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難民支援は人道支援
 フランス・グルノーブルの裁判所は、難民を支援して有罪判決を受けていた 山岳ガイド、ピエール・マンベールさんの控訴審で、無罪の判決を言い渡した。
マンベールさんは、アルプス山中で難民に熱いお茶と温かい衣服を提供して、 不法入国ほう助などの罪に問われ、一審では執行猶予3カ月の有罪判決を受けていた。 (昨年1月、マンベールさんは、イタリアとの国境に近いブリアンソン郡にある町モンジュネーヴルで、 ナイジェリア人の男女2名、カメルーン人男性1人、ギニア人男性1人に温かい衣服と熱いお茶を提供した)

難民を支援したことで多くの人びとが、当局から嫌がらせ、脅しを受けたり逮捕・起訴されたりしている。 マンベールさんもその一人だが、幸いにして無罪となった。 (イタリアから冬のアルプスを越えてフランスに入るのは、雪深い山岳地帯で道に迷ったり 命を落とすなどのリスクと背中合わせだ。そうした危険を冒して入国した人びとを 支援するボランティアたちがいる。彼らは、定期的に雪道を巡回し、庇護希望者に手を差し伸べる)

 法廷が今回、こうした法律の乱用を明確に指摘して無罪判決を出したことは、画期的であり、 支援活動をする人びとへの大きな励みでもある。判決は、良識の勝利であり、 何の罪も犯していない善人の勝利でもある。
この判決が出されたからには、フランスとイタリアの国境で、 支え合いの精神で行動して犯罪者扱いされている他の人たちも、処罰ではなく賞賛の対象となることを望みたい。
* 米国では同様の罪に問われていたアリゾナ州の人道支援ボランティア、スコット・ウオレンさんが、 先日、無罪判決を受けた。

2019年11月21日 国際事務局発表ニュース




香港警察のデモ弾圧
 香港理工大学での警察と抗議する学生との衝突は、かつてない激しさを増し、 見物人らかも負傷者を出すなど、深刻な事態になっている。
大学を包囲する警察は、退去する学生に催涙ガスやゴム弾を使用するなど、 強硬姿勢を強め、学生の怒りに油を注いでいる。 ひっ迫した事態を打開する責任は、警察側にある。しかし、 警察は、学内の負傷者の手当てをせず、けが人の対応にあたる医療ボランティアを 拘束するなど違法な対応を取っている。 今、求められるのは、冷静で人道的な対応である。 にもかかわらず、当局はデモ参加者を殴打し催涙ガスを使い、 あまつさえ、実弾の使用をちらつかせている。

 11月18日の早朝、警察の広報官は、「殺傷力のある武器を警官に使う抗議者には、 実弾で対処する用意がある」と警告する動画をフェイスブックに投稿した。 報道によれば、その後警察は威嚇射撃を行っている。 ここ数カ月間、香港警察は、大方は平和的だったデモ隊に対して過剰な力を行使してきた。 この強硬姿勢こそが、事態の悪化の背景にある。
実弾使用という警告は、当局がさらなる強硬策に出るおそれがあるということであり、 香港の街角で悲劇が起きる可能性が高まっているということだ。

2019年11月18日 国際事務局発表ニュース




同性間の性的関係を犯罪とする韓国軍法の廃止を!
2017年、韓国の軍人23人が合意に基づく同性間の性的関係を理由に起訴されました。 韓国には、同性間の性的関係を処罰する刑法はありませんが、軍刑法では犯罪とみなされています。
この軍刑法の存在は、LGBTIの人びとに対する差別的かつ敵対的な環境を作り出し、 結果的に軍隊内部ではゲイ男性への嫌がらせや暴力、性的暴行が発生しています。 また、性的指向や性自認にかかわらず、歩き方や声の高さなどが「男らしく」なければ、 暴力の対象にされてしまう可能性があります。
韓国では、すべての男性に兵役義務が課せられています。 韓国当局は、すべての軍人が差別やハラスメントのない環境で服務できるよう、 時代遅れで差別的なこの法律を改めるべきです。 同性間の合意に基づく性的関係を犯罪と定めた軍法の条項を廃止するよう、 今すぐ韓国国防部長官に要請してください!
署名サイト https://www.amnesty.or.jp/get-involved/action/kr_201908.html 11月末まで


香港で半世紀ぶり緊急条例発動 徹底弾圧へ
 香港政府は10月4日、公共の場で顔を隠すことを禁止するために、 「緊急状況規制条例」を発動すると発表した。英国植民地時代にできたこの緊急条例の復活で、 行政府は、身柄拘束や表現・集会の自由を規制する強大な権限を得ることになる。
条例に基づき、顔の一部または全面を隠すことを禁止する「覆面禁止法」が、10月5日から施行された。 香港政府は、警察の無用で過剰な力にもひるまなかったデモ参加者を 徹底的に封じ込める新たな作戦に出た。
そもそも抗議する市民がマスクを着用せざるを得ない状況を作り出したのは、政府だった。 恣意的逮捕や監視、催涙ガスなどによる無差別攻撃から身を守るためだ。 抗議する人たちにとって、マスクの禁止は、厄介な問題となる。 違反すると、1年以下の刑を受ける。医療目的や宗教上の理由で顔を覆うのは、例外とされる。
 10月1日の抗議では、高校生に実弾が発砲され、催涙ガス1400発以上、ゴム弾約900発が発射された。 この日以来、抗議する市民は香港各地で連日、怒りの声を上げてきた。 今回、香港政府は、市民との融和ではなく、強大な権限の発動による抑圧を選択、 平和的集会の自由への不寛容さの拡大を鮮明にした。
アムネスティは香港政府に対して、表現の自由を尊重し、抗議の声を封殺するために 過剰で強権的な手段を取らないよう、繰り返し求めていく。 デモの規制強化に、緊急事態のための特別法を使うなど、あってはならない。

2019年10月4日 アムネスティ国際ニュース



日本の入管施設で長期収容に抗議のハンスト198人
 非正規移民や庇護希望者らを収容する日本の入管施設で、過去4カ月間で延べ198人が 長期に渡る無期限の収容および施設における処遇に抗議するハンガーストライキに参加した。 9月25日現在、36人は依然としてハンガーストライキを行っている。
多くの非正規移民や庇護希望者が収容されており、その多くの収容期間は1年以上に渡っている。 法務省・出入国在留管理庁によると、収容されている人たちのうち、今年6月末時点で 退去強制令を受けている人が1,147人、うち858人が国外への送還を拒否していた。 この中には、難民認定申請が不認定となった人や、退去強制令を受けた後に難民認定申請をした人もいる。 5月8日現在、東京入国管理局に収容されている465人のうち179人が庇護を求めて難民認定に関わる手続き中だった。

 国連人種差別撤廃委員会は、日本政府に対して、すべての難民認定申請への十分な配慮、 移民の収容期間の上限設置、収容以外の代替措置を優先する努力を求める勧告をした。
 今年の5月、全国の入管施設で長期収容に抗議して自然発生的に被収容者によるハンストが始まった。 6月24日に、長崎の大村入国管理センターに収容されていた ナイジェリア人男性の死亡を受け、ハンスト参加者は増え続けた。 10月1日、出入国在留管理庁は、そのナイジェリア人男性はハンストの結果死亡したとする報告を公表した。

 入国管理上のいかなる収容も、その目的を達成する上で、法に則り、必要かつ相当なものでなければならない。 国は入国管理上の収容の必要性と相当性を検討する際、個々人の状況も考慮に入れるべきである。
日本の出入国管理及び難民認定法上、非正規在留者の収容は、一時的に、送還が可能になるまでの期間、 かつ、逃亡するおそれがあると疑うに足りる相当の理由があるときに限られる。
入国管理上の収容は、すでに送還の手続きが開始されており、かつその手続きが進行中であり、 かつ短期間で実行されるという妥当な見込みがあるときに限り正当化され、 その手続きを直ちに実行するために必要な数時間に限られる。 ここでいう送還の手続きとは、バス、船や飛行機による移民の物理的な国外への移送である。 しかし、東京弁護士会によると、日本政府は、退去強制令を受けたすべての外国人を、 その必要性を個別に評価することなく収容できるとする「全件収容主義」を採っている。
また、出入国管理及び難民認定法の第52条第5項において、「(国外への)送還可能のときまで」 収容が可能と定められているため、退去強制令を受けた非正規滞在者の法律上無期限の収容が 可能となっていると東京弁護士会は指摘する。そのため、運用上、送還の目途が立たない 非正規移民や難民認定申請者を何年も収容することが可能なのだ。
国内法に定めのない、または国際人権基準に沿わない目的や手続きで拘束する行為は、 恣意的拘禁であり、日本に対しても法的拘束力のある市民的政治的権利に関する 国際規約第9条などの国際法に違反する。

 6月にナイジェリア人男性が亡くなった数日後、同じくハンスト中のイラン人4人が、2週間の仮放免許可を得た。 東京入国管理局は7月22日、4人中2人に対し、仮放免期間の延長を認めず、再収容した。 こうした行為は、表現の自由の権利の侵害であり、国際人権法や国際人権基準が禁止する残虐な、 非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いや刑罰に相当しかねない。
アムネスティは、このような手段を用いて被収容者のハンストをやめるよう強要することに反対する。 庇護希望者・移民に対する自由の制限は、その制限が法に則り、必要かつ適切な範囲であることが大前提である。 入管庁は、短期間の仮放免後の再収容をやめるべきである。 こうした措置は、すでに長期に収容されてきた者に、さらなる精神的なダメージを与えかねない。

背景情報
アムネスティは、日本での難民認定件数が極めて少ないことへの懸念を示してきた。 先の国連人種差別撤廃委員会も、同様の懸念を表明している。 今年3月の法務省の発表によれば、昨年、難民申請件数10,493件のうち難民として認められたのはわずか42件だった。

2019年10月4日 アムネスティ国際ニュース


拡大する世界の武器取引
  
 武器貿易条約(ATT)が発効してほぼ5年が経過するが、世界の武器貿易はいまだに拡大傾向にある。 各国首脳がジュネーブに会し、ATTを議論するこの機会をとらえ、各国に対し、 取り組むべき課題がまだあることを再認識させる必要がある。
武器貿易条約は、アムネスティなどのNGOが連携した国際キャンペーン 「コントロール・アームズ」による20年以上にもわたる取り組みから議論が開始され、 2013年4月の国連総会で成立、2014年12月に発効した。
ATTは、武器や弾薬などが、ジェノサイド(集団殺害)、人道に対する罪、戦争犯罪に使用される、 あるいは助長することが明らかな場合に、国家間の武器移転を禁じる国際条約だ。 予測される武器輸出が、国際人権法や国際人道法の重大な違反を助長するリスクがどれだけあるのか、 その分析と評価が毎年、行われている。
しかし、主要締約国の多くは、武器取引規制を守ると言いながら、 重大な人権侵害に関わる国への武器売却を続けてきた。 以下に紹介する武器輸出入をめぐる数字や状況は、救いようのない事実を突きつける。 数字は、ストックホルム国際平和研究所、スモール・アームズ・サーベイ、 ウプサラ紛争データプログラムの各団体が収集したデータに基づく。
・世界の武器関連金額
 2017年の世界の武器貿易総額は、少なくとも950億ドル(約10兆円)。
軍需関連企業の上位100社で、3,982憶ドル(約42兆円)の売上を記録。
2018年の米国の軍事費は、世界全体の36%を占める。
・主要な通常兵器の輸出入
 米国は、武器輸出国として突出する。主な輸出先はサウジアラビアで、 2014年から2018年までの5年間では、総輸出量の22%を占める。
2003年以降、世界の輸出量は毎年着実に増加し、冷戦終結後、最高水準に達した。 2014年から5年間の武器輸出上位5カ国は、米国、ロシア、フランス、ドイツ、中国。 5カ国の総輸出量は、世界全体の75%を占める。
同期間の武器輸入国は、上位からサウジアラビア、インド、エジプト、 オーストラリア、アルジェリアである。5カ国の輸入総量は、世界全体の35%を占めた。
・輸出上位5カ国
 国別輸出先(調査期間は2014/2018年。括弧内の数字は総輸出量に占める割合)
米国:サウジアラビア(22%)、オーストラリア(7.7%)、アラブ首長国連邦(6.7%)
ロシア:インド(27%)、中国(14%)、アルジェリア(14%)
フランス:エジプト(28%)、インド(9.8%)、サウジアラビア(7.4%)
ドイツ:韓国(19%)、ギリシャ(10%)、イスラエル(8.3%)
中国:パキスタン(37%)、バングラデシュ(16%)、アルジェリア(11%)
・中東への武器移転(2014/2018年)
 その前の5年に比べ87%増加。
米国の総輸出の半分以上は中東向け。
英国は59%。その大部分は、サウジアラビアとオマーン向けの戦闘機。
・サウジアラビアとイエメン
 2014/2018年は、サウジアラビアが世界最大の輸入国で、米国と英国からの輸入が圧倒的だった。 サウジアラビアの武器輸入は、2013/2017年で225%拡大。
2014/2018年、サウジアラビアは、米国から戦車338両、オーストラリア、カナダ、フランス、 ジョージア、南アフリカ、トルコの6カ国から装甲車など4千両以上を輸入した。
・小型武器と軽兵器
 世界には10億丁を超える銃が出回り、その大部分を市民が所有する。 市民100人当たり、米国ではおよそ21丁を所持する。イエメンでは53丁、 モンテネグロとセルビアで39丁、カナダとウルグアイで35丁だ。
2017年、ベネズエラとエルサルバドルでは、銃による死亡率が世界で最も高かった。 今後50年以内に軍用ライフル、カービン銃、ピストル、軽・重機関銃の生産が、 世界で3,600万から4,600万丁に達するとみられる。
・人的損失
 この10年間の武力紛争での死者は、2,436,351人だった。昨年1年では、77,320人だった。 2017年、世界中で銃による犠牲者が急増し、およそ589,000人の死者を出した。 特に中南米とカリブ海の国々で顕著で、深刻な社会問題化した。

2019年8月23日 アムネスティ国際ニュース



アマゾンを襲う大規模火災 政府の責任
  
 アマゾンの熱帯雨林でこの数週間、大規模火災が発生していることが報じられた。 森林火災を止める責任がボルソナロ政権にあることは明白であり、同政権は、真正面から消火対策に取り組むべきである。 そして、今日のアマゾンの危機を引き起こした熱帯雨林の開発政策を変えなければならない。

年初、アムネスティは、今回特に火災が大規模なロンドニア州を含むアマゾンの先住民族の 居住地周辺で起こった伐採や侵入、放火などの違法行為の実態を調査し、報告した。 調査地域の森林破壊は、昨年の同時期に比べ2倍のスピードで進んでいる。
アマゾンから数千キロ離れたサンパウロの街でも、森林火災から立ち上る煙で空が覆われ、日中でも薄暗い。 森林破壊は、違法な森の侵入者により引き起こされている。 彼らは、木々を伐採し、火をつけて山火事を起こし、先住民族の村を襲撃する。

 事態の深刻化にも関わらず、ボルソナロ大統領は、熱帯雨林の保護規制を緩め、 100万人もの先住民族の権利を侵害している。また、火災の原因はNGOにあるなどとも非難している。 言語道断の嘘を拡散したり、森林火災の規模を矮小化するのではなく、 火災の拡大を止める行動を直ちに起こすべきである。
これは、先住民族の人びとが、安全で健康的な環境で生活する権利を守る上で、不可欠である。 さらに、大気汚染が地域・国境を越えることを考えると、ブラジルの全市民や 近隣諸国の人びとの健康の権利を守る義務がある。
そして、アマゾンを守るために何ができるのかを考える国々にとっては、 先住民族の人権保護に向け取り組むことが、さらなる森林破壊を防ぐ鍵となる。 私たちは、アマゾンの先住民族の人びとやリーダーたちのために、共に立ち上がらなければならない。 彼らにとって、アマゾンは「地球の肺」であるだけではない。生きる場所なのである。

2019年8月22日 アムネスティ国際ニュース



国際芸術祭『あいちトリエンナーレ2019』「表現の不自由展・その後」
  〜表現の自由と歴史的事実否定の公人発言に政府は措置を〜
 開催三日で中止に追い込まれた国際芸術祭『あいちトリエンナーレ2019』の企画展「表現の不自由展・その後」は、 いまだ再開の見通しがたっていない。アムネスティ・インターナショナル日本は、 公人による発言や匿名の脅迫者による圧力によって市民の表現の自由が侵害され続けていることに、 あらためて深刻な懸念を表明する。

 今回の企画展では、特に「平和の碑(平和の少女像)」が、攻撃の対象となっている。 この「平和の碑」は、日本軍性奴隷制(日本軍「慰安婦」制度)の被害を受けた少女たちをモチーフとし、 戦時性暴力の被害女性たちの歴史と人権をテーマに作成された芸術作品であり、 日本軍性奴隷制の国際法上の責任を問う象徴として世界各地に設置されているものである。

今回、政治的圧力をかけた複数の公人が、「平和の碑」について「日本人の心を踏みにじるもの」、 「我々の先祖がけだもの的に取り扱われるような展示物」などと発言している。 8月3日に企画展の中止が発表された後も、大阪府知事が「平和の碑」を含む展示内容について、 「反日プロパガンダ」であり愛知県知事は辞職相当だとの発言を行うなど、 公人による「平和の碑」を攻撃する発言が続いている。
こうした状況の中で、 芸術祭実行委員会には脅迫メールが770通も届いており、愛知県が警察に被害届を出したことが報じられた。 さらに、『あいちトリエンナーレ』芸術監督を招き18日に開催予定だった別のシンポジウムも中止に追い込まれた。
これらの公人の発言は、日本軍性奴隷制について、その歴史的事実のみならず、 人権侵害に対する国家責任や被害者の尊厳などをも否定する言動である。 これまでにも、こうした言動が公人によって繰り返されてきたため、 国際的な人権条約機関は、日本軍性奴隷制の被害者たちが再被害を受けているとの懸念を表明するとともに、 「被害者を侮辱し又は事件を否定するあらゆる試みの糾弾」を日本政府は行うべきであり、 そのために効果的な立法や行政上の措置を直ちにとるべきである、と日本政府に対して勧告している (自由権規約委員会の2014年日本政府報告書審査総括所見など)。

日本政府は、「平和の碑」の展示を攻撃する今回の公人の言動に対して、 これを是認することなく公式に反駁し、日本軍性奴隷制の被害者の尊厳を傷つける発言をくい止めるための 具体的な措置を取らねばならない。

 「表現の不自由展・その後」中止から2週間がたった。 企画展の実行委員会は展示再開を求め続けており、『あいちトリエンナーレ』の他の展示作品の作者からは、 企画展の出品作家に対する連帯と展示中止に対する抗議の意を表すとして、展示の一時中止等が相次いでいる。 企画展の再開を求める市民の署名活動も行われている。

 アムネスティ日本は、「表現の不自由展・その後」における表現の自由の侵害を助長した 複数の公人の言動にあらためて強く抗議するとともに、日本政府に対して、同展が再開できる環境を早期に 整えるために必要な具体的措置をただちに取ることで、表現の自由を保障する政府の責任を果たすよう強く求める。

                        以上
2019年8月21日 日本支部声明



国際芸術祭『あいちトリエンナーレ2019』の中止
    〜表現の自由の侵害〜
日本支部声明

 国際芸術祭『あいちトリエンナーレ2019』の企画として8月1日より開催されていた 「表現の不自由展・その後」が、数々の政治的な圧力や匿名の脅迫行為などの攻撃によって中止に追い込まれた。 アムネスティ・インターナショナル日本は、公人による発言や匿名の脅迫者による圧力によって 市民の表現の自由が侵害されたことに深刻な懸念を表明する。

 この企画展における展示に「慰安婦」問題や天皇制などを題材とした作品が含まれていることが明らかになると、 それらの展示を問題視する発言がインターネット上に現れた。
8月2日には、菅官房長官と柴山文科大臣が同展を問題視して、芸術祭に対する補助金支出の見直しに言及した。 河村たかし名古屋市長は同展を視察した上で、展示中止を求める「抗議文」を愛知県知事に提出した。 自民党の国会議員らも展示は政治的プロパガンダであるとの意見を表明した。
あいちトリエンナーレ実行委員会事務局には、メールや電話で多数の抗議が寄せられ、 中にはテロ予告や脅迫もあったとされる。
こうした状況下で、実行委員長の大村秀章知事と津田大介芸術監督は、8月3日に同展の中止を発表した。

 自由権規約(国際連合 市民的及び政治的権利に関する国際規約:日本は1979年に批准)第19条は、 締約国に対して、表現の自由の権利を保障すべき法的義務を課しており、 特に公人は、表現の自由を保障し尊重する法的義務を負っている。 しかし、官房長官、大臣、国会議員、市長らの今回の言動は、この法的義務に違反して 同展中止に政治的圧力をかけるものであり、同展企画者および出展者の表現の自由を侵害するものである。

 国連自由権規約委員会の一般的意見34(2011年)は、 「締約国は、表現の自由についての権利を行使する人々を封じることを目的とした 攻撃に対し有効な措置を講じなければならない」と述べており、 日本政府には、同展への攻撃に対して、関係者の安全を保障し、脅迫行為については捜査を行うなど、 表現の自由を守るための具体的かつ有効な措置を取る責任がある。
日本政府は、「表現の不自由展・その後」に向けられた脅迫や攻撃に対して、 同展関係者および『あいちトリエンナーレ』全体の安全を保障し、 表現の自由を守るために具体的な措置を講じるべきである。 「表現の不自由展・その後」が中止に追い込まれて以来、実行委員会メンバーや、 同展参加者を含む『あいちトリエンナーレ』参加アーティストらから、 同展の再開や安全の確保を求める声が上がっている。

 アムネスティ日本は、「表現の不自由展・その後」における表現の自由の侵害を 助長した複数の公人の言動に強く抗議するとともに、日本政府に対して、 同展が再開できる環境を早期に整えるために必要な具体的措置をただちに取り、 表現の自由を守るための有効な措置を取る責任を果たすよう強く求める。

                               以上
2019年8月8日 日本支部声明



ロマの人びとの居住権
 欧州社会権委員会は、イタリア政府に対してロマの人びとの居住権を 保護する措置を早急に取るよう要請した。
ロマの人びとは現代社会にいながら、長らく、社会から疎外され、 劣悪な生活環境に置かれ、日常的な差別を受けてきた。

 アムネスティは 今年3月、同委員会に対して、ロマの人びとが悲惨な居住環境に 置かれている問題について申し立てていた。 アムネスティは、委員会のこの対応を歓迎するとともに、イタリア政府には、委員会の要請を受け入れ、 ロマの人びとに対する家屋破壊や強制立ち退きの即時執行停止を強く求める。
保護措置を蔑ろにしたこれらの対応は、欧州社会憲章違反にあたる。 何よりも、ロマの人びとを強制的に排除し、適切な代替え家屋を提供しないのは、許されない。 委員会は、団体として初めてアムネスティの申し立てを受理したばかりか、 イタリア政府に対して、差別や暴力などの排除を求めるという思い切った対応を取ったのは、大変意義深い。

 強制退去が違法であるにもかかわらず、イタリアは、ロマを強制的に排除し続け、 ロマ社会全体をホームレスにしてしまった。 欧州社会権委員会の要請が、イタリアの恥ずべき慣行に終止符を打つことを期待したい。

2019年7月5日 アムネスティ国際ニュース



移民収容所空爆は戦争犯罪のおそれ
 首都トリポリ東部のタジュラにある入国管理収容施設が7月2日夜、空爆を受け、 少なくとも40人が死亡し、80人以上が負傷した。死者は、さらに増えるおそれがある。 国際刑事裁判所は、この事態を早急に調査するよう命じるべきだ。

施設には、難民や移民600人以上が収容されているが、出入り口は施錠されているため、 自力で脱出できない。このことは、紛争当事者たちに周知のことであり、 今回の攻撃は戦争犯罪にあたるおそれがある。
残忍な攻撃は、欧州とリビアによる冷淡な移民政策が生み出したものといえる。 両者が、欧州への難民・移民の流入を食い止めるために結託したことで、 数千人もの人びとが地中海からリビア国内の収容施設に送られてきた。

 首都トリポリの奪還を目指す反政府武装組織「リビア国民軍」と 国際的に承認されている国民合意政府との間で戦闘が続いてきたが、 今回の死者数は、これまでの戦闘による市民死者数の2倍にのぼる。 犠牲者のほとんどは、自国の紛争や迫害、貧困を逃れて欧州を目指したが、 紛争下にある施設に収容されてしまった難民や移民だ。 同様に危険な他の収容施設に入れられている人びとを、直ちに安全な場所に移動させるべきだ。

アムネスティが7月3日に接触した移民・難民の話では、最初に施設付近が空爆を受け、 その直後の攻撃で、男性収容棟が直撃を受けた。 撮影された写真には、爆弾でできたと思われる直径数メートルにわたり陥没した地面が写っていた。 空爆後、300人ほどが欧州を目指したが、地中海で追い返され、 リビアにもどり、タジュラで路上生活を送っている。

攻撃を加えたのはどちらの陣営なのか、今後の調査が待たれるが、複数のメディアによると、 リビア国民軍が最近、F16戦闘機を入手したという。F16並みの戦闘機であれば、 夜間の空爆も、この大きさの陥没ができる爆弾を落とすことも可能だ。 アムネスティはこれまで、紛争当事者たちに、移民・難民が戦闘に巻き込まないように、 彼らの安全な場所への移動を繰り返し要請してきた。

タジュラの収容施設の敷地内には、武器庫があり、 5月初旬、施設から100メートルほどのところにあった軍車両が空爆を受けた。 これを受け、アムネスティは当局に対して、施設内の移民・難民の命を危険にさらしていると警告していた。 国連難民高等弁務官事務所は、彼らを大至急移動するように求めた。
国際人道法は、紛争の全当事者に、民間人の被害を最小限にするため、 攻撃中止を含む最大限の対応を義務付けている。 たとえ攻撃目標が兵站施設であったとしても、近隣に住民が大勢いる場合は違法となる。 紛争当事者たちは、民間人から犠牲者を出さないために攻撃目標の変更を含む措置を取らなければならない。
アムネスティの調査で、収容施設にいる人びとの中には、 タジュラの軍事施設で強制的に働かされている人たちがいることがわかったが、これも国際法違反である。
 今回、難民・移民が攻撃を受け犠牲者を出した事態を受け、欧州連合(EU)は、 難民をリビアに委託する合意を停止すべきだ。 EUは今こそ、難民・移民が置かれている非人道的な状況に目を向け、 彼らの安全確保のために再定住地を提供すべきである。 また、彼らがリビア国外に逃れる安全なルートを即刻、確保するとともに、 地中海で救助された人びとをリビアに送ってはならない。

 アムネスティはこれまで、国連によるリビアへの武器禁輸措置が守られていないことが、 トリポリの紛争を激化させ、戦争犯罪など人権侵害を助長していると警告してきた。 その結果、リビア市民10万人以上が、国外に脱出している。

2019年7月3日 アムネスティ国際ニュース



イスラエル入植地の観光案内掲載
 ネット上で民泊情報を提供するエアビーアンドビー社は4月9日、ヨルダン川西岸地区の イスラエル入植地にある宿泊施設の掲載をめぐり、一旦は削除するとした方針を転換し、 掲載を続行すると発表した。

 過去50年以上にわたるイスラエルによる入植で、数千ものパレスチナ人が自宅を追われ、 生計手段や資源を奪われてきた。この入植は、ジュネーブ諸条約違反であり、 国際刑事裁判所ローマ規定が定める戦争犯罪に当たる。
アムネスティをはじめとする人権団体は、入植地の宿泊施設の掲載は、 人権侵害に加担していることだと繰り返し指摘してきた。
 同社は昨年11月、入植地の宿泊施設の掲載を削除するとしたが、 この決定を不当とする集団訴訟がイスラエルで起こされ、掲載削除の方針を撤回した。 人権擁護で業界の先鞭をつける機会を放棄する一方で、宿泊施設の掲載で得た収益を 慈善団体に寄付すると発表した。罪滅ぼしのつもりだろうが、 掲載による観光客の呼び込みが人権侵害への加担であり、 入植地の経済を後押しするという事実は、なんら変わらない。
国際人道法、国際人権法を尊重すべき企業による責任放棄は、恥ずかしい限りであり、 人権尊重を標榜するという同社の言葉が、空しい。
この方針転換は、企業には人権を尊重する上で大きな決断は期待できないということである。 各国は、法的措置で企業にその義務を果たさせるしかない。

2019年4月10日 アムネスティ国際ニュース



ブルネイの残虐な刑罰
 同性間の性行為には石打ちの死刑、強盗には手足切断などという極めて残虐な刑罰が、 ブルネイで4月3日から施行される。
石打ちと手足の切断は、とりわけ残虐で非人道的、品位をおとしめる刑罰だが、 新条項には、他にも凄まじい刑罰がいくつも盛り込まれている。
同国は、直ちにこれらの刑罰の導入計画を反故にし、国際人権法に沿った内容に改めるべきである。 また国際社会は、ブルネイに対してこの改正法の実施を強く非難しなければならない。

新たな刑罰はシャリア刑法で未施行だった条項で規定されており、 検事総長のウェブサイトによれば4月から適用されることになっている。 新たな刑罰の対象となる行為には、同意のもとでの成人同性間の性行為などのように、 そもそも罪にはならない行為も含まれている。
同国の刑法には、人権侵害にあたる多数の規定が含まれており、重大な問題をはらむ。 表現、宗教、信条の自由の権利のあからさまな制限や女性差別も看過できない。

背景情報

 ブルネイは、拷問等禁止条約(拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰を禁止する条約)に 署名はしたが、批准はしていない。また、2014年の同条約機関による審査での勧告を、ことごとく退けている。
国際人権法は、石打ち、四肢切断、むち打ちなどすべての身体刑は、 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける刑罰にあたるとして、いかなる状況でも禁止している。 さらに、この禁止は、慣習国際法の基本原則として捉えられているため、当該の条約の批准国か否かを問わず、 すべての国が、この禁止規定に拘束される。国際法の下では、いかなる拷問も犯罪である。
ブルネイは、死刑を存置するが事実上、廃止している。最後の死刑判決は2017年に下され、罪は薬物犯罪だった。

2019年3月27日 アムネスティ国際ニュース



イスラエルの占領地への入植は戦争犯罪
  〜占領地は観光地じゃない!〜
 イスラエルが占領するパレスチナへのイスラエル人の入植は、国際人道法に違反し、戦争犯罪にあたる。 入植地はパレスチナ人から奪った土地であり、入植者によるパレスチナ人への度重なる攻撃も報告されている。

違法な入植地で利益を得ているのが、旅行サイトだ。大手旅行サイト4社、エアビーアンドビー(米国)、 Booking.com(オランダ)、エクスペディア(米国)、トリップアドバイザー(米国)は、 入植地にあるホテルや観光スポットを紹介し、観光客を送り込み、パレスチナ人に対する人権侵害を 助長する結果となっている。

アムネスティは、4社による入植地の施設案内やイスラエルの人権侵害について、 現地での聞き取りを含む調査を実施し、報告書にまとめた。
アムネスティの調査員は昨年2月から10月にかけて、ヨルダン西岸の被占領パレスチナ地区にある 4つのパレスチナの村と東エルサレムのシルワン地区、ヘブロンのパレスチナ人居住区に入った。 いずれの取材地も、その近くにはイスラエル入植者が運営する観光名所がある。

入植地での事業を宣伝

 アムネスティの調べでは、入植地の宿泊施設や観光スポットの各社掲載件数は、エアビーアンドビー300件以上、 トリップアドバイザー70件以上、Booking.com 45件、エクスペディア9件だった(いずれも調査時点)。 それぞれが、ホテルや観光地をつぶさに紹介するが、その観光地がイスラエルによる入植地にあることを 説明する文言は載せていない。
近年、イスラエルは、観光産業の育成に多額の資金を投じてきた。 観光客を呼び込むことで、パレスチナの土地への入植を既成事実化し、正当化している。 また、ユダヤ人と地域との歴史的つながりをアピールするために、 あえて遺跡近くにイスラエル人を入植させてきた。 さらに入植者には、パレスチナの土地や資源を活用するよう働きかけた。
そして、旅行サイトは、入植地周辺の自然保護区や遊歩道、砂漠のサファリにウェブサイト訪問者をいざなう。 その結果、入植地の観光客は、非日常体験を楽しむ一方で、 地元のパレスチナ人は、日常的に人権侵害に直面するという、異様な事態が現れている。

人権侵害からの利益

 エルサレムの北40キロほどにあるシロに近い2つのパレスチナの村は、 1990年代後半以降で5,500ヘクタール(55平方キロメートル)を超える土地を失った。 多くのパレスチナ人が村を去り、わずかに残った人たちは、入植者からしばしば攻撃を受けている。 4社とも、シロの観光施設を掲載するが、同地が入植地であることを説明するのは、Booking.comだけだ。

ベドウィンも観光開発で住み慣れた土地を追われ、生活の糧を失っている。 その地域に近い砂漠での体験は旅行サイトで「砂漠の静けさと心温まるイスラエルのおもてなし」などと紹介され、 1泊235米ドル(約26,000円)で販売されている。 古代遺跡で知られるスシャでも入植が進み、多くの村人が土地を奪われてきた。 遺跡は、周辺のオリーブ畑、ワイナリー、ブドウ畑などとともに エアビーアンドビーとトリップアドバイザーで写真付きで紹介されている。

イスラエルは、パレスチナ人の土地を観光地に仕立て、拡大のためにさらに土地を奪っているが、 その恩恵にあずかるのは、入植者と彼らと事業を行っている旅行サイト企業だけだ。
4社は、イスラエルの人権侵害を直視し、違法な入植地にあるホテルや観光地の紹介を 自社サイトから削除すべきである。「共有と相互信頼」をうたい文句にする4社が、人権侵害の片棒を担いではならない。
国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、企業には、国際人道法および人権法を尊重する責任がある。 4社は、被占領パレスチナ地域のホテルや観光地の案内をすべて削除しない限り、 国際法に違反し自社の企業理念にも反する事態が続く。

 アムネスティは、調査報告書を公表するにあたり、4社には事前に調査結果を伝え、意見を求めた。 Booking.comとエクスペディアからは回答があったが、他の2社からは無回答だった。 届いた回答は、報告書の巻末に掲載している。

入植地生産物の輸入規制を

 入植地が利益を生む構図は、観光業だけではない。 入植地で生産された農産物や製品が海外に輸出され、数百億円もの収益を生んでいる。 アムネスティは、これらの生産物についても、各国政府と関係企業に対し、取り扱い禁止を求めている。

2019年1月30日 アムネスティ国際ニュース



イスラエル軍の行為は戦争犯罪
 
  国連調査委員会は1月28日、昨年のガザでの抗議行動で、パレスチナ市民を銃撃するなどの イスラエル軍の行為は、戦争犯罪にあたる可能性があるとする報告書を発表した。 この調査報告は、アムネスティの見方と一致する。
イスラエルの建国により土地を追われたパレスチナ難民数百万人の帰還する権利を求める、 昨年の「帰還大行進」のデモでは、イスラエル軍が多数の市民を殺害したが、 アムネスティはこの殺害を戦争犯罪にあたるとみていた。

報告書は、イスラエル軍が、パレスチナの子どもや医療従事者、ジャーナリスト、障がい者と 認識しながら発砲したと指摘し、国際人道法をないがしろにした残酷で無慈悲な行動であるとしている。
ガザでは、6,000を超える人びとが銃撃で負傷し、すでに疲弊したその医療体制は、 さらに大きな負担を強いられた。負傷者の多くが、治療のためにガザの外に出ることを認められなかった。

国連は勧告に従い、国内の司法機関や国際刑事裁判所などの国際的な司法機関へ渡すことを念頭に、 戦争犯罪の加害者に関わる情報を収集しなければならない。 加害者が、罰せられないままであってはならない。
国連の報告を機に、被占領パレスチナ地域でのイスラエル軍による戦争犯罪の犠牲者に 正義の道を切り開き、犯罪と不処罰の長きにわたる連鎖を断ち切らなければならない。

2019年2月28日 アムネスティ国際ニュース



同意のない性行為は強かんではないのか?
 
 欧州各国では、同意のない性行為は強かんではないとする旧態依然とした法律が、いまだまかり通っている。 その結果、加害者の罪は問われず、逆に被害者が非難されるという風潮が続いている。

 11月24日の女性に対する暴力撤廃の国際デーを前に、アムネスティは、31カ国の強かん関連の法律を調査した。 その結果、31カ国のうち8カ国のみが、同意がない性行為を強かんとして処罰の対象としているが、 大多数の国は、身体的暴力や脅しなどにもとづく場合のみを強かんと定めている。
#MeToo(SNSで「私も」と呼びかける運動)に触発される形で、多数の女性が、 封印していた自分たちの体験を話すようになった。表沙汰になっていない強かんがいかに多いかを物語る。 意を決して刑事告発しても、時代錯誤の法律の壁にぶつかり、 対応した警察官や検察官らにまともに相手にされずに愕然とする。泣き寝入りするしかないのである。
 
 法律とは、本来、正義を果たし、人びとの行動を変える力を持つ。しかし、各種調査によると、 酔っ払って服装が露わだったり、抵抗がなければ、その相手との性行為は、 強かんではないとする回答者が、相変わらず多い。 相手の同意がない性行為は、れっきとした「強かん」である。 各国が、この単純な事実に向き合った法整備をするまで、強かんの加害者は、世にはびこり続けることになる。
欧州の人権機関の調査では、欧州の女性20人に1人、約900万人が強かんされた体験を持つ。 一方で、アムネスティが欧州31カ国を対象に実施した調査では、 同意のない性行為を強かんと定義する国は、アイルランド、英国、ベルギー、キプロス、 ドイツ、アイスランド、ルクセンブルグ、スウェーデンの8カ国に過ぎない。 他の23カ国は、暴力や脅しなどの強要がなければ、強かんとみなさない。 23カ国の中には、同意なき性行為を強かんと区別してより軽い罪とする国もあり、 暴力が伴うのが強かんだという、間違った認識を助長している。

 法改正は、強かん犯罪に対処する上で不可欠な第一歩だ。しかし、強かんを無くすには、それだけでは不十分だ。 多くの被害者は、社会の偏見や非難にさらされる。その非難の言葉はしばしば、 被害者に手を差し伸べるべき警察や検察官から浴びせられる。

変化の波

 強かんの加害者がはびこり、泣き寝入りするしかなかった社会に変化が起きている。、 欧州全域で性暴力に勇気をもって立ち上がる人たちがいるのだ。 この1年間、欧州各地で女性たちが集い、注目を集めた強かん事件に怒りの声を上げ、 国に対策の強化を訴えてきた。
4月にはスペインで、集団強かん犯5人が有罪になったものの、 より罪の軽い性的虐待だったことに抗議の声が噴出した。
アイルランドでは、17才の女性から強かんを訴えられた加害者の弁護人が、 女性に落ち度があったとして被害女性の下着を陪審員に示した。 これを知った女性たちが、自分の下着姿を#ThisIsNotConsent(これは同意ではない)で投稿した。
強かんは、重大な人権侵害であり、重い犯罪である。 欧州各国は、法を改正し、被害者への批判や当局の女性軽視に、断固立ち向かうべきである。 さもなければ、被害女性が後ろめたい思いをせず、加害者は必ず処罰されると信じられる社会は実現しない。

2018年11月24日 アムネスティ国際ニュース


アウンサンスーチー氏への『良心の大使賞』を取り下げる
  〜人権を擁護する象徴的存在からの離脱〜
 アムネスティ事務総長クミ・ナイドゥは11月11日アウンサンスーチー氏に書簡を送る。
事務総長は書簡の中で、就任して2年半、国軍による虐殺や表現の自由の制限に対して同氏が無関心を装い、 ミャンマーの人権・正義・平等の擁護にその政治的、道徳的権威を行使しなかったことに遺憾の意を表した。

 「アムネスティが、『良心の大使』として貴殿に期待したことは、いかなる不正義に対しても 道徳的権威をふるって声を上げ続けることでした。ところが昨今の貴殿は、 希望と勇気と人権を擁護する象徴的存在では、もはやなくなりました。これは、痛恨の極みです。 よって、アムネスティは、貴殿を良心の大使賞に足る人物と認めることができなくなったと判断し、 誠に遺憾ながら、授与した賞を撤回せていただく次第です」

終わりなき人権侵害

 2016年4月に文民政権の事実上の最高指導者となって以来、アウンサンスーチー氏は、 不作為によりさまざまな人権侵害に加担し、その拡大を助長してきた。 昨年8月下旬から始まった国軍主導のロヒンギャ掃討作戦では、治安部隊が、殺戮、強かん、拷問、 家屋の焼き討ちなど残虐の限りを尽くした。数千人が死亡し、72万人以上が隣国バングラデシュに逃れた。

アムネスティは、アウンサンスーチー氏が、この残虐行為に向き合わないことを繰り返し非難した。 国連も、大量虐殺の捜査と軍幹部の告発を求めた。 文民政権は軍を統制する力を持たないとはえ、アウンサンスーチー氏率いる政府は、 人権侵害の申し立てをはねつけ、国際調査団の受け入れも拒否するなど、軍を責任追及からかばってきた。 それどころか、ロヒンギャへの敵意を積極的に煽り、彼らをテロリスト呼ばわりし、 放火は自作自演で、強かんはでっちあげだと決めつけた。
そんなこともあり、政府系メディアは、ロヒンギャを暗にほのめかしながら 「忌まわしい人間のクズやトゲは、排除せよ」などという記事を書きたて、ロヒンギャへの憎悪を煽った。

 「アウンサンスーチー氏がロヒンギャの人びとのために何もしてこなかったことが、 同氏の『良心の大使賞』を取り下げる理由の一つだ。 政府が、重大で広範囲な残虐行為があったことを認めない限り、 ロヒンギャの人びとの保護を国に期待することはできず、 ロヒンギャの人権状況が改善される目処が立たない」と事務総長は言う。 さらに問題がある。政権が、掃討作戦で国内で避難生活を送る10万人以上の人びとに 人道支援を認めないため、彼らの状況は悪化するばかりだ。

言論の自由を弾圧

 国軍が強大な権力を維持しているとはいえ、文民政権は、人権状況、とりわけ表現の自由や集会の自由など、 改革に取り組める分野もある。しかしこの2年、政権は、人権擁護活動家や国の政策に批判的な記者を投獄したり、 嫌がらせをしたりしてきた。 活動家や記者の弾圧で使われる法律は、民主化運動を推進していたアウンサンスーチー氏自身が当時、 逮捕された時にも適用されたものだが、その種の法律を廃止することもなかった。 それどころか、アウンサンスーチー氏は、軍の虐殺を報じたロイター記者を告発する際、 同様の法律の適用を積極的に支持した。

 アムネスティは2009年、長年、非暴力民主化運動と人権擁護に取り組んできたアウンサンスーチー氏を讃え、 団体の最高の賞である「良心の大使賞」を授与した。その当時、同氏は自宅軟禁中だった。 11月12日は、その軟禁が解かれて丸8年にあたる。 2013年になってようやく賞を受け取れたアウンサンスーチー氏は、 アムネスティに対して「我が国を常に注視し、希望が歴史を彩る国になるよう支援をしてほしい」と要請していた。
アムネスティは、この要請を真摯に受け止め、取り組んできた。今後も同国の人権侵害から目をそらすことはない。 同氏がどうであれ、アムネスティは、ミャンマーの正義と人権のために闘い続ける。

2018年11月12日 アムネスティ国際ニュース



世界死刑廃止デー
今年もまた世界死刑廃止デー(10月10日)を迎えた。
死刑囚は、国際人権法と国際人権基準に沿って、人道と尊厳をもった扱いを受けなければならない。 罪の軽重を問わず、何人も非人道的な扱いは許されない。
しかし現実には、死刑を存置する国の多くで、死刑囚は独房に隔離され、長年の隔離で深刻な疾患を 抱えても満足な治療がままならず、いつ執行されるかもしれないという恐怖の中に置かれている。 このあまりにも過酷な環境に置かないためにも、死刑存置国は、死刑そのものを廃止するべきである。

アムネスティは、長年、死刑囚をめぐる残忍な人権状況を明らかにし、死刑の廃止を訴える活動を続けてきた。 ここでは特に、ベラルーシ、ガーナ、イラン、日本、マレーシアの状況を取り上げる。 これらの国では、非人道的な状況が常態化している。
ベラルーシの死刑執行をめぐる閉鎖性は際立っており、執行情報は一切公開されず、 死刑囚や家族も執行の事前通告を受けない。
ガーナでは、死刑囚はしばしば、長期間、病気の治療を受けることができない。
イランのモハマド・レザ・ハダディさんは、15才で死刑を宣告されてから14年間、 少なくとも6回、執行日を告げられては延期されてきた。精神的拷問ともいえる取り扱いだ。
日本では、松本健次さんが、長期にわたる拘禁による影響で妄想性障がいを患っている。
マレーシアのフー・ユー・ワーさんは、2014年に恩赦の嘆願を提出したが、これまで何の回答も受けていない。

アムネスティの調べでは、昨年の死刑執行は、23カ国で993件あった。 前年2016年の1,032件から4%減、2015年39%減少した。(2015年は1989年以降で最多を記録。) これらの数値には、死刑に関する情報が国家機密扱いである中国の数千件ともいわれる数値は含まれない。 その中国を除けば、ほとんどの死刑執行は、イラン、サウジアラビア、イラク、パキスタンに集中していた。

アムネスティは、犯罪の種類や状況、犯罪の有無、個人の特質、死刑執行方法などを問わず、 例外なく死刑に反対する。死刑は、世界人権宣言にうたわれている生きる権利の侵害である。 非人道的で品位を傷つける最も残虐な刑罰である。

2018年10月10日 アムネスティ国際ニュース

ウイグル族など対する弾圧をやめろ
中国は、新疆ウイグル自治区のウイグル族など少数派に対する弾圧をやめ、 推定100万人にのぼる人たちの拘束を解くべきである。
同自治区ではこの1年間、多くがイスラム教徒のウイグル族やカザフ族の住民多数が 「再教育施設」に収容され、教化、同化などを受けてきた。 残された家族は、突然連行された夫あるいは妻や子どもが どこでどういう扱いを受けているのか、知る由もない。 どこかに訴えたくとも、報復を恐れてそれもできない。家族の苦悩は、増すばかりだ。
国際社会は、この事態を静観せず、中国政府に対し、説明責任を果たすように迫るべきである。 アムネスティは、新疆自治区在住の家族や知人が行方不明になったという100人あまりの国外在留者、 さらに再教育施設で過酷な扱いを受けたという元被収容者たちに、聞き取りをした。

大規模な拘束
新疆ウイグル自治区での弾圧が強化されたのは、昨年3月、同自治区に「反過激主義規則」 なるものが適用されたことが契機だった。宗教的あるいは文化的な表現が公私の場を問わずに 「過激主義」と見なされ、「普通でない」あごひげを生やす、ベールやヘッドスカーフを着用する、 イスラム教やウイグルに関する本や記事の所持、定期的な祈り、断食、禁酒などが、摘発の対象となっている。
海外、特にイスラム系の国での勉学、仕事、あるいは国外の人たちとの接触は、疑いの目を向けられ、 老若男女問わず誰もが拘束対象となる。
顔認証ソフトやメールや通話の検閲など、監視の目はいたるところに張り巡らされ、 プライバシー保護の技術を使ったメッセージアプリを使うだけでも、拘束理由になる。
中国当局は、被拘束者を留め置く施設を「教育による転向」のための施設と呼ぶ。 罪を問われ裁判にかけられるわけではないため、弁護士はつかず、異議申し立てもできない。 転向に抵抗すれば、罵声を浴びせられたり、暴行されたり、食事を与えらなかったり、 個室に閉じ込められたりするという。いつ「転向」できたかの判断が当局次第のため、 被収容者には、先が見えない日々が何カ月も続く。
中国当局は、テロ対策や治安確保のため非常手段もやむなしとするが、 その手段は、特定の脅威を念頭に、極力、対象者を絞った限定的なものでなければならない。 ところが、収容施設は、洗脳、拷問、処罰の場と化している。

引き裂かれる家族
新疆ウイグル自治区の家族の誰かが連行されると、国外在留者は、当初は事態の悪化を怖れて口外することをためらう。 しかし、改善が一向に見えないため、進んで口を開くようになっている。
ある男性は、隣国カザフスタンに短期間滞在後、帰国した昨年10月、二重国籍を保持したなどとして拘束され、 5カ月近く施設に入れられた。 拘束当初、目隠しをされ、体を器具で固定され、半日以上も身動きできなかった。 6,000人ほどもいた被収容者全員で、中国共産党の歌や習近平氏賞賛の言葉を唱和させられた。 私語は許されず、孤独と虐待の日々で、自殺への思いもよぎったという。

当局は国外在留者が、過激な宗教思想やテロ活動に関係するとみられる 国外の組織とつながっていると批判する。 そのため、新疆ウイグル自治区にいる家族は、余計な疑いを持たれないように 国外にいる家族や親戚、友人などとの 連絡をすべて断ち切っているという。電話はもちろん、SNSも使わない。 その結果、連絡が絶たれた国外の人たちの不安は、尋常ではない。 また、両親が施設送りになると、残された子どもは、経済的にも追い詰められる。 そのため、子どもが大きければ、国営の職業訓練所に入れられ、 小さければ、昨年建設された福祉施設に収容される。

スパイ行為を迫られる
国外在住者をさらに追い詰めるのが、治安当局から働きかけられるスパイ行為だ。 色よい返事をすれば、故郷の家族には寛大な措置が保証されるが、拒否でもしようものなら、 「故郷の家族を拘束するぞ」と脅される。
さらにスパイの存在は、国外在留社会全体に猜疑心を広めることになり、 孤立感や恐怖心に拍車をかける。 このように、中国当局は、国を挙げての弾圧により、 新疆ウイグル自治区の住民数百万を深刻な状況に追い込んでいる。 当局は、収容施設の実態を明らかにし、収容されている人たちを家族の元に、速やかに送り返すべきである。

2018年9月24日 アムネスティ国際ニュース


処刑は正義の実現にはなりえない
 今朝、オウム真理教元代表を含む元幹部7人の死刑が執行されたが、処刑は正義の実現にはなりえない。
オウム真理教は、1995年の地下鉄サリン事件のほか松本サリン事件、坂本弁護士一家殺害事件などの 凶悪事件を引き起こし、元幹部ら13人が死刑判決を受けた。一連のオウム事件の死刑確定者に対して、 今回が初の死刑執行となった。地下鉄サリン事件では神経ガスにさらされて13人が死亡、 数千人が被害に苦しんでいる。

1日に7人の大量処刑は、近年類を見ない。彼らの犯行は卑劣で、罪を償うのは当然である。 しかし、処刑されたところで、決して償いにはならない。 正義の実現には、真相究明が欠かせない。また、すべての人の人権を尊重してこその正義である。 人権を否定し、真相究明の機会を奪う死刑は、正義とは程遠い。 今朝、処刑されたのは、松本智津夫さん、中川智正さん、新実智光さん、早川紀代秀さん、 井上嘉浩さん、遠藤誠一さん、土谷正実さんの7人。執行は、全国の拘置所で行われた。 数人が、再審請求をしているものとみられる。

各国の人権状況を審査する国連の普遍的定期審査で、日本は死刑制度の改革を迫られてきたが、 この3月、またもや勧告受け入れを拒否した。 日本政府は「世論が望む」から死刑執行は避けられない、と繰り返し主張してきた。 しかし、本来、国がすべきことは、一歩踏み出して、人権尊重を主導することである。 アムネスティは、犯罪の性格や犯罪者の特質、処刑方法にかかわらず、いかなる死刑にも反対する。 過去40年以上にわたり、終始一貫して死刑の廃止に取り組んでいる。

2018年7月6日 アムネスティ国際ニュース


日本政府は「慰安婦」女性への誠実な対応を
アムネスティ・インターナショナル日本は安倍晋三内閣総理大臣へ3月8日付きで公開書簡送りました。

 日本政府に対し、旧日本軍性奴隷制の被害者であり、正義を求める女性たちに誠実に対応するよう、 あらためて要請します。

 日本政府は軍の性奴隷に関する賠償責任について、1951年サンフランシスコ条約及びその後の 二国間平和条約や協定によっての解決済みだと主張しています。しかしアムネスティ・インターナショナルは、 これらの条約や協定には性奴隷が含まれておらず、また個人が賠償を求める権利を排除していないことから、 日本政府の立場を支持することはできないと考えます。

 アムネスティ・インターナショナルは、日本政府の高官や公人が1932年から第二次世界大戦終戦までの 旧日本軍による性奴隷制度の存在を否定する、あるいは同制度を許容範囲であるかのように 正当化する言動続けていることに抗議します。

 「慰安婦」に対する組織的な戦争犯罪を葬ろうとする相も変らぬ姿勢が、被害者の屈辱と苦悩を 長引かせ、彼女たちの尊厳の回復の妨げとなっています。性奴隷制が国際法上の犯罪であることを 認め、後世にむけて歴史的事実として記録していくことは、将来決して同じ過ちを 繰り返さないため、そして紛争下における性的暴力犯罪を不処罰ににしないための重要な一歩となります。

・国籍に関わらず、生存する被害者、故被害者、その家族を含め、日本軍性奴隷制の直接的な結果として 被害を被ったあらゆる個人への十分かつ中身のある賠償を提供すること。
・金銭賠償に加え、尊厳回復、社会復帰、無条件の謝罪、再発防止など、被害者が求める物心両面での 賠償を提供すること。
・賠償請求や裁判所への申し立てなどの権利を損なう施策は、すべて排除すること。
・韓国政府その他の被害国の政府と協力し、これらの賠償措置を実施する実効性ある制度を設置すること。
・歴史や公文書、日本の教育制度で使用される教科書に旧日本軍による性奴隷制度の正確な記載を行い、 再発防止に努めること。
・軍性奴隷制度の事実を否定または正当化しようとする政府関係者および公人の発言に反駁すること。
(以上抜粋)


ロヒンギャに対する民族浄化
ミャンマーは、依然としてロヒンギャに対する民族浄化を続けている。 食糧補給の道を断つ「強制的飢餓」もその一つだ。国連が発表した この卑劣な民族浄化作戦は、アムネスティがロヒンギャの人びとへの聞き取りで 確認した事実とも一致し、疑いようもない事実である。

ロヒンギャの難民たちは口々に、真綿で首を締めるような兵糧攻めで、 住み慣れた土地から追い出されている様子をアムネスティに語った。
この状況では、バングラデシュのロヒンギャ難民の本国送還は、はなはだ時期尚早だ。 安全が確保され、安心して自主的に帰国できるようになるまで待つべきだ。 ミャンマー当局は、武力であろうと強制的飢餓であろうと、 ロヒンギャの人びとを追い出すいかなる作戦も停止すべきである。
また、国際社会は今こそ、武器の禁輸や特定の制裁など実効性ある対応を取らなければならない。

2018年3月13日 アムネスティ国際ニュース


袴田巖さんの再審の早期実現を求める
アムネスティ・インターナショナル日本は2月8日、東京高等検察庁検事長に 袴田巖さんの再審の早期実現を求める要請の公開書簡を提出しました。


                  *
                         2018年2月8日

東京高等検察庁 稲田伸夫検事長殿
               (公社)アムネスティ・インターナショナル日本
                       理事長 庄司 香


      袴田巖さんの再審の早期実現を求める要請書

 アムネスティ・インターナショナル日本は、東京高等検察庁に対し、 袴田事件の再審実現に協力し、袴田巌さんと彼の家族の長期にわたる苦痛を 一刻も早く終わらせるよう強く求めます。

DNA鑑定や提出された新たな証拠にも基づき、今こそ司法の正義を実現すべきです。 袴田巖さんは、逮捕時から数えて実に47年以上も拘禁され、現在81歳の高齢です。 独居房の中で来る日も処刑の恐怖にさらされてきた心理的苦痛は、想像に余るものです。 また、長期間の身体拘束による心身への影響は釈放後の言動からも明らかであり、 これ以上再審の開始を先延ばしにしてはなりません。

本事件は、取調べでの不公正な手続きや、証拠の妥当性などが問題となってきました。 加えて、即時抗告審では新たに取調べ録音テープも開示されました。 検察庁はこれらの客観的な事実にもとづき、再審開始を受け入れた上で、 再審の実質的な審理の中でその主張を立証すべきです。
また日本政府は、静岡地裁が指摘した証拠のねつ造や違法捜査の疑いを重く受け止め、 国連の勧告に沿った司法制度の改革をすすめなければなりません。 そのための第一歩として、事実の検証を求めます。

アムネスティは、2008年に袴田巖さんを「危機にある個人」と認定し、 公正な裁判を受ける権利の保障などを求めて支援を続けきました。 袴田さんの再審実現を求める声は、広く国内外から届いています。 私たちはあらためて、再審の早期実現に協力することを強く求めます。

以上


パレスチナの少女へ不当な刑罰の恐れ
 12月、被占領ヨルダン川西岸地区でイスラエル軍兵士との諍いで暴力をふるい、 逮捕・勾留された16才のパレスチナ人活動家が、最大10年の実刑を受ける可能性がある。 弁護士によると、彼女は長時間、時には深夜におよぶ過酷な尋問を何回か受けたという。 イスラエル当局は、直ちに彼女を釈放すべきである。

被占領ヨルダン川西岸地区のナビ・サレ村に住むアヘド・タミーミさんは、 12月15日、自宅入口にいた兵士2人に、突き、平手打ち、蹴りなどを加えた。 その様子を撮った動画がフェイスブックで拡散された。 動画を見る限り、兵士2人が、アヘドさんが繰り出した手や足を払いのけるのは、容易だった。 一方、動画を見た多くのイスラエル人が激怒し、ナフタリ・ベネット教育相は軍のラジオ放送で、 「死ぬまで監獄暮らしだ」と言い放った。

4日後、タミーミさんは、米トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と 認めことに対する抗議デモに参加し、逮捕された。 その日、従弟のムハンマド・タミーミさん(15才)が、 兵士により至近距離から放たれたゴム弾を頭部に受け、重傷を負うという事件があった。

1月1日、タミーミさんは12件の容疑で起訴された。兵士に対する「悪質な暴行」や公務執行妨害のほか、 ソーシャルメディアでの煽動、過去の兵士とのトラブル5件に関わる容疑などである。
イスラエル当局の激しい抑圧を前に果敢に抵抗した少女に長期の刑を下すならば、受け入れがたい司法の茶番である。 そもそも裁判を行う軍事法廷は、公平な裁判基準の基本を満たしていない。
毎年、未成年者対象の軍事法廷でパレスチナの子どもたち数百人が起訴され、 地元の人権組織によると、刑務所や拘置所に現在、約350人が収監されている。
タミーミさんの兵士に対する行為で、何日も勾留するのは不当である。 当局は、直ちに釈放すべきである。武装した兵士に、少女が素手で対抗したのは、 兵士の脅威にはなっておらず、罪を問うのは不当である。


2018年1月15日 アムネスティ国際ニュース


またもや死刑執行
 12月19日、2人が死刑執行された。またもや、生きる権利を顧みない日本政府の姿勢が鮮明になった。
処刑されたのは、関光彦さん(44才、強盗殺人)と松井喜代司さん(69才、殺人)で、 執行場所は、東京拘置所だった。2人とも、再審請求中で、関光彦さんは犯行当時19才だった。 2人の執行は、日本の人権状況にまた汚点を残すことになった。

 2007年12月、国連総会は死刑執行の停止を求める初の決議を採択した。 それからちょうど10年が経ち、世界の潮流は確実に死刑廃止に向かっているが、 日本はこの動きに背を向け続けている。
もし日本政府が、死刑は司法としての役割を果たす手段であると考えているならば、大きな勘違いである。 死刑は、残虐で非人道的で品位をおとしめる刑罰であり、国際社会の多くの国が、このことを認めている。 今回の2人の執行で、2017年に処刑された人は4人となった。 死刑確定者は通常、数時間前に執行を告げられ、直前に告げられることもある。 家族や弁護人、一般市民が執行を知るのは、行われた後である。

 アムネスティは、犯罪の性格や犯罪者の特質、執行方法にかかわらず、例外なくすべての死刑に反対する。 アムネスティは40年以上、死刑廃止を求める運動を続けている。

2017年12月19日 アムネスティ国際ニュース


ミャンマー(ビルマ)治安部隊が周到なロヒンギャ民族浄化作戦
 8月25日にロヒンギャの武装集団が警察施設などを襲撃して以来、治安部隊による報復で、 37万以上のロヒンギャの人たちが、自宅を追われ、隣国のバングラデシュに逃れた。
アムネスティが入手した証言や情報などから、ラカイン州での治安部隊の作戦は、 周到に準備されたロヒンギャの民族浄化作戦であることが明らかになってきた。

アムネスティは、衛星画像、現場の写真と映像、火災探知データなどを入手し、 またビルマとバングラデシュの国境付近で目撃者数10人に聞き取りをした。 それらの情報を分析した結果、治安部隊がほぼ3週間にわたり、ラカイン州北部一帯のロヒンギャの村々を 狙った大規模な焦土作戦を展開していたことがわかった。

治安部隊と自警団のような集団がロヒンギャの村々に火を放ち、逃げまどう人びとを手当たりしだいに撃ち殺していった。 間違いなく民族浄化である。

 大規模な焼き討ち情報分析によると、8月25日以降、州北部一帯の居住地域で、 375メートル以上にもわたる大規模な火災が、少なくとも80地区で確認された。 過去4年の同時期のデータも調べたが、この規模の火災は一切認められなかった。 それぞれの地区が焼け野原と化し、焼き出された人たちは、数万人に及ぶと見られる。 そして、火災は、ロヒンギャが多く住む地域に集中していた。

 現地に入ることが認められないため、それぞれの地区の火災の規模は特定できないが、 アムネスティは、火災を示す衛星画像を住民の証言と焼き討ちされた家屋の画像を突き合わせた。 雨期であるため衛星画像からは放火を正確に把握できないため、放火の実態を特定する作業は困難を極めたが、 実際の件数も規模も、分析結果よりも多いものと思われる。
ただし、バングラデシュとの国境に近いマウンドー地区で複数の民族が住むインディン村では、 ロヒンギャの家屋が焼き尽くされる一方、隣接する他の民族の地域は、焼き討ちを免れていたことは、わかっている。

周到に計画された襲撃

 襲撃を受けたロヒンギャ住民が必死の思いで逃げる中、治安部隊は、ガソリンを撒いたり、 ロケット砲を使って家屋を焼き討ちにした。
9月8日、マウンドー地区のヤエ・ツイン・キュン村を追われた男性(48才)は、 襲撃を目のあたりにした。「彼らは、家々を次々に焼き払った。900軒あった家が、今は80軒しか残っていない。 もう誰もいないので、遺体の埋葬すらできない」と嘆いた。
また、衛星がとらえた火災のデータからは、8月26日にマウンドー地区のミョ・トゥ・ギ村の一帯も、 焼き尽くされたことがわかった。
複数の地区では、地元の役人が前もって村民に焼き討ちがあることを伝えていたという。 何とも衝撃的である。一連の襲撃と焼き討ちが、周到に計画されたものであることがわかる。 マウンドー地区ケイン・チャウン村の男性(47才)の話も悲惨だった。 「50人ほどの兵士が2方向から村にやってきて、手当たり次第に銃撃を始めた。 みんな、パニックになって逃げだし、必死に川を泳いで渡った。渡れなかった人の中で男たちは、 至近距離から撃たれたり、刺し殺された」
ラテダウン地区パン・キアン村の村民は、9月4日早朝、部隊に同行してきた地元の役人から、 「午前10時までに村を出たほうがいい。全部焼かれてしまうぞ」と警告されたという。 警告通り、家族が身のまわりの品々を荷造しているとき、火の玉のようなものが家を直撃した。 恐怖の中、着の身着のままで逃げたという。

ビルマ当局は、治安部隊が焼き討ちに加担していることを頑なに否定している。 それだけではない。「ロヒンギャの人たちが、自分たちの家に火をつけている」などと、 信じ難い主張を展開した。

数十万人が国を追われる

 昨年後半から今年初めにかけて、軍の大規模な軍事作戦の影響で、 およそ87,000人が国を追われてバングラデシュに逃げ出した。
国連の推定によると、今回の焦土化作戦により、37万人以上がバングラデシュに逃れた。 さらに、今後も数万人が家を失い、国内避難民になる可能性があるという。

 ロヒンギャをめぐる問題は、数日以内に国連人権理事会で議論されることになる。 これは、国際社会が、今も進行中のこの問題の深刻さをしっかり把握し、 その重大さを反映した強力な打開策を採択する機会となる。 理事会はまた、国際調査団の任務を拡大しなければならない。 そして、ビルマ当局は、全面的にその受け入れに協力すべきである。
2017年9月15日 アムネスティ国際ニュース


フロリダ州が死刑執行再開か
 フロリダ州が8月24日、18カ月ぶりに死刑を執行しようとしている。
8月24日午後6時に執行が予定されている死刑囚は、マーク・アセイさんで、 1987年に2人を殺害した罪で1988年に死刑判決を受けた。
米連邦最高裁判所は昨年1月、フロリダ州の死刑の法律は憲法違反だとの判断を示した。 また、2017年3月には、アラミス・アヤラ州検事が、死刑には明白な欠陥があるため死刑を求刑しないと表明した。
これに対しスコット州知事は即座に同検事を罷免し、死刑派の検事を任命した。 知事は、これまでに26件の裁判を、同氏が好む別の検事に担当させている。 アラヤ検事が指摘した欠陥は、人種差別、費用、誤判のリスク、犯罪抑止力への疑問などである。 彼女はフロリダ州で初めてのアフリカ系アメリカ人の検事だった。

 死刑制度が破たんしていることを示す圧倒的な根拠に対する知事と検事の考え方は、あまりにも異なる。 1人は、「廃止すべきだ。差別、恣意性、誤判に陥りやすいし、費用や人員の無駄だ」と話す。 もう1人は「死刑制度を推し進めよ」としている。 1人は、一貫して国際的な人権の原則に沿って行動している。もう一方は違う。

2017年8月21日 アムネスティ国際ニュース


イスラエル軍、病院を襲撃
 イスラエルの軍兵士と警察は7月17日と21日、東エルサレムにあるパレスチナの病院を襲撃し、 当局との衝突で重軽傷を負った患者や医療スタッフを恐怖に陥れるという事件があった。 アル=マカッセド病院への襲撃は、エルサレムとヨルダン川西岸地区で緊張が高まっていた最中の出来事であった。

 7月14日にイスラエルの警官2人がアル=アクサ・モスク入口で射殺された事件を受け、 イスラエル当局がモスクの入口にボディーチェック用の金属探知機を設置したことで、 金属探知機の設置に対する広範な抗議行動を起こしたパレスチナ人とイスラエル当局との間で衝突が起こり、 この10日間で、イスラエルの軍・警察により少なくともパレスチナ市民4人が殺され、1,090人あまりが負傷した。 病院には、当局の催涙ガスや殴打、ゴム弾などで負傷した人たちが次々と運ばれていた。

 ラフィック・フッセイニ院長やバッセム・アブ・リブデ医長ら関係者が、アムネスティに語ったところによると、 7月17日の夜遅く、マシンガンや閃光弾を携えた重武装の兵士や警官20、30人が、何の根拠も示さず院内に突入し、 患者や職員らを恐怖に陥れた。兵士らは院内を駆け回り、通路などに人があふれる中、重体患者らを探しまわった。 兵士らは太ももを撃たれて動脈が損傷し、激しく出血していた若い男性(19才)を、人垣をかき分けながら追い回した。 手術室にいた別の重症患者に襲いかかろうとした兵士らの前に、医師数人が立ちはだかる場面もあった。 院内を回りながら、患者や病院関係者に出くわすたびに、罵るなど嫌がらせをしたという。

 21日には、兵士ら約200人が院内に突入し、通路にいた人たちを拘束し、催涙ガスを使った。 胸に重傷を負った患者を手術室まで追って来て、立ちはだかる医師を押しのけた。 その騒ぎの中、その若者、ムハンマド・アブ・ガンナムさんは、亡くなった。

 エルサレム旧市街での抗議行動は、総じて平和的に始まった。 やがて、アル=アクサ・モスクの外にいた礼拝の人たちも抗議に加わった。 しかし、イスラエル軍が、抗議する人たちに向けて催涙ガスやゴム弾を使い出してから、状況は一転した。 当局の力の行使に対して、抗議する人たちは、瓶を投げて対抗した。 この衝突で、1,000人あまりのパレスチナ人が負傷した。

 今回の衝突をきっかけに、殺人事件がさらに増えていく懸念が高まっている。 7月21日には、被占領西岸地区のイスラエル人入植地で、イスラエルの市民3人がパレスチナ人に刺殺される事件が起きた。 市民への暴力は、決して許されない。しかし、その裁きとしてパレスチナ市民に対する集団的懲罰を与えるのは、筋違いだ。 イスラエルは占領する側として、パレスチナ市民の身を守る責任を負う。 市民の平和的抗議の権利も尊重しなければならない。また、国際法に沿って、力の行使を自制しなければならない。

2017年7月25日 アムネスティ国際ニュース


トルコ政府の人権NGO弾圧に抗議する
 私たちは、人権活動家10人が逮捕・拘禁されていることに大きな衝撃を受け、驚きを禁じ得ない。
彼らは、非暴力の人権活動を行っていたことが理由で、武装テロ組織のメンバーだとして取り調べを受けている。 逮捕と取り調べは、逮捕された人たちが所属する、同国で最も知られた人権NGO6団体への弾圧であり、 市民社会へのさらなる一撃である。そして、トルコが今後向かおうとする不気味な前途を暗示している。

 逮捕された10人は次の人たちである。ヴェリ・アジュさん、オズレム・ダルクランさん、 イディル・エセルさん、ナラン・エルケムさん、ギュナル・クルシュンさん、 シェイフムズ・オズベクリさん、ネジャット・タシュタンさん、イルクヌール・ユスチュンさん(以上トルコ人)、 スウェーデン人のアリ・ガラビさん、ドイツ人のピーター・スチュッドナーさん。
その一人、エセルさんは、アムネスティ・トルコ支部の事務局長を務める。 1カ月前には、同じアムネスティのクルチュ理事長が逮捕された。一国で同時期に、 アムネスティの事務局長と理事長が逮捕されるのは、初めてのことだ。 私たちはトルコ当局に、全員を即時かつ無条件に釈放するように求める。

 1年前、暴力的なクーデター未遂で249人が死亡した。この事件で亡くなった人たちを悼み敬うべきであり、 クーデターの首謀者は厳しい裁きを受けるべきである。 しかしトルコでのクーデター未遂事件以降の1年にわたる弾圧は、あまりに大規模で容赦ないものである。 これまでに公務員10万人以上が解雇され、数万人が恣意的に逮捕され、数百の報道機関とNGOが閉鎖された。 これは、世界的に広がっている憂慮すべき動きの一部である。 世界では昨年1年で、人権を擁護して立ち上がった人たちが、少なくとも22カ国で殺害され、 68カ国で逮捕あるいは拘束された。議論をやめさせ、批判的な声を封じる関係当局は、 自分たちが権勢を振りかざすことに自信を深めている。

  この状況の中で、各国がどう対応するかは、非常に重要である。 先の主要20カ国首脳会議で数カ国の首脳は、トルコの人権活動家の逮捕に懸念を表明したが、 それだけでは不十分だ。今こそ、各国は立ち上がり、断固とした姿勢で、人権・尊厳・正義を支持し、 この3つの価値の守護者としての市民団体が力強く活動する必要性を説くべきである。

アムネスティ・インターナショナル事務総長 サリル・シェティ
アバーズ事務局長 リッケン・パテル
ヒューマンライツ・ウォッチ事務局長 ケネス・ロス
国際労働組合総連合書記長 シャラン・バロウ
トランスペアレンシー・インターナショナル組織担当責任者 ロビン・ホデス

2017年7月14日


アムネスティ死刑執行に抗議声明
 アムネスティ・インターナショナル日本は、本日、大阪拘置所の西川正勝さんと広島 拘置所の住田紘一さんに死刑が執行されたことに対して強く抗議する。
今回の執行により、安倍政権下での処刑は2006年の第一次安倍内閣と合わせて、29人 となる。金田勝年法務大臣にとっては昨年の就任後1人の死刑執行に続く2回目の死刑 執行となった。
 西川正勝さんは、これまで何度か再審請求を行っており、今回再審請求中の執行で あったという。国家が国民の命を奪う死刑制度では、慎重な審理を尽くす必要があ る。公正な裁判のためには、再審の機会を保障しなければならない。
市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)の第14条では、公正な裁判を 受ける権利として、防御の準備のために十分な時間及び便益を与えられることを定め ている(3条b)。裁判所による公正な審理が尽くされることなどを含め、日本政府 は自由権規約を批准した国として、こうした裁判手続きの保障を遵守しなければなら ない。
 また、住田紘一さんは、裁判員裁判ののち控訴を取り下げたため、死刑が確定してい る。現行の仕組みでは、捜査段階や訴訟段階で問題があったとしても本人が取り下げ れば、その点について見過ごされてしまうおそれがある。本人の意思に関わりなく必 ず最高裁の判断を求める必要的上訴の手続きなど、国民の生命の権利をより積極的に 守る方法について、政府は検討すべきである。
今回の死刑執行においては、こうした公正な裁判を受ける権利を確保するという観点 が欠けており、人権を軽視する現政権の姿勢の表れであるとの誹りは免れない。
 死刑は生きる権利の侵害であり、残虐で非人道的な、人の尊厳を損なう刑罰である。 アムネスティは日本政府に対し、死刑廃止への第一歩として公式に死刑の執行停止措 置を導入し、全社会的な議論を速やかに開始することを要請する。

2017年7月13日 公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本 


アムネスティ・トルコの事務局長逮捕される
 アムネスティ・トルコ支部長がいわれなき理由で逮捕されたことに続き、 アムネスティ・トルコ事務局長とその他一緒にデジタルセキュリティの 研修を受けていた人権活動家(HRD)が逮捕されていたことがわかりました。 何の根拠もなくテロ組織に参加しているという容疑をかけられています。
抗議と釈放を求めるオンラインアクション。
https://www.amnesty.org/en/get-involved/take-action/tell-erdogan-free-amnesty-turkey-idil-Eser-and-nine-others


共謀罪強行採決に対する日本支部声明
 組織的犯罪処罰法等の一部を改正する法案が、6月15日朝、参議院本会議において、 自民党、公明党、日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。 法案は通常、法務委員会の審議・採決を経て、本会議で採決されるが、 今回、「特に緊急を要するものは議院の議決で委員会の審査を省略することができる」とする 国会法を適用して法務委員会の審議を打ち切っての採決だった。

 アムネスティ・インターナショナル日本は、審議を尽くすことなく、 また懸念や反対の声を誠実に受け止めることなく採決を強行したことを、強く非難する。 この法改正で新設された「テロ等準備罪(共謀罪)」は、犯罪の実行を準備した段階で処罰を可能とするもので、 「準備行為」の概念があいまいかつ広範すぎる、監視社会を招くなど、 多くの報道機関、弁護士会、研究者や市民団体から、人権侵害の可能性が高いと反対の声が上げられていた。 アムネスティ日本も、準備行為特定のために日常的、組織的な監視行為が導入される危険性を指摘し、 個人のプライバシーが侵害され、市民活動が委縮し、市民の表現の自由が抑圧される懸念を、繰り返し表明してきた。

 参議院本会議の審議では、金田法務大臣が、環境や人権の保護を掲げる団体でも、 実態が組織的犯罪集団と認められれば構成員が処罰対象になる可能性があると認めた。 だが組織的犯罪集団かどうかを判断するのはあくまでも捜査機関であり、恣意的な運用への危惧は拭えない。
人権は普遍的なものであり、どんな政府であっても尊重しなければならない。 表現の自由は、その人権を尊重するためにも、必ず保障すべき権利である。 日本政府はこのことを十分に認識し、問題点を改善すべきである。

 アムネスティ日本は、改正法の今後の運用状況を注視し、人権を守る市民団体として、 市民の権利が侵害されるようなことがあれば、断固として抗議していく。

2017年6月15日 公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本


アムネスティのトルコ支部長逮捕される

 「テロリスト組織」のメンバーであったという理由をつけて、アムネスティのトルコ支部長、 Taner Kilic(タネル・キリッチ)が逮捕・拘束されました。
これはトルコにおける先のクーデター失敗後に起きているエルドアン大統領による 公務員、メディア関係者、教員等の大量逮捕の一環であり、トルコ政府による人権活動家 への弾圧です。
アムネスティは緊急行動で、アムネスティのトルコ支部長タネル・キリッチの釈放を求めています。
詳細は
https://www.amnesty.org/en/documents/eur44/6475/2017/en/
オンラインアクションは
https://www.amnesty.org/en/get-involved/take-action/free-taner/

2017年6月10日


市民社会の自由を奪う「共謀罪」に反対する国際NGO共同声明


 5月17日、アムネスティ・日本はグリーンピース・ジャパンと共謀罪反対の 共同声明を発表しました。

  アムネスティ・インターナショナル日本およびグリーンピース・ジャパンは、国際的 に市民の立場で活動する団体として、これまで三度上程して廃案となった、いわゆる 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織的犯罪処罰法等の一 部を改正する法律案に対し、反対します。

 今国会で議論されている「共謀罪」法案は、これまで与野党をはじめ強い反対を受け 採択に至らなかったものです。今回政府は、これをテロ対策であるとし、国際組織犯 罪防止条約のために必要な法案であると説明しています。しかし法律家の中には、こ の条約のためにテロ等準備罪を設ける必要はないという意見もあります。この法案が 成立すれば、犯罪行為を行う前の段階の準備行為だけで処罰することができるように なります。対象となる犯罪は、277と絞り切れておらず、さまざまな行為が準備行為 とされるおそれがあります。

 私たちは、環境を守り、人権が尊重される、より良い社会を創っていくため、国際的 な市民運動を展開しています。こうした社会の実現には、政府と市民団体や活動家 が、健全な関係を保ちつつ、それぞれの立場から対話を進めていくことが必要です。 市民団体として、政府の市民社会に対する制約を注視し、批判や政策提言を行うこと も重要な活動に含まれます。

「共謀罪」法案の説明にあたって政府は、市民団体の性質が「組織的犯罪集団」に変 容すれば、対象となる可能性があると述べています。この変容の判断は、捜査機関に よって恣意的に行われる可能性があり、各国で、例えば民主化運動を行ったために犯 罪者とみなされてしまった活動家の支援が「犯罪」と解釈され、この法律が適用され てしまうおそれは否定できません。そうなれば、国際社会と共に声を上げる運動への 大きな打撃となります。市民団体として政府の政策を批判するだけでも、組織的犯罪 の準備行為とみなされかねません。

 また、この法案が成立することで、準備行為を把握するために当局がメールや電話で のやりとりなどを監視していくようになることも懸念されます。私たちのような市民 団体だけでなく支援者・支持者も監視対象となる可能性もあります。そうなれば、市 民活動そのものが委縮しかねません。

 私たちは、以上の理由から、本法案が民主主義の根幹である表現の自由を脅かすおそ れのあるものだと考え、強く懸念を表明し、本法案の成立に強く反対します。

 2017年5月17日 NGO共同声明

自由の女神、トランプ大統領に抗議


(C) Marie-Anne Ventoura/Amnesty UK
 トランプ大統領就任から100日目を迎える4月29日を前に、米国の象徴である「自由の女神」100人が、 4月27日、ロンドンの米国大使館前で抗議活動を行った。 この「自由の女神」に扮して抗議活動を行ったのは、薄緑の衣装に同色のフェイスペイントを施し、 松明を掲げたアムネスティ活動家だ。この100日間でトランプ大統領が引き起こした数多くの人権問題に、 世界の注目を集めることが狙いである。
これまでアムネスティは、イスラム圏7カ国からの入国禁止措置、120日間の難民受け入れ停止措置、 メキシコ国境の壁建設など、トランプ政権による数々の政策を強く批判してきた。 この100人の自由の女神たちは、ロンドンにある米国大使館前に並び、重苦しい表情で沈黙することにより、 これまでトランプ政権が侵してきた人権侵害に対する抗議の意を表した。 沈黙の抗議に続き、自由の女神像の台座に刻まれたエマ・ラザラスの詩「新しい巨像」の有名な一節が、格式高く朗読された。
「だがその疲れた者たちを、貧しい者たちを、
自由の空気にこがれひしめく人々を、ここへ寄こしなさい、
あふれかえる岸であわれにも拒まれた者たちを。
これら、寄る辺ない、嵐に打たれた者たちを、ここに来させなさい、
わたしは掲げる、金色の扉に、この、灯かりを!」と。
(訳きむらしんいちさん)
 トランプ大統領は就任後わずか100日間で、元々不評だった人権に関する米国の評判を計り知れないほど悪化させた。 トランプ政権が、米国の象徴である自由の女神が表してきた自由をほとんど顧みないのは、まことに残念である。 同様の抗議行動は、北アイルランドとスコットランドでも行われた。

2017年4月27日 アムネスティ国際ニュース


パレスチナ囚人の日にハンストを計画
 イスラエルは数十年間、被占領ヨルダン川西岸地区とガザ地区のパレスチナ人を自国内の刑務所で拘禁し、 家族との面会機会を奪ってきた。露骨な国際法違反であるこの政策に抗議して、パレスチナの囚人の日 である4月17日の週に、囚人たちが大規模なハンストを計画している。

 アムネスティは、パレスチナ人の囚人とその家族に聞き取りをした。得られた証言からは、 囚われている身内に会う機会を、時には何年も奪われてきた家族たちの苦悩が浮かび上がった。 被占領パレスチナ地域で逮捕したパレスチナ人の囚人をイスラエルに移送して、 同国内に収監する政策は、ジュネーブ第4条約の明らかな違反である。
ハンストを予定する囚人たちは、家族との面会や連絡を認めることなどを求めている。 ハンストは、囚人のリーダーであるマルワン・バルグーティさんにより公表された。 多くの囚人が、政治的な立場の違いを超えてストに参加する意思を声明した。 国際法の下では、容疑者は占領側の領地ではなく、その容疑者が住む被占領地域で 収監しなければならない。また、囚人は、定期的かつ可能な限り頻繁に、 (特に近親者との)面会の機会を与えられなければならない。

 非政府組織パレスチナ囚人クラブによると、現在イスラエルが運営する刑務所や拘置所など 17の施設に、6,500人(うち女性57人)のパレスチナ人が治安関連で収監されている。 17のうち16施設は、イスラエル国内にある。少なくとも500人が、起訴も裁判もない行政拘禁で収監されている。 パレスチナ人の囚人問題委員会の広報担当ハサン・アベド・ラッボさんによると、 少なくとも1,000人が「治安上の理由」で家族との面会を認められていない。 さらに、現在およそ15から20人が隔離拘禁されており、他の囚人との接触や家族との面会を 一切認められていないという。
イスラエル監獄局の規則によると、囚人は2週間に1回、家族と面会できることになっている。 しかし実際は、被占領パレスチナ地域の家族がイスラエルで収監されている身内に面会するには、 同国への入国許可を申請しなければならないため、面会できる頻度は、極めて限られてしまう。 イスラエルで拘禁されている、ガザ出身の囚人約365人への対応はさらに悪く、 家族との面会を許可するのは、2カ月に1回にしかすぎない。
イスラエルは、パレスチナ人を違法に国内へ移送するのではなく、 被占領パレスチナ地域内の刑務所や拘置所に収監すべきである。 また、イスラエル当局は、囚人とその家族への懲罰的な手段と化している面会する権利の 過剰な制限をやめ、国際基準に十分合致した処遇としなければならない。

2017年4月13日 アムネスティ国際ニュース


ハンガリー:NGOの信頼失墜を狙った法案
ハンガリー政府は、NGOの「資金の透明性の強化」の名目で新法を成立させようとしている。
これが導入されれば、外国からの資金を受けているNGOの信頼性は失墜し、弱体化につながるおそれがある。 外国から年間24,000ユーロ以上を受け取っているNGOは、「外国資金受け取り団体」となり、 この呼称を全出版物に表示することが義務づけられる。
政府はこの法律を、マネーロンダリングと国際的なテロを防止する対策の一環だと主張している。 「外国から資金を受けているNGOは外国の利益に配慮した活動をする可能性があり、結果として 国の主権と治安が脅かされるおそれがある」という論法のようだ。しかし、当局の真の狙いは、 「外国からの資金を得ている」というレッテルを貼ることにより、NGOの働きをおとしめ、 市民にNGOに対する反感を持たせることにある。市民社会の批判的な声を抑え込み、信用を失わせたいのだ。
「透明性の強化」を謳っているが、現在の法律でもNGOは外国から得た資金の届け出を義務づけられており、 当局はいつでも監査できることになっている。
ハンガリーのNGOは、法の支配の促進、難民や移民、社会から疎外されている人びとの擁護など 様々な分野で活発に活動し、国に代わって社会的、法的サービスを提供してきた。
法案はロシアで2012年に発効した「外国エージェント法」を想起させる。発効以来ロシアのNGOは、 さまざまな制約に苦しめられてきた。 多くの団体の評価は下がり、煩雑な手続きに疲弊して仕事が行き詰っている。
ハンガリーの数百のNGOは、団結して声を上げ、表現の自由と結社の自由の権利に対する 周到に計画された圧力をはね返すべきだ。法案は、ヴィクトル・オルバーン首相が進める 非自由主義的民主主義への大きな一手であり、EU加盟諸国は強く反対すべきだ。 首相は熟慮し、この法案が二度と審議されないよう適切な措置を講じなければならない。

2017年4月7日 アムネスティ国際ニュース


アムネスティ共謀罪反対
 アムネスティ・インターナショナル日本は、組織的犯罪処罰法等の一部を改正する法 律案は市民を抑圧するおそれがあるとの理由から、本法案の成立に強く反対する。

 この法案は、いわゆる「共謀罪」法案として、犯罪の実行を準備した段階で処罰を可 能にするものである。国際組織犯罪防止条約(通称パレルモ条約)の批准にむけて国 内法を整備するために成立が必要と政府は主張している。しかし、多くの報道機関、 弁護士会、研究者や市民団体から、共謀の定義、犯罪集団の定義が曖昧であるため適 用範囲が拡大解釈されかねず、健全な市民活動が萎縮すると批判されている。

 犯罪の成立には構成要件として実行行為が必要である。しかし、法案では、実行に着 手する前の準備行為を「実行準備行為」とし、犯罪の構成要件としている。「計画に 基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するため の準備行為」(同法案6条の2第1項)と定め、単に私用である場所に訪れた場合や、 私物の購入だけでも、準備行為とみなされるおそれがある。条文の定めだけでは何を もって準備行為を特定するのか明確でなく、捜査機関が法を恣意的に運用すれば特定 の市民を狙い撃ちにすることが可能となる。

 また、共謀の現場を偶然見つけることは不可能に近い。共謀の事実を把握するため、 日常的な監視行為が必要となるであろう。盗聴やインターネット経由による情報が集 約され、個人のプライバシーはなくなり、警察権力の拡大によって市民活動が委縮 し、市民の表現の自由が抑圧されるおそれがある。

 さらに、組織的犯罪集団の特定が明確でなければ、個人の表現の自由だけでなく団体 の表現や結社の自由にも侵害が生じる危険性がある。そもそも、パレルモ条約は反社 会的組織の資金源を断つなど国際的に暗躍する組織犯罪の取り締まりが目的であっ て、市民団体が対象となることは想定されていない。法案においても、団体として共 同の目的が犯罪の実行にあるものが想定されている(同法案6条の2第1項)。これま での政府の見解によれば、正当な目的で設立された団体であっても、共謀が行われた 時点で犯罪を実行する団体へと変容すれば該当するという。
確かに、法を犯す組織集団は取り締まり対象とすべきだ。しかし同法案のもとでは、 市民の人権のために政府を批判する人権活動家やそれを支援する団体も、政府の一方 的な判断によって組織的犯罪集団とみなされる懸念は拭えない。人権尊重のために立 ち上がる市民の活動や、それを支援する団体の活動は、たとえそれが政府への抗議行 動であっても表現の自由・結社の自由によって保障されなければならない。

   政府に対し、声を上げることが許される社会が、表現の自由を守る健全な民主主義社 会の在り方である。パレルモ条約を批准するためという理由でこの「共謀罪」法案が 成立すれば、すでに批准している自由権規約第19条の表現の自由や第22条の結社の自 由を侵害することにつながると、アムネスティは強く懸念する。本法案が市民を抑圧 する道具とならないよう、成立に対し強く反対する。

2017年3月28日 アムネスティ・インターナショナル日本支部声明

国や宗教で差別するな!トランプ大統領の入国規制にNO!
 アムネスティ日本は米国のトランプ大統領が発令したアラブ、アフリカの特定の国からのイスラム教徒の 米国入国規制の停止を求めてオンライン署名活動を開始しました。

米国のドナルド・トランプ大統領が、人権を無視した大統領令を次々と発令しています。 この大統領令は、難民を保護する国際的な義務を無視しているだけでなく、 特定の国や宗教を「テロリストの温床」と見なし、差別しています。 トランプ大統領に、差別的な政策をやめるよう、在日米国大使館を通して要請してください。

https://www.amnesty.or.jp/get-involved/action/usa_201702.html

沖縄平和運動センターの山城博治さんの釈放を
 沖縄平和運動センターの山城博治さんが公務執行妨害などの罪に問われ、昨年10月17日に逮捕されて以来100日を超える。
アムネスティ・インターナショナル日本は、山城さんの勾留が長期に及んでいることに強い懸念を表明する。 山城さんは直ちに釈放されるべきである。

 山城さんは2016年10月17日、沖縄県の米軍北部訓練場において、有刺鉄線を1本切ったとして器物損壊容疑で逮捕された。 同20日に勾留が決定、同時に公務執行妨害と傷害の容疑で再逮捕された。
現在、山城さんは、3つの罪で逮捕・起訴されている。当局は、軽微な犯罪での逮捕・勾留・起訴を繰り返している。 勾留のためには証拠隠滅の恐れがあるなど必要な要件はあるが、上記の罪の証拠に関して隠滅の可能性は極めて低く、 その他の要件についても該当する理由はない。国際人権基準は、公判前に釈放することを前提としており、 このような拘禁は身体の自由への侵害である。
さらに、山城さんは、家族とも面会できない状態が続いている。被拘禁者処遇最低基準規則(マンデラルール)は、 定期的に家族および友人の訪問を受けることが許されなければならないとしている(58条1項)。 山城さんは、2015年の大病からは回復したものの体調が心配されており、家族の訪問は保障されるべきである。

 山城さんは、沖縄における米軍基地反対運動のリーダーとして、政治信条に基づいて長年にわたって活動してきた。 沖縄は、日本における米軍基地の7割が集中する地域であり、基地に関わる問題には、常に政治的な文脈が影響している。 今回の逮捕と長期拘禁は、そうした影響の表れであって、日本政府による沖縄米軍基地反対運動の抑圧とも指摘されている。

 アムネスティ日本は、デモや座り込みを含む抗議行動を表現の自由として保障する義務を 日本政府が負っていることを想起させ、山城さんの逮捕・拘禁が運動への委縮効果を 生むおそれがあることに懸念を表明する。
国際社会は、政府による抑圧を防ぐため数々の努力を重ね、自由権規約や被拘禁者処遇最低基準規則、 ならびに保護原則を作り上げてきた。日本政府は、こうした国際人権基準を遵守すべきである。
アムネスティは、表現、結社、集会の自由の権利を尊重し保障するよう日本政府に求めるとともに、 国際人権基準に則って山城さんを速やかに釈放するよう検察当局に強く求める。
また、アムネスティは、山城さんが釈放されるまでの間に家族に会えること、 必要な医療を受けることができることを求め、国際的な行動を展開する。
                               以上
2017年1月27日 アムネスティ・インターナショナル日本支部声明

▽日本:山城博治さんの速やかな釈放を求める
http://www.amnesty.or.jp/news/2017/0127_6627.html
▽不当に勾留される非暴力の反基地運動リーダー
http://www.amnesty.or.jp/get-involved/ua/ua/2017ua023.html


トルコ:クーデター未遂の後、人権が危機的状況に
 トルコで7月15日に起きたクーデターは未遂に終わったが、その後の人権状況は極めて危機的な状況にある。 この事件で、少なくとも208人が死亡し、およそ8,000人が逮捕された。
複数の政府関係者が、クーデターに関わった者の処罰に死刑の復活を提案している。 また、アンカラとイスタンブールで拘束されている多数の人びとが、 人権侵害を被っているという報告を受け、アムネスティは現在その事実を確認している。

 クーデターを企てて武力で市民を恐怖に陥れ、国際法違反の殺害や人権侵害に関わった関係者は、 法の裁きを受けるのは当然である。しかし、政府が、反体制派の弾圧を強化し、 死刑を復活させるのは、筋違いだ。
アムネスティは、今後の捜査や取調べに際し法の支配を尊重して自制を示し、 犯罪容疑者に公正な裁判を認め、確かな証拠がなければ釈放するよう、トルコ当局に求める。

 当局によれば、今回のクーデター未遂事件で、208人が殺害され、1,400人以上が負傷した。 犠牲者には、当局がクーデターの計画者とする24人も含まれ、 武器を持たずに降伏しようとしているとき殺害された者もいた。市民も犠牲になった。 彼らは、タイイップ・エルドアン大統領の抗議の呼びかけに応じて屋外にくり出し、 戦車やヘリコプターに立ち向かって、命を落とした。

 クーデターの数日後、政府は、軍、司法、内務省で徹底した粛清を行った。 クーデターを画策したとして7,543人が拘束され、警察官7,000人が停職処分を受けた。 裁判官と検事全体の5分の1弱にあたる2,700人が解任され、裁判官450人も拘束された。 大統領と政府当局者は、クーデターの試みに関与した者への処罰として死刑復活の可能性に言及しており、 これは深刻な問題である。死刑復活はトルコも加盟する人権規約や同国憲法が掲げる保障への侵害となる。 同様の対応が、ジャーナリストや市民団体の活動にも適用される恐れがある。 この数カ月、政治活動家、ジャーナリスト、国の政策の批判者らは、しばしば弾圧の対象となってきた。 報道機関は管理下に置かれた。
トルコ政府にとって、クーデター計画者が顧みなかった人権と法の支配の尊重が、かつてないほどに重要である。

2016年7月18日配信 アムネスティ国際ニュース


エジプトで何百人もの人が拉致・拷問に
BBC Newsが 7月13日(水)配信 した記事を紹介します。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは13日、エジプトで当局によって連れ去られ、 拷問を受けた人が過去1年に何百人にも上っているとの報告書を発表した。
アムネスティによると、14歳の年少者も含め、学生や政治活動家、抗議デモ参加者が、 跡形もなく姿を消し、その多くが何カ月にもわたって拘束されたという。 拘束期間中ずっと目隠しされ、手錠をかけられていた人も少なくない。 エジプト政府は、強制的に連れ去ったり拷問はしていないと主張している。 マグディ・アブデル・ガッファール内相は、治安当局はエジプト国内法の枠内で活動していると強調した。
2013年に軍部がモルシ前大統領を失脚させ、シシ大統領が誕生して以来、 1000人以上が殺され、4万人が投獄されたとみられている。

 アムネスティで中東・北アフリカ地域を統括するフィリップ・ルーサー氏は、 シシ大統領とガッファール内相の下で、強制的な連れ去りが「国の政策の重要な手法」になっていると述べた。 ガッファール内相は昨年3月に就任した。 アムネスティは、地元の非政府組織(NGO)の話として、1日平均3、4人が自宅から拉致されていると指摘した。 多くの場合、国家安全保障局(NSA)の指揮の下、厳重に武装した治安部隊が拉致を実行しているという。 首都カイロのラゾグリー広場前にある内務省内のNSA施設で、何百人もの人が勾留されているとみられている。
 ルーサー氏は、報告書が治安と司法両当局の癒着を暴露したと述べ、 当局者らが「自らの行いを隠すために平然と嘘をつき、あるいは拷問の疑いを捜査しないで、 深刻な人権侵害に加担している」と非難した。

 報告書では、14歳のマゼン・モハメド・アブダラ君が昨年9月30日にNSA職員によって、 カイロのナセルシティ地区にある自宅から連れ去られた事例に触れている。 マゼン君は非合法化されたムスリム同胞団に属し、許可されていない抗議活動に参加した疑いがかけられている。 マゼン君は容疑を否定したが、取調官たちは木の棒でマゼン君に性的暴行を繰り返し、 自白を「暗記」させようとしたほか、マゼン君の生殖器など体に電気ショックを加えたという。 また、自白を取り消した場合には両親も逮捕すると脅したという。
アムネスティによると、マゼン君は検察の取り調べの際に自白を取り消したものの起訴された。 今年の1月31日に釈放され裁判を待っている。

 このほか、報告書は28歳のイタリア人学生、ジュリオ・レジェーニさんがカイロ郊外の道端で死体で発見された事件にも触れている。 ケンブリッジ大学の博士課程で学んでいたレジェーニさんの死体には拷問されたあとが残っていた。
エジプト当局はレジェーニさん殺害への関与を否定しているが、アムネスティの報告書は、 レジェーニさんのけがのあとと当局の拘束中に死亡した人の傷とに「明らかな類似性」があると指摘している。

  (英語記事 Hundreds forcibly disappeared in Egypt crackdown, says Amnesty)


CIA作戦の犠牲者が欧州人権裁判所で2カ国の責任を追及
 欧州人権裁判所で、ルーマニアとリトアニアを相手取った2件の重要な事案の審理が行われる。 これはCIAの主導による移送と秘密拘束計画に連座した疑いで両国の責任を問う画期的な裁判となる。

 2011年9月11日の対米攻撃の余波でCIAによる拷問や強制失踪が相次いだが、 少なからぬ欧州諸国がその手助けをする役割を果たした。 特に今回の例ではアブド・アルラヒム・アルナシリさんと ザインアビディン・ムハンマド・フセインさんという2人の男性(現在米軍グアンタナモ収容所に拘禁中)は、 CIAの秘密基地で水責めなどの拷問を受けた。

 ルーマニアとリトアニアは、CIAの移送と秘密拘束への直接関与が疑われているにもかかわらず、 一度も責任を問われてこなかった。今回の審理は、 犠牲者の弁護士らが欧州人権裁判所で事実を明らかにし、沈黙の共謀を打破する格好のチャンスとなる。
米上院情報特別委員会による2014年12月の報告書には、CIAの手で2人に加えられた拷問の詳細が含まれているが、 米国の裁判所はCIAの作戦に関わる事件の審理を拒否しており、米国におけるこれらの虐待事件については、 今日に至るまで事実上責任が問われていない。
同じく今年2月、欧州評議会事務総長は、CIAの移送と秘密拘束計画について ヨーロッパ諸国が担った役割を問う欧州人権条約52条の調査を終結し、責任追及に大きな打撃を与えた。 したがって今回の欧州人権裁判所の審理は、これらの国々におけるCIAの移送計画の 背後に隠された事実を明らかにする最後のチャンスである。
こうした拷問の犠牲者にとって責任を問う別の道は閉ざされていることを考えると、 ルーマニアとリトアニアの人権侵害に関する今回の審理は、なおさら重要なものである。

 アムネスティは国際法律家委員会とともに、アルナシリさんがルーマニアに、 またフセインさんがリトアニアに対して起こした欧州人権裁判所での手続きに、 第三者として参加している。アムネスティは同様の事案でこれまでも欧州人権裁判所の手続きに参加しており、 その中には、この2人の男性がポーランドを相手どって起こした申し立てもある。 この件では、CIAの作戦に関与したポーランドに責任ありとする判決が2014年7月に出されている。

2016年6月29日配信 アムネスティ国際ニュース


核の内部告発者モルデハイ・バヌヌさんに対する起訴の取り下げを
 イスラエルは、核の内部告発者モルデハイ・バヌヌさんに対する起訴を取り下げ、すべての制限措置を解除すべきである。
1986年、核施設の技師をしていたバヌヌさんは、サンデー・タイムズ紙に核兵器工場の詳細情報を提供したために、 18年の実刑を受け、服役した。2004年の釈放後もずっと、事前の許可なくジャーナリストら外国人との 通信・会話することを禁じられ、インターネットでのチャット、出国、外国大使館への出入りも許されず、 住所変更にも警察への届出が必要だった。

 昨年9月、バヌヌさんは放送局チャンネル2の取材に応じた罰として、自宅軟禁1週間とネットの使用禁止、 ジャーナリストとの通信・会話の禁止などの措置を受けた。報道によると、チャンネル2は 「軍はこの取材の放送を事前に承認していた。 ところが、警察は未放送部分も含めたすべての動画の提供を求めた」と説明した。
今年5月8日には、制限措置に違反したとして、エルサレム下級裁判所に起訴された。 その違反とは、3年前に米国人2名と会ったことや昨年のテレビ取材に応じたことなどを指しているものと思われた。 一方、バヌヌさんの弁護士は、海外渡航禁止措置が延長され、その異議申し立てをしたことへの対抗措置だろう、と話した。 この起訴で有罪となれば、単に表現の自由を平和的に行使しただけでの不当な投獄であり、 アムネスティ・インターナショナルは即時無条件の釈放を要求していく。
当局は、国家の安全に脅威であることを理由に、バヌヌさんの自由を制限する必要があるとしているが、 漏洩事件から30年の歳月が経っては、なんの意味もない。

 バヌヌさんへの制限措置は国際法の下での同国の義務に反している。とりわけ、移動の自由、表現の自由、 結社の自由の権利への恣意的な干渉を禁じ、同じ容疑での再処罰から市民を保護する市民的および政治的権利に 関する国際規約に違反している。

2016年5月10日配信 アムネスティ国際ニュース


朝鮮学校への補助金についての文科省通知について
2016年4月7日
文部科学大臣 馳 浩  殿

公益社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本

事務局長 若林 秀樹

 去る3月29日、文部科学省は都道府県知事あてに「朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について」 として通知を送付しました。
アムネスティ・インターナショナル日本は、今回の政府による通知について、 政治的判断に基づいて特定のマイノリティ集団の教育の権利に対する差別的取り扱いを 助長する恐れがあると懸念します。

同通知において文科省は、朝鮮学校が「北朝鮮と密接な関係を有する」朝鮮総聯が教育内容などに 影響を及ぼしていると日本政府が認識している、としたうえで、こうした「特性」を考慮して 「朝鮮学校に係る補助金の公益性、教育振興上の効果等」について検討することを促しています。
この通知以前の2月7日、自民党は「北朝鮮による弾道ミサイル発射に対する緊急党声明」を出し、 同党の北朝鮮による拉致問題対策本部が2015年6月に要請した制裁強化策を速やかに実施するよう 政府に対して求めています。同要請には、朝鮮学校の補助金交付について、 地方公共団体に対して公益性の有無を厳しく指摘し、全面停止および住民への説明を行うことを 指導・助言するよう求める提言も含まれていました。
そもそも、2010年に高校無償化制度に関する法が成立して以来、日本政府は政治的判断を理由に 朝鮮学校をその適用から除外してきました。それ以降、複数の地方公共団体が朝鮮学校への補助金の 交付を凍結あるいは減額する措置をとっています。
  一方、朝鮮学校で学ぶ子どもたちの教育に対する権利については、2008年の自由権規約委員会、 2010年の子どもの権利委員会および2014年の人種差別撤廃委員会など、国連の条約諸機関が日本に対して 繰り返し懸念を表明し、是正勧告を出しています。
人種差別撤廃委員会は2014年の日本審査に関する総括所見で、人種差別撤廃条約の第2条(締約国の差別撤廃義務)と 第5条(法律の前の平等、権利享有の無差別)に照らして「朝鮮学校へ支給される地方政府による補助金の凍結 もしくは継続的な縮減」について懸念を表明し、「朝鮮学校への補助金支給を再開するか、もしくは維持するよう、 締約国が地方政府に勧めること」を勧告しています(パラグラフ19)。
文科省は、同通知において「朝鮮学校に通う子供たちに与える影響にも十分配慮しつつ」としていますが、 本来であれば、国連条約諸機関からの勧告を誠実に実施し、朝鮮学校への補助金の維持もしくは再開を 地方公共団体に促す内容の通知を出すべきです。
社会権規約、子どもの権利条約、人種差別撤廃条約など複数の国際人権条約は、 人種や皮膚の色、政治的意見やその他の意見などにかかわらず、いかなる差別もなしに 条約に定める権利を尊重し確保することを締約国に義務付けています。 そして、この権利の中に、子どもたちの教育に対する権利も含まれています。
 アムネスティ日本は、自国内のマイノリティ集団に属する子どもたちの教育の権利について、 特定の国家との外交関係を理由に差別的に取り扱うことはこれら国際人権諸条約上の国家の義務に 違反するものであることを、日本政府および各地方公共団体が想起するよう求めます。 とりわけ日本政府に対して、2014年の人種差別撤廃委員会によるパラグラフ19の勧告に真摯に向き合い、 地方公共団体に対して朝鮮学校への補助金交付の再開あるいは維持を促すよう要請します。
また、社会権規約13条(教育についての権利)に基づき、朝鮮学校を高校無償化の対象に含めることや、 現在は無償化の対象となっていない教育機関(「各種学校」とされていない「外国人学校」やフリースクールなど)に 通う子どもたちも対象にするよう、アムネスティ日本はあらためて日本政府に要請します。


国連ガザ報告書 ガザ武力紛争犠牲者への正義の一歩
国連の独立調査委員会が昨年のガザ紛争に対する調査報告書を公表しました。 国連がこの件に関するアムネスティ報告書を検証したことを歓迎します。 アムネスティは、報告書の中でイスラエル、パレスチナ双方がすさまじい 国際人権法、国際人道法違反を繰り返していた事実を明らかにしました。

圧倒的な証拠が存在する現在、国連人権理事会の理事国とオブザーバー国は、 委員会の調査結果勧告を重く受け止め責任追及に必要なあらゆる措置を講じなければなりません。

昨年7月に、人権理事会に委託された独立調査委員会は、ガザ地区におけるイスラエルの 軍事作戦および東エルサレムをふくむヨルダン川西岸地区でのイスラエルの行動、 またイスラエルへの攻撃を含むパレスチナ武装グループの活動について調査しました。 アムネスティは、イスラエルとパレスチナ両当局に対して、独立調査委員会に協力するよう たびたび要請してきました。 しかし、イスラエルのネタニヤフ首相とイスラエルの高官たちは、 委員会はイスラエルに対して偏見があるとして非難し、イスラエル軍は、 国際法に沿って行動しているとの報告書を発表しました。 また独立調査委員会の調査員やアムネスティ等の国際人権組織の調査員が ガザ地区に立ち入ることを拒否してきました。

アムネスティ報告書は、イスラエル軍が在宅中の家や、象徴的なビル、病院や医療従事者に 対して、攻撃を加えていた事実、戦争犯罪を示す証言や分析を記しています。
ガザ地区の武装グループによる正確に照準できないロケット弾などの発射は 戦争犯罪にあたること、またイスラエル協力者とみなされた少なくとも23人が ハマスによって超法規的に処刑されたこと、多数が逮捕され拷問を受けていることを 報告書で明らかにしました。

2015年6月22日配信 アムネスティ国際ニュースより


韓国の人権活動家不当逮捕される
韓国の著名な人権活動家パク・レグンさんとキム・ヘジンさんは7月14日、旅客船セウォル号事故から1年を機に 4月と5月にデモを組織したことが違法として警察に逮捕されました。
デモでは事故の対応で政府に追加的措置を求めていました。 この逮捕は表現および平和的集会の自由の権利への脅威である。 集会とデモ行為に関する違反および集会での警察妨害の疑いで3カ月間、取調べを受けました。 2人は、大惨事となった同事件の徹底的捜査を求めるグループ「4月16日連帯」の運営委員です。
7月15日、裁判所はパク・レグンさんの勾留令状を受理しましたが、キム・ヘジンさんのものは却下されました。 パクさんを含む7人の人権活動家が現在、セウォル号事故関連の抗議活動を組織または参加したことを 理由に拘束されています。
誰もが、意見を述べる権利および平和的抗議活動に参加する権利を有しています。 表現の自由や集会の自由の権利を平和的に行使しただけで、いかなる者も拘束されてはなりません。 アムネスティは韓国当局に対して、平和的抗議活動への不当で違法な介入をやめ、 パク・レグンさんが表現と集会の権利を平和的に行使しただけで拘束されているのであれば、直ちに釈放するよう求めます。 さらにパク・レグンさんら人権活動家が、人権活動家に関する国連宣言と国際法に沿って、 恣意的拘束、嫌がらせ、脅迫などを受けることなく、平和的な人権活動を行えるよう求めます。

2015年8月3日 アムネスティ国際ニュースより

国連独立調査委員会報告(ガザ紛争)に対して
 昨年のガザ紛争に対して、国連の独立調査委員会が調査報告結果を公表しました。 これに対してアムネスティ・インターナショナルは声明を発表しました。 要点は
  • 1 イスラエルとパレスチナ双方の国際法の重大な違反行為によって、 多大な犠牲がおきたと指摘
  • 2 国連人権理事会の理事国とオブザーバー国は 委員会やその報告書を政治化せず、責任追及に必要なあらゆる適切な措置を 理事会として講じるようにしなければならない
  • 3 すべての国家は被占領パレスチナ地域に関するICC(国際刑事裁判所)の作業を積極的に支援しなければならない
  • 4 イスラエル首相はじめイスラエル高官たちは委員会がイスラエルに対して偏見があるとして 非難し独自に報告書を発表し、国際法に沿って行動したとしていますが、イスラエル政府は 調査委員会、アムネスティなどの国際人権組織の調査員のガザ立ち入りを拒否してきました、   
  • 5 アムネスティはイスラエルがガザ地区の在宅中の家や、象徴的なビル、病院や医療従事者に対して 攻撃を加えていたこと等、戦争犯罪を示す証言、分析を記載した報告書を提出
  • 6 アムネスティはガザ地区の武装グループによる無差別のロケット弾と迫撃砲弾の発射も戦争犯罪であること また、ガザで、協力者とみなされた少なくとも23人がハマスによって超法規的に処刑され、 多数の人が逮捕され拷問を受けていたことを明らかにした
2015年6月22日 アムネスティ国際ニュースより


日本の歴史家を支持する声明
欧米の日本研究者が戦後70年の安倍首相談話を意識して、日本の歴史家を支持する声明を出しました。 声明の賛同者は5月19日現在、456人に増えました。主な署名者はマサチューセッツ工科大のジョン・ダワー教授、 ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス名誉フェローロナルド・ドーア、ハーバード大名誉教授エズラ・ボーゲル他。
非常に説得力あり、日本への暖かい進言が抑制的に丁寧に書かれています。長文の声明文から要点をまとめたものを掲載します。

      *************************

  •  日本が世界において、名誉ある地位を維持するには、歴史解釈特に「慰安婦」制度の問題を解決することが重要であること
  •  この問題を民族主義的な目的に利用することの愚とともに、過小評価したり無視することは受け入れられない
  •  「慰安婦」制度の規模の大きさ、軍隊による組織的な管理が行われ、植民地、 占領地から貧しく弱い立場の若い女性を搾取したこと
  •  慰安所管理に対する日本軍の関与を明らかにする資料は歴史家によって相当発掘されている。 また、元慰安婦の証言の真実性、元兵士その他の証言の公的資料の存在
  •  慰安婦の数について
    最終的に何人であろうと、女性たちの尊厳が奪われた歴史的事実は変わらない
  •  歴史の評価は民族、ジェンダーによる偏見に染められてはならず、 政府による操作、検閲、個人的脅迫からも自由でなければならない。 これを全ての国の政府が尊重するよう
  •  日本政府が言葉と行動によって、過去の植民地支配と侵略の問題に たちむかうことを期待する
  •  「慰安婦」問題の中核には女性の権利と尊厳があり、その解決は 世界における男女同権に向けての歴史的一歩である


「慰安婦」問題に関する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明
『朝日新聞』による2014年8月の記事取り消しを契機として、日本軍「慰安婦」強制連行の事実が 根拠を失ったかのような言動が、一部の政治家や メディアの間に見られる。 われわれ日本の歴史学会・歴史教育者団体は、こうした不当な見解に対して、以下の3つの問題を指摘する。
 第一に、日本軍が「慰安婦」の強制連行に関与したことを認めた日本政府の見解表明(河野談話)は、 当該記事やそのもととなった吉田清治による証言 を根拠になされたものではない。 したがって、記事の取り消しによって河野談話の根拠が崩れたことにはならない。
強制連行された「慰安婦」の存在は、これま でに多くの史料と研究によって実証されてきた。 強制連行は、たんに強引に連れ去る事例(インドネシア・スマラン、中国・山西省で確認、朝鮮半島にも多くの 証言が存在)に 限定されるべきではなく、本人の意思に反した連行の事例(朝鮮半島をはじめ広域で確認)も 含むものと理解されるべきである。
 第二に、「慰安婦」とされた女性は、性奴隷として筆舌に尽くしがたい暴力を受けた。 近年の歴史研究は、動員過程の強制性のみならず、動員された女 性たちが、 人権を蹂躙された性奴隷の状態に置かれていたことを明らかにしている。
さらに、「慰安婦」制度と日常的な植民地支配・差別構造との連関も指摘さ れている。 たとえ性売買の契約があったとしても、その背後には不平等で不公正な構造が存在したのであり、 かかる政治的・社会的背景を捨象することは、問題 の全体像から目を背けることに他ならない。
 第三に、一部マスメディアによる、「誤報」をことさらに強調した報道によって、 「慰安婦」問題と関わる大学教員とその所属機関に、辞職や講義の中止を求める脅迫などの不当な攻撃が及んでいる。 これは学問の自由に対する侵害であり、断じて認めるわけにはいかない。
 日本軍「慰安婦」問題に関し、事実から目をそらす無責任な態度を一部の政治家やメディアがとり続けるならば、 それは日本が人権を尊重しないことを 国際的に発信するに等しい。 また、こうした態度が、過酷な被害に遭った日本軍性奴隷制度の被害者の尊厳を、さらに蹂躙することになる。 今求められているの は、河野談話にもある、歴史研究・教育をとおして、かかる問題を記憶にとどめ、 過ちをくり返さない姿勢である。 当該政治家やメディアに対し、過去の加害の事実、およびその被害者と真摯に向き合うことを、あらためて求める。
2015年5月25日

歴史学関係16団体
日本歴史学協会    大阪歴史学会     九州歴史科学研究会
専修大学歴史学会   総合女性史学会    朝鮮史研究会幹事会
東京学芸大学史学会  東京歴史科学研究会  名古屋歴史科学研究会
日本史研究会     日本史攷究会     日本思想史研究会(京都)
福島大学史学会    歴史科学協議会    歴史学研究会
歴史教育者協議会
        


サウジアラビア・むち打ち刑をやめて
 ライフ・バダウィさんは、運営していたサイトでの、サウジアラビアで禁止されている バレンタインディーや宗教警察について書いた記事が問題とされ、 2012年に逮捕され、背教罪で起訴されました。しかし最終的に刑事事件として 裁かれ2014年5月に10年の服役と1000回のむち打ち、罰金(約2900万円)の刑を言い渡されました。
今年1月8日、ついに刑が一部執行されてしまいました。これからも、 残りの回数が執行されるまで、バダウィさんのむち打ち刑は続きます。

 今すぐ、サウジアラビア国王に対し、むち打ち刑をやめるよう求めてください!
アムネスティ・インターナショナル日本はオンライン署名を行っています。
https://www.amnesty.or.jp/get-involved/action/saudi_2015.html


ロシア:「好ましからざる組織」規制
 「好ましからざる外国組織」を禁じる法案が、ロシア国家院(議会)の第1回読会 (審議)を通過した。この法案は、あらゆる公共の場での批判的言論や活動をも封 じようとする当局の姿勢を浮き彫りにしている。
法案はプーチン大統領の署名で成立する前に、2つの読会を通過することが必要 とされるが、これは単に形式的なことかもしれない。 アムネスティは、これまでにロシアで幾度となく基本的自由を脅かす法案が強行 採決され、異論や自由な市民活動の場を奪う過酷な法律が誕生するのを目の当た りにしてきた。 悲しむべきことに、ロシアではこれらの自由は風前の灯である。

 今回の法案には「防衛力と国家の治安または社会的秩序または公衆衛生に対する 脅威となる国際組織」という曖昧な概念が盛り込まれている。その目的は、「憲 法の秩序、道徳、権利および他者との法的な利害関係の基盤」を守るためとされ ている。 ロシア当局の最近の動きを見ると、この法律の採択・施行は、国際的な市民運動 を締めつけ、政府に批判的な人権活動の独立性と自由を弱体化させる狙いがある と考えるのが当然である。
 法案が成立すれば、最高検察庁には、組織が「好ましからざる」か否かの判断を 下しその活動を事実上、違法にする権限を与えられる。同法は自由裁量の余地を 多く残すように作られている。 「好ましからざる」組織は事務所を開設することも違法となる。ロシアの住民が こうした組織で働く場合、重い罰金刑と、繰り返した場合は実刑最大8年を科せ られる。外国人職員は、入国を拒否される可能性がある。
法案ではNGO、政府間組織、営利団体が監査対象だと明確にはうたっていない。 しかし当局の自由裁量でどの組織になってもおかしくなく、指定された場合、ロ シアでの活動停止を余儀なくされうる。

 これは、2012年7月に制定され、昨年の改正でより厳格なものとなった「外国 エージェント法」に続くものだ。同法により、いくつかのロシアのNGOは活動の 縮小を余儀なくさせられ、完全に活動を停止したところもある。

2015年1月20日配信 アムネスティ国際ニュース


グアンタナモ収容所 その2
その後の調べにより新たな事実が分かりました。 米国政府は収容者39人を移送しました。 オバマ大統領は今後6か月の間に収容者をさらに減らす予定であると言っています。 グアンタナモ収容所では現在、収容者100人がハンガーストライキを行っているようです。

湘南グループがハガキを送っている収容者リストから昨年末までに 9人がカザフスタン、アルジェリア(故郷)、ウルグアイ、スロバキア等へ 移送されました。20名のリストが11人になりました。
前回の情報に載せました英国居住のShaker Aamerさんは(最後の英國籍の囚人) 解放されていませんでした。7年以上前に移送の許可がでているにもかかわらず 何故かいまだに解放されていません。 現在、アムネスティアメリカ支部がAamerさんが命を失う前に解放することを 求めてキャンペーンを行っています。
http://act.amnestyusa.org/ea-action/action?ea.client.id=1839&ea.campaign.id=27431&ea.tracking.
id=MessagingCategory_SecurityandHR&ac=W1501EASHR1&ea.url.
id=346266&forwarded=true
オバマ大統領が公約(グアンタナモ閉鎖)を勇気をもって実現すること、そうでなければ 国際法に基づいた裁判をするよう要請しています。
オバマ大統領へのグアンタナモ閉鎖要請キャンペーンは下記のサイトにあります。
http://www.amnestyusa.org/closeit

2015年1月13日


グアンタナモ収容所
 日本のメディアから殆ど姿を消したグアンタナモ収容所ですが、 現在130数人が収容されています。当初は(2002年1月)799人が収容されていました。 殆どの人が裁判をうけることもなく、捕虜でもなくテロ容疑者として、 身柄を拘束されています。過酷な取り調べが行われていることは、 最近の調査でも明らかにされました。現在は収容者のハンガーストライキが 頻発しています。ハンガーストライキを行っている人に、チューブで 無理やり食べ物を取らせていることも問題になっています。
 容疑が晴れても、出身国に受け入れられない、出身国に送還されると 再び拘束される恐れがある、又第三国でも受け入れ拒否される等の 理由で収容所を出ることが出来ない人がいます。 オバマ大統領はグアンタナモ閉鎖を公約に掲げましたが、いまだ 実現できていません。大統領の任期が切れるまでに閉鎖を実現して、 実績を残したいと考えているようです。

 湘南グループでは2013年8月よりグアンタナモ収容所に拘留されている 収容者に毎月、絵葉書を送っています。 20名の収容者のリストを分担しハガキを出しています。 リストのなかの収容者に変化がありました。
 2014年12月6日にシリア人6人が釈放され、再定住のためウルグアイに 移送されました。この中に私たちが担当していた人がいました。 10年以上収容されていたのです。
また、サウジアラビア出身で英国に居住していた収容者あての ハガキが12月に返送されてきました。調べたところ、どうも釈放されたようです。 この人はグアンタナモにいる最後の英国の囚人と呼ばれ、ケン・ローチ (英国の映画監督)他多くの人びとが釈放を求めてきました。

2015年1月6日


ガザの状況
日本の新聞報道を読んでいても伝わってこないガザの悲惨な現実が生々しく 伝わってきます。それは遠くから見ている新聞記者の書いたものではないからだと 思います。ガザのフザーア (Kuhza'a) 地区に住むマフムード・イスマーイールさんの7/24の ツイッターより佐藤愛さんが紹介しています。
     * * * * *

フザーア地区で殺された人々の多くは、負傷し、そのまま血を流して助けを待って いる間に失血死した。ぼくは部屋の窓から何時間も見つめていた。ある20歳の男性が 死に至るまでの段階のすべてを。
町の医者のひとり、カマール・アブー=ルジャイラは、彼の診療所に辿り着くこと のできた怪我人を救おうと、できることをすべてした……彼の診療所が爆撃されてか らも。その爆撃で彼自身怪我を負い、彼の父親が殺された。
〔イスラエル〕軍は十の家族をレジスタンスからの銃撃に対して人間の盾として使 用した。支配を得たすべての建物において、〔イスラエル〕軍は、住民が建物を離れ たり、より安全な部屋に避難したりすることを禁じた。
ぼくが他の50人の男性、女性、そして子供たちとともに避難していた家は砲撃され た。ぼくとぼくの家族は奇跡によって生き残った。他の人々がどうなったかはまるで 分からないが、ぼくの靴は彼らの血でぐっしょりと濡れていた。 煙と瓦礫に隠れて、ぼくらは家にたどり着くことができた。だがその数分後、ぼく の家に3発の砲弾が撃ち込まれた。家は炎上し、ぼくも軽い怪我を負った。 ぼくらは朦朧として通りに出た。破壊の光景はおぞましいものだった。ぼくらを集 中砲火が取り囲んでいた。ぼくらは町の周縁へ歩いていこうとしたが、ヘリコプター がぼくらに向かって砲撃を開始した。
この目でぼくは見た。小さな男の子が母親の手から滑り落ちるのを。母親は片腕で 彼を抱き、もう片方の手に白旗を握っていた。男の子は亡くなった。母親は彼を白旗 に包み、他の子どもたちと逃げ続けていった。
通過した道でぼくらは、ぼくのおじの遺体を見つけた。彼の息子の遺体と一緒に、 彼らの家の外に横たえられていた。スナイパーたちが人々を狙っていた。逃げられな いようにするために、人々の足を撃っていた。
フザーア〔の居住区〕にはもう60時間電気が通っていない。〔イスラエル〕軍は建 物のてっぺんにある給水設備を標的にした。ぼくら一行の中にいた子どもたちは喉の 渇きに耐えかねて、意識を失うまで泣き続けていた。
〔イスラエルの〕砲兵隊は手当たり次第、でたらめに砲撃していた。そうではな かったとぼくに納得させられる人はこの世界に誰もいない。 ぼくのいとこは怪我を負って地面に倒れていた兄弟を助けようとして殺された。二 人は互いに折り重なるようにして死んでいた。
太腿に怪我をしたひとりの男性が、手当を受けられる場所までぼくと共に2キロ歩 いた。そこに到着したとき彼が叫んだのを、ぼくは聞いた。「神が復讐してください ますように。イスラエルに、エジプトに、〔赤〕十字に、そして神ご自身に!」
ぞっとした、悲劇的だった。これを言葉にしようとするいかなる試みも十分なもの とはなりえない。ぼくとぼくの家族はなんとか生きのびたが、どうしてそんなことが 可能だったのかぼくには全く説明できない。 この死と負傷のすべては、3000人の住民に起こったことだった。彼らはフザーアに 残った人々だ。〔その3000人を除く〕住民の70%は虐殺の前夜に避難し、逃げ出すこ とができたのだ。 通りにはまだ遺体がいくつもある。いずれ遺体にならんとしている数多くの怪我人 もまだ残っている。そして動くことができず、逃げられないままの人々が、まだいる のだ。



イスラエル/被占領パレスチナ地域:両当事者は民間人を巻き込むな
アムネスティは、イスラエル当局およびハマスの軍事部門を含むガザのパレスチ ナ武装グループ双方に対して、民間人から犠牲者を決して出さないよう要請します。 すべての紛争当事者は、国際人道法の下で、激化する紛争に巻き込まれた民間人 の生命を保護する絶対的な義務を負っています。イスラエル軍およびパレスチナ武 装グループは、国際法を十分尊重しなければなりません。人口密集地域への空爆あ るいは民家への攻撃は、民間人の犠牲は避けられず、国際人道法違反です。
イスラエルはハマスを標的とする「境界防衛」作戦を開始し、7月7日深夜にはガ ザ地区内の少なくとも50カ所を攻撃しました。翌日午前中には数十回もの空爆を行っ た。報道によると、攻撃で子どもを含む少なくとも50名が負傷したという。パレ スチナ武装グループはこの数日間、イスラエル南部に向けて多数のロケット弾を 無差別に発射し続けています。
イスラエル軍もパレスチナ武装グループもこれまで、過去の戦争犯罪など重大な 国際法違反行為の責任を問うことを怠ってきました。特に2012年11月のイスラエルの 軍事作戦「防御の柱」、2008年12月から2009年1月にかけての「鋳込まれた鉛」 作戦の責任は問われなければなりません。
双方がこれまでの行為に対する責任をとらず、新たな紛争に入った中で、アムネ スティは双方への国際的な武器禁輸措置を改めて要請します。 各国は、イスラエルとガザでの国際人道法違反に加担しないという明確なメッ セージを発しなければなりません。
  2014年7月8日配信 アムネスティ国際ニュース

  *
11日現在、すでに犠牲者は パレスチナ人120人が死亡、負傷者は約920人。 イスラエル側は兵士5人を含む16人が負傷となっています。

日本軍性奴隷制について―アムネスティ声明ー
世界中から集まった署名約150万筆の「慰安婦」被害者に正義を求める請願書が 6月16日、国連人権理事会の議長に提出されました。
アムネスティ・インターナショナルは今一度、日本政府に対して第2次世界大戦時の 日本軍性奴隷制の生存者に対して正義を果すよう要請します。 アムネスティ は、今回の訴えを支持するとともに、関係当局が一刻も早く法案の起草と可決をすすめ、 「慰安婦」問題の十全な解決を図ることを、重ねて要請します。

アムネスティは、特に懸念している点がいくつかある。 まず、日本政府が性奴隷制の生存者に対して十分かつ中身のある補償を拒否し続けていること、 次に 1932年から第2次世界大戦の終わりまでの日本軍性奴隷制の存在を政府当局者や公人が否定していること、 さらに、この制度があったこと自体を正当化する ことに対してです。
日本が軍性奴隷制や生存者への十分な補償を繰り返し否定する度に、 性奴隷を強要された女性たちは抱えてきた心の傷がえぐられてきました。 政府は責任を全面的に認め、軍性奴隷制について明確に謝罪し、 被害女性たちが今こそ正義を得られるようにすべきです。
アムネスティは、日本政府に対して次のことを要請します。 日本軍性奴隷制の生存者に対する責任を全面的に認め、 大多数の被害女性が納得できる方法で謝罪し、これらの女性が被ってきた損害を公に認め、 生存者の尊厳を回復すること。 生存者が被った損害に対して、十分かつ中身のある補償を約束する諸方策を講じること。 政府当局者や公人による軍性奴隷制を否定したり正当化しようとする発言に対して、反論すること。

2014年6月18日配信 アムネスティ国際ニュース


アムネスティ ガザ報告書発表
〜重大な国際法違反行為が裁かれない〜
 報告書はガザ地区における、イスラエル軍による市民の大量殺害と破壊は 過剰な軍事行為であるとし、ガザ地区の攻撃の実態を明らかにしています。
 http://www.amnesty.or.jp/news/2014/1106_4934.html
イスラエルは今のところ、この報告書に詳述した攻撃のいずれについても認めていません。 アムネスティが攻撃理由の説明を求めましたが、回答していません。
 紛争中、少なくとも1万8000軒が破壊もしくは居住不能となった。 最近のガザ紛争でのイスラエル軍の攻撃で、子ども519人を含むパレスチナ市民1500人余りが殺されました。 パレスチナ武装グループもまた戦争犯罪を行っており、イスラエルに向けてロケット弾数千発を発射し、 子ども1人を含む市民6人を殺害しました。
 今、肝心なことは、国際人道法のいかなる違反行為についても説明責任があるということであり、 イスラエル当局はこれに応えなければなりません。 国際社会は、重大な違反行為とまったく裁かれない罪という悪循環が 長く続いている状況を終わらせるために、緊急に手段を講じなければなりません。

 イスラエルとパレスチナ当局が戦争犯罪の申し立てに対する公平な独立調査を怠ってきたことを考えると、 国際社会は国際刑事裁判所の関与を支持することが肝要です。
アムネスティはイスラエルとパレスチナ当局に対し、ローマ規程に加入し、 国際刑事裁判所にイスラエルと被占領パレスチナ地域(OPT)でなされた犯罪を捜査する権限を 付与することを、あらためて要請します。アムネスティはまた国連安全保障理事会に対して、 イスラエルと被占領パレスチナ地域における状況を国際刑事裁判所に付託するよう求めます。 そうすることで同裁判所の検察官は、すべての当事者が犯したとされる 国際法上の犯罪の申し立てについて捜査できます。

 イスラエルは、アムネスティなどの国際人権組織のガザへの立ち入りを拒みつづけています。 アムネスティはガザに拠点を置く2人のフィールドワーカーの助けを得て、 離れた場所からこの報告書のための調査を行なわざるをえませんでした。 イスラエルはまた、国連人権理事会によって設立された調査委員会にも協力しないと表明しています。
イスラエルが独立した人権監視員をガザに入れることを認めないのには、違反行為を隠ぺいする、 もしくは国際社会から隠そうとする意図が見て取れます。自らの人権への取り組みを証明するには、 国連の調査団に全面的に協力し、アムネスティのような国際人権組織のガザへの立ち入りを許可しなければなりません。

2014年11月5日 配信 アムネスティ国際ニュース

ピレイ国連人権高等弁務官声明
国連のピレイ人権高等弁務官は8月31日(現地時間)、日本政府に対し、直ちに旧日本軍慰安婦問題を 徹底調査し責任者を処罰するよう強く求めた。任期満了に伴う退任にあたり、聯合ニュースの書面インタビューに応じた。

ピレイ氏は同月6日に声明を発表し、慰安婦を「性奴隷」としながら、日本政府の対応に強い遺憾の意を示した。 その際に日本政府に求めた「包括的で公平、永 続的な解決策」の具体的な内容について問うと、「被害者とその家族が 司法の正義を実現できるようにし補償を受けることは非常に重要だ」と答えた。
日本政府は直ちに慰安婦問題を徹底調査できるよう、効果的で行政的、立法的な措置を取らなければならず、 すべての証拠を公開し、調査を通じて明らかになっ た責任者を必ず処罰する必要があると強調した。 また、問題解決へ前進するために、日本が自国民に対し慰安婦問題に関する教育を行うことも非常に重要だと述 べた。

異例の声明を出して日本政府の姿勢を批判したことについては、「慰安婦問題は私個人はもちろん 人権高等弁務官として深い関心事 だった。しかし、問題解決に全く進展がない状況で、 日本の一部の団体が被害者の女性の真実にまで疑問を呈するのを見て、強いショックを受けた」と説明し た。
慰安婦問題をめぐり、国連人権理事会の普遍的定例検討(UPR)や国連人権委員会など複数の国連関連機関、 国連の数多くの人権専門家が具体的に謝罪と補償を勧告済みだと言及した。

一方、ピレイ氏は北朝鮮の人権問題について、「国連北朝鮮人権調査委員会(COI)が 北朝鮮の人権の実態を総体的に扱い国際社会の大きな関心を集めたことに、自負を感じる」とした。 国際司法裁判所を通じ北朝鮮指導部に強い警告メッセージを送ることも良い方法だと述べた。


死刑執行に対する抗議声明
アムネスティ・インターナショナル日本は、本日、仙台拘置所の小林光弘 さん、東京拘置所の高見澤勤さんに 死刑が執行されたことに対して強く抗議する。 安倍政権は、死刑執行でこれまでに11人の命を奪った。 内閣改造が9月3日にも行われると報道さ れている今、直前になり交代が予想される谷垣禎一法務大臣は、 最後の職務として2人 の処刑を断行したのである。安倍政権下では、2006年の第1次安倍内閣時と合わせて 2年 半あまりの間に通算21人という、近年の政権にはない人数を執行している。

世界は死刑廃止に向かっている。この7月、国連自由権 規約委員会の第6回日本政府審査において、 日本政府はあらためて、死刑制度の廃止を含む勧告を受けた。その直後である今回の執行は、 死刑 廃止に向かう国際社会への挑戦である。死刑は、生きる権利の侵害である。 国家が生命を奪うという最も残虐で究極的な人権侵害は直ちにやめ なければならない。
現在日本には、125人(袴田さんを含まない)の死刑確定者が、昼夜間独居の状態で収容されている。 この独居の状態で数十年、最長で約40年という長い期間留め置かれている。 この125人は、いつ死刑を執行され、命を絶たれるのか不安にさいなまれながら日々を過ごしている。

日本政府は、国連自由権規約委員会、第6回日本政府審査に際し、死刑制度について国内で慎重に 検討しており、世論に配慮していると返答している。 世論に配慮といっても、内閣府の行う死刑世論調査は回収率が低いうえに設問が誘導的で あって、 これを根拠とすることは疑問がある。そもそも死刑制度の存廃を世論調査の結果で判断すること自体が、 生きる権利を奪う人権侵害と いう性格上馴染まない。

また、死刑制度とは何か、誰がいつ、どのように誰を処 罰するのか、人びとは具体的なことを知る機会が与えられていない。 執行後に初めて、誰が絞首刑で亡くなったか知らされるだけである。 秘密 裡に行われる死刑執行に対して情報開示がされることがない中で、 人びとの一定の理解があると判断することはあまりに危険である。 情報公開 がされた場合、人びとの死刑制度に対する意識は大きく変化するであろう。 処罰感情ではなく、刑罰と生きる権利という視点でとらえ直さなけ ればならない。

袴田巖さんの事件は、先に述べた自由権規約委員会 でも取り上げられた。 同委員会は、死刑廃止を求めるだけでなく、昼夜独居処遇による収容体制の見直し、 検察側資料の十分な開示、死刑事件 における義務的かつ効果的な再審査の制度の確立、 および拷問等による自白の証拠不採用など、厳しい勧告を出した。 本年8月には、袴田事件再審に向けた三者会議で、これまで存 在しないとされた5点の衣類のネガが新たに発見された。 検察側は資料の存 在すら否定していたのである。死刑とは、命を奪う極刑であるからこそ、 処遇および手続きは慎重に行わなければならない。

アムネスティは、あらゆる死刑に例外なく反対する。 死 刑は生きる権利の侵害であり、残虐で非人道的かつ品位を傷つける刑罰である。 日本政府は、国際人権諸条約の締約国として、死刑にたよらな い刑事司法制度を構築する国際的な義務を負っている。 アムネスティは、日本政府に対し、死刑廃止への第一歩として公式に死刑の執行停止措 置を導入し、 全社会的な議論を速やかに開始することを要請する。
2014年8月29日 アムネスティ・インターナショナル日本


ウクライナ:拉致された記者と職員を釈放せよ
ウクライナの英字新聞、キエフ・ポストによると、親ロシアの武装グループが占 拠するドネツク州で先週以降、少なくとも16人が拉致されています。そのうち外国人記 者3人は釈放されましたが、他の記者と職員が拘束されているか、行方不明になっています。 また2人が22日、遺体で発見され、遺体には拷問の跡がありました。
24日午後、スラビャンスクの「暫定市長」と自称するポノマリョフ氏が記者会見 し、ウクライナ政府が自分の同志を拘束し拷問していると非難し、そして 「拘束している人たちは交渉の切り札であり釈放するつもりはない」と述べました。
記者への脅迫、拉致、拘束は表現の自由に対する重大な侵害であり、即刻中止す るべきです。いかなる勢力も、記者の拘束は違法であり、その安全を保証した上 で、即時かつ無条件に釈放しなければなりません。
■スラビャンスクで相次ぐ拉致
ウクライナ東部ではこの2週間、拉致が相次いで起こっています。親ロシアの武装 グループが、いくつかの都市で警察署と公官庁を占拠してから、拉致が増えています。
メディア報道によれば、スラビャンスク在住のデイネガさんは今月13日、正体不 明のグループに拉致されその3日後、ウクライナのレフター記者が市内で報 道中に、拘束されました。
4月18日には、スラビャンスクのシュテパ市長が自称市長のポノマリョフ氏に面 会に行ったまま、行方不明となっています。同市のプロコソフ警察署長も4月19日 以降、行方不明です。
また4月21日、新たに外国人記者3人が、市内で検問にあたっていた武装グループ に拘束され、後に釈放されたが所持品は没収されたそうです。 ウクラ イナ東部の対立するすべての当事者は、この事件を直視して対応を取るべきです。 この殺害に関して独立した機関による公正な捜査を行い、責任者を法の下で裁か なければなりません。

2014年4月23日配信 アムネスティ国際ニュース


内部告発者への馬鹿げた制限を解除せよ
モルデハイ・バヌヌさんは1980年代、イスラエルの核兵器計画を報道機関に暴露 したとして18年の禁固刑を受けました。刑期満了で2004年に釈放されてから10年が 経った今も、軍令により移動や表現、結社の自由を恣意的に厳しく制限されています。 さまざまな制限の中には、出国の禁止やネットでのチャット禁止もあります。また ジャーナリストを含む外国人とのやり取りも許可を必要とされてい、当局の罰 則は単なる報復のようです。

政府高官は、国家機密である核計画のさらなる漏洩を防ぐには自由を制限する必 要があると主張していますが、筋違いも甚だしいです。 バヌヌさんは知っている情報をすべて提供していて、それ以上の情報はないと話 しています。また、投獄された当時に持っていた情報は今や誰でも知ることができ るし、そもそも約30年前で古すぎると、バヌヌさんと弁護士は指摘しています。制 限措置には国際法上の根拠もありません。

バヌヌさんは、自由を奪われ、精神的にも肉体的にも深刻なストレスを受けています。 アムネスティは当局に対して、海外渡航を許可し、国内での移動、結社、表現の 自由の権利の行使を認めるよう、要求しています。
バヌヌさんの弁護士は、出国、領事館や大使館への立ち入り、国境や境界道路、 港、空港から500メートル以内への立ち入りを禁止する措置への異議申し立てを 行った。これに対し高等裁判所は昨年12月、こうした制限措置を支持する判決を 下し、外国人と接触するにあたり必要とされる事前の許可も支持しました。 今年5月に更新予定となっている現在の制限措置は、直ちに解除されるべきです。
■背景情報
バヌヌさんは、イスラエル南部の町、ディモナ近くの核工場の元技術者である。 1986年、英国のサンデー・タイムズ紙に国家の核兵器工場の詳細を明かし、 同年9月30日、イスラエルの諜報部(モサド)員にイタリアで拉致され、秘密裡 に送還された。裁判で18年の禁固刑の判決を受けた。
2010年5月には3カ月間、投獄された。釈放後2回目の服役である。罪状は、外国 人との会話、クリスマスのミサへの出席で、制限措置に違反したことだった。
3カ月のうち11週間は、厳しい環境の独房に拘留された。極悪犯専用の特別房 で、毎日1時間しか房を出ることができなかった。刑務所当局によると、他の被 収容者たちの襲撃から守るため、そこに入れたという。
アムネスティは、バヌヌさんを「良心の囚人」と認定しました。

2014年4月16日配信 アムネスティ国際ニュース


静岡地検ー袴田事件即時抗告
31日、静岡地検は袴田事件再審開始決定に対して即時抗告をしました。 これによって、高裁でまた審理がはじまります。検察へのアクションは終了することになります。 いつまで袴田さんを苦しめるのでしょう。


静岡地裁ー袴田事件再審開始決定
3月27日、静岡地裁は袴田事件について再審開始と袴田さんの死刑、拘置の執行を停止する決定を だしました。
2008年からアムネスティは袴田さんを危機にある個人として支援し、 再審の実現と死刑執行停止を求めてきました。 世界各地で袴田さんの釈放を求めて様々な活動をしています。特に英国、オーストラリア、スペインで 活発に行われています。再審開始決定のニュースは袴田さんを支援してきた人々に喜びをもたらしました。
今、アムネスティは検察が抗告しないよう運動しています。 即時抗告しないよう検察への要請を呼びかけています。ご協力をお願いします。
◆静岡地検
https://www.kensatsu.go.jp/kensatsumail/feedback.php?id=013
◆東京高検
http://www.kensatsu.go.jp/kakuchou/h_tokyo/h_tokyo.shtml
◆最高検
https://www.kensatsu.go.jp/kensatsumail/feedback.php?id=001

◆要請文例

検察庁御中

拝啓 静岡地裁の再審開始の決定をうけとめて、即時抗告をしないように要請 します。
袴田事件に関する新証拠に照らし、また、1968年の逮捕当初の取調べから自白 を強要されたとの袴田さんの主張を考慮すれば、この事件はもう 一度審理を おこなうべきです。袴田さんは高齢であり、長期間の拘禁で健康状態も懸念さ れます。
袴田事件は、速やかに再審を開始すべきです。
十分な検討を、よろしくお願いいたします。

敬具


震災から3年、あらためて人権状況の改善を求める
2014年3月11日 アムネスティ・インターナショナル日本支部声明 

 本日、1万8千人(不明者を含む1)を超える多くの尊い命を奪った東日本大震 災から丸3年を迎えました。地震と津波によって引き起こされた福島第一原発事故 は、除染や汚染水の処理の問題、新たに発覚した高濃度汚染水の漏えいなど、 収束どころか未だに出口が見えない状況が続いています。依然として多くの人び とが生まれ育った故郷を離れ、経済的基盤を失い、避難生活を強いられています。

 2011年12月、当時の野田首相は「原子炉冷温停止」になったとことを受け、 「福島第一原発事故収束」を宣言しました。また現政権の安倍首相は、昨年9月の 国際オリンピック委員会総会で、汚染水漏えい問題について「まったく問題は ない。汚染水の影響は、港湾内で完全にブロックされている」と強調しました。し かし現実は政府の発表とはまったく違う状況が明らかになり、福島原発で働く 作業員も含め、未だに多くの人びとが放射性物質による健康被害を心配し、困 難な生活を余儀なくされています。

 このような大規模な原発事故と、その後の政府の不十分で無責任な対応は、人 びとの基本的人権である、「生命、自由及び身体の安全への権利(世界人権宣 言第3条)」、「すべての人間が保有する生命に対する固有の権利(自由権規 約第6条)」、「到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利 (社会権規約12条)」を脅かすものです。政府は、人びとの生きる権利や健 康に暮らす権利を守る第一義的な責務を負っているが、被災された人びとの生 活を守り、被害者への十分な補償を行ってきたとは言い難い状況が続いています。

 一方、情報開示という点でも、政府の対応は十分とは程遠いです。地震以前の発電 所の安全性のみならず、事故後の原子炉の状況や汚染水ついても事実とは違う 情報を発表するとともに、問題が起きても情報開示を先送りし、事態を過小評 価してきました。
自由権規約第19条第2項は、「すべての者は、表現の自由についての権利を有 する」と定めており、その表現の自由の根幹に、情報へのアクセス権(知る権 利)が位置づけられています。政府は、すべての者が原子力施設事故に関する情 報にアクセスすることを妨げてはならないし、市民に対し、自己決定の前提と して、危険の有無を適切に判断するために、正確で、タイムリーな情報を提供 する責務があります。しかし震災直後から今日まで、政府は的確な情報開示を行わ ず、政府の判断もしばしば遅れ、住民の不安は増すばかりとなっています。

 2013年5月、「健康に対する権利」特別報告者であるアナンド・グローバー氏 は、国連人権理事会に報告書を提出し、「被害に遭われた人びと、特に社会的 弱者をすべての政策決定のプロセスに十分参加させる」よう政府に勧告しました。 2012年11月、同人権理事会普遍的定期審査においても、「福島の放射線警戒区 域の住民の健康と生活の権利を保護するためのすべての必要な措置を講じる」 ことが勧告されています。また、原発事故の10年前に出された2001年の社会権規 約委員会の日本政府に対する総括所見では、すでに「原子力施設の安全性に関 する透明性の確保と関係住民への適切な情報提供」が勧告されていました。
アムネスティ日本は、昨年7月、日本政府に対して、福島原発事故後の復興政 策等において、さまざまな国民の権利が保障されていないことを憂慮し、被害 に遭っている人びと、とりわけ女性や障がい者などを政策決定に参加させると ともに、政府内に横断的な人権担当部署の設置を要請するアクション3を実施 しました。署名は、日本のみならず、ドイツ、オーストラリア、米国、韓国、台 湾、ペルー、ベネズエラ、ベラルーシ、ウルグアイ、南アフリカ等、世界各国 から届き、日本支部が取りまとめた署名として、1,463筆を昨年10月末に安倍 総理に届けました。

 原発事故による甚大な放射性物質の解決には、これからも相当な期間を要し、 健康への影響も長期的に注視していく必要があります。日本支部は日本政府に対 し、人権状況の改善のために人権担当部署の設置とともに、国際人権基準に基 づき、グローバー勧告等に真摯に向き合って応じることを求めます。


イスラエル軍 パレスチナ人へ不法な武力行使
アムネスティは報告書で、イスラエルの治安部隊が過去3年余り、 被占領西岸地区で子どもを含むパレスチナ人多数を殺害しながら、 その罪を免れていることを明らかにしました。
イスラエル軍は2011年1月以来、西岸地区のパレスチナ民間人に対して、恣意的 な武力をむやみに行使し、被占領パレスチナ地域(OPT)での度重なる流血と人 権侵害を引き起こしてきました。 アムネスティが得た証拠から明らかになったのは、イスラエル兵が殺害したパレ スチナ人は、いずれのケースも命の脅威であったと思えないということです。故意 に殺したケースもあり、これは戦争犯罪に相当します。
西岸地区でのイスラエル軍による同様の違法な殺傷を示す証拠が数多くあります。 恣意的な武力の行使を頻繁かつ執ように行い、その加害者が免責されていること はイスラエルが政策として実行していることを示唆しています。
■殺傷者数
昨年、西岸地区で22人のパレスチナ人が殺害されました。その内、少なくとも14名は 抗議行動中でした。24歳以下の若者が多く、子どもは4人以上います。 国連の統計によると、2013年にイスラエル軍により殺害された西岸地区のパレス チナ人の数は、2011年と2012年を合わせたものよりも多くなっています。
平和的抗議者、見物人、人権擁護活動家、ジャーナリストなどが殺傷されています。 この3年間で、少なくとも261人以上が実弾で重傷を負い、このうち67人が 子どもです。 ゴム被覆金属弾、催涙ガスなど、実弾以外の攻撃で重傷を負った西岸地区のパレ スチナ民間人は、3年間で8500人以上(うち子どもは約1500人)にものぼり中 には命を落とした人もいます。
このように驚くべき数の人びとが負傷していることは、被占領西岸地区に暮らす パレスチナ人がどれだけ危険な日常にさらされているかを物語っています。背中を 撃たれた人も数名いました。ただ逃げようとしている人びとをイスラエル軍が標的に していたと思われます。
■イスラエル政府の調査
イスラエル当局が調査を開始してから1年余りたったが、これらの殺害の調査結 果は発表されていません。 調査は独立性、中立性、透明性を欠いています。すべての恣意的な武力行使 に対して調査が必要です。 また兵士と警官に対して不当な武力行使は処罰されることを明確に示す必要が あります。
■抗議行動
近年、西岸地区ではイスラエルによる長引く占領と抑圧的政策・行為への抗議行 動が続いてきました。 抗議の対象は、拡大するイスラエル人入植地、800kmにおよぶフェンス・ 壁、家屋の強制破壊、強制立ち退き、イスラエル軍の検問、イスラエル人入植者 専用道路、パレスチナ人の移動の制限などです。パレスチナ人たちの拘束、ガ ザ攻撃、抗議行動や逮捕における殺傷などに対しても、抗議の声が上がっています。
■武器の移転
アムネスティはイスラエル当局に対し、実弾とゴム被覆弾の使用など致死的な 武力行使は、身に危険が迫る場合を除いては行わないよう、軍に指示することを 求めています。当局はまた、パレスチナ人の平和的集会の権利を尊重しなければな りません。
さらにアムネスティは米国、EU、その他の国々に対してイスラエルへの弾薬、武 器、装備の移転を全面的に停止するよう求めます。国際社会からの圧力がなけれ ば、状況は変わりません。 もしイスラエル当局が世界に対し、自らが民主的原理と国際人権基準を尊重して いること示したければ、違法で無用な武力行使を直ちに止めさせるべきです。
2014年2月27日配信 アムネスティ国際ニュース


ワシントン州知事が死刑執行停止を表明
「私が知事在任中は、死刑の執行を停止することにした。この行動で、ワシント ン州が全米で高まる死刑論議に参加することを期待する」 ワシントン州知事は去る2月11日、死刑囚への死刑執行を停止する決断をこのよ うに発表しました。
いかなる状況においても死刑に反対するアムネスティ・インターナショナルは、 知事の今回の決定を歓迎します。 あらゆる死刑執行は、決して法的な必然性があるわけではなく、結局は政治的な 選択の産物です。

1994年、当時の米国最高裁判所の判事は「20年にわたり、矛盾がなく、公正で、 誤りがない死刑制度を生み出そうと取り組んできたが、死の装置をいじくりまわ すことはもう止めることにした」と宣言しました。

2008年、当時最年長だった最高裁判事が「30年以上判事を務めて、死刑執行が、 無意味で、無用な殺生に当たると断言するに至った」と語り、そして「米 国で死刑が相変わらず頻繁に執行されるのは、見識に基づく審議というよりは、 政府側の『慣習と怠慢』の結果だ」と断じたのです。

その2年後、イリノイ州の知事は「死刑を廃止している15州や世界の多くの国に 仲間入りし、我が州は歴史上重要な一歩を踏み出す」と宣言しました。

2012年には、コネチカット州知事が、死刑廃止法案に署名して立法化することを 約束、そして「他の16州やほとんどの先進国の仲間入りをし、より賢明な方向 へ政策を進すめていきたい」と述べました。

2013年1月にはメリーランド州知事も、死刑をめぐる国際的な状況を指摘して、 「我々はどちらの道を選ぶのか」と問いかけ、「取るべき道は常に、人々の尊厳 をどれだけ尊重しているかだ」と述べました。

2013年5月、コロラド州知事も同様の決定を下し、死刑制度に潜む恣意性の問 題を指摘、また国内外に見られる死刑廃止の流れに触れて、次のように語りました。 「世界の中で、米国は処罰の一形態として死刑を今なお用いている数少ない 先進国の一つだ」

このような流れを経て今回のワシントン州知事の決定があります。 インスリー知事は、「かつては死刑を支持していた。し かし、制度維持にかかる膨大な費用、疑わしい殺人抑止力、恣意的で一貫性がな い適用など、重大な問題点を認めざるを得なくなった。この欠陥だらけの制度の 中では、死刑を公平に適用することはできない。一旦死刑が下されてしまうと、 失うものがあまりにも多すぎる」と語っています。
「自分の任期中は処刑を認めない」という決断は、全世界で死 刑執行停止を求めて国連総会が繰り返し行ってきた決議に完全に沿うものであります。 今こそ、他の州・国々もこれにならうべきです。
2014年2月12日配信 アムネスティ国際ニュース


籾井勝人NHK新会長の発言に抗議するーアムネスティ日本支部ー
2014年1月25日、籾井勝人NHK新会長は就任会見において、「慰安婦」問題 について「どこの国にもあった」、「慰安婦そのものは今のモラルでは悪い。 じゃあ、従軍慰安婦はどうかと言うと、そのときの現実としてあった」。「戦 争してる国にはどこでもあった。ドイツになかったか、フランスになかった か。そんなことはないでしょう。ヨーロッパはどこでもあった」、「あったは ずですよ。ないという証拠もないでしょ」、「それで従軍慰安婦の問題を云々 されると、それはちょっとおかしい」などの発言を続けた。この発言は、公共 放送の会長職にある公人が、政治的な意図をもって、事実を歪曲し、戦時下に おける組織的な性暴力と性奴隷制を肯定し、国際法上の重大な人権侵害の責任 を否定しようとするものである。アムネスティ・インターナショナル日本は籾 井会長の発言に強く抗議する。

1930年代初めから第二次世界大戦の終結まで、日本軍性奴隷制の下、多くの女 性が日本軍によって自由や権利を奪われた中で、数カ月または数年にわたって 強かん、拷問、虐待を受けた。日本軍性奴隷制は、日本政府および軍 が設置、管理等に組織的に関与しており、また台湾を含む中国全土、インドネ シアやフィリピン、太平洋上の島々、シンガポール、マレーシア、ビルマ (ミャンマー)、東ティモールに至るまで、広範囲かつ大規模に展開していた 点において他に類を見ない。

女性を奴隷化し性暴力を繰り返すこのような行為は、当時の国際法(国際条約 および国際慣習法)で確立していた「奴隷制の禁止」に違反し、また戦争犯罪 および人道に対する罪としての強かんに該当する。さらに、日本が1932年に批 准した国際労働機関(ILO)の強制労働条約にも違反している。日本軍性奴隷 制は、当時の国際法においても重大な犯罪であり、今も解決されることなく、 日本の対応が国際社会から問われている問題である。

こうした事情を踏まえて、自由権規約委員会、拷問禁止委員会、女性差別撤廃 委員会など複数の国際人権機関は、「慰安婦」たちに対して正義を実現するよ う、日本政府に繰り返し要請している。

アムネスティ日本は、性奴隷制という国際法上の重大な犯罪および被害者への 正義の実現を否定する公人の発言が繰り返されていることを強く非難する。こ のような発言が出てくる背景には、日本軍性奴隷制の加害責任に向き合わず、 生存者一人ひとりへの謝罪と賠償をしないまま、事態を放置してきた日本政府 の姿勢がある。

国連の条約諸機関は、日本の公人による発言を懸念し続けている。例えば2013 年5月に行われた拷問禁止委員会による日本政府報告審査では、その最終所見 において、「政府当局や公人による事実を否定し、またそのような否定を繰り 返すことによって被害者に再び精神的外傷を与えようとする試みに反駁するこ と」という勧告がだされた。
拷問禁止委員会はまた、性奴隷制の犯罪に対する 法的責任を公に認め、被害者への完全かつ効果的な補償するよう勧告している。
繰り返される発言は、日本政府の国際的な評価を貶める結果となっ ており、なによりも、沈黙を破り勇気を持って語り始めた生存者の尊厳を深く 傷つけている。

日本政府は、籾井会長も口にしたように、「日韓基本条約で国際的に解決して いる」としばしば主張する。しかし、日韓基本条約は、国家間の請求権の処理 を規定するのみで、もともとある被害者個人の請求権を消滅させるものではあ り得ない。同条約では性奴隷制の問題は想定されていなかった。未だに生存者 たちに対する公の謝罪も補償もなされていない以上、日韓両国はこの問題つい て具体的な協議を直ちに開始すべきなのである。

アムネスティ日本は、日本政府に対し、このような公人の発言を許さず、国際 社会からの勧告に従い、次のことを直ちに実行するよう要請する。

・公人による、性奴隷制の事実や責任を否定する発言に対して、公式に反駁する。
・日本軍性奴隷制の生存者が納得する方法で、彼女たちが被った損害を公に認 める。また法的・道義的責任を全面的に受け入れる。
・生存者に対し、旧日本軍が犯した犯罪について全面的に、はっきりと謝罪する。
・日本政府は、国際基準に適った、十分かつ中身のある補償を、生存者が同席 する場で、直接、彼女たちに示す。
・第2次世界大戦に関する歴史の教科書に日本軍性奴隷制度について正しく記 載する。
アムネスティ日本支部声明 2014年1月29日


グアンタナモを閉鎖し、偽善的な人権政策をなくせ
バラク・オバマ大統領がキューバのグアンタナモ湾収容所の閉鎖を命じる文書に 署名してから、5年が経ったがいまだに閉鎖されていません。

テロ容疑をかけられた人びとがまるで貨物のように航空機内に縛りつけられ、グ アンタナモに最初に連れてこられてから12年、延べ800人近い人びとが拘束さ れ、今なお150人以上が収容されています。
被拘束者の数人が国際基準を満たしていない軍事裁判を受けました。 しかし有罪判決を下されたのは 1%にもならず、その大部分は公判前の司法取引でした。
米国は、釈放された元被収容者のうち強制送還できない人びとの自国への受け入れを拒否 し他国への移送をのぞんでいます。しかし受入国がないため、拘束を違法と する司法判断を得た人びとでさえ、ひき続き拘束されている可能性があります。
被収容者のうち70人以上(その大部分はイエメン人)は移送が認められたが、母 国の治安状況やその他の諸問題を理由として、行政側はグアンタナモからの移送 を延期すべきだとしています。

グアンタナモの被収容者はもう何年も、先の見通しもつかないどっちつかずの状 態に置かれています。多くは、強制失踪や拷問など深刻な人権侵害の犠牲者ですが、 補償措置への道は制度上閉ざされており、現状では加害者がその責任を問われる ことはまずないでしょう。

深刻な人権侵害を引き起こしてきたグアンタナモ収容所を維持する一方で、米国 は毎年国際的な人権基準の遵守を宣言し続けてきました。どこであれ他国がグアンタ ナモのような人権無視の状態を引き起こしていたとしたら、確実に米国の糾弾の 的となったことでしょう。米国当局はいつになったらこの二重基準を終わらせるつ もりなのか。
米国当局は「グアンタナモの拘束は人権侵害だ」とする被拘束者の訴えに信憑性 がある場合は、すべての案件に対し独立した公平な調査を実施すべきです。そ して調査の結果を公表し、国際法に基づき加害行為の責任者を、現在または過去 の職責にかかわらず処罰すべきです。
グアンタナモなどの被収容者に対して行われた拷問や強制失踪など、国際法に基 づく犯罪が処罰を免れている事態は、米国による国際的責務の重大な違反を放置 することであり、ゆるし難い不正義です。
アムネスティは、米国に対して現在および過去のグアンタナモの被収容者をはじ め、自国が行った人権侵害の被害者すべてに、適切な補償を提供するよう強く要 請します。

2014年1月20日配信 アムネスティ国際ニュース


イスラエルによるパレスチナ人家屋破壊停止を要請ー世界の36団体
 7月に和平プロセスが再開して以来、イスラエルは被占領西岸地区において、 207のパレスチナ人家屋や土地を破壊した。その結果、311名のパレスチナ人 (その半数以上が子ども)を退去させた。 イスラエル支配地域でのこのような破壊行為によって、 パレスチナ人家族は自分たちのコミュニティと土地から追い立てられ、 貧困が悪化し、人道支援の必要性が増大している。
このような市民財産の破壊行為は 、国際人権法と国際人道法に明らかに違反している。 国際人道法は軍事的に必要性がない破壊行為を禁じている。
家屋破壊は違法なイスラエル人入植地を拡大しやすくするためにしばしば行なわれ、 破壊行為の60パーセントは入植地域に近接するパレスチナ人コミュニティで起きている。

2013年12月11日配信 アムネスティ国際ニュース


紛争時の性的暴力を防止する世界的な努力を害する日本
「女性に対する暴力撤廃の国際デー」にあたりアムネスティ・インターナショ ナルは、日本政府に対し、第二次世界大戦前および大戦中の軍による性奴 隷 制の被害者への義務を果たし、G8の性暴力防止宣言に対する責務を果たすよう 求める。

今年初め、日本は他のG8加盟国とともに、武力紛争時の性暴力犯罪を防止し加 害者の責任を問うことを目的とした宣言に賛同した。 しかし、日本はかつて の軍による性奴隷制の真相究明、被害者の名誉の回復、賠償などの正義を果た さなかった。これは、今回の取り組みの足を引っ張るだけで なく、他国が紛 争時の性暴力被害者に正義を果たさない隠れ蓑となる。

アジア太平洋地域の多くの女性が、1932年から第二次世界大戦終戦まで、旧日 本軍により性奴隷制の犠牲になった。 その結果、被害者は、肉体的、精神的な健康障害、孤独、恥の意識、 多くは極度の貧困に陥り、今もなお苦しみ続けている。

G8の宣言では、性暴力犯罪に対する問題意識を喚起し、正義を果たす妨げとな る要因を取り除き、被害者に必要な支援を与え、加害者を裁くことを約 束し ている。しかし、日本は軍の性奴隷制を全面的に認めず、責任を取ることもな く、正義を求める被害者の訴えや活動を繰り返し否定してきた。
アムネスティが特に懸念するのは、最近日本の名だたる政治家や高官が旧日本 軍の性奴隷制を容認し、制度の存在を否定するなどしていることである。 例 えば、橋下徹大阪市長は、軍の性奴隷制は「必要だった」とコメントしたし、 政府は、国連の普遍的定期審査に対する補遺の中で「問題を政治や外交 上の 問題にしてはならない」と述べている。

安倍首相は9月、ニューヨークの国連総会で「女性が輝く社会の実現」を提唱 した。 しかし、日本がかつての性奴隷制の被害者に対し十分な謝罪や賠償を なさない限り、女性に対するいかなる賛美も空々しく聞こえる。 正義を果た す要求に応えてはじめて、日本は紛争地域での性暴力撲滅や女性の権利拡大の 実現に指導的役割を果たすことができる。
アジア太平洋地域の性奴隷被害者はますます高齢化し、その多くが正義や充分 な賠償を受けないまま亡くなっている。
国際社会、特に戦争の被害が大きかった国々は日本と協力しながら、また被害 者を主体的に巻き込みながら、この性奴隷問題に、真相究明、名誉の回 復、 賠償、過ちを繰り返さないという誓い、歴史教育など、総合的視点で迅速に対 処することが必要である。

特に、アムネスティは日本政府に次のことを求める。
・女性たちに苦しみを与えた性奴隷制を公式に認め、大多数の被害者が納得で きる方法で、法的責任をはじめとした全責任を取ること。
・ 女性たちに対して犯した罪を明確に謝罪し、政府が直接、国際基準に合致し た、適切で実効性のある賠償をすること。
・ 日本の教育制度で使用される教科書に、日本軍の性奴隷制を正確に記述する ことにより、2度と繰り返さないことを保証すること。
2013年11月25日配信 アムネスティ国際ニュース



特定秘密保護法案、表現の自由の侵害に対する深刻な懸念
アムネスティ日本支部は2013年10月23日下記の声明を出しました。

日本政府は、10月15日から始まった臨時国会において、「特定秘密の保護に関 する法律案」(以下、特定秘密保護法案)を提出する予定であるとされている。 この法案は、「表現の自由」や市民の「知る権利(情報へのアクセス権)」を 著しく制限しかねないものである。アムネスティ・インターナショ ナル日本 は、国際的な人権基準に鑑み、この法案に対して深刻な懸念を表明する。

日本が批准している自由権規約第19条第2項は、「すべての者は、表現の自由 についての権利を有する」と定めている。同時に、同条は「この権利に は、… あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む」と規定し、 表現の自由の根幹に、情報へのアクセス権を置いている(注1)。 情報へのア クセス権は、単に配慮や努力規定としてではなく、明確に権利として保障され なければならない。
自由権規約の第19条第3項は、情報へのアクセス権を例外的に制限する場合を 特定している。この制限は、「他の者の権利又は信用の尊重」及び「国 の安 全、公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護」を目的とし、それがどうし ても必要な場合のみに、厳密に限られている。

政府が発表した特定秘密保護法案の概要および最終案では、安全保障に関する 特に秘匿が必要である情報を、行政機関の長が「特定秘密」として指定 し、 その漏えいを処罰するとしている。特定秘密に指定されうる事項は、 「防衛」「外交」など極めて曖昧かつ広範囲にわたる規定となってお り、自 由権規約が認める制限の範囲を超え、政府の恣意によって多くの公的情報が特 定秘密にされる恐れがある。
また、秘密とされる期間は上限なく延 長可能で あり、いかなる情報が特定秘密に指定されたのかも秘密とされるため、永続的 にその情報が開示されなくなる危険がある。

これは、表現の自由の根幹である情報へのアクセス権を、政府が不当かつ大幅 に制限するものである。特に、公衆の健康に関する情報、国際人権法及び 国 際人道法に反する事実などに関係する情報、自由権や生命権、拷問・虐待の防 止に関わる情報などは、積極的に公開・開示されなければならない情報 であ る(注3)。
しかし、現在の法案では、「特定秘密」の名の下に隠される危険が ある。その上、そのような情報が隠されたとしても、同法案の下で は隠され たこと自体が秘密にされ、指定の妥当性や運用を審査する独立した監視機関が 存在しない(注4)。

同法案は、このような広範かつ不透明な特定秘密について、未遂や共謀、教 唆、扇動も含めた漏えい行為を処罰するとしている。これについては、配慮 規定が設けられた報道機関だけでなく、政府の活動に関する調査や情報公開を 求めるNGO・NPOやジャーナリスト、研究者、労働組合など、市民の 表現の自 由に関する様ざまな活動が罪に問われる可能性もある。

自由権規約委員会は、規約第19条第3項の情報へのアクセス権の制限につい て、「権利自体を危うくするものであってはならず」、また「十分な明確 性 をもって策定されなければならず、…表現の自由の制限のために自由裁量を与 えるものであってはならない」。さらに、「制限の対象は広範すぎては なら ない」との見解を示している。今回の法案は、これらに照らして、明 らかに広範すぎる制限を課すものであり、強い懸念を抱かせる。

同法案は、特定秘密を取り扱う行政機関や民間企業の職員、さらにその家族や 関係者に対して調査を行うとしている(適性評価)。この規定によれば、 調 査事項の定義が曖昧かつ広範囲に及ぶため(注6)、評価対象者とその家族、関 係者の思想信条や、関係するとみなされた団体(NGO・NPOや労 組など)の活 動状況の調査が行われる危険がある
また、評価対象者以外の家族や関係者に は、本人の同意なく調査を行うことが可能になっており、し かも、そうした 調査に対する不服申し立ての手続きも存在しない。
このような調査は、表現の 自由に対する不当な干渉にあたるだけでなく、自由権規約 17条が定める「プ ライバシー、家族、通信等の保護」に違反する恐れがある。

さらに、もし個人が、同法案に定める特定秘密の漏えいに関する罪に問われた 場合、具体的にどのような特定秘密の漏えいに該当するのかが被告人およ び 弁護人に開示されないまま裁判が行われる恐れがある。これは、裁判の公開や 裁判における被告人の防御権を定めた自由権規約14条に違反する可能 性がある。

アムネスティ日本は、このように、表現の自由をはじめ複数の国際人権基準に 違反する恐れのある今回の法案について、深刻な懸念を表明する。日本政 府 は、自国が批准している国際人権基準を誠実に遵守し、表現の自由の根幹にあ る、人びとの情報へのアクセス権を明確に保障する立法や政策をこそ実 施し なければならない。情報へのアクセス権の制限は、そうした原則が確立された 上での、あくまでも例外的かつ限定的な措置なのである。

注1
自由権規約委員会は、その一般的意見34において、「第19条2項は、公的機関 、締約国は、政府が持つ公益情報を、積極的に公 開すべきである」(パラグラフ19)と明確に指摘している。
注3 アムネスティを含む世界70カ国の22の団体は、500人以上の研究者、国連の特 別報告者らと協議を重ね、2013年6月に「国家安全保障と情報 への権利につい てのグローバル原則」)を採択した。その原則10で、政府 が公開および積極的に開示すべき情報として以下の情報を具体的に列挙してい る。
・国際人権法および人道法の違反に関する情報
・自由権および人の安全、拷問や虐待の予防、生命権に関する情報
・政府の機構と権限に関する情報
・軍事力の行使または大量破壊兵器の所持についての決定に関する情報
・諜報活動に関する情報
・国家財政に関する情報
・憲法や法令の違反、およびその他の権力乱用に関する説明責任
・公衆の健康、治安あるいは環境に関する情報
注4
情報へのアクセス権への制限について、「国家安全保 障上の情報へのアクセス権の制限は、法によって定められ、正当な国家安 全 上の利益を保護するために民主主義社会において必要性があり、および、濫用 に対するセーフガードを法によって定めていない限り、制限してはなら な い。
セーフガードには、制限の妥当性についての独立した第三者機関による迅 速で徹底、アクセス可能で効果的な審査や、裁判所による十分な審査が 含ま れる」と規定している。
注6
最終案によれば、「特定有害活動(公になっていない情報のうちその漏えいが 我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるものを取得するための活 動…) との関係に関する事項」など、曖昧かつ広範な調査事項が列挙されている。


名張毒ぶどう酒事件―真実から目を背ける司法の判断
名張毒ぶどう酒事件の第7次再審請求の差し戻し後の特別抗告審で、最高裁判 所第1小法廷は、奥西勝さんの特別抗告を棄却する決定をしました。アムネス ティ・インターナショナル日本は、この決定に対して強い懸念を表明するとと もに、再審理の機会を保障するよう求めます。
今回の再審請求では、実際にぶどう酒に入れられた毒物が、奥西さんの自白し た農薬「ニッカリンT」だったのかが争点でしたが、櫻井龍子裁判長 は鑑 定結果から、弁護側の新証拠が奥西死刑確定者の自白の信用性に影響を及ぼさ ないことは明らかだと判断しました。

名張毒ぶどう酒事件をめぐる司法の判断は、これまで揺れ動いてきた。1964 年、第1審の津地方裁判所は、唯一の物証とされたぶどう酒びん王冠の 歯形 は奥西さんのものとは断定できず、また奥西さんの自白は信用できないとし、 無罪判決を言い渡した。しかし、名古屋高裁は1969年、王冠の傷 痕は奥西さ んの歯形と一致するという鑑定などを根拠に、一転して死刑判決を下し、1972 年に最高裁で死刑判決が確定した。
その後、有罪の根拠と された王冠の歯形 の鑑定が、鑑定写真の倍率を操作した虚偽鑑定であったことが判明している。 2005年には科学鑑定に基づき、名古屋高裁で再審開始の決定が出たものの、後 に同高裁によってその決定は取り消された。裁判所の判断がこのよう に揺れ 動くこと自体、確定判決の事実認定には合理的な疑いが生じていることを示し ています。

奥西さんは今年で87歳。40年以上にわたって死刑囚として投獄されています。 2012年5月の再審請求棄却の直後から体調を崩して八王子医療刑務 所に収監さ れおり、その健康状態は極めて深刻な状況にあります。
本件については、新たな再審請求が出されることも予想されます。アムネスティ は、真実から目を背けた今回の最高裁判所の決定に深刻な懸念を表明する と ともに、一刻も早く奥西さんの再審を受ける機会が保障されるよう今一度強く 求めます。
2013年10月17日 日本支部声明


イスラエル軍・難民キャンプ奇襲で死者
イスラエル軍は8月26日、被占領西岸地区のパレスチナ難民キャンプを奇襲し、 男性3名を射殺しまた。これが違法であることは明らかです。
このカランディア難民キャンプの奇襲では、ほかにも子ども6名を含む19名が銃 弾を受けて負傷しています。これは今年の西岸地区でのイスラエル軍の1回の作戦 で最多の犠牲者数です。負傷者の内、子ども3名を含む5名は上半身に傷を負ました。 人間の上半身に向けて実弾を発射するような、意図的かつ致死的な銃器の使用 は、どうしてもその方法でしか身を守れない場合にのみ許されることです。

この事件で生命が失われ多数のけが人が出たことで、重装甲のイスラエル軍が国 際基準に従って行動しているのかどうか、深刻な疑問が出ています。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の職員、ルビン・アブド・アル=ラー マン・ザイードさん(34歳)も殺された3名の1人だった。軍部隊の奇襲後、キャン プを出る軍用車両から胸部を撃たれました。 地元の人権団体がアムネスティ・インターナショナルに語ったところによると、 当時、現場は平穏で、ザイードさんが撃たれた時に、兵士に対する暴力や脅威は まったくなかったそうです。 ザイードさんの死を取り巻く状況から、これは国際法違反の超法規的処刑と思わ れる懸念があがっています。

民間人を故意に殺害することも、ジュネーブ第4条約の下での戦争犯罪である。 パレスチナ領域の占領勢力として、イスラエルはこの条約を守らなければなりません。 殺された他の2名は、ユネス・ジャマル・ジャジュさんとジハード・マンスー ル・アスランさんです。ラマッラーに病院があるパレスチナ医療連合の広報担 当によると、両名は胸を撃たれていました。

イスラエル国防軍(IDF)の声明によると、パレスチナ人たちがジープに石など を投げつけてきたため、兵士たちは身の危険を感じ、銃で対応したといっています。IDF はまた、パレスチナ人たちはジープに向けて射撃し、後でジープから4つの銃弾 が見つかったとも述べています。 たとえイスラエルの部隊が脅威を感じたとしても、一般のパレスチナ人に対する リスクを最小限にする責任があります。銃はあくまで最終手段です。

イスラエル国防軍(IDF)の声明によると、最初の調査の結果、部隊は「計画に従っており、 (部隊は)管理・監督され、適切であった」と言っています。 しかしアムネスティは、イスラエル軍の調査は国際基準に合致しておらず、違法な殺人 の責任者のほぼ全員が免責されることになる、という懸念を繰り返し述べてきまし た。イスラエル軍によるいかなる殺傷行為も独立・中立の立場で迅速に調査され るべきであるし、もし違法な殺害や武力の恣意的行使、乱用の証拠があれば、責 任者たちは文民法廷で公平な裁判にかけられるべきです。
イスラエル軍は今年に入って同地区のパレスチナ民間人10名を殺害してきました。最 近では8月20日、ジェニンでの襲撃で死者が出ました。アムネスティはいくつかの殺 害事件を調査し、こうした殺害が違法であったことを裏付ける確固たる証拠を得ました。
国連人道問題調整事務所の報告によると、イスラエル軍が西岸地区のパレスチナ 民間人を負傷させたのは、年初からの7カ月間で2877件にのぼっています。
2013年8月27日配信 アムネスティ国際ニュース


今こそ、米国の不法な行動に注目
ロシア政府がエドワード・スノーデンさんに一時的亡命を認めたことで、事態は とりあえず好転しました。これで米国政府の監視プログラムの非合法性と無差別に情報を 収集するその性格に、各国政府と市民社会の目が向くことを期待します。

スノーデンさんがロシアに到着してからの5週間にはさまざまなドラマがありました。 しかし本質的な問題が注目されることはありませんでした。その問題とは、急速に拡 大する米国の監視機関が、国内在住の人びとのプライバシーの権利に対する組織 的で甚大な侵害を行ってきたことです。
スノーデンさんがなぜロシアに亡命を求めざるを得なかったのか、その理由をよ く見極める必要があります。彼が米国政府の行動の全貌を暴くやいなや、政府はパス ポートを無効化し、犯罪者に仕立てました。

基本的人権である表現の自由は、政府の非合法的な行為を裏付ける証拠を明らか にする行為を保護しています。国際法と合衆国憲法の修正第4条の双方に照らせ ば、米国政府の行動は違法です。
アムネスティは、スノーデンさんが一時的亡命を与えられた際、これ以上米国に 損害を与える情報を公表してはならない、と言われたことを憂慮しています。
すべての人は、亡命を求める権利があり、この権利は、社会的関心を呼ぶ情報に ついて話したり暴露したりしない、という約束によって左右されるべきではありません。
ロシア当局は、スノーデンさんの権利を尊重すべきです。本人が望めば、国内 外を自由に移動できるようにしなければなりません。

米国政府は、彼の訴追に躍起であり、それが国際法の重大な違反であるという事 実に対処するどころか、認めもしていません。 米国はスノーデンさんの亡命の求めを受け入れないように各国政府に圧力をかけ るという嘆かわしい行動を、今こそ止めるべきです。
2013年8月1日配信 アムネスティ国際ニュース


パレスチナ人活動家への嫌がらせをやめよ
アムネスティ・インターナショナルは、イスラエル当局がパレスチナ人人権活動 家のナリマン・タミーミさんとその家族に対して、執拗ないじめと司法的嫌がら せを行っていることを強く非難します。
当局は7月4日、タミーミさんたちがイスラエル人入植者による土地奪取への抗議行動に 参加するのを妨害するため、タミーミさんを部分的な自宅 軟禁にしました。彼女は翌週裁判を控えています。
この軟禁はタミーミさんと家族、同じ村の人びとへの最近の執拗な嫌がらせで、 これまでも同様の人権侵害が繰り返されてきました。当局は、このような恣意的な制 限を即時解除し、起訴も取り下げるべきです。

タミーミさんは6月28日、別の活動家のラナ・ハマディさんとともに逮捕されました。 ナビ・サレの村人たちが土地を奪われたことに抗議して、近くの泉に向かっ て歩いていた時のことでした。2009年からイスラエル人入植者たちは、ナビ・サレ 村近くのアル=カウズ泉を占拠しています。違法な入植地は現在、軍により保護されて います。
抗議行動の間、ひとりの兵士が紙切れをちらつかせながら、「もし立ち去らない なら逮捕されることになるよ」と近づいてきた。立ち去ろうとすると、複数の兵 士に逮捕されました。その後、タミーミさんとハマディさんは「封鎖軍事地域」に 入ったとして起訴されました。
2人は、イスラエル人入植者が土地を違法に奪取したことに平和的に抗議すると いう基本的人権を否定されています。

逮捕後タミーミさんは、2人がどのような状況に置かれたかを、アムネスティ・ インターナショナルに語ってくれました。足かせを着けられて拘禁されたり、車内で 一晩中勾留されたりした。イスラエル人男性囚人たちを乗せたバンに入れられ て、罵声と身体的脅迫を受けたこともあったそうです。

彼女はこれまでにも何度か逮捕や自宅の強制捜査を受けてきました。夫のハッセンさ んは少なくとも2回、投獄されており、良心の囚人として拘禁されています。 兄弟は昨年デモの際、イスラエル軍により撃ち殺されています。

イスラエル当局は、活動家たちとその家族を脅して沈黙させるためにあらゆる手 段を用いています。当局は、自らの権利のために立ち上がる人びとを狙って嫌がら せを続けるつもりです。
(このようなイスラエル当局によるパレスチナ人に対する いやがらせは各地で大人だけでなく子どもにも及んでいます。―湘南グループ注)
2013年7月4日配信 アムネスティ国際ニュース


朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮):国境の取り締りを厳格化
悲惨な人権状況が報告されている朝鮮民主主義人民共和国政府が最近、国から脱 出する人びとに対する厳罰化を明らかにしました。この脅迫的声明は人びとの移動の 自由を奪う新たな懸念です。
同国の国営通信社は6月19日に、許可なく出国しようとする人びとを国家への反 逆とみなし、「卑しむべき人間のくずを物理的に排除するため実効性のある方策 をとる」という人民保安部の声明を発表した。さらに声明は「あさましき人間の くずは、今後空を仰ぐことも、死後の埋葬の場所さえも見いだすことはないだろ う」と続いています。
国を離れるという単に移動の自由権を行使したために、拘束や訴追あるいは処罰 されることがあってはなりません
このような声明は、国から脱出を試みて捕らえられた人びとに厳罰を科す方針を 継続するという政府の明白な意思を示しています。つまり、こうした人びとが恣意的拘禁、拷問 や虐待といった危険にさらされることを意味し命も落としかねません。
同国では国の許可を得ずに外国へ渡航することは禁止されており、最近の取り締 り強化で、国境を越えて中国へ行くことや、ラオスやタイなどの第三国経由の脱 出がますます難しくなっています。 中国は、無許可で入国した同国の人びとをすべて経済移民とみなし、捕らえた場 合は送還しています。
今回の公式声明発表は、脱出した10代の若者9人がラオスで逮捕され強制送還さ れた数週間後のことでした。14歳から19歳の若者たちは中国からラオスに不法入 国して拘束され、5月28日に朝鮮民主義人民共和国当局に伴われて首都平壌に送 還されたと伝えられています。ラオスでは、不法に入国した同国の人びとを見つけた場合、 通常は拘束し、最近までは大韓民国への移動を許可していました。
ラオス政府が9人の若者たちに国際的な保護を与えることなく、処罰の危険性が ある故国に強制送還したことは、国際法および国際基準の違反です。
アムネスティは、9人の若者たちに危害を加えず、また人びとの国外脱出防止の ためのプロパガンダに利用しないよう朝鮮民主主義人民共和国当局に強く要望す る。国としての人権擁護義務に従うべきであり、国内の移動および国外渡航許可の必 要条件を撤廃すべきです。
2013年6月21日配信 アムネスティ国際ニュース


トルコ:逮捕者の拘禁場所を今すぐ公開すべき
トルコ警察は、夜間を徹し政府に抗議をする大勢の人びとを拘束したが、拘束した事実を認めていません。
6月15日の夜、抗議行動の中心地であるタクシム広場やその周辺地に集結した人びとが拘束されたといわれています。 実数は不明だが、100人を優に超えるという。
イスタンブール弁護士協会はアムネスティに対し、警察が拘束しているところを目撃されたおよそ70人の氏名は分かっているが、 どこに連れて行かれたかは不明だと語りました。
警察の暴力的な排除から一夜明け、当局は、拘束された人びとに、正当な法手続きを認めていません。 警察はただちに彼らを釈放するか、拘束場所を明らかにし、家族や弁護士との連絡を認めるべきです。
アムネスティは、逮捕や拘束時に警察が抗議参加者を殴打しているという確かな報告を継続的に受けています。 ほぼ3週間近く続いている抗議運動の間に拘束された人びとは、最長12時間にわたって食事や水を与えられず、 トイレに行くことも許されなかったという。 拘禁場所が不明であるため、警察による暴行や虐待を受けている懸念も高まっています。
警察は16日午後8時半頃、タクシム広場で粛々と抗議する人びとに対して、催涙ガス、放水砲、 スタングレネード(音響手榴弾)などで攻撃した。アムネスティの調査員も、この介入を現場で目撃しました。 調査員によると、広場にいた人々は平和的に行動しており、警察による暴力的な介入はまったく正当化できません。
また、警察がプラスチック弾を使用したこと、仮設診療施設で治療にあたる医師を拘束したという報告もあります。 イスタンブールの複数地域で夜通し行われた警察の介入で、負傷数は、数百人にのぼると考えられます。 警察は、医師が多くの負傷者の治療にあたっていたホテル前の仮設診療施設にも対しても、催涙ガスを直に打ち込んだ。
16日も、警察の暴力行為が複数の地域で散発的に続いています。 警察は、タクシム広場に近いラマダ・ホテルに設けられた仮設診療所で 治療していた医師を拘束した。 保健担当大臣は、仮設は違法であり、医師は起訴の対象となると述べています。
治療を必要とする患者を診ていた医師を訴追するというこの発言は、到底受け入れられません。 医師は直ちに釈放されるべきであり、起訴という脅迫を取り消すべきです。
※アムネスティ日本支部は、6月17日、エルドアン首相と駐日トルコ大使宛に、要請書を提出しました。
 アムネスティ日本はウエブサイトでこの件に関するオンラインアクションをしています。
  http://www.amnesty.or.jp/news/2013/0617_4017.html
2013年6月16日配信 アムネスティ国際ニュース


原発事故対策に人権を
5月19日(日)、アムネスティ神奈川連絡会主催で政府に原発事故における施策に 人権部署の設置、被災者の政策への参加、情報公開等を求めて、 ウオーカソンを行いました。
13時に桜木町駅広場に神奈川県内のグループメムバーとその他の 方々17名が集合し、5月の海風に吹かれ港を見ながら、赤レンガ倉庫街から大桟橋、山下公園と 横浜の代表的な観光コースを歩きました。春の様々なイベントが行われていて、人であふれていました。
その中を黄色い旗と幕、プラカードをかかげて歩きました。かなりのインパクトではなかったでしょうか。


橋下大阪市長の発言に抗議―アムネスティ・日本
2013年5月13日、橋下徹大阪市長(日本維新の会共同代表)は記者の取材に対し、 「銃弾が飛び交う中で命をかけて走っていく時に、精神的に高ぶっている集団に 休息をさせてあげようと思ったら、慰安婦制度が必要なのは誰でも分かる」などと 発言したと報じられている。 この発言は、市長という公職者が、旧日本軍による組織的な性暴力と性奴隷制を公然と肯定し、 女性を軍隊の性の道具と見なすという重大な女性差別にもとづく発言である。
アムネスティ日本は、最大限の強い言葉でこれを非難するものである。

日本では、政治家の発言の中で、強制的に連行されたとは限らないという主張が繰り返し提起されている。 しかし、日本軍性奴隷制は、女性たちが暴力や詐欺によって連行されたという問題だけでなく、 日本軍が「慰安所」において女性たちを奴隷化した、という点において重大な人権侵害である。
被害女性たちは、日本軍によって移動の自由を奪われ、劣悪な環境の中で、 数カ月または数年にわたって繰り返し強かん・拷問・虐待を受けた。 なお、性産業に従事していた女性たちも「慰安婦」として募集されたが、 いったん制度に組み込まれた後は、労働内容や条件を決定する自由も辞める自由もないという状況の中で、 同様に、日本軍による強かん・拷問・虐待を受けた。

これらの日本軍の行為は当時の国際法の「奴隷制の禁止」に違反し、 戦争犯罪及び人道に対する罪としての強かんに該当する、重大かつ 大規模な人権侵害である。また日本が1932年に批准したILOにも違反している。

アムネスティは日本軍性奴隷制を生きのびた生存者に対して、 正義を与えるよう長年、日本政府に求めてきた。 また、米国、カナダ、オランダ、韓国、台湾、欧州連合の欧州議会においても、 日本政府に対して被害女性への正義を実現するよう求めている。

アムネスティ日本は、橋下市長に対し、ただちに今回の発言を全面的に撤回し、 世界各国の日本軍性奴隷制の生存者への謝罪を行うよう強く求める。
アムネスティ日本は、今回のような発言が出る背景として、明確な謝罪も、 法的責任の受け入れも、日本軍性奴隷制を生き残った人びとへの十分な賠償もしてこなかった 日本政府のこれまでの姿勢に問題があると考える。
日本政府に対し、国際社会からの勧告に従い、次のことを直ちに実行するよう要請する。

・ 日本軍性奴隷制の生存者が納得する方法で、彼女たちが被った損害を公に認める。 また法的・道義的責任を全面的に受け入れる。
・生存者に対し、旧日本軍が犯した犯罪について全面的に、はっきりと謝罪する。
・日本政府は、国際基準にかなった、十分かつ中身のある補償を、生存者が同席する場で、直接、彼女たちに示す。
・ 第2次世界大戦に関する歴史の教科書に日本軍性奴隷制度について正しく記載する。

5月17日 アムネスティ・インターナショナル日本支部声明(抜粋)


ヨルダン川西岸被占領地につくられた入植者の新前哨地の撤去を!

新しい前哨地を設置したナブルス地区内のイスラエル人入植者たち
イスラエル当局は昨日設置された、ヨルダン川西岸被占領地のナブルス地区内の イスラエル入植者による新前哨地を、 直ちに撤去するようにと、本日アムネスティ・インターナショナルは述べました。
新しい前哨地はイッツアーにある不法なイスラエル入植地の住人、エヴヤター・ボロヴスキーが殺害された後、 火曜日に設置されました。
民間人で、襲撃されたときに銃を所持していたボロヴスキーはパレスチナ人に刺殺されたが、 このパレスチナ人(男性)は負傷しその後イスラエル軍に逮捕されました。
入植者たちは殺害事件後に、西岸被占領地北部に住むパレスチナの民間人並びにその資産に対する暴力を 一挙に爆発させて、車に投石し数百本の木を焼くなどしました。
アムネスティ・インターナショナル中東・北アフリカ担当代理責任者、アン・ハリソンは この件に関して以下の発言をしています。

「私たちは入植者を含めてすべての民間人に対する、あらゆる意図的な攻撃を遺憾に思うが、 今回の殺害事件がパレスチナ人に対する更なる人権侵害の口実に用いられることがあってはならない。
イスラエル当局は直ちに新しい入植前哨地を撤去し、西岸被占領地における暴力に関与したすべての者を 起訴しなければならない。
イスラエル当局は火曜に4人の入植者を逮捕したが、パレスチナの民間人およびその資産に対する 多くの暴挙には見て見ぬふりをしているように思われる。 イスラエル当局は占領下のパレスチナ民間人を保護して、 入植者による暴力的な攻撃を予防し罰する責任がある。
東エルサレムを含む西岸被占領地にはほぼ100の非公認の入植者前哨地と、 130を超える入植地が存在しており、国際法によればその全てが違法である。
2012年にイスラエル政府は10の前哨地を遡って公認し、入植者がほかに4つの前哨地を設立するのを 妨げる何の行動も起こさなかった。
イスラエル当局は西岸被占領地にあるパレスチナ人の家屋・建物をも破壊し続けた。 2013年になってからも200以上の建造物が破壊され、 その結果400人にのぼるパレスチナ人が自宅から強制退去させられ、500人以上が影響を受けている。
イスラエル政府の長期にわたる民間人の被占領地への入植政策は、国際人権法に違反するものである。
このような政策は、国際刑事裁判所のローマ規程の下では戦争犯罪とみなされる」

5月2日配信 アムネスティ・インターナショナル国際ニュース


武器貿易条約採択される
4月2日、武器貿易条約(ATT)が国連総会において圧倒的多数で採択されました。
アムネスティは長年、ATTの成立をめざして活動してきました。 いま、ようやく運動が実りました。
3か国が反対しましたが、人権擁護を核にした人命重視の条約を 大多数の国が支持したのです。
条約は国際人道法、人権法の重大な違反あるいはそれを助長する ことに武器が使用される危険性のある国、勢力に兵器、弾薬、 構成部品を移転するリスクの評価を行う義務をすべての政府に 義務付けています。そしてその危険性がある場合は 武器の移転を行わないことに合意しました。
国連は6年間にわたってこの問題を議論し、ついに条約は採択されたのです。 弾薬の規制に関しては十分とは言えなく、問題はあるものの、武器の規制に 世界は一歩をふみ出したのです。
2013年6月3日、この武器貿易条約は国連総会で署名と批准が始まり、50カ国の批 准を経てまもなく発効します。

4月6日配信 アムネスティ・インターナショナル国際ニュース



被占領地パレスチナ:ヨルダン川西岸の現状
アメリカのオバマ大統領のイスラエル訪問に際し、アムネスティ・インターナショナルは 被占領地パレスチナ:ヨルダン川西岸地区の壁/フェンスと入植地に関する声明を出しました。
何年もの間、パレスチナのジャイユス村の人びとは自分の農地に自由に行くことをイスラエル当局によりはばまれている。
(詳細はサイトの特集記事パレスチナを閲覧してください)
1 パレスチナ人の土地を切り裂く壁/フェンス、パレスチナ人の土地を収奪して作られる 入植地は国際法違反であること
2 これらのイスラエルの政策により、ますますパレスチナ人の生活が困難になっていること
3 イスラエルの入植者たちがパレスチナ農民の土地にトレーラーハウスを設営し、壁/フェンスのルート変更を 妨害し、入植者とみられる人びとが、自分たちの土地に入ろうとするパレスチナ農民を阻止しようとしたこと
これらの事は国際法違反であり、パレスチナ人が適切な生活をする権利を侵害している。
オバマ大統領は今回のイスラエル訪問で自らこの現状を確かめる機会を有している。

3月21日配信 アムネスティ・インターナショナル国際ニュース



パレスチナ映画「壊された5つのカメラ」アカデミー賞候補
以前このページで紹介しましたパレスチナ映画「壊された5つのカメラ」が 第85回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされました。 惜しくも受賞はのがしました。
授賞式に出席するため監督のイマード・ブルナートが家族とともにアメリカに 入国しようとしたところ、ロサンゼルスの空港で1時間にわたり、入国目的を 尋問され、「アカデミー賞授賞式出席が証明できなければ、今日中に強制送還する」 と言われたそうです。
監督のイマード・ブルナートは非常に不愉快な思いをしたと語り、 またこのような不愉快な思いは被占領地のパレスチナにおいて毎日のようにパレスチナ人が経験している ことだと語りました。


死刑執行を非難する
法務省は2月21日に3名の死刑を執行しました。アムネスティ日本はこれに強く抗議し、 声明を出しました。
谷垣法務大臣は大臣就任2か月で死刑執行命令を出した。
谷垣法務大臣は死刑執行を国民感情、被害者感情を根拠にしているが、 国内法の内容が国際人権基準に反するものである場合には、その法制度 を改正すべく努力することもまた、政府、法相および法務省に課せられ た国際 的な義務であり、日本政府は、国連の総会決議や人権理事会の普遍的定期審査、 そして複数の国連人権機関から、繰り返し、死刑の執行停止と死 刑廃止に向け た取り組みを強く勧告されていることを忘れてはならない。
とくに、国連の自由権規約委員会は2008年、「世論の動向にかかわりなく、締約 国は死刑の廃止を考慮すべき」とし、世論を口実に死刑廃止に向け た措置を一 切とろうとしない日本の態度を強く批判している。日本政府は、「国民感情」を 理由に、国際的な人権基準を遵守する義務を免れることはで きない。

北朝鮮の人権侵害を調査する機関の設置を
日本政府は、1月25日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)における人権侵害を 調査する「新たな調査メカニズム」設置を含む、同国の人権状況に関する決議案 を、3月の人権理事会において欧州連合(EU)と共同で提出すべく、関係各国と の協議を開始すると決定しまた。
日本政府の今回の決定は、政府が長年取り組んできた拉致問題の解決だけではな く、政治囚収容所を含めた同国の人権状況全般に向けた解決への第一歩となるこ とが期待されます。
アムネスティ・インターナショナルは、「国連人権調査委 員会」の設置に向けて、国連人権理事会の理事国各国が一致団結して協力するこ とを求めました。
一般の人びとの生活は極度に困 窮しています。20万人が収容されていると言われる「政治囚収容所」における、子 どもを含めた強制労働・拷問・恣意的処刑・公開処刑に代表される国内の人権侵 害が、脱北者たちの証言により明らかにされています。表現・移動の自由が厳しく 制限される中、政府や指導者への批判は抹殺されています。

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が、これまで国連からの人権状況の改善の働きかけをすべて拒否する中、 2013年1月14日、国連のナビ・ピレイ人権高等弁務官は、同国内での重大な人権 侵害を調査する「国際的な調査機関」の設置に向け「国際社会はより努力すべきだ」との声 明を出し、国際社会の協力を求めました。

イスラエル・人権理事会の審査を拒む
アムネスティ・インターナショナル国連代表より1月29日に国連人権理事会に対する イスラエルの対応への懸念が表明されました。

人権理事会は2012年3月にイスラエル人入植地についての事実調査団を結成し、 イスラエルをやり玉に挙げた、と同国政府は苦情を申し立て、そして理事会への 協力を取り下げることとなった。イスラエルは既に、2009年のガザ紛争事実調査 団のようないくつかの重要なメカニズムへの協力を拒んでいる。しかし、これら のステップは普遍的定期審査とは関わりのないことだ。

アムネスティ・インターナショナルは、イスラエルが人権理事会の規則に則り、 2013年中に普遍的定期審査に参加するよう促す世界規模での合意を訴える。イス ラエルの高官レベルでの参加がければ、このメカニズムの効果は減殺される。イ スラエルと最も友好的な国々さえも、このような振る舞いを擁護することは困難 だろう。人権理事会の議定書によれは、普遍的定期審査への協力を拒み続ける国 家については適切な措置が講じられることとなっている。

世界中の国々にとって、普遍的定期審査は人権基準と自国の実施状況の間の ギャップを埋めることに貢献してきた、という証拠がある。 もし普遍的定期審査が危うくなれば、世界規模での人権プロジェクトにとって重 大な損失となる。イスラエルは2013年中に普遍的定期審査による必要な検証に、 要請通りにしっかりと取り組まなければ、世界の人権侵害の犠牲者たちから賛辞 を得られないであろう。

新法務大臣に死刑制度について申し入れ
新政権の谷垣禎一法務大臣に12月26日、アムネスティ・インターナショナル 事務総長サリル・シェティとアムネスティ・インターナショナル日本事務局長 若林秀樹は公開書簡書簡を送りました。

「アムネスティは、犯罪の種類や状況、犯罪の有無、犯罪者の特徴、あるいは国家 による執行方法を問わず、例外なくあらゆる死刑に反対します。アムネスティ は、貴職および法務省に対し、ただちに死刑執行を停止し、日本における死刑の 完全廃止を目指した国民的議論を始めるよう要請いたします。」


イスラエル:パレスチナのNGOや活動家への攻撃の停止を
2012年12月11日(火)未明、イスラエル国防軍(IDF)兵士がラマッラーにある パレスチナの3つのNGOに押し入り、コンピューターや作業ファイル、設備を押収 し、事務所内を捜索した。アムネスティ・インターナショナルは、被占領パレス チナ地域の活動家たちに対する「嫌がらせの手口」の一つであると見ている。
アッダミール囚人支援・人権協会やパレスチナNGOネットワーク、パレスチナ女 性委員会連合へのイスラエルの急襲は、パレスチナ人の人権と市民社会組織、ス タッフたちへの広範な襲撃の一環である。
イスラエル当局は機密情報を根拠として、西岸地区の人権擁護活動家や他の活動 家たちの移動を頻繁に制限しており、西岸地区とガザ地区の間の通行も妨げてい る。 アムネスティはイスラエル国防軍に急襲の理由を尋ねたが、回答はない。
パレスチナの人権NGOであるアッダミールが、何カ月にも渡ってイスラエルの嫌 がらせを受け、議長のアブドゥラティフ・ガイスの西岸地区への通行や海外渡航 を禁じる軍令が出ていることに、アムネスティはとくに懸念している。
イスラエル当局は、アッダミールの弁護士が弁護対象の囚人や被拘禁者たちに面 会することを頻繁に妨害している。もっとも憂慮されることとして、アッダミー ルの調査員で人権擁護活動家であるアイマン・ナセルが、10月15日にイスラエル 軍によって逮捕された後の長い尋問中に拷問されたと、彼の弁護士からの報告が あった。
恣意的な移動制限や人権および市民社会組織への攻撃、人権擁護活動家への拷問 は、決して正当化できるものではない。このような行為は即時停止し、責任者は その責任を問われるべきである。
12月11日配信 アムネスティ・インターナショナル国際ニュース

パレスチナ:国連オブザーバー国家としての司法正義

ガザのハマスとイスラエルの停戦が実現し、ひとまず安心しましたがこの紛争で家族を失った人たちの 悲嘆を忘れてはなりません。
アムネスティ・インターナショナルは停戦後実現したパレスチナの国連におけるオブザーバー国家について、 声明をだしました。
         * * * * *
パレスチナが国連オブザーバー国家になったことで、2008年から2009年にかけたガザ・イスラエル紛争に おける数々の戦争犯罪を国際刑事裁判所に提訴することができるようになるはずである。
パレスチナは国際刑事裁判所(ICC)が決めるローマ規程や他の人権と国際人道法条約に批准し、 その責任を負うことになる。
ICCはパレスチナが国家でないことを理由にガザ紛争の戦争犯罪の捜査、訴追ができないと 結論づけていたが、パレスチナが国家として認められた今、ガザ紛争の戦争犯罪の提訴を 認めなければならない。
アムネスティは国連総会に対し、2008年-2009年のガザ・イスラエル紛争の調査 団の報告書を国連安保理に付託するよう繰り返し要請してきた。そうすることで 安保理は両者の犯罪を捜査するためICC検察官に状況を付託することを検討しう るのである。
また、パレスチナ国家承認への報復として、 イスラエルがパレスチナ自治政府に支払うべき金銭を棚上げにする という脅しはパレスチナ経済を締めつけ、人道援助に頼らざるを得ない パレスチナの人びとの生活をさらにを困窮させることになる。これはパレスチナ人たちに対する集団的懲罰であ り、明白な国際法違反だ。
アムネスティ・インターナショナルは、英国や米国など数カ国がパレスチナの外 交官たちに、国際法の下で犯罪に対する説明責任を果たすメカニズムを放棄させ るようと働きかけたという報告を憂慮している。 犠牲者が受ける司法正義は、いかなる取引の対象にもしてはならない。
11月30日配信 アムネスティ・インターナショナル国際ニュース

イスラエル・ガザ紛争:国連は武器禁輸措置を講じ、国際監視団を直ちに派遣すべき

イスラエルとガザのパレスチナ武装グループとの紛争がエスカレートしている。 これをうけアムネスティ・インターナショナルは、国際的な武器禁輸措置と、国 際監視団の即時派遣を要請する。
11月14日以来、ガザの多数の民間人とイスラエルの民間人3名が殺された。国連 や地元の人権組織、アムネスティが収集した情報によると、両者が国際人道法違 反を行っていることは明らかである。
両者による違反行為を、独立的かつ中立的に調べるため、人権侵害と国際人道法 違反の調査能力を持った国際監視団を速やかにガザとイスラエル双方に派遣する 必要がある。
また国連安全保障理事会は、イスラエルとハマス、そしてガザのパレスチナ武装 グループに国際的な武器禁輸措置を講じるために、緊急会合を持つべきである。
■犠牲となる市民。奪われる命
イスラエル軍は11月14日以来、ガザ地区の1350余りの目標物に攻撃したと発表し ている。イスラエル軍は人口が密集した居住地域に砲撃を加え、政府や報道機関 の建物を攻撃し、パレスチナ武装グループメンバーの家族の家を爆撃し、パレス チナ民間人を死傷させた。
この19日午後までに、ガザで殺された市民66名の名前をアムネスティは確認し た。この中には、子ども17名と女性9名が含まれている。パレスチナ人権セン ターは19日正午、子ども175名と女性107名を含む、市民622名がガザで負傷した と発表している。彼らの多くは重傷だったようだ。
私たちはイスラエル軍の無差別または過剰な攻撃で死傷したガザの民間人がいる ことについて、大いに懸念している。
■国際人道法に違反する攻撃
パレスチナ武装グループは11月14日以来、イスラエルに向けて1100発余りのロ ケット弾を発射した。ロケット弾のほとんどは照準を合わせられるものではな く、民間人の地域から発射されたものもあった。
国際赤十字・赤新月運動イスラエル支部のマゲン・デイビッド・アドムによる と、このような違法な攻撃で3名のイスラエル民間人が殺され、少なくとも51名 が負傷し、その内2名は重傷だという。
国際社会のあらゆる国・機関は、両者に対して、民間人保護の優先と国際人道法 をしっかり遵守するよう促すべきである。強い影響力を持つ国々の重い沈黙を破 る必要がある。
アムネスティはまた、11月16日にガザでイスラエルに協力した容疑を受けた人物 がハマスの軍事部門によって即決処刑された報告についても大いに懸念している。
■国際社会は、正当な裁きを
ガザの病院は、緊急状況に対処するために格闘している。これらの病院は2007年 6月からのイスラエルの封鎖による物資不足ですでに状況が悪化していた。世界 保健機関によると、今回の交戦の前、ガザの病院はすでに必須医薬品リストの 内、40パーセントを欠いていた。
アムネスティはガザの160万の住民への集団的懲罰であるガザ地区封鎖を改めて 非難し、封鎖が完全に解除されることを求める。
2008年から2009年にかけてのガザ・イスラエル紛争での全当事者による戦争犯罪 については、何の責任も果たされていない。その戦争犯罪については、アムネス ティとリチャード・ゴールドストーン判事率いる国連事実調査団によって文書で 証明されている。
アムネスティは国連総会に対し、「ゴールドストーン報告書」として知られる事 実調査団の報告書を安保理に付託するよう、繰り返し要請してきた。そうするこ とで、安保理は両者による戦争犯罪を調査するため、状況を国際刑事裁判所 (ICC)の検察官に付託するという検討が可能になる。
そのような調査は、2008年から2009年の紛争における全当事者による戦争犯罪や 人道に対する罪の可能性がある行為を含むものである。この紛争で、は約300名 の子どもたちと数百名の非武装民間人を含むおよそ1400名のパレスチナ人が殺さ れた。イスラエルの民間人3名もこの紛争で殺された。
11月19日配信 アムネスティ・インターナショナル国際ニュース
このような情報もあります。
ガザのシーファ病院の医師、アル=ケドラ氏によると、負傷者、死者の傷口から出た破片から異様な匂いがして、 イスラエル軍は化学兵器を使っている可能性が高いとのこと。 シーファ病院は医薬品の不足に加え、輸血用の血を募集中。@marmite_news(日本時間18日午前7時以前)
ガザの状況はこちらから http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=mIBoEUYEIOo

「ガザで殺人を行っているのは誰か」
   ノーム・チョムスキーらによる報道への呼びかけ

11月11日に始まったイスラエルのガザへの攻撃はハマスの軍人の暗殺、軍事施設への攻撃で あると報道されていますが、3人のこどもを含む一般市民5人が殺されました。 負傷者は子どもを含む52人です。(今、現在どんどん犠牲者が増え続けています)
2008年〜2009年の悲劇が再び起こるのではと懸念されます。 世界各地で抗議のデモが起きています。アラブ諸国、トルコ、イラン、イギリス、フランスの諸都市で行われています。
 ノーム・チョムスキーらは世界の報道人へ呼びかけています。
欧米メディアは「ガザからの激しいロケット砲弾にさらされるイスラエル」という報道を しています。ガザからの砲弾の犠牲者よりイスラエルの攻撃によるガザの犠牲者のほうが圧倒的に 多いにもかかわらず。報道は無数の重傷者、死傷者をだしているガザへの爆撃、空爆に目をむけるべきと 言っています。
今回のイスラエルの攻撃はガザからの砲弾への報復と言われていますが、 発端は11月5日、精神障碍を持つ20歳の青年が国境近くをぶらついていてイスラエル軍に撃たれ、駆け付けた 医師が足止めをされたため命を救えなかったことではないかと推察しています。そして 11月8日、家の前でサッカーボールを蹴っていた13歳の少年がガザ地区に侵攻したイスラエル軍の 銃撃で殺されました。このような経緯の後に4人のイスラエル兵が国境付近で 負傷する事件が起こったのです。そして11日からのガザへの攻撃が始まりました。
メディアはガザへの連日の爆撃による恐怖とショックを正当に報道していない。 そしてガザでは医療設備不備、医薬品の不足により負傷者を適切に治療もできない 状況であることまたガザの住民が眠れない日を過ごしていることを 報道しないことに憤激しています。ジャーナリストに良心にしたがった報道をするよう 呼びかけました。
(ナブルス通信参照)
原文: Who is doing the killing in Gaza? Noam Chomsky and others challenge world's media
http://stopwar.org.uk/index.php/palestine-and-israel/ 2027-who-is-doing-the-killing-in-gaza-noam-chomsky- and-others-challenge-the-worlds-media
ガザ攻撃で殺されたパレスチナ人の嘆き 2012.11.11

西岸地区のパレスチナ人の良心の囚人を釈放すべき

イスラエル軍当局は、被占領西岸地区のパレスチナ人活動家への一連の嫌がらせ や脅迫、恣意的拘禁を止めなくてはならない。
バッセム・タミミは、先週、パレスチナ人の土地へのイスラエル人入植者たちの 侵入に対し、非暴力の抗議をして逮捕された。彼は現在、勾留されている。10月 31日にオフェール軍事裁判所に出廷して、実刑判決を受ける可能性がある。
■非暴力の抗議活動
タミミはラマッラーの北のシャール・ベンジャミン入植地のスーパーマーケット で非暴力のデモをして、10月24日に逮捕された。100名余りの抗議者が集まり、 占領の終結とすべてのイスラエル製品のボイコットを訴えた。
彼は、警官への襲撃や未認可のデモへの参加、公的秩序に反する活動という罪に 問われている。 抗議の模様を撮った映像を見た後、軍判事は法的手続きの間、タミミは自宅軟禁 にすべきと判決した。しかし軍検察はこの判決に対して上訴し、彼はオフェール刑務所 に収監されたままである。
被占領西岸地区におけるイスラエル人入植地の設置と拡大は、国際人道法に違反 している。
■暴力的な逮捕
目撃者やメディアの報道によると、抗議者たちは10月24日にスーパーマーケット から出発した際に、イスラエル警察と治安部隊に殴打された。治安部隊はま た、目つぶし閃光弾を発射した。
タミミの妻、ナリマン・タミミも抗議活動に参加しており、アムネスティに次の ように語った。「警察の逮捕は冷酷非情でした。夫を地面に投げ飛ばし、体を地 面に押しつけて手錠をかけました。近づこうとすると、みんな殴られました。警 察は臆病で神経質になっていたようで、早く終わらせたかったのです」
警察が無用で過度な力を行使したにもかかわらず、ある警察官が自分の手を殴ら れたという証言を元に、軍検察はタミミを襲撃のかどで起訴した。
アムネスティ・インターナショナルは彼を良心の囚人と考えてお り、即時無条件に釈放されるべきである。
■入植者たちによる侵略
2008年7月、近くのハラミシュのイスラエル人入植者たちがカウス水源を使い始 めた。その水源はアル=ナビ・サレにあり、そこや近郊のデール・ニサム村の作 物用に灌漑するために使用されてきた。2009年2月には入植者たちは水源地に建 造物を建て始めた。
入植者たちがパレスチナ人の私有地に建造物を建設したこと、またその工事が 木々や他の財産に損害を与えることにパレスチナ人たちは苦情を申し立てた。入 植者たちに対するパレスチナ人の苦情を、イスラエルの警察は「証拠不十分」と して日常的に封殺してきた。
西岸地区のほとんどを管理する軍の機関であるイスラエルの市民局は、集団で、 また金曜日にパレスチナ人たちがカウス水源に行くことを禁じている。一方で、 入植者たちは自由に行くことを許されている。
■継続的なデモ
週毎のデモは2009年12月9日に始まった。毎週金曜日、アル=ナビ・サレの住民と 連帯する活動家たちが正午頃、村のセンターに集合し、水源に向けて平和的に行 進する。彼らは、目つぶし閃光弾、トウガラシ・スプレー、警棒、銃の使用を含 むイスラエル軍による無用で過度の武力行使に繰り返しあってきた。 イスラエル軍は定期的に村を襲撃し、たいていは夜間に行な い、家宅捜索や逮捕をする。逮捕された中には15歳未満の子どもたちもいる。

11月1日配信 アムネスティ・インターナショナル国際ニュース
EUはシリアからの難民を助けるために、今すぐ行動を

高まる非難にも関わらず、EUを含む国際社会はこれまでのところ、シリ ア紛争の各党派に、拡大する人権と人道法の侵害を止めるための効果的な圧力を かけるに至っていない。
当初改革を求める平和的抗議行動が起こり、それが残虐な弾圧にあい、内戦に発 展した。それから19ヵ月が経った。しかし、国連安全保障理事会はロシアと中国 の拒否権と他の加盟国の無為により、いまだに機能が麻痺したままである。 そして国際社会が躊躇しているあいだに、多くの子供を含む市民の犠牲者は増え 続けている。
推定では紛争が始まってから、2万4000人をゆうに超える人びとが亡くなった。 それに加え、シリア内で百万人以上が家を追われた。 35万人以上が、隣国のトルコ、レバノン、ヨルダン、イラクに難民としてすでに 登録したか、登録を待っている。
国連は、今年の終わりまでに70万人がシリアの隣国に難民となって避難するだろ うと予測している。一方、EUは1万6500人のシリア難民しか受け入れていない。 トルコ、レバノン、ヨルダン、イラクは、概して大量の難民を受け入れ、国内に とどまることを許可した。しかし、紛争が激化するにつれ国境を越える人数が急 増している。そのため、国際社会が断固とした行動を取り、難民を受け入れてい る国々と責任を分かち合うことが不可避となった。
もし各国がシリア市民の命運を真摯に考えるならば、安全を求めて逃げざるを得 なかった人びとのことも当然、同様に考えるはずである。彼らを支援し守ること は、国際社会が出来る最低限のことである。
アムネスティはEUに対し、以下の具体的な手段を提案する。
・ EU内に入ったすべてのシリア避難民に対し、保護と公平な難民手続きを保障 すること
・シリアの状況が安定し、安全が確実になるまで、だれもシリアに戻されること がないよう保障すること
・難民申請を判断するに際しEU内で共通の基準を設けること
・国際的保護の解釈を拡大して適用すること
・安全な地へ逃れるのを阻む、ビザや非常に煩雑な家族再統合手続きなどの障害 を取り除くこと
シリアはいまだイラクやパレスチナ、ソマリア、アフガニスタン、スーダン、イ エメンからの難民を大量に受け入れている。アムネスティは、EU加盟国もまたシ リアからの難民を受け入れ、責任を分かち合い連帯責任を負うように求めている。
国連難民高等弁務官事務所は、これらの難民に移住先を提供するよう各国に訴え ており、アムネスティはEU各国にこの訴えに寛大に応じるよう求めている。
難民の急増と冬の到来は、隣国での難民たちの状況をさらに厳しくするだろう。 国際社会は、人道的支援の訴えに緊急に応えなければならない

10月31日配信アムネスティ・インターナショナル 国際ニュース

死刑執行に抗議声明

アムネスティ・インターナショナル日本は、本日(9月27日)、仙台拘置所の江藤幸子氏と福岡拘置所の松田幸則氏の2 人 の死刑確定者に対して死刑が執行されたことについて抗議する。
特に、死刑執行のなかった翌年にもかかわらず、すでに3 度の死刑執行を行ったことは、 死刑執行に固執し、執行を恒常化させる政府と法務省の意思表示 ともいえるものであり、これに強く抗議する。
日本政府は、国際人権諸条約の締約国として、死刑に頼らない刑事司法制度を構築する国際的な義務を負って いることを改めて確認しなければならない。そして、日本政府は、生きる権利をはじめとする人権保障の大原 則に立ち戻り、死刑の執行を停止し、死刑廃止に向けた国民的議論を速やかに開始すべきである
イスラエル裁判所レイチェル・コリーの死に免責判決

2003年3月16日にパレスチナのラファでイスラエル軍の家屋取り壊しに抗議行動をしていた 米国人女性レイチェル・コリーはイスラエル軍のキャタピラー・ブルドーザーに轢き殺されました。
イスラエルのハイファ地方裁判所はレイチェルの死に対してイスラエル軍に責任なしの判決を 下しました。判決はレイチェルの死後1か月以内に軍が行った不備のある調査を支持しています。 アムネスティは以前からイスラエル軍の調査体制を批判しています。

8月23日配信 アムネスティ・インターナショナル 国際ニュース

シリア 市民が矢面に

シリア最大の都市で商業の中心地、アレッポの制圧をめぐって、シリア政府軍と 反政府軍の間の戦闘が激しさを増している。その中で市民はじっと耐えています。
アムネスティは8月前半、現地を訪れて調査を行いました。
その報告書とビデオ映像によれば、シリア政府軍はますます頻繁に 住宅地に空爆と砲撃を加え、無差別攻撃となって市民の命と生活を 危険にさらしています。政府軍の攻撃は特定の軍事目標を攻撃するというよりは 反政府軍が支配している地域を無差別に攻撃しているようだ。
このような攻撃の犠牲者の中に、子ども7人を含む10人家族のカヤリ家もいました。 カヤリ家は8月6日午後、2回の空爆で犠牲となりました。
アレッポではパンが不足しており、パンを求めて長い行列ができている。 行列に並んでいるときに13歳の少女、キファ・サムラと11歳の弟のザカリャは、 8月12日朝、攻撃を受けて亡くなりました。このように市民は日々、 政府軍による空爆と砲撃の集中砲撃をいたるところで受けています。 多くの人々は、どこにも安全な場所がないため、どの家族も予測できない攻 撃におびえながら生活しています。
圧倒的多数の犠牲者が、政府軍による空爆や砲撃で殺害された。一方、どちら側 が攻撃したのか明らかでない場合もあった。
反政府軍はほとんどの場合、短距離軽兵器で戦っているが、時には同じように市 民を危険にさらす迫撃砲や手製ロケットなどの低精度な武器や無差別兵器を使用 している。
報告書に強調されているさらに憂慮すべきことは、政府軍による、戦闘に関与し ない市民の裁判なしの略式の処刑が急激に増加していることです。そのほとん どが若い男性ですが、手錠をかけられていて頭部を撃たれている遺体が 政府軍が全面的に管理し ている空軍情報部本部近くに埋められているのがしばしば見つかっています。
戦闘が続く中、市内で軍事行動をしている自由シリア軍(FSA)など非常に多くの 反政府武装勢力による捕虜の違法な殺害や虐待などの増加も、またますます懸念 される。
アムネスティはFSA指導者に対して、このような虐待行為を直ちに終わらせ、捕 虜の殺害なども公正に調査することを繰り返し要求してきました。 政府軍と反政府軍双方は、国際人道法に従った行動をとらなければなりません。 市民に対する無差別攻撃やその他の戦争犯罪の責任者は、その責任を問われるべ きです。

8月23日配信 アムネスティ・インターナショナル 国際ニュース
イスラエルの元核技術者バヌヌさん反原発デモ

湘南グループで以前イスラエル当局に行動の自由と出国の許可を求めて手紙を出した 元核技術者モルデハイ・バヌヌさんが6日東エルサレムで反原発のデモをしました。 10数人のデモでしたが国際社会に原子力発電と核兵器の廃絶を訴えました。
ヒロシマを経験したにもかかわらず原発建設にまい進した日本を批判しました。 日本のような先進国は原子力エネルギーにたよらなくても物をつくることが できると訴えました。
バヌヌさんはイスラエルの核開発を暴露して18年間も刑務所にとらえられ、 刑期をおえ釈放されたのちもさまざまな制約をうけ行動の自由をうばわれています。
武器貿易条約採択されず

7月2日から国連で武器貿易条約(ATT)採択への交渉が続いていましたが、交渉は関係各国の利害が ぶつかり27日の最終日までに世界から寄せられた声もむなしく、条約は採択されませんでした。
規制に弾薬まで含むことを求めた世界の多くの国と反対する米国、中国、ロシアとの対立がありました。
時間切れとなり交渉はまとまりませんでしたが修正草案は10月の国連総会でふたたび取り上げられます。 国連で議論がはじまって6年がたちますがこれからも粘り強い条約採択への世界の支持が重要です。

パレスチナ自治政府が3名の絞首刑を執行2名が処刑の危機

ガザ地区で3名の男性が殺人罪で処刑されました。そのうちの一人は 拷問された跡が身体に残っていたと家族は証言しています。
ガザの統治者ハマスは今年6名を処刑しています。ガザを統治してからすでに少なくとも14名を 処刑したと言われています。処刑された人のうち6名はイスラエル当局との「協調」を罪とされ、 8名は殺人罪で有罪とされました。(7/21配信)

イスラエル当局より拘禁中のパレスチナ人がハンストにより
  重大な危機に直面


イスラエル当局による拘禁延長、パレスチナ追放に抗議してハンストを実行中のパレスチナ人が医療刑務所に 移送されました。
地元のNGO「イスラエル人権のための医師団」が彼らの診察の許可を 求めていますがいまだ認められていません。(7/14配信)
これらの件についてのアクションはこちらから  http://www.amnesty.or.jp/get-involved/ua/ua/2012ua119.html
武器貿易条約について世界のアーティストがアピール

7月2日から国連において武器貿易条約合意にむけた会議が行われています。
これに関してアムネスティ、オックスファムの運動を支援する世界の著名なアーティスト30数名が 国連事務総長へのアピールに署名しました。
アピールはこの地球上で全人類一人につき平均21個の弾丸がつくられていること。
その武器が武力衝突や無用な死傷を引き起こしていること。
武器取引がバナナやボトル詰の水より規制されていないことを指摘しています。
各国政府が人権を守り、強力で実効性のある条約を採択するよう求めています。
国連事務総長への書簡に署名したアーティストたち
Gillian Anderson Actor, USA.
Los Aterciopelados Musicians, Colombia.
Harry Belafonte Singer, songwriter, actor and social activist, USA.
Gael Garcia Bernal Actor, Mexico.
Paul Bettany Actor, UK.
Jane Birkin Actor/Singer, UK.
Miguel Bose Singer, Spain.
Rahul Bose Actor, India.
Helena Christensen Photographer and model, Denmark.
Chris Martin, Guy Berryman, Jonny Buckland, Will Champion Members of Coldplay Rock band, UK.
Jennifer Connelly Actor, USA.
Paul Conroy War photographer, UK.
Sophie Dahl Writer and model, UK.
Kristin Davis Actor, USA.
Andrea Echiverri Musician, singer and guitarist, Colombia.
Los Fabulosos Cadillacs Musicians, Argentina.
Livia Firth Film Producer and Eco-Age Creative Director, UK.
Anjelica Huston Actor, USA.
Eddie Izzard Comedian, actor and writer, UK.
Bianca Jagger Chair of Bianca Jagger Human Rights Foundation, UK.
Emmanuel Jal Musician and activist, South Sudan
Scarlett Johansson Actor, USA.
Angelique Kidjo Singer, Benin.
Keira Knightley Actor, UK.
Annie Lennox Singer/songwriter, UK.
Baaba Maal Singer/musician, Senegal.
Bill Nighy Actor, UK.
Yoko Ono Artist, author and peace activist, Japan.
Emma Pooley Olympic cyclist, UK.
Tim Roth Actor and director, UK.
Kevin Spacey Actor, director and producer, US.
Dave Stewart Musician and record producer, UK.
Imelda Staunton Actor, UK.

取調の可視化を求めて講演会

6月30日鎌倉市で行われた講演会はおよそ30人の参加者をえ、活発な質疑もあり 有意義な会でした。畑中弁護士の適確なお話で可視化することが如何に重要かが よく分かりました。毎日新聞から取材記者も来会され翌日の地方版に取材記事が 掲載されました。

ハンスト中のパレスチナ人の釈放決定

イスラエル当局は拘禁中のサッカー選手マムード・アルサーサクを7月10日に釈放することに合意した。
マムード・アルサーサクは88日間のハンストを昨日、停止したそうです。

「5台の カメラが壊された〜パレスチナ〜」

ビルイーン村パレスチナ人の撮影によるこのドキュメンタリーは、 昨年11月、アムステルダム国際ドキュメンタリーフィルム・フェスティバル、 続いて今年1月サンダンス・フィルム・フェスティバル の世界ドキュメンタリー部門で入賞しました。
撮影者であるイマード・ブルナート氏自身の家に踏み込み、子どもを連行しよう とするイスラエル兵、ブルナート氏のカメラを奪い取り地面にたたきつけるイス ラエル人入植者の動画像など、すべて実写です。
作品「5台の壊れたカメラ(5 Broken Cameras)」の動画の一部(5分半)が視 聴できます。
http://vimeo.com/21967570
http://www.youtube.com/watch?v=F_tQEgiYoV4


アムネスティ日本 info@amnesty.or.jp
http://www.amnesty.or.jp

国連安保理は、シリアの町ホウラで5月25日、シリア政権が武力で多数の市民を 殺害したことに対し、強く非難するだけではなく、具体的な行動を起こし、直ち に国際刑事裁判所(ICC)に事態を委ねるべきである。
攻撃直後に、アムネスティが得た目撃証言などの情報によると、5月25日、シリ ア軍の住宅街での砲弾、迫撃砲、ロケット弾の集中砲火で、女性34人、子ども50 人を含め少なくとも108人が死亡した。
「殺害が拡大する中、国連のシリア監視団は規模と機能を拡充し、シリア政府は 国連人権委員会による国際調査委員の入国を認め、紛争当事者双方の人権侵害の 申し立てを調査すべきです」 アムネスティは、4月14日、国連監視団が入って以降、シリアで1300人以上が殺 害されていることを確認している。
地元の活動家によると、25日午後、検問所の軍が平和的デモに発砲し、それに触 発された反体制派武装グループが応戦し、戦闘が勃発した。その紛争で、数は未 確認だが多数の死者が出た。
目撃者がアムネスティに語ったところによると、25日午後8時頃から深夜まで、 シリア軍はホウラ地区に分単位で砲弾とロケット弾を撃ち込んだ。シリア軍情報 部員らしき黒軍服の男たちが、武装襲撃を指揮し、その攻撃で多くの民間人が死 んだという。
殺害された人たちのうち62人は、アブド・アル・ラザグ族出身者であった。子ど も数人がライフル銃の台尻と思われるもので頭蓋をくだかれていた他は、全員が 射殺されていた。
シリア国営報道機関SANAは5月27日、ホウラにおける殺戮を「アル・カイダにつ ながるテログループ」の仕業だとする声明を発表した。また同日、外務省スポー クスマンは、この事件を調査する「司法軍事委員会」が設立されたと伝えた。
シリア政府が設立したというこれまでの内部組織による調査をみる限り、この 委員会に有益な結果を期待することはできません 政権が犯した人権侵害で裁判にかけられた容疑者は、一人としていません。
安保理は、シリアの惨状に終止符を打つために具体的行動をおこす必要があり ます。その行動を、ロシアは妨害してはなりません
私たちはその時期に殺害されたおよそ9750人の名前を確認している。その中に は、700人以上の子どもが含まれている


名張毒ぶどう酒事件―再審理の実現を要請

アムネスティ・インターナショナル日本が名張毒ぶどう酒事件の再審請求棄却に関して 声明を出しました。
本日、名張毒ぶどう酒事件の第7次再審請求の差戻し審理において、 名古屋高等裁判所刑事第2部が、再審請求を棄却した。アムネスティ・ インターナショナル日本は、死刑確定事件に対しては、再審理の機会 を保障して、より慎重な判断を行うべきであると考える。
本件は、弁護人の特別抗告により、最高裁の審理がなされることが予 想される。裁判所の審理が継続する以上、検察は、刑事訴訟法442条 ただし書にもとづき、直ちに奥西氏の死刑の執行を停止させるべきで ある。死刑は生きる権利を奪う取り返しのつかない刑罰であり、奥西氏 に再審を受ける機会を保障すべきである。

死刑廃止チャンネル

死刑廃止国際条約の批准を求める運動をしている「フォーラム90」が 「死刑廃止チャンネル」愛称「廃チャン」を開設しました。(http://www.forum90.net/)
裁判員制度がはじまり市民が死刑判決をくだすようになっています。しかし私たちは 本当に死刑について知っているのでしょうか。マスメディアはほとんど死刑の本質を 伝えていません。死刑の執行方法、死刑囚のおかれている状況、世界の死刑制度の現状も 知らないで死刑を宣告して良いのでしょうか。
死刑制度の情報を分かりやすく、関心を持ちやすい方法として インターネットで映像とともに情報を発信をしています。 当サイトでもリンクしています。ぜひご覧になってください。

北朝鮮ヨドク政治収容所閉鎖アクションの報告

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)ヨドク政治収容所の閉鎖を求めるアクションが 世界中から国際事務局に集約されました。アピール総数は165,000通です。 4月12日朝、アジア担当職員たちによってスイスの首都ベルンにある 北朝鮮大使館に届けられました。




アムネスティ・インターナショナル日本声明
〜袴田事件―早期の「再審の実現」を要請〜


本日、袴田事件の第二次再審請求の審理におけるDNA鑑定の結果から、袴田巖氏のDNAと、 犯行時に着ていたとされる衣服の血痕のDNAとが一致しないことが明らかになった。
アムネスティ・インターナショナル日本は、静岡地方裁判所に対し、直ちに再審開始を決定するよう要請する。 同時に、静岡地方検察庁に対し、新たな証拠にもとづく再審開始の手続きを、即時抗告などによって妨げないよう強く求める。

今回、DNA鑑定の結果が出された衣服は、1968年に袴田氏に対する死刑判決の有罪認定を基礎づけた証拠である。 そして、鑑定結果は、この証拠に証拠能力及び証明力がないことを明らかにするものである。 そうすると、この鑑定結果は、袴田氏の無罪を基礎づける新規の証拠であるといえ、再審請求の理由が認められる。 よって、静岡地方裁判所は、刑事訴訟法435条及び448条にもとづき、直ちに再審開始を決定すべきである。
また、裁判所が「再審開始の決定」をした場合、静岡地方検察庁は、即時抗告などで再審開始手続きを妨げてはならない。 日本では、死刑確定事件で再審が開始され無罪が言い渡されたのは、1980年代の4つの事件に留まり、 それ以降は現在に至るまで、1件もなされていない。この背景には、検察が原判決の有罪判断の維持に固執することによって、 再審の実現を難しくしている事情がある。しかしながら、当初から袴田事件は、 その取調べ過程における不公正な手続きが問題となってきた。検察庁は、袴田事件における究極的な不正義に真摯に向き合い、 今こそ司法の正義を実現すべきである。

袴田巖氏は、逮捕時から数えて実に45年以上も拘禁され、現在76歳の高齢である。 また、袴田氏の精神の健康状態が懸念されていることは、日弁連による2011年1月27日付 「東京拘置所死刑確定者心神喪失に関する人権救済申立事件(勧告)」にも明らかである。 袴田氏の年齢、健康状態を勘案すれば、審理を長期化させる猶予は残されていないのである。 検察庁には、DNA鑑定の明白性と、袴田氏の置かれた客観的な状況に鑑みて、自由権規約14条3項(c)、 憲法37条1項及び刑事訴訟法1条の「迅速な裁判」の要請にもとづき、再審の早期実現に協力すべき法的、 道義的責任があることは明らかである。アムネスティは、再審開始の手続きを即時抗告などによって妨げないよう 、検察庁に改めて強く求めるものである。

アムネスティは、あらゆる死刑に例外なく反対する。 死刑は生きる権利の侵害であり、究極的に残虐で非人道的かつ品位を傷つける刑罰である。 アムネスティは日本政府に対し、死刑廃止への第一歩として、袴田巖氏を含めた全ての死刑囚について、 公式に死刑の執行停止措置を導入するよう要請する。
アムネスティは、袴田氏の事件について、世界的な規模で支援の取り組みを続けている。

2012年4月16日
公益社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本




ZDF制作「フクシマのうそ」

ドイツのテレビ局が制作したフクシマ原発事故のドキュメンタリーを 紹介します。ZDF「フクシマのうそ」いかにこれまで原発の事故が隠蔽されてきたか、 経済性優先が今回の大事故になったことを(地震、津波だけが原因ではない)あきらかにしています。 とても見ごたえがあります。ここから

アムネスティ・インターナショナル公式声明(抜粋)
アムネスティ発表国際ニュース 2012年3月27日
アムネスティ日本 info@amnesty.or.jp
http://www.amnesty.or.jp/


国際事務局:世界中で後退しつつある、死刑制度

昨年、死刑を執行したのは198ヵ国中わずか20ヵ国で、10年前と比べ3分の1以上 減少した。国連加盟国の90%の国々では死刑は行なわれておらず、いまや140ヵ 国で法律上あるいは事実上、死刑制度は廃止されている。
アムネスティがいかなる犯罪、犯罪者、執行方 法であっても、例外なく死刑に反対し、死刑廃止を求める世界規模の活動を始め た35年前、世界で死刑を廃止していた16カ国は少数派であった。しかし今日、形 勢は逆転し、死刑制度に固執する国々こそが例外となったのである。
2011年に死刑が行なわれなかった地域には、ヨーロッパ全域、ベラルーシを除く 旧ソ連、また米国を除く南北アメリカ大陸が含まれた。太平洋地域においては、 5件の死刑判決を言い渡したパプアニューギニア以外は、死刑の判決も執行もな かった。
この大きな変化は、人権活動家が勇気を持って抑圧に立ち向かい、政治家や意思 決定者が毅然と、政治的な、あるいは受けの良い流れに逆らい、そして弁護士、 ジャーナリストや学者が勇敢にも真実を明らかにしてきた、その証である。
彼らが証明したことは、生きる権利を侵害する死刑制度は間違っている、という だけでなく、いったん詳細な調査が行なわれると国家による殺人の正当性は破綻 する、ということである。
死刑は、凶悪な犯罪を抑止するのだろうか? この点に関する確かな証拠はな い。死刑制度を維持している国々と比べて、死刑制度を廃止した国々における殺 人発生率は、多くの場合低い。国家による殺人は、暴力の使用を容認することで あり、そういった殺人が暴力や報復の連鎖を煽る場合もある。
犯罪の被害者には、正義を享受する権利や、気持ちを整理する権利はないのだろ うか? 恐ろしい犯罪を経験した人びとには、当然正義を享受する権利がある。 しかし、正義は報復に端を発するものであってはならない。個人によるもので も、国家によるものでも、殺人は間違った行為なのである。
死刑によって、気持ちを整理できる人もいるかもしれない。しかし、これも明ら かではない。というのも、凶悪犯罪の被害者が、加害者を死刑に罰することに対 し、反対する場合もあるからだ。米国では、9.11に触発された犯罪が多発した が、その被害者の一人であるバングラデシュ移民、レイス・ブイヤンは自分を 撃った犯人の減刑を求めた。彼は、「私が信仰する宗教には、いつでも寛容は復 讐に勝るという教えがあるのです」と述べている。
また、言うまでもなく墓石の下から控訴することはできない。アメリカのイリノ イ州では、複数の誤った判決が下された後、2011年に死刑制度が廃止された。
それでも一部の国家は、死刑制度の維持に固執している。ここで、悪い知らせを 取り上げなくてはならない。昨年、孤立した少数グループの国々で、異常な水準 の死刑が執行された。斬首、絞首、致死薬の注射、銃殺などの方法で、2011年末 時点で、世界で少なくとも676人が死刑に処せられており、また少なくとも18750 人の死刑囚が存在している。
これらの数字には、世界最多の死刑が執行されている中国が執行しているとされ る数千件の死刑は含まれていない。アムネスティは、中国の死刑の執行数を公的 機関から入手していたが、実際の数字より大きく下回ると思われるため、今後は 公表しないこととした。「過去4年間で、中国における死刑の適用が大幅に減少 した」という中国政府の主張を確認するため、アムネスティは実際の執行数を公 表するよう要請しているが、中国政府はこれまでのところ、これに応じていない。
またイランにおいては、「非公式に多数の死刑が執行されている」という信頼で きる報告があるが、それもこれらの数には含まれていない。この報告されている 執行数を加えるとイランにおける死刑執行数は公式な数のほぼ2倍になる。
中国とイランに加えて、サウジアラビアとイラク、そして南北アメリカ地域で唯 一かつG8加盟国で唯一の国として、米国もまた進んで死刑を執行している。さら に北朝鮮、ソマリアそしてイエメンを加えたこれらの国家は、つねに毎年、最も 高い水準の死刑を執行している国家なのである。
またほとんどの国で死刑判決が下されたあるいは死刑が執行されたのは、不正 な裁判が行なわれた後であった、ということにも注目しなければならない。ベラ ルーシ、中国、イラン、イラク、北朝鮮、そしてサウジアラビアでは死刑の前 に、監禁や拷問までもが行われ自白を強要したケースもあった。歴史を通して頻 繁に行なわれてきたように、抑圧的な国家によって、面倒を起こす者や好ましく ない者を排除するために死刑制度が利用されたのである。
2011年は全体的に死刑 廃止に向かう傾向が着実に強まり、私たち全員を被害者にするこの残酷で取り返 しのつかない刑罰が、いや応なく過去の物となる方向に必然的に向かっているこ とは明らかなのである。
アムネスティ・インターナショナル 事務総長


アムネスティ・インターナショナル日本小川法相の死刑執行に抗議

2012年3月29日
アムネスティ日本 info@amnesty.or.jp
詳細はhttp://www.amnesty.or.jp/

アムネスティ日本支部声明:死刑執行に対し抗議する

アムネスティ・インターナショナル日本は、本日、東京拘置所の古澤友幸氏、広 島拘置所の上部康明氏そして福岡拘置所の松田康敏氏の3人の死刑確定者に対し て死刑が執行されたことについて抗議する。特に、死刑執行のなかった翌年に死 刑執行を行ったことは、死刑執行に固執する政府の意思表示ともいえるものであ り、強く抗議する。
小川法相は3月、死刑の在り方について議論をしてきた省内の勉強会を、意見は出尽 くしたとして打ち切った。「死刑制度の見直しについては大いに議論しなければ ならない」としながらも、勉強会に代わる議論の場を示すことがないまま、今回 の執行に踏み切ったのである。一方で人を処刑しながら、他方で死刑についての 議論を行うという行為は矛盾しており、執行を続けながらの検討では、死刑の正 当化を後押しするものになるとの危惧を抱かざるを得ない。

小川法相は、法にのっとった執行をなすべきことが法相の職責であると主張する。 しかし、法の内容が国際人権基準に反するものである場合には、その法を改正すべく努力することもま た、政府、法相および法務省に課せられた義務である。
政府および法相は政治的 リーダーシップを発揮し、死刑執行の停止を維持した上で、勉強会での成果を踏 まえて議論を国会等の場に移し、死刑制度について、より開かれた国民的議論を 喚起するよう速やかに努力すべきである。

日本政府は、国際人権諸条約の締約国として、死刑に頼らない刑事司法制度を構 築する国際的な義務を負っていることを再確認しなければならない。そして、日 本政府は、生きる権利をはじめとする人権保障の大原則に立ち戻り、死刑の執行 を停止し、死刑廃止に向けた国民的議論を速やかに開始すべきである。


イスラエル最高裁入植地の撤去命令をだす

イスラエル最高裁は25日、占領地ヨルダン川西岸地区中部に無許可で作られたユダヤ人 入植地施設ミグロンについて、今月末の撤去期限を2015年まで延期するよう求めていた イスラエル政府の申し立てを退け、8月1日までに撤去するよう命じました。
占領地での入植地建設は国際法違反であり、現在までしばしば違法性を国連で指摘されてきましたが イスラエルは無視し続け入植地を増やし続けています。
土地を取り上げられたパレスチナ人たちは 農地であれば生活の資源を奪われます。住居であれば難民キャンプまたは親戚等の家に居住しなければなりません。 イスラエル政府はこれまでも入植地撤去の延期を繰り返しています。

(共同の記事参照)


湘南グループが取り組んでいるパレスチナのジャイユス村でも2009年に最高裁より分離壁のルート変更の裁定が 出ていますがいまだにイスラエル当局は実施していません。(特集記事のパレスチナに詳細)


ZDF制作「フクシマのうそ」

ドイツのテレビ局が制作したフクシマ原発事故のドキュメンタリーを 紹介します。ZDF「フクシマのうそ」いかにこれまで原発の事故が隠蔽されてきたか、 経済性優先が今回の大事故になったことを(地震、津波だけが原因ではない)あきらかにしています。 とても見ごたえがあります。ここから


アムネスティ・インターナショナル公式声明
2012年3月15日
アムネスティ日本 info@amnesty.or.jp
http://www.amnesty.or.jp/
 日本:東日本大震災から1年、問われる国の情報開示と国民の人権

一国を巨大な災害が襲うとき、政府と国民の信頼関係が試される。一年前、日本 を襲った大地震と巨大津波という2つの自然災害は、この国にその問いを突き付 けている。

しかしながら、東日本大地震から一年を迎えた今、政府と国民との間には重大な 亀裂が生じている。政府と電力業界の異常なほどの緊密な関係により、業界に対 する規制は弱体化し、運用は生ぬるくなった。国の監督は不十分であり、非常時 のリスクを指摘した内部の者は窓際に追いやられた。実際に災難が降りかからな い限り、政府も東京電力も「原発は安全である」という神話を押し通してきた。 しかし、2011年3月11日、状況は一変した。

国や省庁と業界の癒着で損失を被るのは、国民である。日本の場合、福島第一原 発が立地する地域に暮らす住民に対し、国と原子力業界は、原子力発電は安全で あり、発電所はいかなる自然災害にも耐えられると太鼓判を押してきた。これは 真実の隠ぺいによく使う、情報操作である。

短期的にも長期的にも大事故を引き起こすリスクを抱える事業には、厳格な規制 が不可欠である。原発災害において、放射能拡散の対応に逡巡・遅滞があれば、 原発周辺に暮らす人びとを危険にさらし、彼らの生活を脅かすことになる。

福島第一発電所の場合、情報の開示不足は、地震以前の施設の安全性のみなら ず、事故後の原子炉の状況についても言える。
政府は当初、同原発の6基の原子炉のうち3基がメルトダウンを起こしていること を発表しなかった。また、住民に対する政府の避難命令は遅れた。学校周辺地域 の許容放射能レベルの発表には、一貫性がなかった。事態の重大さを推し量るこ とのできる専門家に、時宜を得た必要な情報を提供することを怠った。ようする に、政府の対応には、住民の安全と健康に対する優先意識がなかったのである。

「表現の自由」の根幹にあるものは、情報を得る権利である。政府は、国民が正 確で、時宜にかなった情報を得られるようにしなければならない。災害直後、被 災者がさまざまな試練を乗り越えていくには、正確な情報を迅速に得ることが必 要不可欠である。しかし、政府の判断と情報の開示が遅れ、住民の生活は脅かさ れている。

避難民に関する損害賠償の手続きが遅れ、避難している人びとの不満は募るばか りである。政府は、事故から11ヵ月後にあたる今年2月になって、ようやく帰宅 基準を発表した。東電には、大惨事となった事故を想定できなかったこと、十分 な危機対応ができなかったこと、さらに、原発事故の被害者らに迅速な補償措置 をしていないことについて、明らかに責任がある。

国民との信頼関係をどう再構築するのか。政府は、依然として問われている。と はいえ、現在、政府が取るべき行動は明白である。
まず、電力業界を含めた産業界の規制は、真に独立した、実行力のある機関が行 うべきである。第二に、予測されうる事故が発生した場合に、地域住民や環境へ 及ぼす影響の調査を、専門家からなる、独立した、中立的な委員会に諮問し、そ の結果を全面開示すべきだ。そして政府はこれらの調査研究に基づき、事態の悪 化の防止に向けた行動をとらなければならない。

第三に、政府は危機に際して、国から自治体に、自治体から住民へ迅速な情報伝 達が行えるよう、情報を共有できるシステムを構築する必要がある。最後に、政 府は政府内で活発な議論を行い、政府や企業に物申したい人びとを含め、市民が その意思を自由に表明できる社会を実現しなければならない。

アムネスティ・インターナショナル
事務総長 サリル・シェティ


 アムネスティ 2011フリーダムキャンペーン
人権活動家エステミロワさんの殺害に関してロシア当局に徹底的な捜査と犯人の、 処罰を要請してください。
袴田事件 今こそ再審の開始を
 〜アジアの不公正な裁判キャンペーン〜
署名サイトは http://www.amnesty.or.jp/

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の「強制収容所」の 閉鎖を求める署名をお願いします。
署名サイトは http://www.amnesty.or.jp/





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