、違法薬物や強奪関連の凶悪犯罪に死刑を再導入する動きがあり、 スリランカは、約40年ぶりの死刑再開に向けて舵を切った。 ほぼ20年間、死刑を執行しなかった米国連邦政府が、執行再開に向けた作業に入った。
しかし、死刑廃止に向けた世界の勢いは止められないし、止めてはならない。 アムネスティは、すべての国に死刑廃止を求めている。 死刑制度という非人道的な慣行を永遠に葬り去るために、国際的な圧力は不可欠である。

2020年4月21日 アムネスティ国際ニュース



COVID-19と監視 人権への脅威
 世界で新型コロナウイルスが大流行し、人びとは、未曾有の健康の危機に直面している。
公衆衛生情報の提供や医療体制の強化など、技術が果たす役割は大きい。 しかし、国の中には、ウイルスと闘うという名目で、監視技術を利用し、 個人や市民全体の移動情報を収集する技術の開発を急ぐところもある。 国による監視が、何の制限や監督を受けることなく放置されると、 プライバシーをはじめとする人権の未来が、根底から変わってしまうおそれがある。

コロナ対策としての監視は合法か
 国は、健康に対する権利を保障し、疫病を予防・治療・制御する責任を負う。 新型コロナウイルスの大流行という緊急事態に素早く組織的に対応するために、 政府が、一時的に人びとの人権を制限せざるを得ないことは起こり得る。 しかし、位置情報による人の動きなどの監視は、厳しい基準を満たすことが前提であり、 そうでなければ、違法である。また、いかなる対応も、法令の遵守、期間の設定、 透明性の確保、第三者による監視が、保証されなければならない。
市民の生活に入り込む監視は、目的を達成する上で最小限でなければならず、 効果より害をなすものであってはならない。 米国や英国などの大規模監視から学んだ教訓は、人権の脅威となる監視は、 いずれ社会に根を張ってしまう危険性があるということである。
2001年9月11日の米同時多発襲撃事件以降、国による市民の監視は、著しく強化された。 そして、一旦、監視体制が整い、監視能力が備わると、監視体制が解かれることは、まずない。

個人の位置情報の利用
 ウイルスが猛威を振るう中、多数の国が、市民の移動状況の把握に携帯電話の位置情報を利用している。 オーストリア、ベルギー、イタリア、英国、ドイツはいずれも、感染者の感染経路の追跡に、 通信会社から匿名化された、あるいは集約された位置データの提供を受けているといわれている。
市民の隔離を徹底するために、GPSによる追跡を容認している。

イスラエルでは、治安当局に感染者の携帯電話情報の利用を許可しており、 プライバシーの侵害が大きく懸念されている。 当局が携帯情報を利用し始めたことはわかっており、400人ほどが、 「感染者との接触したおそれがある」と警告するショートメッセージを受け取った。

韓国では、テキストメッセージで当局が健康に関する注意喚起を行っているが、 そこに感染者情報も載っている。ハイパーリンクが張ってありその個人の移動情報を見ることができる。 医療上の守秘義務の明らかな違反であり、感染者への偏見や差別を助長するものだ。 この対策は、監視に関する法的要件を満たしているとは思えず、プライバシーの権利を侵害している。 こうした対策は、個人情報の収集・利用・共有の面で、深刻な問題をはらんでいる。 一度、個人データが収集されてしまうと、その情報は、他の機関や企業などと共有され、 健康管理以外の目的で使用される危険性がある。

人工知能(AI)とビッグデータ
 AIとビッグデータ技術を活用して、新型コロナウイルスに立ち向かう国もいくつかある。 中国は、最先端のサーモグラフィーと顔認識技術を公の場で利用して、 ウイルスの感染経路を追跡しているとされる。
中国のIT大手アリババは、 個人の健康情報を追跡するシステムの運用を開始した。個人の健康に関わるデータを収集し、 健康状態を色分けし、緑は「異常なし」、黄は「7日間の隔離」、 赤は「14日間の隔離」などと一目で判断できるようにした 。 この情報をもとに、公の場に出ていいかどうかを判断する。 懸念されるのは、こうした情報が治安当局でも共有されていることである。

ポーランドでは、隔離が必要な人が、自己隔離しているかを当局が確認できるアプリを導入した。 当局から携帯電話にプロンプト記号が届き、自撮りした写真を送って報告する。 当局側が、顔認証と位置情報で本人確認をした上で、隔離命令に違反していないかを把握する仕組みである。

他の国でも、例えばインドでは、自撮り写真にジオタグ(位置情報)を付けて送信することを求められているなど、 個人情報の収集にアプリの使用が始まっているという報告があった。
一方、AI技術は、違法な差別を助長しかねない。また、これまで疎外されてきた人びとが、 一層差別を受けるおそれがある。 導入されている技術の多くは、偏ったデータに基づく不可解なアルゴリズムを活用するため、 この技術を利用した意思決定は、特定のグループへの差別を助長するおそれがある。 国は、コロナ対策以外の目的での監視と個人情報の収集は、やめるべきである。 加えて、個人情報の保護や差別への市民の不安に誠実に対応する必要がある。

民間監視会社
 コロナ危機の中、国と民間企業が手を組むことで、革新的な解決策を作り出すことができる一方で、 多くの国が手を組むのは、人権侵害が懸念される企業である。 例えば、米国では、顔認識アプリを開発したクリアビューAI社とビッグデータを分析するパランティア社が、 米当局と協議に入っていると伝えられている。
強権国家との取引で知られるイスラエルのスパイウェア企業NSOグループは、 現在、人の移動を表示する地図から感染経路を追跡できるビッグデータ分析ツールを売り込んでいる。 NSOのようなIT・通信企業の多くは、闇ビジネスの過去があり、人権侵害を犯しても一向に責任を問われてこなかった。
コロナ危機との闘いに関わる企業は、その製品やサービスを利用することによる人権上の リスクの特定、軽減・回避、説明責任を果たすことが、強く求められている。 企業は、新型コロナウイルス危機に乗じて、人権に対する責任から逃れることはできない。

コロナ危機の後を見据えて
 今回の前例のない危機の対処には、長期的な視点が欠かせない。 新たな市民の監視体制は、危機が終息した後も存続するおそれがあり、 その後の社会が置かれる状況を決定づけるかもしれない。 世界一人ひとりの人権が、未来社会の中心にある。このことを忘れてはならない。

2020年4月3日 アムネスティ国際ニュース




憲法と人権ハガキ
 アムネスティ・日本の憲法と人権チームが憲法の中の人権条項を取り上げて 8枚のハガキシートを作りました。中学・高校生、若い人に憲法で護られている 自らの権利を知ってもらうために作りました。やさしい言葉で分かりやすく 人権を説明しています。
このシートを希望される学校、団体、一般の方に無償で配布します。
希望される方は住所・氏名又は学校名・電話番号・担当者名・希望枚数をamnesty.const.jpn@gmail.com までご連絡ください。








土地の日(パレスチナ)
 3月30日はパレスチナの「土地の日」です。1976年にガリラヤ地方でのイスラエルの土地収用に 抗議して6人のパレスチナ人が殺害された日です。毎年この日に「土地の日」として各地でデモが 行われています。今年はウイルス感染問題により現地ではデモは行わず、ソーシャルメディアでの 行動のみとなりました。(BDSjapanのサイト紹介https://www.facebook.com/BDSjapan/)

 COVID-19による外出禁止が出されている間に、イスラエルの入植者がイスラエル軍容認のもと パレスチナ人のオリーブ畑を破壊し、入植地を拡大しようとしています。
西岸のヨルダン渓谷に設置しようとしていた移動クリニック用のテントがイスラエル軍によって 破壊されました。イスラエルの封鎖政策のために必要な医療体制を整備できないため 感染者が増えつつあると伝えられています。







米国コロラド州死刑廃止
 米・コロラド州ジャレッド・ポリス州知事は3月23日、死刑廃止法案に署名した。 これにより、コロラド州は全米で22番目の死刑廃止州となり、米国は、死刑廃止国の仲間入りへ一歩前進した。 ポリス知事は、この国でかつてないほどに求められている人権視点のリーダーシップを示した。 知事は現死刑囚に対しても、減刑措置を取るとした。

死刑は、一旦執行されると取り返しがつかない上、犯罪を抑止する効果もない。 その執行は、痛みが伴い、暴力的で非人道的である。 米国では、死刑判決が黒人社会に過度に向けられてきたという問題もある。 罰としての死刑は時代遅れであり、死刑制度は根本的に破綻している。 きっぱりと廃止されるべきである。

世界では、3分の2以上の国が法律上あるいは事実上死刑を廃止している。 アムネスティは、犯罪の性格や犯罪者の特質、処刑方法にかかわらず、 いかなる死刑にも無条件で反対する。

2020年3月23日 アムネスティ国際ニュース



ガザでのコロナ対策の状況
26日の毎日新聞がパレスチナのガザ地区とバングラデシュのロヒンギャ難民キャンプでの 新型ウイルスに対する状況を伝えています。

 パレスチナ自治区ガザ地区では22日に初めての感染者2人が確認された。ガザ地区は12年以上、 イスラエルによって封鎖されており、医療体制が不十分なうえに、衛生環境も悪い。 一旦感染が拡大すると手が付けられない事態になることが予想され、人権団体は「悪夢のシナリオ」と警戒を強める。
ガザ地区の保健当局によると、2人は19日にパキスタンからエジプト経由でガザ地区に入り、 教会近くの施設で隔離されていた。21日になって陽性反応を示した。住民とは接触していないという。

イスラエルの封鎖政策で、ガザ地区の経済状況は極度に悪化。インフラの整備状況も不十分で、 電気は1日数時間しか供給されず、上下水道も適切に機能していない。 イスラエルの人権団体「ベツェレム」は「ガザの医療システムは最初の新型コロナウイルス患者を 受け入れる前でさえ、崩壊の危機にひんしていた」と訴える。 ガザ当局は感染者が確認される前から、防疫態勢を敷いてきた。イスラエルとの境界にある ベイトハヌーンや、エジプトとの境界にあるラファ経由でガザに戻った人たちについては、 全員隔離措置をとっている。また、学校は大学まで全校休校とし、隔離施設として利用している。 また、ラファ近郊に隔離施設を突貫工事で建設中。
国連パレスチナ難民救済事業機関は、 運営する学校を病床として転用し、特に呼吸器疾患を持つ患者を移動させているという。 感染が確認された患者はまだ2人に過ぎないが、住民らは事態の推移を見守っている。

 ミャンマーからバングラデシュへ逃げているロヒンギャ難民も劣悪な難民キャンプ環境に置かれているため 新型ウイルス感染が非常に心配される。現在のところ感染者は確認されていないが、検査ができる施設は 首都のダッカにしかないため検査ができない状況である。症状がでた人を隔離する施設の増設を進める。

(注・紛争時にイスラエル軍により発電施設、水道施設が破壊されたが、封鎖により復旧が進んでいない)



国連が入植地で活動する企業リスト公表
 国連(UN)は2月12日、国際法で違法と見なされているイスラエル入植地に関わる企業112社のリストを公表した。 リストには、エアビーアンドビーやエクスペディア、 トリップアドバイザー、ゼネラルミルズ、モトローラなどが挙げられている。 モトローラはチェックポイント、集落、アパルトヘイトウオールに監視機器やその他の技術の提供契約を イスラエル国防省と契約している。

 このリストは、「パレスチナ占領地内のイスラエル入植地に関連する特定の活動に従事する全企業の データベース」作成を求める2016年国連人権理事会決議に基づき公表された。 国連人権理事会は、データベースへの企業名の記載は「司法手続きまたは準司法手続きに当たらず、 それを意図するものではない」と説明している。

 イスラエルはたびたび国連、とりわけ人権理事会を偏見があると非難しており、 今回のリスト公表にもすぐに反発した。 ベンヤミン・ネタニヤフ首相は首相府を通じて発表した声明の中で、 「わが国をボイコットする者は何人であろうとボイコットする」 「この卑劣な試みは断じて受け入れられない」と述べ、報復をほのめかした。
一方、パレスチナ自治政府のリヤド・マルキ)外相は、リスト公表について、 「国際法と外交努力の勝利」と評価した。  イスラエル政府によるパレスチナ人への対応に抗議し、さまざまな活動を呼び掛けている BDS(ボイコット、投資引き揚げ、制裁)運動も、リスト公表を歓迎した。
国連は、データベースを毎年更新するよう推奨し、この業務に携わる独立した専門家グループの設置を 人権理事会に要請している。
(AFPニュース、その他参照)



パレスチナ:最悪の中東和平案
 米国のトランプ政権は1月28日、イスラエルとパレスチナの和平案を発表したが、 国際法を侵し、パレスチナ人の権利をさらに奪う散々な提案である。 その内容は、イスラエルとパレスチナとの間で、今後も悲劇と人権侵害を引き起こすための手引書といえる。

 トランプ大統領は、「繁栄への和平」と題する180ページからなる提案を示し、 「この和平案は、イスラエル側がすでに合意している現実的な2国家共存だ」と述べた。 ただ、和平案は、パレスチナとの協議を欠いたまま作成されている。
トランプ大統領が「世紀の取引」と呼ぶこの提案に盛り込まれた施策は、 国際法に違反するものばかりであり、国際社会はこの和平案に反対すべきである。 提案では、イスラエルの土地と引き換えに、ヨルダン川西岸地区にあるヨルダン渓谷と 違法入植地の大部分をイスラエルの統治権下に置くとしている。 米国は、この措置を土地交換の原則だと強調するが、 パレスチナ地域の併合の助長にほかならず、明らかな国際人道法違反である。

 半世紀を超える占領の中で、イスラエルのパレスチナ差別は日常化し、 パレスチナ人の権利は否定され、権利を奪われた被害者への補償の道は閉ざされてきた。 和平案は、こうしたイスラエルの冷酷で違法な政策をあらためて承認したに過ぎない。
土地交換では、パレスチナ人比率が高いイスラエルの地域を、 将来、パレスチナ国家となる地域に移転すると提案している。 しかし、これでは、イスラエルのパレスチナ市民の選挙権が、移転ではく奪される懸念が出てくる。
また、パレスチナ難民に対して、イスラエル領に帰還する権利を認めない代わりに、 補償制度の創設を提案する。 パレスチナ人難民は520万人を超え、世界的にも多い。 1948年のイスラエル建国により故郷を追われたパレスチナ人には、国際法にもとづき帰還する権利がある。 この帰還権は、政治交渉で奪うことができない個人の権利である。

 昨年12月、国際刑事裁判所の検察官は、パレスチナでの予備審査の結果、 被占領パレスチナ地域(ヨルダン川西岸とガザ地区)において戦争犯罪があったとする結論に至ったとして、 国際刑事裁判所の確認が取れ次第、捜査を開始すると発表した。
しかし、トランプ政権の和平案は、提案の交渉中はいかなる場合も、 パレスチナはイスラエルと米国の国や人を相手取って国際司法機関に訴訟を起こしてはならないと主張し、 現在係争中の訴訟に関しては、その取り下げを求めている。 国際刑事裁判所の取り組みに横槍を入れた形である。

 公正で持続可能な和平の実現には、双方の市民の人権に配慮した和平提案が不可欠である。 戦争犯罪などの重大な人権侵害の被害者のために、加害者側の責任を問い、 被害者への補償が盛り込まれなければならない。
トランプ政権の提案は、こうした基本原則を満たしていないばかりか、 現在、進行中のパレスチナ人とイスラエル人双方のための正義に向けた努力を 無にしようとするものである。

2020年1月28日 アムネスティ国際ニュース



外国人の長期収容に終止符を!
 出入国在留管理庁(入管庁)の収容施設では、オーバーステイなどの外国籍の人たちの収容が長期化しています。 長期収容されている人たちの中には、人生のほとんどを家族と一緒に日本で暮らしている人や、 自国に戻ると迫害のおそれや命の危険がある難民認定申請者など、 帰国できない理由がある人たちが多いと言われています。

長期収容は、身体の自由を奪う扱いであるだけでなく、いつ釈放されるのか分からない 収容者に多大な不安を与えるものであり、心身に過度のストレスを生じさせます。
このような扱いに耐えかねた収容者が抗議のためハンガーストライキを決行するケースが急増し、 2019年6月には餓死者が出る事態に至りました。 入管庁は、ハンストをやめさせるために仮放免(一時的に収容を停止して収容者を釈放する)措置をとりましたが、 対象者は短期間で再収容されています。問題の解決につながらない入管庁の対応は、 身体の自由と表現の自由を侵害する行為に他なりません。

さらに入管庁は、収容者の送還を促進するために、難民認定申請者を強制的に出国させることを 禁止している法規定の改変までも検討しています。このままでは、日本に逃げてきた難民や庇護希望者が 日本から追い出され、本国で命の危険にさらされる事態になりかねません。

 自国で受けた迫害や生命の危険からやっとのことで逃れた難民を本国に送還することは、 国際法上で明確に禁止されています。「ノン・ルフールマンの原則」と呼ばれるこのルールは、 いかなる場合でも遵守する義務があります。日本も批准している難民条約の基本原則の一つでもあります。

 移民・難民の基本的人権を守るため、次の3点を法務大臣に要請する署名に参加してください!

・抗議活動を行う入管施設収容者を仮放免で釈放し、短期間の後に再収容するのはやめること
・ノン・ルフールマンの原則をいかなる場合でも遵守すること
・出入国管理上の収容は送還の準備に必要な短期間に限るよう、収容期間に上限を設けること
現在、アムネスティ・日本のウエブサイトにて、上記のオンライン署名を行っています。
https://www.amnesty.or.jp/


ICCイスラエルの戦争犯罪捜査
 12月20日、国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)のベンソーダ主任検察官は イスラエルに占領されているパレスチナ自治区のヨルダン川西岸とガザでの戦争犯罪の容疑について、 正式捜査を始める考えを明らかにしました。2015年から予備調査は始められていました。

検察局は予備調査の結果、ヨルダン川西岸とガザで、イスラエルにより戦争犯罪が行なわれたと判断しました。 パレスチナがICCにイスラエルによる戦争犯罪の訴追を求めていたものです。 しかし、検察局はパレスチナが独立国家であると認められるか、ICCの管轄権が及ぶ地域かの判断を裁判部に求めました。 イスラエルはパレスチナは国家ではないとICCの判断に反発しています。





 
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国際刑事裁判所の暫定措置命令
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ガザのコロナ対策
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長期収容収容に終止符を
ICCイスラエルの戦争犯罪を






クイズに挑戦!
拷問のこと知っていますか
Q1 拷問を行っている国は何ヶ国?
  • A 34ヶ国 B 83ヶ国 C 131ヶ国 
  • Q2 拷問禁止条約の成立年は?
  • A 1852年 B 1984年
     C 2001年
  • Q3 日本は拷問禁止条約に加入していますか?
  • A している B していない C 保留中
  • Q4 次の行為で拷問だと思うものにチェックをいれてください
  • A 睡眠を与えない
     B 信仰する宗教を繰り返し侮蔑する
     C 強い光を当てる 
    D 騒音を聞かせる
     E 全ての感覚を奪う
     F 裸にして詳細に体を調べる
  • Q5 日本で行われている密室での取調べ、長期の拘禁(警察署内の代用監獄)は拷問にあたりますか?
  • A はい B いいえ
     











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